ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった 作:ひいちゃ
これに対して、ヤンは果たしてどのような手を打つのか?
どうぞお楽しみください!
さて。ヤン・ウェンリーが情報部に調査を指示して間もなく、さっそく第一報が送られてきた。
どうやら、同盟軍の情報部は猫の餌係ではなかったようである。
「提督。イゼルローンから4個艦隊が出発。ヴァンフリート星域に向かっているようです」
「ふむ……」
その報告を受けて、考え込むヤンに、ムライ参謀長が意見を述べる。
「閣下、これは、ヴァンフリートを経由して、このアスターテに攻め込むつもりなのではないでしょうか? 出撃して迎撃したほうがよろしいのでは?」
だが、その意見に、ヤンは首を振った。
「いや。警戒は必要だけど、出撃する必要はないと思うよ。今はまだ、ね」
「なぜですか? 艦隊のコースから見て、帝国軍がここを狙っているのは明らかではありませんか」
ムライがそう言うと、ヤンは頭をかいて、コンソールを操作した。スクリーンに、イゼルローン周辺の星図が映し出されている。
「よく考えてみてくれ。帝国軍はここアスターテに、私たちが拠点を置いてるのを知ってるはずだ。当然、ここにはそれなりの戦力が置かれているのも予想しているだろう。そんなところに、4個艦隊という半端な戦力を派遣するだろうか?」
そのヤンの言葉に、パトリチェフが腕を組んでうなった。
「なるほど。例え、この4個艦隊の後に本隊が来るとしても、距離から見て、各個撃破になりかねませんからな。あのローエングラム公がそんな愚策を打つとは思えませんか」
「そうなんだよ。もし、彼らが本気でここを落とそうとするなら、イゼルローンの奴らより先に、オーディンの本隊が出発していなければおかしいんだ。それに……」
そこでヤンはまた頭をかいた。そして続ける。
「もしあの戦力でここに落とそうと本気で考えるなら、こちらが態勢を整える前に、一気に進軍して叩かなきゃいけない。だけど、この4個艦隊には急ごうという様子が見えない。まるで、ここを攻めるのが目的ではないかのように、ね」
そこまで言って、ヤンは肩の力を抜いた。そして、椅子の背もたれによりかかって一言。
「まぁ、もう少しで答えは出るよ」
そんなヤンに、ムライが一言。
「提督。昼寝をするなら司令官室でお願いします」
* * * * *
それから数日後。
司令官室で昼寝しているヤンの元に、フレデリカがやってきた。
「何かな?」
「はい。情報局から報告がありました。オーディンから大艦隊が進発した模様です。フェザーンからの追加情報では、この大艦隊の狙いは、アスターテではなく、ティアマトをはじめとした、アスターテより北の星域だそうです」
「なるほど……やっぱりね」
「もしかして、ヤン様……提督は、最初から敵の狙いに気づいておられたのですか?」
「あぁ。だいたいはね。確証が持てなかったから、あの場では言わなかったけども。確証の持てないことで作戦を立てるのは失敗の元だから」
そのヤンの言葉に、目をきらきらさせるフレデリカ。また彼女の中のヤン愛が燃えてきたらしい。
「そうですか、さすがヤン様です!」
「ははは、嬉しいけど、前世のようにふるまうのは、ここでだけにしてくれよ。さて、それじゃアイランズ氏の元に通信をつないでくれるかな?」
「あ、はい、わかりました」
そして、スクリーンにアイランズの姿が映し出された。あからさまに慌てた様子である。
「おぉ、ヤン提督か! 今、君のところに通信を入れようとしていたところなのだ」
「そうだったのですか。その様子では既にご存じのようですね」
「あぁ。オーディンから帝国軍の大艦隊が出撃したという報告は、私も受け取っている。宇宙艦隊のほうでも、それを受けて艦隊の準備を進めているところだ」
「そうなのですか。あの、実はそのことについて提案というか、要請があるのですが……」
そこでヤンは自分の腹案についてアイランズに話した。それを聞いたアイランズが渋い顔をする。
