ハズレスキル?とんでもない!日本じゃ大当たりのスキルだぞ!?   作:リーグロード

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このお盆休みに数話は書きたいと思っていたのに、日中の暑さとYOUTUBEの動画に無駄に時間を奪われて書けませんでした。

他にも書かなければいけない投稿作品もあるというのに、自分は大馬鹿者です。


伝説の始まり

 俺の名前はルイド・バーン・リッタルトという。こんなにも長ったらしくて覚えにくい名前だが、以前、いや前世はもっと覚えやすい名前だったんだ。

 まあ、今更説明なんかしなくてもいいとも思うが、俺は元日本人の転生者で、現在は異世界の貴族の4男に転生している。

 別に神様に出会ってチートを貰ったわけでもなく、生まれついて特殊な力があるわけでもない。ただの普通の異世界人だ。

 

 だが、それが悪いことではない。正直言ってイージーモードの世界よりも、少しくらいハードモードの方が個人的には好きだ。

 それに、俺は貴族だ。それも、一族の期待を背負う長男ではなく、一応の備えの4男だ。

 つまり、俺がなにを言いたいのか分かったよな。つまり、修業だ!!! 

 

 そう、平民と違って親が完全に養ってくれており、教育なんかも必要最低限の物のみ!

 

 つまり、空いている自由時間が大学生並みにあるということ。

 

 だから、俺は幼い頃から庭を駆け回り、雨が降れば筋トレに熱を入れて、前世で読んだ格闘漫画の修業法を試してみたりと、やれることは全てやった。

 

 何故そこまで体を鍛えたのかというと、我が家は騎士の位を持つ貴族なのだ。だからこそ、力はこの家では何よりも大切なものだと教えられている。

 それに、この世界ではそれ以外に退屈を紛らわすものがない。漫画もなければ玩具もない。家は貴族だから気軽に外出など許可されないし、家の中にある本は戦術や医学などといった面白味の欠片もない奴ばかり。(まあ、暇すぎたから寝る前に読んだりして全て覚えたのだが)

 だからこそ、俺は体を鍛えるのに集中できるのだ! さらに、俺が体を鍛えているのは何も暇を潰すためだけではない。

 

 まあ、これもテンプレなのだが、この世界の人間は成人である18歳を迎えた年の終わりの日、つまるところ大晦日に世界からの祝福としてスキルと称される力を授けられる。

 これは、歴史書によればこの世界に存在する生き物は人間や動物や虫など、元の世界となんら変わりはしない生き物しか存在していなかったようだが、ある時、上位存在である邪悪なる者が、『この世界はありきたりでつまらない。感謝したまえ、私が君たちの生に刺激をもたらすものをプレゼントしてやろう』と言い残して今では魔物と呼ばれる存在を置いていたようだ。

 それに対抗してこの世界が地上にいる最も知恵ある人間に魔物と戦う為の手段として与えられたのが起源だという。

 

 だが、スキルとは必ずしも魔物と戦える力だけではない。戦闘スキルと呼ばれる戦いに特化した力もあれば、武具などを作り出すことに特化した力もあるし、ポーションや魔物用の痺れ薬などといった物を作りだすことに特化した力もある。だが、中には何の役にも立たなさそうなハズレスキルと呼ばれるものもある。

 だからこそ、この世界ではスキルの内容が重視される。例えイケメンでもスキルが残念だとあまり相手にされないし、逆にブサイクだったとしても戦闘に非常に特化した力のスキルを持ってさえいれば、玉の輿を狙って美女が群がると聞いたことがある。

 

 そして、今の俺はどんなスキルを授けられてもいいように、体を鍛え上げ知識を蓄え物の目利きが出来るように努力している。

 だが、悲しいかな。どれほど努力を積み重ねようが、俺は所詮は4男だ。親は一切俺に興味を示さない。精々が食事の時に、執事かメイドに聞いた今日の俺の修業の話くらいだ。それも、『そうか、兄さん達に負けないように頑張るんだぞ』くらいしか言わない。

 あっ、これ会話じゃないは、ただの報告会じゃねぇか! って心の中でツッコミを入れる俺は間違っているだろうか? 

