ハズレスキル?とんでもない!日本じゃ大当たりのスキルだぞ!? 作:リーグロード
まさか、俺は現実世界で何者からかキングクリムゾンの攻撃を受けている!!?
あれから部屋に戻ってすぐベットに直行し、そのまま布団を被って寝た。これからの将来の希望と不安がごちゃ混ぜになった状態だったが、俺の性格は楽天家ですぐさま( ˘ω˘)スヤァと夢の世界へ出発することが出来た。
その日は夢を見ることなく、窓から差し込む日の光に優しく起こされて目を覚ます。
この優しくも忌々しい日の光を、閉ざされた我がまぶたに照らし、ゆっくりとその目を見開いていく。
「う~ん。やっぱり、朝のこの時間は前世も今世も変わらずに地獄だな」
眠い目をこすり上げながら、ベッドから這い出る。昨日はそのままベットに直行してしまったせいで、着ていた礼服が滅茶苦茶シワだらけになってしまった。
この服は後でメイドに任せるとして、今着ている服は脱いでベットに放り投げ、クローゼットから新しい服を取り出しそれを着こむ。
それと同時に、コンコンと部屋の扉を叩く音が聞こえる。
「失礼させていただきます。ルイド様、起きておいででございますか?」
「ああ、もう起きている。入っていいぞ」
いつものやりとりを交わし、部屋に執事が入ってくる。そのまま執事にベットに脱ぎ捨てた礼服を回収してくれと頼む。
「ルイド様。夜寝るときはせめてお着替えしてから寝てくださいませ。それと、レイダ様がお呼び出ししておりました」
なん……だと……!?
鏡を見ながら寝癖直しをしていると、執事から信じられない言葉が出てきた。いつも食事の時以外は会わない……いや、会おうともしなかった相手からの呼び出しだ。
昨日の今日だ。その目的が何なのかは分からないが、また面倒事の予感がしてきた。
とりあえず、あの父親のことだ。もう既にいつもの部屋で座って待機しているに違いない。あまり待たせるのはマズイよな。
「それと、大変申しにくいのですが、何やらレイダ様は酷く険しい表情をなされておりました。お気を付けになられた方がよろしいかと」
「マジかよ……」
朝から憂鬱になりそうになりながら、俺は父さんが待ついつもの部屋へと足を運ぶ。
コンコンとノックをして、部屋の中から父さんの「入れ」の一声を聞いてから、扉を開けて中に入る。
中にいたのは険しい顔をした父さんと母さんだった。
「来たかルイド。やってくれたな! 今回お前を呼び出したのは、昨日お前がしでかしたことについてだ……」
昨日俺がしでかしたこと? ルード兄と喧嘩一歩手前までいったことか? いやでも、そんなことわざわざルード兄やアイン兄が言うはずもないし、あの場には執事やメイドもいなかった。
なら別のことか? けれど心当たりが全くない。
「う~ん、あいにくと俺には全く心当たりがありませんが?」
まるで心当たりがないと言うと、父さんが胸元から一つの手紙を取り出し、俺の前に放り投げる。飛んでくる手紙を上手くキャッチすると、俺は無言でその手紙を読んだ。
「なるほど。昨日の件とは
「そうだ。お前も知っている通り、あの家は古くから横とのつながりが多い。いくら我がリッタルト家とはいえ、無視は出来ぬ相手だ。それに加え、相手はレイバーノッド家の長男でお前は4男だ。それも、スキルを見比べても価値は圧倒的に向こうが上だ。私が言いたいことは分かるな?」
「いやはや、手を出してきたのは向こうが先だというのに、
相手の滅茶苦茶な言い分が書かれた手紙を丁寧に折りたたみ、父に対して
「確かに、その場にいた者の話を聞けばすぐに事の真相ははっきりするだろう。だが、相手は仮にも貴族社会を渡ってきた傑物だ。今頃はその場にいた者の家に金か弱みでも送って口封じを終えている事だろう」
