ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった   作:ひいちゃ

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さてさて、はじまりました帝国軍の同盟領侵攻作戦。

これに対して、ヤンは果たしてどのような手を打つのか?

どうぞお楽しみください!


第11話『大騒ぎの前』

 さて。ヤン・ウェンリーが情報部に調査を指示して間もなく、さっそく第一報が送られてきた。

 どうやら、同盟軍の情報部は猫の餌係ではなかったようである。

 

「提督。イゼルローンから4個艦隊が出発。ヴァンフリート星域に向かっているようです」

「ふむ……」

 

 その報告を受けて、考え込むヤンに、ムライ参謀長が意見を述べる。

 

「閣下、これは、ヴァンフリートを経由して、このアスターテに攻め込むつもりなのではないでしょうか? 出撃して迎撃したほうがよろしいのでは?」

 

 だが、その意見に、ヤンは首を振った。

 

「いや。警戒は必要だけど、出撃する必要はないと思うよ。今はまだ、ね」

「なぜですか? 艦隊のコースから見て、帝国軍がここを狙っているのは明らかではありませんか」

 

 ムライがそう言うと、ヤンは頭をかいて、コンソールを操作した。スクリーンに、イゼルローン周辺の星図が映し出されている。

 

「よく考えてみてくれ。帝国軍はここアスターテに、私たちが拠点を置いてるのを知ってるはずだ。当然、ここにはそれなりの戦力が置かれているのも予想しているだろう。そんなところに、4個艦隊という半端な戦力を派遣するだろうか?」

 

 そのヤンの言葉に、パトリチェフが腕を組んでうなった。

 

「なるほど。例え、この4個艦隊の後に本隊が来るとしても、距離から見て、各個撃破になりかねませんからな。あのローエングラム公がそんな愚策を打つとは思えませんか」

「そうなんだよ。もし、彼らが本気でここを落とそうとするなら、イゼルローンの奴らより先に、オーディンの本隊が出発していなければおかしいんだ。それに……」

 

 そこでヤンはまた頭をかいた。そして続ける。

 

「もしあの戦力でここに落とそうと本気で考えるなら、こちらが態勢を整える前に、一気に進軍して叩かなきゃいけない。だけど、この4個艦隊には急ごうという様子が見えない。まるで、ここを攻めるのが目的ではないかのように、ね」

 

 そこまで言って、ヤンは肩の力を抜いた。そして、椅子の背もたれによりかかって一言。

 

「まぁ、もう少しで答えは出るよ」

 

 そんなヤンに、ムライが一言。

 

「提督。昼寝をするなら司令官室でお願いします」

 

* * * * *

 

 それから数日後。

 司令官室で昼寝しているヤンの元に、フレデリカがやってきた。

 

「何かな?」

「はい。情報局から報告がありました。オーディンから大艦隊が進発した模様です。フェザーンからの追加情報では、この大艦隊の狙いは、アスターテではなく、ティアマトをはじめとした、アスターテより北の星域だそうです」

「なるほど……やっぱりね」

「もしかして、ヤン様……提督は、最初から敵の狙いに気づいておられたのですか?」

「あぁ。だいたいはね。確証が持てなかったから、あの場では言わなかったけども。確証の持てないことで作戦を立てるのは失敗の元だから」

 そのヤンの言葉に、目をきらきらさせるフレデリカ。また彼女の中のヤン愛が燃えてきたらしい。

 

「そうですか、さすがヤン様です!」

「ははは、嬉しいけど、前世のようにふるまうのは、ここでだけにしてくれよ。さて、それじゃアイランズ氏の元に通信をつないでくれるかな?」

「あ、はい、わかりました」

 

 そして、スクリーンにアイランズの姿が映し出された。あからさまに慌てた様子である。

 

「おぉ、ヤン提督か! 今、君のところに通信を入れようとしていたところなのだ」

「そうだったのですか。その様子では既にご存じのようですね」

「あぁ。オーディンから帝国軍の大艦隊が出撃したという報告は、私も受け取っている。宇宙艦隊のほうでも、それを受けて艦隊の準備を進めているところだ」

「そうなのですか。あの、実はそのことについて提案というか、要請があるのですが……」

 

 そこでヤンは自分の腹案についてアイランズに話した。それを聞いたアイランズが渋い顔をする。

 

