俺の家にTASがやって来た 作:ニコnc
俺はパチンコが好きだ。
好き、といっても軽く嗜む程度で重度の中毒者と言うわけではない。
一ヶ月に一、二回行く程度の好きだ。
タバコも吸うときは吸う。
ただそこは健康を気にしているし、日雇いでしか収入がないからあまり買わないようにしている。
ビールは……そこそこ飲む。
いや、最近はかなり飲んでいるような気がする。
「……TAS、冷蔵庫のビールが消えたんだが?」
「ドニにでもなったんじゃないですか?」
「???」
ドニって、なんだろう。
少し頭が考えてみるも、何も思いつかない。
ドニ……ドニ? ドニってどんなものなんだろう。
軽く調べてみようか。
と、スマホを弄りドニを検索する。
出てきた画像を見て、つい叫ぶ。
「いやボートじゃねぇかッ!?」
「ボートではありません。ドーニーです」
「帆船という時点で似たようなもんだろ!?」
「一理ありますが、ドニとボートではできることの根底が違います」
ドニとボートでなんの差があるんだよ……。
もうやめよ、無駄な論争は。
これ多分、ずっと続くやつだから。
そんなこんなで、スマホでニュースでも見ようとしたその時だった。
突然、隣の部屋から爆発音と叫び声が聞こえた。
高橋さん、漫画家の部屋である。
俺は急いで外に出て、隣の部屋のドアを叩く。
「高橋さん! 高橋さん!? 何やってんだ!?」
しかし返答はない。
少し遅れて落ち着いた様子でTASが出てくる。
「TAS、ドアを開けてくれ」
「いいんですか?」
「いつもうるさいんだ。そんぐらいいいだろ」
初めて出会ってから一週間。
締め切りに間に合わないだとかで、毎日がうるさいのだ。
あの後調べてみると、意外と人気の漫画家らしく最近は休みが取れないのだそう。
かなり金は持っているのだが、忙しいせいで引っ越すこともできないのだとか。
早い所防音性の部屋に引っ越したいと言っていた。
「それでは失礼して」
ノックを複数回行った後、一度ドアを蹴り飛ばす。
そしてドアノブに手をかけたかと思うと……硬直した。
硬直、と言うよりも何かを見極めているような気がする。
多分、タイミングってやつなんだろう。
ガチャッと言う音ともにドアが開く。
「どうぞ」
「……なんか暗くないか?」
「そうですね」
「そうですね、で済ませるなよ……」
そう呟いて中へと入る。
やはり暗い、と言うか見えない。
手探りで周りを触れようとするが、広いのか何も手が当たらない。
どうなって……と言おうとして後ろを振り向いた。
「……は?」
何もなかったのだ。
そこにTASが立っているわけでも、バグが起きているわけでもない。
周りにただ黒い世界が広がっているだけなのだ。
「……嘘だろおおおぁぁッ!!?」
俺は大声で叫んで、TASの名前を呼ぶ。
声は跳ね返ったりするわけでもなく、何処か遠くへ飛んで行くわけでもなく。
届いていないのはわかりきっていた。
「え、どうすればいいんだよ」
何かないかと一歩、歩き出そうとしたその瞬間だった。
部屋の電気がついた。
そこは教室、学校でよくある教室だった。
「……もう慣れてきたよ。こう言うこと」
俺は色々と諦めて、まずはその部屋の探索から。
そして脱出するための手段を探し始めた。