俺の家にTASがやって来た   作:ニコnc

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浩一くんと不審者

 一連のお絵かき教室を終えた俺は、気づけば廊下に出ていた。

 何があったのか、もはや詳しく覚えていない。

 いや、思い出す気にもなれない。

 

「頭がピーマンになるかと思った」

 

 と、自然と俺の口からそんな言葉が出ていた。

 はっきり言って、意味不明である。

 

「……で、これはどうしろと」

 

 何やら壁が描かれた絵をもらった。

 とても綺麗な絵だが、なんだか素直に喜べない。

 と言うか喜べる状況ではない。

 なんせ、結構な大きさがあるのだ。

 持って帰ることができない今、ただ邪魔なだけである。

 

「……しょうがない、取り敢えず持っとくか」

 

 ねんがんの 絵画をてにいれたぞ! 

 

 別に念願でもなんでもないのだが。

 しかし代償として失ったものが大きすぎる。

 まさか、スマホを失うことになるとは。

 

「まぁ、スマホはTASに頼み込んでみるか。それよりもだ、今はここから脱出する方法をだな……」

「ここに出口はないわよっ!!」

 

 ふと、遠方から大きな声が響いた。

 ボブ高橋の延長線上で、また〇〇高橋でも出てくるのか。

 と思っていたがそれではなかった。

 

 まず向こうの状況が確認できないのだ。

 大体数百メートル先だろうか。

 廊下がどのくらい続いているのかわからないが、相手の姿が確認できないくらい遠くに離れている。

 だがこの距離でもわかるくらい、声の主の髪は赤く染まっていた。

 

 そして、なんだかよくわからないが、多分ドレスのようなものを着ている。

 

「今からそっちに行くわっ! 待ってなさいっ!」

 

 向こうの方で走り出す。

 声的に少女だろうか、足は遅くあと何分かかかりそうだ。

 

 一分後。

 

 二分後。

 

 三分後。

 

「……あれ、なんか、はぁ、はぁ……全然そっちに……はぁ、行けない、わね……」

 

 向こう側で四つん這いになって疲れている少女の姿があった。

 どうにもこの廊下、色々おかしいようである。

 いやまぁ、さっきの教室の時点でだいぶおかしいのだが。

 

「お、おーい。大丈夫か!?」

「だいじょ……アンタ誰?」

「いやそこからかよ」

 

 この様子だと向こうの少女はどうも、同じく迷い込んできたようだ。

 まともな人間かどうかはさておき、話せる人間ではあるらしい。

 

「アンタ誰なのよっ! TASはどこっ!?」

「TAS……TASを知ってるのか!?」

「ええっ! 私の宿敵よっ!!」

 

 多分俺が生きてきた中で、最も出会いたくなかった人に出会っているような気がする。

 あのTASの宿敵と、宿敵と言っている。

 それはもう、厄介者でしかないことは100%であった。

 俺は脳みそを切り替え、声を上げる。

 

「そうか、そんじゃまたな」

 

 振り返り、少女とは違う道を歩むことを決めた、が。

 

「ちょっと待ちなさいよっ! アンタ、今の言葉的にTASの知り合いねっ! しかもちょっと前まで一緒にいたでしょ! 匂いがするわよっ!」

「いや匂いってなんだよっ!? 気持ち悪いなオイっ!?」

 

 つい振り返ってしまった、その瞬間だった。

 少女は既に、目の前に立っていた。

 

「なっ……!?」

「この空間でアンタが一度前を向いた時、私はフレーム単位で移動することができるようになる。完璧ね!」

「……一体なんなんだ?」

「あら、意外と落ち着いてるのね」

「まぁ、慣れっこだからな」

 

 意外そうな顔で彼女は俺のことを見つめる。

 TASよりかは幾分かマシそうだが、TASと同類らしい。

 これ以上TASと同類なのは関わりたくない、間違いなく。

 

「……で、お前はなんなんだ?」

「私は……そう、機械よっ! 感情の機械っ!」

「機械、ねぇ……へっ」

「鼻で笑ったわねっ! 怒るわよっ!」

 

 次の発言で矛盾しているのに、笑わない奴がいるだろうか。

 まぁ俺の場合、もう失笑ぐらいしか出てこないのだが。

 失笑通り越して鼻笑いになったけども。

 

「結局のところお前はなんなんだ?」

「だから機械……」

「そっちじゃねぇよ。名前だよ」

「ああ、名前ね。いいわ、名乗ってあげるわっ!」

 

 謎に格好つけた彼女は、少し離れて仰々しくこう名乗った。

 

「私の名前はRTA、RTA(ルタ)よっ!」

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