まあ、確実にそうだろうな。こんな手紙を送りつけてきた時点で既に準備は完了していることは明らかだ。
「そこでだ、手紙にも書いてあったが、相手側は謝罪と相応の態度を示してほしいとあり、お前には相手側に謝罪しに行ってこい」
「何とも理不尽な話ですね……」
「それが貴族社会というものだ。最後まで後始末をつけなかったお前が悪い」
そうだよな。あの時は殴ってスッキリしたから、後のことなんか一切考えていなかったし、あれで終わりと勝手に勘違いした。
まさか、あんなカッコ悪い出来事を親に報告するなんて思わなかった。
まあ、そう考えても仕方ないだろう。ルイドは所詮は貴族の4男でしかなく、こういった貴族の闇ともいえることは知っていても、経験などさせてもらっていなかったのだから。
「おそらくだが、相手の要求はお前の身柄だろうな……」
「私のですか……?」
「そうだ。あの手の輩はこういったことはネチネチとやり返してくる。私の経験上、お前を従者の立場に置き、そこからいたぶるといったところか……」
ふむ、なるほど。確かに、あいつは逆らえそうにない相手には大きく出て、そうじゃない相手にはへりくだるタイプの人間に見えた。
となれば、俺が奴の家に行けば今回の件を持ち出され、無茶苦茶な謝罪を請求。俺が断るのを見越して、従者になれっていうのが、あちらの考えているシナリオかな?
ならば、答えはもう決まっている。
「そうですか。まあ、お断りしますけどね」
子供のような笑みを浮かべながら拒絶の意を示す。
「なに? 断るだと。それがどういう結果に繋がるか、まさか分からん貴様でもあるまい」
「ええ、その上で断ります。そもそも、謝罪の時点で気に食わなかったんですよ。確かに貴族社会では遅れを取る者が悪い。それは納得はしています。けれど、だからといって格下に頭を下げるなんて
「ふざけるな! この問題は貴様だけのものではないんだぞ! もし、お前が行かなければ無作法者を輩出したとして、リッタルト家に泥をぬる結果になる。それを分かった上で言っているのか!?」
殺気が混じった声に、首筋から冷や汗が流れるが、それでもこの答えを変えるつもりはない。
これは前世からの俺の性分で、認めもしない。特に、こうした相手の弱みに付け込みダサい相手に頭を下げるというのならば尚更だ。俺はその意思を示すように父を真正面から睨み返す。
もしこの場に第三者がいたのなら、二人の間に飛び散る火花を幻視しただろう。
「っ! いいだろう。お前がそこまでの覚悟を持っているのならば、私はお前を勘当する! 二度と我が家の敷居に踏み入ることは許さんぞ!!!」
「上等だ! 気に入らねぇ奴に頭を下げて自分を騙すくらいなら、俺はこの家を出て行ってやらぁ!!!」
手に持っていた手紙をビリビリに破き捨てると、床に散らばった紙片を足で踏みつぶす。
「そうか! だが覚悟しておけ。この世界でハズレスキルの人間がどういう扱いを受けるか身をもって知ることになるだろう。さっさと持っていく物を持って出ていくがいい!」
「ふんっ!」
そういわれ、俺は何も言わずにこの部屋から出ていき、荷物を纏めるために自分の部屋に帰っていく。
「まったく。あの頑固さは一体誰に似たんだ……」
「いやはや、若き頃の旦那様を思い出しますね」
部屋から出ていった息子の背中を思い出しながら一人ごちると、部屋の隅から一体いつからいたのか執事が立っていた。
「昔の旦那様も、王国騎士団長様のやり方に業を煮やして、千を超える魔物と単騎で殺り合ったのを忘れましたか?」
「あの頃はまだ若かった。無茶をする力もあったし、それについてきてくれるバカ共もいた。今にして思えば、あの時の騎士団長のやり方は実に合理的だった。多少の被害が出ようとも、確実な方法を取れるのならば、それにこしたことはない。下手をすれば、私はあの時お前を失っていたかもしれんのだからな」