 いくら我が家が貴族の家とはいえもう少し親子の付き合いというのがあるんじゃないのかな? 

 

 まあ、俺は前世では既に大人だったから別に大した事はないが、これで精神が子供ならベッドの枕を涙で濡らしているぞ。

 それに、親の愛情なら前世で腐るほど貰ったので結構です。

 

 さて、少し長々と回想していたが、なにが言いたいのかというと俺は今年で18になり、さらに言うと今日は年の終わりの大晦日だ。

 

 今はアラム・スー教というこの世界でも唯一の宗教の教会にて神父によってスキルについての歴史やそのありがたみについてなどの学校の校長先生の話みたいなのを受けている。

 これは、俺だけではなくて、他にも違う家の貴族や、この近くに住んでいる平民達も集まって聞いている。行儀のいい子は真剣に神父の話を聞いているが、大半の人達はこれからどんなスキルを貰えるのかや、これから将来についての妄想など隣りの席に座っている者と話し続けている。

 

 かくいう俺も神父の話など小さな頃からの知っているので、特に聞く必要性はないと判断して右から左に聞き流していた。

 とはいえ、これでも貴族の子供であるので形だけは真剣に聞いているように見せかける。現に他の貴族の子達も姿勢は崩さずに一切喋ることなく神父の方を見ている。

 

「さて、お話はここまでといたしましょう」

 

 神父のその言葉に、教会内がざわりと騒ぎ立つ。俺も教会の空気が変わったのを感じ取り、今度は真剣に神父の話に耳を傾ける。

 

「さて、では今から世界からあなた方へスキルの祝福を授けます。例えどんなスキルであろうと、この世界の為に役立てることを誓いますか?」

 

「「「「「誓います!」」」」」

 

 本当にそう思っているかは別にして、声だけは立派なものだと感心する。

 すると、神父の横に修道服を着た女性(シスター)が並び立つ。あれは、通称『報告者』と呼ばれる者だ。

 

 スキルとは基本的に自分にしか分からないもので、世界からどんなスキルを貰ったかは自分にしか分からない。だからこそ、本来の自分のスキルとは全く違うスキルを貰ったと虚偽の報告をする者が昔から一定数いた。

 そのためにスキルを授けられた際に嘘をつけなくするために、例外的に他人のスキルを覗き見ることができる鑑定のスキルを持つ者を傍に置き、授かったスキルをその場で報告することが義務付けられることになった。

 

「それでは、呼ばれた者から私の前へ……」

 

 そうして、何事もなくスキルの祝福の儀は進んでいった。最初は平民からで、期待の顔して進んでいった者が、神父の前に立って数秒で落胆したり、逆に、不安げにしていた顔を喜色満面な笑みを浮かべた顔にする者もいる。

 

 だが、器用(小)や速度上昇(小)などといった微妙とよべるスキルは少なからずあるが、ハズレとよべるようなスキルは今だ出ていない。

 

「では次、ルイド・バーン・リッタルト」

 

「はい」

 

 ついにやってきた俺の番だ。そこらの一般モブならば当たり障りない微妙なスキルしか手に入らないだろうが、俺は違う。

 俺は貴族の生まれで、しかも、前世の記憶持ちの転生者だ。恐らくは、勇者や賢者といったテンプレ系のスキルが手に入るだろう。

 そう期待して俺は神父の目の前に立つ。なるべく浮かれないように、バクバクいっている心臓に落ち着けと心の中で唱え続ける。

 

「それでは、汝にスキルを授ける。この世界に深く祈りなさい」

 

 俺は言われた通りに、目をつぶって祈りのポーズを見せる。すると、頭の中にぼんやりとされどハッキリと文字が浮かんできた。これが俺のスキルなのだろう。

 その文字は……、

 

