ハズレスキル?とんでもない!日本じゃ大当たりのスキルだぞ!?   作:リーグロード

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一週間もお待たせしました。2、3行書いたら酒飲んで寝るしてたら…、まあ、察して下さい。
本当なら、もっと早く投稿できていたのに…。酒と睡魔が俺を怠惰への道へと誘い込む。


報告という名の戦場

 教会からスキルを授かり、馬車に乗って家へと帰ると、門の前で我が家の執事が待機して待っていた。

 

「お帰りなさいませルイド様。旦那様と奥様がお待ちになっております」

 

 さて、どういった反応を見せるのだろうか? 18年この家で暮らしてきたが、父親との思い出は食事の際に二言三言しか話した記憶しかなく。母親に関しては喋った記憶があるかどうかというレベルだ。

 

 しかし、確実に分かるのは、どちらも筋金入りの実力至上主義で、面倒事になる予感がビンビン来ている。

 

 俺は執事の後に続き、両親がいる部屋まで黙ってついていく。執事はたまにチラリとコチラを見るが何も言わずに歩き続ける。

 そうして歩き続けると、執事が他の部屋よりも少し大きなつくりの扉の前に立ちノックをする。

 

 ここはいつも食事をする為の部屋で、確かに両親と話しをするのはいつもこの部屋だった。

 というか、この部屋以外で話したことはおろか、顔を見た記憶が少ない。

 

 やがて、執事のノックに対して渋めの声で入れと返事が返ってくる。執事は失礼しますと声をかけてから扉をゆっくりと開いていく。

 

 部屋の中には父親のレイダ・バーン・リッタルトと母親のメイル・バーン・リッタルトの他にも長男のアインに次男のルードに3男のオッタルが並んで座っていた。

 

「さて、スキルの祝福の儀も終わりさぞ疲れただろうが、そこに座りなさい」

 

「いえいえ、あの程度で疲れたなどととても、それで? 何故この場に今も忙しいはずの兄上様たちがいらっしゃられるのですか?」

 

 父親の社交辞令じみたお疲れの声を軽く流し、いつも座っている自分の席に腰を下ろして、何故この場に兄貴たちが並んで座っているのかを聞いてみる。

 

「ふん、俺たちの大切な弟がスキルを授かったんだ。祝いにわざわざ家に戻ってくるのは間違ってるってのか?」

 

「こらこら、オッタルそんな風に言ったらルイドが悪者みたいになってしまうよ。兄としてもっと寛大な心で接してあげなさい」

 

「そうだ。 アイン兄様の言う通りだ。お前には常々心の余裕ってのが足りねぇって言ってんだろ」

 

 俺の3人の兄の印象は意地っ張りのオッタル兄に沈着冷静のアイン兄とそのアインを尊敬しオッタルに厳しいルード兄だ。

 

 そんな3人はいずれも強力なスキルを授かっている。アインは剣鬼という剣聖の一つ下に位置する剣の力を上げるスキルを持っており、ルードは速度上昇(大)で戦場を縦横無尽に駆け回り切り込み隊長の職を手に入れている。この2人に比べれば見劣りするが、オッタルも中々のスキルを持っている。スキルの名は怪力といい、本人のパワーに比例して力が上昇するスキルだ。

 

 上の3人が強力なスキルを授かったから、父さんも俺に期待してこうして待っていたのだろう。

 なんか期待を裏切るようで悪いけど、俺のスキルは世間的にはハズレと呼ばれるものだからな。そういうのに厳しい父さんがどう思うのか、それに上の兄もどういった反応を示すのか気になるが……、一番分かんないのは母さんの方だ。

 

 母さんとは関わりがまったくなく。人物像も執事やメイドから聞いた程度のものだ。

 いつも通り静かに口を出さないのだろうか? それとも、怒りに狂って怒鳴り散らしてくるのか? 想像ができないというのは厄介だ。

 

 ゴクリと口に溜まった唾を飲み込むと、静観していた父さんが口を開く。

 

「さて、そろそろやめないかお前たち。いつまでもそんなに騒いでいたらルイドが喋れないじゃないか」

 

 その声には常に魔物と戦場で命のやり取りを繰り広げる兄たちですら、思わず怯む貫禄と威厳が込められていた。

 

 そんな直後に授かったスキルはハズレスキルでしたって報告する俺の立場を考えてくれないでしょうか? 

