ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった 作:ひいちゃ
なお、キルヒアイスの登場についてですが、投票結果が僅差なれど肯定の票が多かったことと、この作品はこういう雰囲気がぴったりと考えて、あのようにしました。
希望があれば、別バージョンも掲載する予定です
「何、作戦中止、全軍撤退だと!?」
ヴァンフリート星域にある我が旗艦、シェルフスタットⅡの艦橋にて、わしは副官のバルトハウザー准将にそう聞き返していた。
「はい。侵攻していたところ、叛乱軍による焦土戦術と補給線寸断に遭い、これ以上の作戦行動は危険、ということで……」
「わしの悪い予感が当たったか……」
調査させていた、叛乱軍の物資の怪しい動きの答えがこれで出たな。おそらく奴らは、自国民に被害を出さずに焦土戦術を行うため、人々や物資を領土の中枢方面に避難させていたのだろう。
答えは出たが、それでもわしは、まだ悪い予感をぬぐい切れなかった。何か重大なことがある気がしたのだ。だが、今はそれを考えるより先にするべきことがある。
「むぅ。全軍撤退とあれば仕方あるまい。ただちに撤収する。アスターテの連中が動く前に引き上げるぞ」
「了解しました」
かくして我が艦隊はただちにイゼルローンに向けて引き返した。ところが!
「あっ、て、提督! 前方に機雷群!」
「なんだと!?」
オペレーターの報告通り、目前のイゼルローンとヴァンフリートとをつなぐ回廊の入り口部分に、多数の宇宙機雷がまかれていた。びっしりってほどではないが、排除するのにかなり苦労しそうな数ではある。
そして何よりも。
悪い予感の答えが出た。出てしまった。
なぜ『しまった』と表現したかというと、それはまさに絶望的な答えだからだ。
叛乱軍の焦土戦術、目の前の宇宙機雷。それが最悪の事態という答えで結びついてしまったのだ。
それに思い至ったわしは思わず目の前が真っ暗に……!
「ふ、フォーゲル司令!?」
「軍医! 早く軍医を!」
* * * * *
一方、こちらはティアマトの帝国軍主力部隊。帝国本土への撤退を図っていた彼らを待ち受けていたのは、夥しい数の宇宙機雷だった。
「叛乱軍め。我々をここまで追い込むのが目的だったのか。ここを我らの最期の地にするつもりだ……!」
そう歯噛みするラインハルトに、オペレーターが報告する。
「閣下! 叛乱軍艦隊、さらに急速接近中! まもなく、有効射程圏内に入ります!」
それを聞き、うなずくラインハルト。彼は覚悟を固め、号令を下す!
「是非もなし。かくなる上は、死力をもってこの戦いを切り抜けるのみ! 全艦、機雷に衝突せぬよう留意しつつ、敵軍の方向に旋回。迎撃態勢をとれ!」
ラインハルトの指令一下、迎撃態勢を整える帝国軍艦隊。その様子は、同盟軍司令部直属艦隊のビュコックからも見えていた。
チャン参謀長が報告する。
「閣下、帝国軍艦隊が旋回を開始。迎撃態勢を整えようとしているようです」
「そうはさせてなるものか! 全軍突撃! 奴らが態勢を整える前に機先を制し、一撃を加えよ!」
ビュコックの号令を受け、同盟軍艦隊は一気に距離を詰め、帝国軍が迎撃態勢を整える前に、その艦列の横腹に一撃を加えた。隙を突かれた帝国軍はたちまち大きな被害を受けてしまう。それを一番多く受けたのは……。
「閣下、黒色槍騎兵艦隊旗艦、『王虎(ケーニヒスティーゲル)』撃沈!」
「なんだと!? ビッテンフェルトは!?」
「はい。ビッテンフェルト大将は、なんとか旗艦を脱出。隣接した艦に司令部をうつし、戦闘を継続した、とのことです」
その報告に、ラインハルトはほっと安堵のため息をついた。そしてすぐに表情を引き締める。
「奴らの好きにさせるな! 態勢を整え次第、反撃を開始せよ!」
* * * * *
一方、ヴァンフリートのフォーゲル機動艦隊群、総旗艦シェルフスタットⅡ。
「閣下、閣下!」
「う、うーん……」
ナイゼバッハ中将の声に、わしが目を開けると、映ってきたのは、医務室の白い天井だった。
「ナイゼバッハ中将……わしは一体どうしたのだ?」
「はい。突然お倒れになられて……。軍医の話では、あまりの心理的衝撃を受けて卒倒してしまったのだろう、と」
