ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった 作:ひいちゃ
その最初のターゲットは……?
なお、サブタイはテレサの導きである(謎
エルゴン星域に展開中のレンネンカンプ大将率いる艦隊と、ケンプ中将率いる艦隊。
彼らも、ラインハルトからの撤退命令を受け、ただちに撤収の準備にかかっていた。
その彼らの艦内に、急を告げる警報が鳴り響く!
「何事だ!?」
オペレーターにそう怒鳴るように尋ねるレンネンカンプに、オペレーターは戦慄した声で報告した。
「は、叛乱軍艦隊です! シヴァ星域方面から叛乱軍艦隊が急速接近中!」
「規模は!?」
「3個艦隊。で、ですがその後方から、さらに6個艦隊も接近中です!」
その報告に、レンネンカンプ艦隊旗艦、『ガルガ・ファルムル』に戦慄が走る。
こちらは2個艦隊、向こうは総勢9個艦隊。抗戦しても勝機がないのはわかりきっている。
そこに、ガルガ・ファルムルに通信が入る。ケンプ艦隊からだ。
「レンネンカンプ大将。そちらでも既にお気づきかもしれませんが……」
「うむ。叛乱軍の大艦隊がこっちに向かってきている。ここで我らが立ち向かっても、かなわないであろう。ローエングラム公からの撤退命令もある。撤退するしかあるまい」
「しかし、これだけの大軍を前にしての撤退こそ、至難の業かと……」
「うむ……」
そこで、レンネンカンプは悲壮な顔つきで答えた。
「ケンプ中将は急速離脱し、この星域から撤退されよ。ここは我が艦隊が後退しながら時間を稼ぐ」
「なっ!? れ、レンネンカンプ大将は大将の身。帝国軍にとって大事なお方です。ここは私が……!」
そのケンプの言葉に、レンネンカンプは首を振った。
「いや、ケンプ中将は、新型ワルキューレの運用試験や、その戦術研究という大任があろう。卿のほうがこれからの帝国軍にとって重要性は高い。その卿を失うことは、帝国軍……いや、帝国にとって大きな損失だ。卿を失うわけにはいかぬ」
「レンネンカンプ大将……」
「さぁ、早く行かれよ。そして必ずや、帝国に未来を」
「了解……」
そして通信は切れた。そして瞑目した後、レンネンカンプは指揮下の艦隊に命を下す。
「我が艦隊はこれより、方形陣を展開。後退しながら、敵の進撃を食い止める。なお、30才以下の士官はただちに退艦せよ」
「なっ……!」
「未来ある卿らをここで死なせるわけにはいかん。これは命令だ」
「はっ……」
そして、彼の命令を受け、若いブリッジクルーが粛々と艦橋を退出していく。
だが、一人だけ立ち去らない者がいた。レンネンカンプの副官、クナップシュタイン大佐である。
「どうした、クナップシュタイン大佐? なぜ退出しない。30才以下の士官は退艦せよ、と命じたはずだ」
「いえ。私は残ります。敬愛する閣下がこの場に残るのに、私だけが退艦するわけにはいきません。それに、副官の小官がおらねば、艦隊の指揮に差しさわりがあるでしょう。軍事法廷行きは覚悟しておりますので、どうか残るのをお許しください」
「馬鹿者が……好きにするがいい」
そしてレンネンカンプは、再び正面のスクリーンに視線を向けた。
* * * * *
一方そのころ同盟軍艦隊。
今、この星域には、司令長官であるビュコックの司令部直属艦隊をはじめとして、パエッタ、ボロディン艦隊が既に展開していた。その後方には、ルフェーブル、ホーウッド、ウランフ、アップルトン、アル・サレム、そしてムーアの各提督の艦隊も続いている。いわば独立軍を除いた同盟軍全艦隊がこのエルゴン星域に向かっているのだった。
その司令部直属艦隊、旗艦リオ・グランデの艦橋で、ビュコック大将は、目の前の艦隊が方形陣をとり、後退するのを見てとった。
「敵の司令官は、なかなか立派な武人のようじゃな。友軍を逃がすため、殿を引き受けるつもりだ。そればかりか、生き残り、自らも撤退に成功するため、できる限りの手を打っておる」
そのビュコックの言葉に、参謀長のチャン・ウー・チェン中将もうなずいて同意する。
「そうですな。死なせるのは惜しい人物でありますが」
「うむ。だが、ここは戦場。情けをかけるわけにはいかん。全軍前進、展開している艦隊を突破し、撤退している敵を追撃する」
かくして同盟軍艦隊は、立ちふさがるように展開しているレンネンカンプ艦隊に突進していった。
* * * * *
しかし、同盟軍は、意外な苦戦の中にいた。
レンネンカンプ艦隊は、同盟軍艦隊の有効射程内に入らないよう気を付けながら、慎重に後退し、さらに小惑星やコンテナ、惑星シャンプールを守る防御衛星など、ありとあらゆるものを使って、同盟軍の進撃を阻んでいるのだ。
さらに、エルゴン星域は各所に小惑星帯が点在している。そこにレンネンカンプが配した伏兵の艦隊にも、同盟軍は苦しめられた。
そしてレンネンカンプ艦隊は、艦隊を削られながらも、なんとか撤退戦を演じていた。
しかし!
