俺の家にTASがやって来た   作:ニコnc

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浩一くんと隣人教室

「脱出の手段なぁ……」

 

 取り敢えず部屋は一通り調べてみた。

 が、ドアは開かないし、窓も開かない。

 と言うか窓から見える外の景色がだいぶイかれていた。

 多分TASと会う前にここに来ていたのならSAN値直葬で死んでいただろう。

 

「今もだいぶ来てんだけどな」

 

 とにかくSAN値がだいぶ削られたのは間違いない。

 それだけは言える。

 

「……そもそもなんで教室なんだ? 理解できんぞ。教室が関係する漫画でも書いてんのか?」

 

 適当な席に座って考える。

 だが大した案が浮かぶ訳でもなく、救助を待とうにもまともな救助は来てくれるはずもなく。

 何故かこう言う時だけはすぐにTASが来ないのだ。

 

「はぁ……なんか見よ」

 

 助けが来るまでと思い、スマホを取り出してみる。

 何をみるかと言うと適当な動画一本。

 その他諸々ニュースなど、暇な時に見るものばかりだ。

 そこで気づく。

 

「ネット繋がってる? ってことは……あいつっぽく言うと、ここは家の中判定なのか? それとも……まぁ、なんにせよここが異世界みたいな変な場所じゃないってことの確認はできたな」

 

 そんなこと呟きながら、スマホを操作していると一つの動画が目にとまる。

 金髪のニヤニヤ笑みを浮かべている女の子。

 メスガキっぷりが話題のネットアイドル……だったはずだ。

 大して興味がないから見る気は起きないが、美少女だとは思う。

 

「廃墟探索とかよくやるよなぁ」

 

 なんて動画を見ながら感心していると、突然ドアが開いて誰かが入ってくる。

 俺はそれに驚いてスマホを落としそうになり、慌てて拾おうとしそこから更に転びそうになる。

 

「あっぶぁ!? し、死ぬかと思った……」

 

 なんとか体制を立て直し、入ってきた人を見る。

 どうも見たことがある顔……と言うか、高橋さんだった。

 なんか変なカツラ……アフロを、被っていた。

 

「は……?」

 

 理解ができず呆然としていると、教卓の前に文字が浮かび上がる。

 

「んー? ジョイオブ……ペインティング? ……で、『〜異世界〜』?」

 

 そんなことを言っていると、黒板にキャンバスが現れる。

 アフロを被った高橋さんは筆を手にしていた。

 

「皆さんこんにちは、ご機嫌いかがですか? 今日も皆さんと一緒に素敵な絵を描いていきたいと思います」

「ボブ・ロスじゃねぇかッ!?」

 

 立ち上がってスマホを投げつけそうになった。

 さて、ここで知らない人に説明しておこう。

 ボブ・ロスとは。

 大体の人はこれでわかると思う、『ボブの絵画教室』と。

 そこ見事な手法と彼独自の画法によって生まれるその絵画は、素敵と言うほかないだろう。

 

「一致してんの『教室』だけじゃねーか!? と言うか教室の意味ないだろ!?」

 

 立ち上がりながら俺は大声でそう訴えるが、ボブ高橋は気にせず授業を続ける。

 

「イエローオーカーとスカーレットを叩くように混ぜるんです。これを小さな円を描くように塗っていきます」

 

 色指定されてもわかんないといいかけて、これ以上突っ込むことをやめる。

 ボブ高橋の表情を見るに聞こえていないのは確かだからだ。

 

「全て楽しいアクシデントなんですよ」

「今の状況がアクシデントだよッ!!」

 

 気づけば俺は、全力でスマホを投げていた。

 スマホは見事な軌道でボブ高橋に飛んで行く。

 だがボブ高橋は直前で避け切ってみせる。

 スマホは粉砕! 玉砕! 大喝采! と言わんばかりにぶっ壊れていた。

 

「やっちまった……まぁいいわ。うん」

 

 改めて落ち着いて座る。

 連絡手段が断たれてしまう。

 少し落ち着いて冷静に考えて。

 目の前のボブ高橋は高橋さんではないと結論づける。

 

「それではここで一手間加えましょう」

「随分と……あー、なんと言うか、終わってるだろ、それ」

 

 絵に対して感想を言ってみるも、返答はない。

 まだ未完成だが絵はどう見ても失敗にしか見えない。

 

 が、正直言って俺はボブ高橋を侮っていた。

 そこから数十分後のことだった。

 その絵が見間違えるかのように変化したのは。

 

「ね、簡単でしょう?」

 

 俺はため息をついて、立ち上がる。

 

「んなわけあるか」

 

 そう言い捨てたのだった。

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