昔を懐かしみながら、かつての自分の栄光と若さゆえの暴走を思い出す。
「ふぅ……、私はレイバーノッド家に顔を出す。支度をせよ!」
「はっ、馬車の用意と相手側への連絡をさせますので、20分ばかしお時間を頂戴させていただきます」
そう言うと、執事は早速準備に取り掛かるために部屋を出る。
「やれやれ、全く正直ではございませんな。本当はああやって真っ向から反抗するルイド坊ちゃんに内心嬉しそうにしているくせに。とはいえ、ルイド坊ちゃんに手を出す愚か者には徹底的に……」
その呟きは誰にも聞かれる事なく静かに廊下に消えていく。
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この家を出るにあたって必要な物は、最低限の金と衣類ぐらいだろう。確か昔街へ行く時に買ったリュックが部屋にあったから、それに数着の服と貯金してあった金貨3枚と銀貨40枚を入れて出ていこう。
持っていく物を頭の中で決めると、ちょうど自分の部屋に辿り着いた。部屋を開けるためにドアノブに手をかけると、ふとこれを開けるのが今日で最後と考えると何故か名残惜しくなったが、そんな思いを首を振ってかき消しながら扉を開けると───
「クンクンクンクンクンクンッッ!!!!!」
自分の部屋に帰ると、部屋の中にはベッドに脱ぎ捨てていた服に顔を埋めて匂いを嗅ぐ変態メイドがそこにはいた。
「うへぇ! ルイド様!!! もう帰ったんですか!? いやこれはっ! そう、ルイド様の服に穴が開いていないかを確かめていただけで、決して! 寝汗を吸ってルイド様の匂いが染みついた服を堪能していたとか、そういわけではないんです!」
部屋の主が帰ってきたことに気が付いたメイドは、慌てて匂いを嗅いでいた服を手放して。先程の痴態をごまかすべく、身振り手振りで思いつくだけの言い訳を口にする。
「はいはい、
「え、そうなんです……、って、えええ!!! そんな!? 出ていくってどういうわけなんですか!?」
あまりの驚きにメイドらしからぬ大声を張り上げてしまったが、そんなことを気にする余裕もないくらいに、アスフィはルイドに詰め寄った。
「どうもこうも、俺が昨日貴族の長男を殴ったから、それの謝罪をしろって言われたんだが、それを断ったら父さんに勘当するって言われたんだ」
親の……家族の縁を切られるというのに、目の前の青年はまるで大したことないといわんばかりに、軽く流すので大したことのないように感じてしまう。
「けど、それってつまり、もう坊ちゃまに会えないってことに……」
悲しい顔で俯きながら、突然の別れに涙目になりながらそっとルイドの服を引っ張る。それは、ここからどこにも行ってほしくないという気持の表れなのだろう。
けど、一度吐いた言葉を飲み込んで父に土下座するほど俺は恥知らずでもなければ賢い人間でもない。それに、今更土下座したところであの父親がそれを許すなんてしないだろうし、どっちみち許してもらったとしても、レイバーノッド家に行ってしまうだろうから、結局のところ離れ離れになってしまうのは確定だ。
「そう泣くなよ。死んで離れ離れになるわけじゃないんだから、生きてりゃいずれ再び出会うこともあんだろ」
俺は今にも泣きだしそうなアスフィの頭にポンと手を載せて笑いかける。
「本当……ですか……?」
「ああ、人の一生なんてとんでもなく長いんだ。それに、俺はここから出たらいつかデッケェことをしてみせる。誰もが無視できないくらいデカイことをよ! だから、待ってろ。今度会う時までにスゲー英雄になってやるからよ」
そう笑顔で言うと、アスフィは零れ落ちそうだった涙を拭って、その笑顔に笑顔で返す。
「はい。待ってます。あなたが英雄になれるまでいつまでも!」