 

「そんな気遣いは無用だよ父さん。この程度は家族のじゃれあいだろ」

 

 俺は動揺しまくる本心を全く表に出さないように意識し、何とか平常運転で言葉を返す。

 

「そうか。余計なお世話だったか。すまなかったな。では、改めて聞かせてもらおうか。ルイドよ、お前が授かったスキルは一体なんだ?」

 

 その言葉は先程の兄たちを静かに叱りつけた声よりも遥かに力が籠っており、対面する俺の口の中から一気に水分が消えていく。カラカラになった喉が水が欲しいと脳に訴えけてくるが、そんなの無視だ無視! 

 

「ああ……、まあ、父さんの期待しているようなスキルじゃないけど。俺が授かったスキルは『ゴム』だったよ」

 

 俺が授かったスキルを告げた途端に、この場の空気が凍った。それはもう、物理的に凍ったのではないかと思えるほどだった。

 

 俺のスキルがハズレだと一片たりとも予想してなかったのだろう。あの冷静沈着なアイン兄ですら目を見開き、口を半開きにしていた。

 オッタル兄なんか「おいおい、噓だろぉ!?」と声高に驚いていた。

 

 一体何秒経っただろうか? 今だ身動き一つ取らず顔を俯かせたままの父さんを視界に納めたまま、父さんの言葉を待っていると、予想していなかった人物から言葉が出てきた。

 

「ルイドさん。貴方のスキルが『ゴム』というのは噓ではないのね」

 

 凛とした一本の刀剣のような鋭さを秘めたような声に、一瞬誰が口を開いたのか分からなかったが、父さんから視線を横に少しズラすと、コチラをジッと見つめる母さんと目が合った。

 

「ええ。まさか、こんなつまらないことで噓なんてつきませんよ。俺のスキルは間違いなく『ゴム』でした」

 

「そうですか……」

 

 そう断言すると、いつも変わらなかった母さんの表情がほんの少しだが曇ったのを俺は見逃さなかった。

 

「お前! 自分のスキルがハズレだってのに! よくもノコノコ帰ってこれたものだな!!!」

 

 ようやく我に返ったオッタル兄が、激情に任せて立ち上がり、俺を指差して非難罵倒を口走る。

 別にオッタル兄のその指摘はあまり間違っていない。実際に、過去には貴族の息子がハズレスキルを授かったその日に行方をくらますといった前例はある。

 

 貴族とは血だけではなく、スキルも重要視されており、その両方を持って真の貴族と認識されている。だから、片方だけの長男と両方を兼ねそろえている次男であれば、次男が家督を継ぐ権利を有する事になる。

 

 つまり、それだけスキルというのは一般人もそうだが、貴族は更に重要視しているのだ。しかも、オッタル兄が怒っているのは、ただ俺が期待外れのスキルを授かったというだけではない。

 

 我がリッタルト家は戦場で武勲を上げて成り上がった家だ。それは今でも変わらない。現に、兄さんたちは戦場で魔物と戦い続けて、既にいくつもの勲章をその胸に飾っている。

 それ故に、力とはまるで正反対であるハズレスキルを持つ俺は一族の汚名ともなりえる。

 それはつまり、自らの出世コースに良くない影響を及ぼす可能性が存在する。

 

 だからこそ、このままノコノコ帰ってくのであれば、そのまま何処かに行方をくらませて欲しかったのだろう。

 

 オッタル兄が考えそうなことはこの程度だと予想はつくが、キレ者のアイン兄と今日までリッタルト家の当主として生きてきた父さんに、それを支え続けてきた母さんの考えが読めない。

 

 俺程度が考えられるのは、このまま家に軟禁状態にして外部に俺の存在を極力漏らさない。もしくは、暗殺者でも使って密かに殺すという手もある。

 