「……」

 

 何も言わない俺を見て神父は隣に立っていたシスターに目配せして、俺のスキルが何なのかを報告させようと(うなが)した。

 その仕草を見て、シスターは気の毒そうに目を閉じて口を開く。

 

「この者のスキルは……『ゴム』です!」

 

 その一声はそれなりの広さを持つこの教会にいる全ての人間の耳に届いた。

 

 その言葉に平民は隣の者と顔を見合わせ、貴族の一部は顔を下に向けてクスクスと笑いをこらえている。

 それもそうだろう、あの力を絶対の正義とするリッタルト家の人間がよりにもよって、ハズレスキルを授かったのだから。

 平民は貴族だから何も言えずに絶句し、同じ貴族は目の上のタンコブともいえる位の高いリッタルト家の人間がハズレスキルを授かってさぞ愉快だろう。

 

 俺は手に入れたスキルを頭の中で何度も確認していると、目の前の神父から憐れまれるような顔をされて、

 

「さあ、何度確認しようが一度手に入ったスキルは二度と変わることはありません。悲観せずにこれからの人生を歩みなさい」

 

 と、静かに諭されて俺は自らが座っていた椅子に戻る。その戻る途中に同情の目や侮蔑を含んだ目線にさらされた。

 

 俺が自分の椅子に座った瞬間に、周りがどよめきの声を漏らす。何事かと思い、先程まで俺が立っていた場所に目をやると、美しき金髪をたなびかし蒼のドレスを着こんだ美女と呼ぶにふさわしき人物が立っていた。

 

「い、今なんと?」

 

「ええ、信じられないのも無理はありませんは……」

 

 何やらものすごいスキルを授かったようだが、俺が自分のスキルに夢中で全く聞いていなかった。

 

「私が授かったスキルは『剣聖』でございます!」

 

 剣聖それは人類の長い歴史書の中でも僅か数人しか授かれなかったもので、その誰もが人類の英雄と呼ばれるほどの活躍をし、何冊もの英雄伝説が描かれるほどだった。

 

 それを、あの女の子が授かった。それも、ハズレスキルを授かった直後というのだから余計に注目されるだろう。

 神父も俺とは別の意味でシスターに目配せをして確認を取る。すると、シスターも驚いた顔もちで首を縦に振り、事実であることを認める。

 その瞬間に、教会内は一気に歓声の嵐に見舞われる。

 

「すげぇ! この町から本当に英雄が誕生しちまいやがった!」

「あんなに綺麗なのにその上剣聖かよ!?」

「確かあれはイシュバーニ家のご令嬢か……」

「俺もあんなスキルがあれば……」

 

 様々な声がそこかしこで上がる。賞賛の声や嫉妬の声に彼女にどう取り入るか相談する声など様々だ。俺の時とはまるで雲泥の差ともいえるだろう。

 

 そうした一大イベントは一旦は落ち着き、今だ残っていたスキルを授かっていない者を順に片付けていった。

 最後の一人にスキルを授け終えた後、神父が教会内にいる者全てに一度視線を向けて、やがて、剣聖のスキルを授かった女の子の方を向き、最初と同じ長ったらしい演説が始まった。

 最初と違ったのは時折全員にではなく、一人に対しての注意やら行動やらが混ざっていたことだけだろう。

 

 ようやく、人生に一度きりのスキルを授かる儀式は終了した。俺がスキルを授かった際に注目していた視線は既に無かった。

 それも、彼女が『剣聖』のスキルを授かったからだろう。平民は憧れの視線を貴族はどうやって近づこうかといった視線を向けている。

 まあ、変な奴にウザがらみされるよりよっぽどいいから別にいいか。

 

 そのまま家に帰る為に我が家の馬車に乗り込もうとした瞬間、剣聖のスキルを持つ彼女に群がっていった貴族の一人がふいにこんなことを言い出してきた。

 

「いやはや、流石はイシュバーニ家のご令嬢だ。どこぞの貴族の紛い(まが)物とはえらい違いですな」

 

