俺の家にTASがやって来た   作:ニコnc

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TASさんとエレベーター

 TASとデパートへやって来た。

 今日は休日ではないため、そこまで人は多くない。

 それが唯一の救いか。

 TASの奇行を見られることがないのが。

 

「それでー……あー……もう帰りたいんだけど」

「来たばかりだと言うのに、何故ですか?」

「お前だよッ! 十割ッ!! お前ッ!!」

 

 もはや壁を認知できていないのではないか。

 見るのに完全に慣れたよ。

 まだ出会って数時間だと言うのに慣れちまったよ。

 壁抜けするのを見るのに。

 

 隣で壁抜けをしながら歩くTAS。

 気になるのだが見慣れてしまっていた。

 とにかく、と前のエレベーターを見る。

 一階から三十階まで移動できる、ビナーデパートのエレベーターだ。

 と言っても、それなりに時間がかかってしまうのだが。

 

「えっと取り敢えず……まずは軽いものから……服、か?」

「何階ですか?」

「十五階。四号館全て服が売ってる」

「そうですか」

 

 チーン、と言う音ともにエレベーターがつく。

 乗る客は俺たちだけで他に誰もいない。

 流石に普通に乗ってくれるだろうと思い、二人でエレベーターに乗ってボタンを押そうとした。

 しかしその瞬間、TASに止められる。

 

「……おい、何する気だ?」

 

 普通に嫌な予感がしていた。

 TASは何も言わずにドアを閉める。

 そして俺の方を見た。

 

「……?」

 

 ペチンッ!! とエレベーター内で音が響く。

 俺は突然、何が起きたか理解ができずに頬を抑える。

 

「え? ……ええ? は? なっ……えぇ……?」

 

 普通に、と言うかかなり痛い。

 突然ビンタされると、こんなにも痛くなるものだろうか。

 そして僅か数秒で何十回とボタンを押す。

 同じボタンではない、各階バラバラだ。

 法則性をクソもないように見えるが、最後に一個上の階の二階を押す。

 

 少しするとエレベーターが動き出す。

 チーンと、二階へ着いた音がする。

 扉が開けばそこはまさかの十五階。

 服がズラリと並ぶ十五階だった。

 

「ねぇ、なんで俺叩かれたの?」

「『無』を起動したからですけど?」

「……起動するのって、殴る必要あるの?」

「…………」

「なんか言えよッ!?」

 

 また腹の中で音楽が鳴り始める。

 さっきようやく落ち着いたばかりだと言うのに。

『無』を起動したとが原因なのは確実である。

 

 てか、叩かれてワープするぐらいなら普通に行った方がよかっただろ、絶対。

 

「ところで、誰の服を買いに来たんですか?」

「お前以外に誰がいるんだよ」

「私の服ですか。別に要りませんけど」

「だってそれじゃ出かけれやしないだろ?」

「少し待っててください」

 

 と言って、袖口のボタンを軽くいじる。

 少しすると、まるでバグのようにノイズが走って、服が変わり果てた。

 全く別の服で、周囲の光景にあった完璧な服だった。

 

「…………最初から、言えよ」

 

 どうやって変えたのかを聞けば、アイテム番号を変更したとかなんとか意味のわからないことを言われた。

 現実らしく説明してほしいものだ。

 まぁ、TASさんは服をボタン一つで変えられるから来た意味はなかった。

 つまり俺がビンタされただけである。

 

「TAS、階段で行こう。もうエレベーター嫌だ」

「ですが移動は……」

「階段で行くからなッ!! 俺は絶対に、階段で行くからなッ!!」

 

 結構ガチのビンタだったからもうされたくない。

 腹の音楽もなんども聞きたくない。

 だったら階段で行けば早い話だ。

 結構時間はかかるが、流石のTASも……。

 

 待て、俺よ一旦落ち着け。

 今日出る前、何を見た? 

 ここまで移動するとか言って、TASは何をしようとしていた? 

 

「……TAS、階段で移動するとなると、何をする?」

「そうですね……鉄柵がありますから」

 

 俺はそのセリフを遮って言う。

 何をするか、もう既にわかったからだ。

 

「うん。エレベーターで行こう」

 

 ここはビンタを耐えることにしよう。

『ケツワープ』とやらで壁にはまったりしたら嫌だからな。

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