 このどちらかの方法をとられようが、今まで鍛えてきた俺にとってはどうにでもできると断言することができる。

 だが、もしこれが法律やら搦め手やらで攻めて来られた時が厄介だ。この世界の法はスキルがあるせいか、前世とは全く違う形になっている。

 っていうか、そもそも法律なんて前世も今世もロクに勉強なんかしていないから全く分かんないがな。

 

 いざとなれば、この家を捨てて自由気ままな放浪生活も悪くないと考えている。そんな覚悟を胸の内で固めていると、父さんが顔を上げて俺に向き直る。

 

「……ルイドよ。私はお前に期待していた。お前の今日までの生き方はこのリッタルト家では誇れるものだった。そんなお前が兄さん達のように、戦闘スキルを手に入れ、共に戦場を駆け抜ける将来を夢見ていた」

 

 まさか、父さんがそこまで期待していたとは欠片も思わなかった。普段会った時の反応なんか冷めていて、まるで興味はないといったものだったから尚更だ。

 

「それは、すいません父さん。期待していたスキルじゃなくて……。だけど、俺は別にこのスキルがゴミとは思ってないよ。これは使い方によっては物凄く強くなれる。俺はそう信じている」

 

 俺がそう迷いなく断言すると、父さんは「そうか」と呟いてこの話は終わった。

 その際に、オッタル兄が父さんに文句をつけたが、黙って座ってろの一言であっけなく撃沈されていた。

 

 そのまま、父さんと母さんは席を立って部屋から出ていき、それに続いて、アイン兄さんも出ていこうとしたので、俺も続くように席を立つと、オッタル兄が近づいてきた。

 

「父上が何を考えているかは知らんが、俺はハズレスキル持ちなんぞを認める気はない!」

 

 そう吐き捨ててそのまま部屋から出ていった。なんかあんまりにもテンプレ貴族過ぎてムカつくとかそういう感情すら湧いて出てこない。

 何というか、迷惑かけてごめんね兄さん。っていう、罪悪感が薄っすらと浮かび上がってくるレベルだ。

 

「あまり気にするなルイド。オッタルの奴もお前に期待していたがために、ああいう態度をとってしまっているだけで、本心じゃ認めているはずだ」

 

 俺が罪悪感で顔を曇らせていたら、それをオッタル兄に拒絶されて落ち込んでいると勘違いしたのか、アイン兄が慰めてきてくれた。

 

「アイン兄様。別にそんな奴に構う必要はないだろう。何と言おうとハズレスキルは貴族社会ではゴミに等しい認識だ。いくら、そいつが強くなる為に努力しようが、この世界の強さはスキルがものを言う」

 

「確かに、この世界の強さはスキルに依存するものが多い。だけど、そうじゃない者も存在する。それに、俺のスキルは戦闘スキルに劣らねえ強さを発揮する!」

 

 確かにルード兄のいう事は正しい。だが、それで俺のスキルがゴミという認識はやめてもらいたい。オッタル兄のように、ハズレスキルを授かった俺を認めないのは構わない。

 実際、俺はまだ何一つ大した事をした覚えがないのだから。

 だが、やはり俺の憧れたヒーローの能力を知らないとはいえバカにするような発言だけは許せない。

 

 そのまま互いに睨み合いになったが、そこにアイン兄が割って入ってきた。

 

「まあまあ、とりあえず2人共落ち着け。兄弟で喧嘩なんて貴族としての自覚が足りないぞ」

 

 流石にアイン兄にそう言われると俺もルード兄も互いに目を逸らし、その場の一触即発の空気が消えてなくなった。

 アイン兄には感謝だな。ないだろうとは思うが、このままいけば殴り合いの喧嘩が勃発した可能性があった。それだけ、ルード兄がバカにした事が許せないというのもあるが、それ以上にルード兄から殺気のようなオーラが漏れ出ていた。

 

 とはいえ、アイン兄が止めてくれたんだ。俺はこれ以上この場にいる理由はないと判断して足早に自分の部屋へと帰っていった。

 

 

 

 その翌日、まさか本当に俺がこの家を出て放浪生活を送ることになるとは……。

 

 

 

 

 




最初は報告をもっと短く切り上げて、家を追い出される所まで書く予定だったのだが、やはり小説を書くのは難しい!
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