 どうやら、ハズレスキルを取った俺をだしにして、彼女に近づこうという算段なのだろう。漫画ではよくあるシチュエーションだが、まさかリアルでそれをぶちかましてくるかませ犬は初めて見た。

 彼女の方を見てみると、多少表情は隠しているがウンザリとした感情が見える。あれだけの人数に囲まれているんだ。そりゃそうなるだろうなっと他人事として無視して馬車に乗り込もうとすると、先ほど俺をハズレスキルを授かった貴族の紛い物と馬鹿にしてきた男が声を出してコチラに近づいてくる。

 

「おやおや~、いったいどこに行こうというのだね? リッタルト家の人間ともあろう者が挨拶も無しに早々と立ち去るおつもりか?」

 

「めんどくさい」その一言に尽きる。せっかく面倒な視線は全て彼女の方に向いたというのに、こうして絡んでくる奴がいるのはハズレスキルの宿命なのだろうか? 

 とはいえだ、この場をどう乗り切ろうか。無視したまま馬車に乗り込むのもいいが、それは俺が逃げ出した感じになるのでなんか気に入らない。

 

「はあ、それでえ~っと、確かレイバーノッド家の長男のロイド殿だったかな?」

 

「ふん、その通り。スキルはハズレでも人の名前を覚えられる程度の知能はあるようで良かったよ」

 

 いちいちムカつく言い方しかできんのかこの男は。苛立ちをぐっと堪えて外面は貴族らしくにこやかに応対する。

 

「いやいやスキルと知能は全くの別物じゃないか。それくらい子供でも分かることにいちいち驚かないでほしいな」

 

「そ、そうか。それはどうも。一応忠告しておいてやろう。貴族の念のための予備である4男それもハズレスキル持ちが口の利き方に気をつけろ!」

 

 俺の応対が予想と違っていたためか顔にありありと不満です書いてある。何故そんなに怒っているのだろうか? こっちはあくまで貴族的にふさわしい返し方をしたというのに? 

 

「ええ、ご忠告痛み良いります。それでは、私はここらでお暇させてもらいますので」

 

 胸に手を当てて一礼すると、その場から立ち去ろうと馬車に向かって歩き出そうと一歩踏み出した瞬間に、またあの男が待ったをかける。

 

「ちっ、やはりハズレスキルを持った人間は知能の方は一応まともでも、貴族に必要な社交性はハズレのようだな!」

 

 そう大声でみんなの耳に聞こえるように叫ぶ男に、俺は「それはお前だろうが!」と心の中で叫ぶ。というか、もういい加減我慢できなくなってきたので、そろそろ思ったことの一つか二つは言ってもいいのではないだろうか。

 

「確かに、私は貴族の4男として生きてきた為に、社交性を学ぶ機会はあまりありませんでしたが、大声で叫ぶ品のなっていない貴方よりかはマシだと思います。っていうか、さっきから思ってたけど、自分を格好良く見せたいのが丸見えで逆にチンピラっぽくてカッコ悪いぞ」

 

 俺のその言葉に、さっきからこのやり取りを見ていた剣聖の彼女を囲っていた貴族の一人がついぷっ! っと吹き出し笑い。それにつられて、近くにいた者もクスクスと笑い始めた。

 

「くっ! は、ハズレスキルの予備の4男の分際で、よくもこの俺に恥をかかせてくれたな!」

 

 もはや外面など気にしている余裕もないのか(元々考えてはいなさそうだったが)、顔を大きく歪ませタコのように真っ赤になりながら、腰に刺していた儀礼剣を抜き放ち、構えをとる。

 

「ふん、装飾が多く武器としてはさほど役に立ちはしないが、あくまでこれは身分の高さを示す為のもの。だが、人を誤って殺さずに格の違いを見せつけるのにも役に立つ。それを、この騎士のスキルを手に入れた私が持てばどうなるか想像できるかい? そう! 子供でも分かるだろうね。断言しよう! 数秒後には君は顔を腫れ上がらせて無様に地面に首を垂れる姿が!!!」