「直撃、来ます!」
「なに!?」
ミサイルの一発が、ガルガ・ファルムルの艦体に直撃した! その直撃で、電気配線の一部がショートしたらしく、艦橋に爆発が巻き起こる。
爆炎が収まったあと、副官のクナップシュタイン大佐が見たのは、座り込み、脇腹を抑えているレンネンカンプの姿だった。その脇腹からはおびただしい血があふれ出ている。
「か、閣下! 軍医! 早く軍医を!」
「騒ぐな、クナップシュタイン大佐! ここで騒いでは、艦隊が動揺する!」
「す、すみません。しかし閣下、その傷では艦隊指揮は無理です。ここは医務室でご療養を……」
「ふざけるな! この程度で倒れて、ローエングラム公にどのような顔ができようか! いや、この程度で倒れていては、地獄の門閥貴族どもに笑われるわ!」
「……わかりました。それでは、とりあえず応急処置を」
「うむ」
それからも、応急処置を受けたレンネンカンプは引き続き、艦隊の指揮をつづけた。まさに文字通り、命を削りながらの撤退戦の末……。
「閣下、ケンプ提督の艦隊、無事にエルゴン星域から離脱した模様です」
「そうか……我ながらよくやった……な……。公に申し開きが立つ程度の働きはできた……か……」
そう言うと、レンネンカンプは、ぐったりと椅子に倒れこんだ。その顔面は蒼白だ。
「か、閣下!」
「クナップシュタイン大佐、わしはここまでのようだ。すまんが、後のことは卿に任せる。撤退できる艦は撤退させろ。逃げきれない艦は敵に投降するよう……。部下たちを……これ以上……無駄に死なせることのないよう……」
そしてレンネンカンプはこと切れ、大きくうなだれた。
それを看取ったクナップシュタインは、悲しみに体を震わせると、クルーに指示を飛ばす。
「レンネンカンプ前司令官の命令を遂行する。撤退できる艦は、それぞれの判断で各個離脱せよ。無理な艦は、本艦の周辺に集結。その後、機関停止し、敵軍の指示に従うよう……。本艦は投降する艦をまとめるため、敵軍に投降する。敵艦隊に投降を打電せよ」
「はっ……」
* * * * *
一方の同盟軍艦隊。
「ビュコック長官。帝国軍艦隊より降伏する旨、打電がありました」
「そうか……わかった。受け入れよう。ボロディン提督に、投降の処理をさせてくれ。残りの艦隊は、引き続き、敵をおりに追い込む」
「了解です」
「おぉ、そうだ。撤退戦を行っていた司令官はどうなった?」
ビュコックがそう言うと、チャン参謀長は、まるで冥福を祈るように、瞑目して報告した。
「はい。戦傷が元でお亡くなりになった、とのことです。どうやら、負傷しながらも指揮をとっていたようで……」
「そうか……。では、この宙域を通過する間、各艦隊は敬礼し、亡くなった敵司令官に哀悼の意をささげるよう通達してくれ」
「わかりました」
「よし、全艦全速。敵を追撃するぞ!」
* * * * *
一方の、帝国軍司令長官直属艦隊。
「閣下、全軍、このティアマトへの撤退完了しました」
「そうか。我が軍の損失は?」
「はい。レンネンカンプ艦隊が壊滅した、とのことです。艦隊は8割を失い、一部が投降。また、司令官のレンネンカンプ大将が戦傷死した、と」
シュトライトがそう報告すると、ラインハルトは瞑目して言った。
「そうか……。惜しい人材を亡くしたな……。だが、損失が1個艦隊だけというのは不幸中の幸いというべきか。まだ致命的な損害ではない。敵軍はどうだ?」
「はい。引き続き接近中。まもなく、ダゴン星域を抜け、このティアマト星域に入るとみられます」
「そうか……。だが、この様子ではこちらがイゼルローンにたどり着くのが先……!」
しかし、そこで彼は見た。ティアマトとイゼルローンとをつなぐ小惑星帯のトンネルの入り口に、おびただしい数の宇宙機雷が敷設されているのを。
そう、ラインハルト、そして帝国軍は、見事にヤン・ウェンリーと同盟軍によって作られた檻に追い込まれてしまったのだ!
さよなら、レンネンカンプ、あなたのことは忘れません(涙
さて、次回は久しぶりにブラ公inフォーゲルが登場しますよ!
彼に差し伸べられた手とは?
次回
『トリューニヒトの手、キルヒアイス無双』
転生提督の歴史が、また1ページ
……タイトルでネタバレというのは気にしない方向で(笑