「……というわけなんですがね、いかがでしょうか?」

「なるほど。しかし、それは……」

「えぇ。確かに共和主義国家としてはグレーゾーンだというのはわかっています。ですが、戦争のさいに、市民を内陸に避難させるというのは、市民を犠牲にしないためによくあること。それにちょっとプラスアルファするだけです」

「むぅ……」

「それに、これがうまくいけば、帝国軍に大打撃を与え、和平に持ち込むことができるかもしれません。なんとかご協力をお願いできませんか?」

 

 ヤンがそう言うと、アイランズは渋い顔をしたままうなずいた。

 

「そうか……うむ……よし、わかった。君の提案を受け入れよう。私は元国防委員長だったとはいえ、軍事のことはよくわからんが、どうやら、君の答えが最適解らしい」

「ありがとうございます」

 

 そして通信は切れた。

 

「あ、グリーンヒル大尉、少しそこで待っていてくれ。今、作戦案を作るから」

「あ、はい」

 

 そして、ヤンはコンソールに向きなおり、うんうんうなりながら、コンソールを操作する。

 そして操作が終わると、コンソールからディスクを抜き取り、グリーンヒル大尉に手渡した。

 

「よし、できた。大尉、これをただちに、ハイネセンの統合参謀本部まで送信してくれ。それと、司令部スタッフと各艦隊司令官を、作戦室に集めてくれないか?」

「了解しました」

 

 そして、フレデリカが退出したのを見届けると、ヤンは椅子の背もたれに寄り掛かるようにもたれこんだ。

 

「さて、それじゃもうひと眠りするかな」

 

 責任重大な身分になっても、人格が少し変わっても、ヤンはヤンなのであった。

 

* * * * *

 

 さて、一方、我が銀河帝国軍・フォーゲル機動艦隊群。

 

「司令、惑星カトルブラの占領が完了しました」

 

 そのバルトハウザーの報告にわしはうなずく。

 

「うむ。では、その惑星に仮司令部を設営する。作業にかかれ」

「はっ!」

 

 まずは第一歩、というところか。

 ここに仮司令部を作ることができれば、本隊が進軍している間、敵をけん制するのにも役に立つし、もし今回の戦いが失敗しても、叛乱軍に対する橋頭保とすることもできるかもしれない。作っておいて、損はなかろう。多分。

 

 それにしても……。

 

「何か?」

 

 おっと、つぶやいていたのを聞かれていたか。わしは聞いてきたナイゼバッハに苦笑しながら返した。

 

「いや、ずいぶんすんなりうまくいったな、と思ってな。てっきり、敵が迎撃に来るかと思ったが」

「あ、確かにそうですな」

 

 わしの言ったことに、ナイゼバッハもそう言ってうなずく。

 そう、ずいぶんうまくいった、というかいきすぎた、という気がしないでもない。敵にとっては前線拠点であるアスターテの目の鼻の先に拠点を作られて落ち着いていられるわけがない。普通ならすぐにでも出撃して潰しに来そうなものなのだが。

 うまくいってることは何よりだが、わしはなぜかこのことに不安を感じずにはいられないのだった。

 

 そしてそこに、バルトハウザーが新しい報告を受け取ったようだ。

 

「司令。周辺の宙域におかしい動きがあると報告がありました」

「おかしい動き?」

「はい。詳しいことまではわかりませんが、人や物資の動きが激しくなっている、と」

「ふむ……」

「それが意味するところまでは、まだわかりませんが」

 

 その報告を聞き、わしは考え込む。

 叛乱軍が物資を激しく動かしてるというのは、気になる話だ。ただの偶然かもしれぬが、奴らが何か考えているのかもしれない。一応気を付けておいたほうがよさそうだ。

 

「そうか。引き続き、そのことについて調査しておくように伝えておいてくれ」

「はっ、わかりました」

 

 わしが、叛乱軍が迎撃してこなかったこと、そして物資の流れに隠された策を結びつけることができたのは、それから1カ月ほど後のこと。オーディンを進発した本隊が、エルゴン星域まで到達したころであった。

 




さてさて、果たしてヤンは何をしようとしているのか!?
その答えは……次回!

というわけで次回
「好事って魔が多いそうですよ」

転生提督の歴史が、また1ページ
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