 

「だから、そういうところがチンピラだっていっているんだ。大声出せばカッコいいと思っているんなら間違っているぞ」

 

「ちっ、減らず口を叩きやがって、すぐさま我が華麗なる剣技で身の程をわぎゃばす──!!!」

 

 長々と語りながらルイドに斬りかかってきたロイドはあっさりと頬にパンチを受けると、白目をむいて前のめりに地面に倒れていった。

 

 それを遠くから見ていた者は皆唖然としていた。

 

 ルイドが斬りかかってくるロイドに対して右手を構えただけで避けるそぶりもしなかった為、その場の全員がルイドが無惨にやられる未来を想像し止めようとしたが、それよりも早く、ロイドがいきなり吹き飛んだのだ。

 

 何が起きたのかまるで分からない。かろうじて分かるのは、ロイドがルイドによって殴られて吹っ飛んだという事実のみだった。

 だが、かろうじて何があったのか認識できた者がいた。

 

「凄い! 今の集中していなかったら全然見えなかった……」

 

 剣聖のスキルは剣の腕だけでなく、それを扱うのに必要な能力も大幅に強化されるというのは有名な話だ。

 実際に、彼女もスキルを授かってから様々な恩恵を実感出来ていた。特に、実感出来立ていたのは目であった。

 周りの人の筋肉の動きで1秒先の動きを認識できる程に……。そんな凄まじい目を手に入れたというのに、先程の一連のやり取りを見逃してしまいそうになるほどルイドの一撃は速すぎた。

 

 彼の手に入れたスキルはただのゴムのはず、だというのに、あの速さは一体? 

 

「さて、面倒事も一応片付いたし、さっさと帰るか……」

 

 地面に倒れ伏したロイドを放って帰ろうと馬車に乗り込もうとすると、またしてもそこでストップをかけられる。

 

「ちょっと待ってほしい」

 

「はぁ、またか……って、君は」

 

 声をかけてきたのは剣聖のスキルを持った彼女だった。

 

「聞かせてほしい。あなたのスキルはゴムのはずだった。なのにどうしてあんなパンチを打てたの?」

 

 その顔は真剣で、誤魔化しは許さないといった声が聞こえそうなほどだった。

 別に隠し立てするようなことでもないので正直に話す。

 

「ん~、別にスキルは関係ないな。これはただ単純に強くなる為に今まで努力してきた結果だ」

 

 彼の目は微塵も揺るがずそれが噓ではないと言っていた。だから彼女はそれが噓だと思わずにすんなりと納得した。

 けれど、同時に納得できないことができた。

 

「あれが、ただの努力の結果? それなら、ゴムなんてハズレスキルじゃなくて、もっと強いスキルだったら……」

 

 あれほどの力を努力で勝ち取ることができたのであれば、ゴムなどというハズレスキルでなく、自分程のスキルでなくとも、そこに倒れ伏している男と同じ騎士のスキルでも授かれば、きっと歴史に名を残す存在になれていただろう。

 

 そんな彼女の思いが籠った一言がルイドの()()()()()()

 

「なあ、いい加減にしろよ。確かにお前らから見たらゴムはハズレスキルだろうけどな! 俺にとっちゃ普通に当たりスキルなんだよ!」

 

 このスキルを手に入れた時の俺の思いは落胆や絶望などではなかった。その全くの逆といっていい。

 今だ現代で尚も掲載し戦い続けるヒーローの能力を手に入れたのだ。

 当然、自分もその漫画を読んでいる。一話から自分が死んだ週の最新話も読んだ。映画だって全てこの目で見てきた。

 そんな力をファンが手に入れたのだ。絶句する、驚愕する、叫びだしたくなるほどの歓喜の思いを無理矢理胸にしまい込み、侮辱や同情の目で己を見てくる視線を全てくだらないものと切り捨てた。

