俺の家にTASがやって来た 作:ニコnc
ビンタ、ビンタと頰が真っ赤である。
TASのビンタ、これがまた覚悟していてもかなり痛いのだ。
的確に、それでいて確かに当ててくる。
これで痛くないわけがないのだ。
「生活用品売り場ですか。私は眠気を消すことができるのですが……」
「いや、寝ている隣で起きられてても困るんだけど」
「そうですか。ならば私はアレを所望します」
そう言ってTASは指を指す。
ちなみに今いる場所は布団売り場。
大した金もない俺の家には、布団が一枚しかない。
さっきも言ったように隣で起きられていると、寝られるわけもないので買いに来たのだ。
予想外で、とても痛い出費だ。
しかしTASは無欲と言うか、生活に関してはほとんど放棄していると言うか。
とにかくあまり求めないタイプだど思っていたが、所望しますとはね。
そう考えて値段を見る。
「……一応聞くけどさ。なんでこれがいいの?」
「布団の種類に於けるアイテム番号で、次元抜けをする上で効率がいいのが167番だと私の計算では出ているんですが、最低価格の毛布を買った時に結果としてアイテム番号が……」
「わかった! わかったよ! 何もわからないけどさッ!」
「わかりやすく言うと、それが一番やり易いんです」
「却下ァッ!!」
人の少ないデパートの中で、俺は叫び声をあげる。
人が少なくて、本当に良かった。
本当に、本当に。
俺は適当に安いのを買って、次の場所へ向かおうとする。
その前に、今思いついたことを聞いてみた。
「そう言えば、その服洗濯しなくていいのか?」
「洗濯ですか。別に洗うだけなら服を着る必要ないと思いますが」
もう何も言えない。
今日だけでかなり精神が擦り切れている。
しかしまだ一日は終わらない。
明日も、明後日も、一体どうやったら解放されるのだろうか。
「じゃあ、もういいや……後、何か買うもんあったっけな……」
大体のものは買わなくて済んだ。
食器類は……どうせコンビニ弁当しか食わないし、いらないだろう。
俺も割り箸しか使わないし。
だとしたら、もう買うものもないのだろうか。
TASの顔を見る。
相変わらず何を考えているのか、何をするのかわからない。
何かされても困るから、何もしないで欲しいのだが。
「……なんか、疲れたわ」
「お疲れ様です」
「お前のせいだよ。お前の」
疲労感を抱えたまま、家に帰ろうとした。
その時、TASが何かを見て足を止める。
「TAS?」
「……」
何かを見つめているから、俺も同じ方を見てみた。
するとそこで、抽選会をやっていた。
よくある、ガラポンだ。
回して出たボールでなんか貰うやつ。
「……浩一さんは何か欲しいものがありますか?」
「え? あー……そうだな。扇風機ないし。二等の最新型の扇風機が当たればいいな……って、何する気だ?」
「いえ、少し」
そう言って俺のポケットの上を軽く触れる。
するとポケットをすり抜けて、TASの手の中に俺の財布が現れる。
俺は驚愕して、ポケットに手を突っ込むと財布がなくなっていた。
「ちょっ、おまっ!?」
「これは返します」
中からレシートを取り出し、財布を返してくる。
そしてガラポンのところへと歩いて行く。
なんかTASらしくなく、普通にガラポンを回し始めた。
「……あいつ、何してんだ?」
どうせ当たるわけないと思いつつ、その様子を見守る。
カランカランとボールが中から出てきた。
それをみた抽選会の受付のおっさんがベルを鳴らして叫ぶ。
「大当たりッ!! お嬢ちゃん、二等だよッ!!」
「えェッ!!?」
俺はそれを聞いて、つい叫んでしまう。
TASは平然とした様子で、片手で箱を抱えて戻って来た。
開いた口が塞がらないとは、まさにこう言うことを言うのだろうか。
「……どうやって、当てたんだ?」
「乱数調整です」
「…………はぁ」
なんかため息が出た。
俺は増えた荷物を抱えて、歩き出す。
ついでにTASを見てこう言った。
「……これからよろしくな。TAS」
「はい、よろしくお願いします」
どうしようもない日常が始まる。
そんな気が……いや、起こるなって、そう思った。