それは勇者と姫が再会を約束する物語でも定番の名シーンのように、彼と彼女はロマンチックな約束を交わす。
「それじゃあさ、別れる前にお願いがあるんだが」
「はい。坊ちゃまのお願いならなんでも聞きますよ!」
「ならさ、この家を出る前に髪を切りたいんだが、その役目をお前に任せたいんだ」
「ふふ、お任せください。なら、リクエストはありますか? どんな髪型でもバッチリ仕上げてみせますとも!」
「だったら、トップがツンツンした髪型で、なんとなく麦わら帽子が似合いそうなものにしてくれないか?」
「おおっ、なんとなく分かりますが、結構曖昧な注文にアスフィちゃん困惑です。えっと、トップがツンツンした髪型で、なんとなく麦わら帽子が似合いそうな髪型ですね? ちょっと、坊ちゃまの理想と違う形になるかもしれませんが、やれるだけやってみます!」
ルイドの曖昧な無茶な期待に応えられるように頑張るぞ! と気合いを入れてメイド服の隠しポケットの中から散髪用のハサミを取り出して構える。
椅子の上に座ってアスフィに髪をとかされながら、チョキチョキと心地よいリズムによって髪が切られていく。
「それにしても、俺とお前もだいぶ長い付き合いだったな」
「そうですね。私が産まれた時から坊ちゃまのお世話係になるのが決定づけられて、5歳の頃からの付き合いですものね」
そうやって昔話を楽しんでいると、もう散髪は終わったようで、アスフィは手に持ったハサミをしまって俺の目の前に鏡を持ってきた。
鏡の中の俺は金髪のルフィのそっくりさんといったところだ。これで俺が黒髪だったのならば、まんまルフィだったのだろうが、そこまで求めすぎるのもちょっとどうかと思うし、これくらいが丁度いっか!
「おう、これだよこれ、完璧だなアスフィ!」
「ふふん、そうでしょ! メイドにとっての必須技術であるものはメイド長からひと通り教えてもらったんですから!」
俺の褒め言葉にアスフィは自信満々の表情でドヤァってきた。確かに腕はいいから否定はしないが、もう少し謙虚さを大切にしたらどうだといいたいが、この顔を見るとそんな事を言う気もそがれてしまう。
床に落ちた髪の毛の後片付けはアスフィと他のメイドに任せて、俺は必要な物をリュックに詰め込んで、この家を出る準備を終える。
「よっし! 必要なモンは全部入ったな」
リュックの中の荷物を確認して、俺は自らの部屋を後にする。
昨日はスキルを授かるために、今日はこの家を文字通り出ていくために、俺はこの屋敷の門を出ていく。見送りは誰もいない。俺一人だけだった。
アスフィはといと、まだ家の掃除や洗濯に他にも片付けなければならない仕事が山ほど残っていたので、泣いて見送りをすると言うアスフィを突き放していった。
「う~ん、やっぱし悪いことしたかな? でもま、また会った時に謝ればいっか」
後ろを振り向くと、この18年間生まれ育った屋敷が目に映る。本当に、もう二度とこの家には帰っては来れないのだろう。ほんの少しの哀愁と未練がまだ心の中にはあるが、これは自分で選んだ道なのだ。後悔はしない。
「よっしゃー! 今日から俺は自由だ!!!」
高らかな自由宣言に自らの旅立ちに箔をつける。気分はまさにフーシャ村から旅立つルフィである。
もうこれからは堅苦しい言葉遣いをする必要もない。好きなところに行き、好きな時に食べて寝る。この家からあまり外に出られなかったせいで出来なかった友達を作る。
そして、アスフィと約束した物語に出てくるような英雄になってみせる。空も快晴で良い旅立ちの日になりそうだ。
俺はこれから始まる冒険の日々に思いをはせて一歩前へ足を踏み出す。
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