 だが、彼女の言葉は侮辱や同情といった感情ではなく純粋に惜しいというものだった。それはゴムのスキルを……、俺が憧れ惚れ込んだヒーローの力を完全にゴミ扱いされたことに他ならない。

 

「お前だけは俺のパンチが見えたんだろ? なら、あの距離から俺のパンチが当たった理由は分かるか?」

 

「え? それは……」

 

 確かに、パンチの速さに目を奪われていたが、二人の距離は決して手を伸ばしただけで届くようなモノではなかった。

 あまりの速さにハッキリと見えはしなかった。だが、残像くらいは目に映った。ルイドの構えた右腕がグイーンと伸びたのだ。

 最初はあまりの速さに目の錯覚を起こしたと思った。だが、彼のセリフからそれは違うと思い至った。

 

「ハッキリと見えたわけじゃないけど……。あなたの右腕が伸びたのが見えたわ」

 

「そうか、なら分かっただろ。あれは俺のスキルによるものだ。お前らがゴミだと判断したスキルも使い方次第でどんなスキルにも負けないもんになるんだよ!」

 

 その言葉に心を打たれた。こんな言葉他の誰に言われようと響かなかっただろう。けれど、彼は違う。自分のスキルに少しも悲観してはいなかった。

 誰もがいらないと忌避するハズレスキルを当たりと言えるのは彼が自分のスキルを真摯に受とめ、それの活用法をこの短い時間で考えたのだ。

 

(実際に考えたのは尾田っちなのだが)

 

「それはごめんなさい。私の名前はレイア・トゥル・イシュバーニって言います。あなたの名前は?」

 

「おう。俺の名前はルイド・バーン・リッタルトってんだ。よろしくな!」

 

 素直に謝罪をしてきたレイアに悪い奴じゃないと判断して、その謝罪を受け取り握手を交わす。握った手は貴族の令嬢らしく綺麗な手だったが、その手の硬さは紛れもなく剣を持つ者のそれであった。

 

「それじゃ、俺はそろそろ帰るわ」

 

「ええ、私も授かったスキルのことを両親に伝えなければいけませんので、ここらで失礼させていただきます」

 

 互いに挨拶を終えて自らの馬車に乗り込み、従者に出発の合図を出して発車させる。

 色々と厄介な者に絡まれたもしたがこれでようやく我が家に戻ることができる。

 

「俺はこの手に入れたスキルを使って、やがて偉業を成し遂げる英雄になる」

 

 その決意を遠く離れていく教会を横目に胸に誓うのだった。

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────────────────────

 

 

 

 

 

 

 今日この瞬間に、この町に2人の英雄が生まれた。

 

 1人は陽の当たる栄光の道を歩き、1人は荒れ狂う猛者や権力の汚物どもが争い続ける茨の道を走り出す。

 

 時代は決して待ってはくれない。いかなる力を持とうとも、先を行く先人の一振りで全てを蹴散らされることもあるだろう。後ろから迫る新たな風に吹き飛ばされることもあるだろう。

 

 勝利も敗北も君たちの長い人生にはいくつも転がっている。それらを拾い集め、いかに自らの糧にしていけるのか、それは君たち次第だ。

 

 どのような困難が襲いかかろうとも、それら全てを超えて行け! 君たちの隣にはライバルがいる筈だ。君たちの後ろには仲間がいる筈だ。

 

 例え何百の涙を流そうとも、何百の弱音を吐こうとも、君たちならばきっと超えられる。

 

 信じているよ。君たちがこの世界を救う英雄になれることを…。

 

 そういえば、名乗りを忘れていた。私の名前は──・バーン・──とだけ言っておこうか。

 




最後にレイリーっぽい謎の人物は一体!?というか、この人物が出るまでの大まかな流れは頭の中で出来上がっているのだが、そこまで書き続けられる自信がまるでない。

どうか評価と特に感想で俺にエネルギーを分けてくれ!
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