「……というわけなんですがね、いかがでしょうか?」
「なるほど。しかし、それは……」
「えぇ。確かに共和主義国家としてはグレーゾーンだというのはわかっています。ですが、戦争のさいに、市民を内陸に避難させるというのは、市民を犠牲にしないためによくあること。それにちょっとプラスアルファするだけです」
「むぅ……」
「それに、これがうまくいけば、帝国軍に大打撃を与え、和平に持ち込むことができるかもしれません。なんとかご協力をお願いできませんか?」
ヤンがそう言うと、アイランズは渋い顔をしたままうなずいた。
「そうか……うむ……よし、わかった。君の提案を受け入れよう。私は元国防委員長だったとはいえ、軍事のことはよくわからんが、どうやら、君の答えが最適解らしい」
「ありがとうございます」
そして通信は切れた。
「あ、グリーンヒル大尉、少しそこで待っていてくれ。今、作戦案を作るから」
「あ、はい」
そして、ヤンはコンソールに向きなおり、うんうんうなりながら、コンソールを操作する。
そして操作が終わると、コンソールからディスクを抜き取り、グリーンヒル大尉に手渡した。
「よし、できた。大尉、これをただちに、ハイネセンの統合参謀本部まで送信してくれ。それと、司令部スタッフと各艦隊司令官を、作戦室に集めてくれないか?」
「了解しました」
そして、フレデリカが退出したのを見届けると、ヤンは椅子の背もたれに寄り掛かるようにもたれこんだ。
「さて、それじゃもうひと眠りするかな」
責任重大な身分になっても、人格が少し変わっても、ヤンはヤンなのであった。
* * * * *
さて、一方、我が銀河帝国軍・フォーゲル機動艦隊群。
「司令、惑星カトルブラの占領が完了しました」
そのバルトハウザーの報告にわしはうなずく。
「うむ。では、その惑星に仮司令部を設営する。作業にかかれ」
「はっ!」
まずは第一歩、というところか。
ここに仮司令部を作ることができれば、本隊が進軍している間、敵をけん制するのにも役に立つし、もし今回の戦いが失敗しても、叛乱軍に対する橋頭保とすることもできるかもしれない。作っておいて、損はなかろう。多分。
それにしても……。
「何か?」
おっと、つぶやいていたのを聞かれていたか。わしは聞いてきたナイゼバッハに苦笑しながら返した。
「いや、ずいぶんすんなりうまくいったな、と思ってな。てっきり、敵が迎撃に来るかと思ったが」
「あ、確かにそうですな」
わしの言ったことに、ナイゼバッハもそう言ってうなずく。
そう、ずいぶんうまくいった、というかいきすぎた、という気がしないでもない。敵にとっては前線拠点であるアスターテの目の鼻の先に拠点を作られて落ち着いていられるわけがない。普通ならすぐにでも出撃して潰しに来そうなものなのだが。
うまくいってることは何よりだが、わしはなぜかこのことに不安を感じずにはいられないのだった。
そしてそこに、バルトハウザーが新しい報告を受け取ったようだ。
「司令。周辺の宙域におかしい動きがあると報告がありました」
「おかしい動き?」
「はい。詳しいことまではわかりませんが、人や物資の動きが激しくなっている、と」
「ふむ……」
「それが意味するところまでは、まだわかりませんが」
その報告を聞き、わしは考え込む。
叛乱軍が物資を激しく動かしてるというのは、気になる話だ。ただの偶然かもしれぬが、奴らが何か考えているのかもしれない。一応気を付けておいたほうがよさそうだ。
「そうか。引き続き、そのことについて調査しておくように伝えておいてくれ」
「はっ、わかりました」
わしが、叛乱軍が迎撃してこなかったこと、そして物資の流れに隠された策を結びつけることができたのは、それから1カ月ほど後のこと。オーディンを進発した本隊が、エルゴン星域まで到達したころであった。
さてさて、果たしてヤンは何をしようとしているのか!?
その答えは……次回!
というわけで次回
「好事って魔が多いそうですよ」
転生提督の歴史が、また1ページ