それは倒れる。あのようなことに思い至ってしまってはな。
しかし、倒れてばかりはいられない。できることをしなければ。
「そうか……。心配をかけてすまぬ。わしはもう大丈夫だ。それより中将、ただちに会議室に幕僚や提督たちを集めてくれ。重大な話がある」
「はっ」
* * * * *
そして会議室。そこには、ナイゼバッハをはじめとした我が艦隊の幕僚、それにファーレンハイトたち我が艦隊群所属の提督が集まっていた。
その場で、わしはさっそく口を開いた。
「先に言おう。このままでは、どうあがいても、主力艦隊は敗北する! 下手したらローエングラム司令長官も戦死する!」
「なっ……!」
わしの言葉に、その場にいた皆が絶句した。
「叛乱軍は、焦土戦術と補給線の寸断をもって、我が軍の士気を落としにかかり、結果、我が軍は撤退することになった。これは皆も知っているだろう」
「はい」
「だが、奴らの狙いはそれだけに留まらない。奴らの目的は、主力艦隊を一気に追い詰め、有無を言わせぬ状態に追いやり、撃滅することだ。確証はないが、わしは間違いないと思っている」
そこで、ファーレンハイト大将が手を挙げた。
「そう考えるからには、何か証拠が?」
もっともな質問だ。わしはそれにうなずいて、彼に答えた。
「それは目前の機雷群だ」
「機雷群?」
「そうだ。奴らが本気でこの艦隊群をも追い詰めて仕留めようとしているならば、こちらにも夥しい機雷群を敷設してしかるべきだ。だが、奴らはそうしなかった」
「確かに……」
そう言って、ミュラー大将が腕を組む。わしはうなずいて話を続ける。
「そこから考えられることはなにか。奴らはわしらに対してはある程度の時間稼ぎができれば十分だと考えているのではないか、ということだ。それは何の時間稼ぎか? その答えは……」
「ローエングラム公率いる我が軍主力艦隊をしとめるまでの時間稼ぎ、というわけですか……」
「その通りだ。そこで本題に入る。この状況で我が艦隊はどう動くべきか、ということだ。皆の率直な意見を聞かせてほしい」
そしてしばしの沈黙。と、そこで。
バルトハウザーがある報告をしてきた。
「司令、機密回線で通信が入ってきております」
「通信? 誰からだ?」
「はい。トリューニヒト元叛乱軍評議会議長と名乗る者から」
トリューニヒトから? 一体何の用だろう。
うさんくさいが、今は藁にもすがりたい気分だ。とりあえず聞いてみるとしよう。
「そうか、つないでくれ」
「はっ」
すると通信スクリーンに、一人のうさんくさそうな男が映し出された。彼がトリューニヒトなのだろう。
「おぉ、フォーゲル閣下! 通信を受けてくださり感謝いたします」
「あいさつはいい。こちらは時間が惜しいのだ。本題に入ってくれぬか」
「はい、これは失礼しました。おそらくそちらでも、今、帝国軍の主力艦隊が窮地に陥っているのはご存じかと思いますが……」
「うむ。それでどう動くべきかを考えていたのだ。助けに行くとしても、おそらくあの機雷群を突破してからでは間に合うまい。かといって、アスターテには敵の拠点がある。奴らが黙って通してくれるとは思えぬ」
わしがそういうと、トリューニヒトはにやりと会心の笑みを浮かべた。
「そうでしょうとも。ここで私から貴重な情報を差し上げましょう」
「情報?」
「その通りです。実は、皆さんがおられるヴァンフリートからティアマトには、直接行き来することができる細い回廊があるのです!」
トリューニヒトがそう言うと、別の通信スクリーンが開き、ヴァンフリートとティアマトの星図が映し出された。そこに一本、細い回廊が描かれている。
「この通り、一個艦隊が通るのがやっとの細い回廊ですが、ローエングラム閣下を助けに行くのは十分でありましょう。いかがですかな?」
「むぅ……これはまさに天の助けだ。だが二つほど疑問がある」
「なんですかな?」
「まず一つ。このことを叛乱軍は知っておるのか? もし、奴らが知っていて、入口と出口をふさがれたらわしらは袋のネズミになる」
そう言うと、トリューニヒトはしたり顔で返事した。
「それは問題ありません。もともとこの回廊は、私が議長であったころ、とある筋からいただいた情報でしてな。あ、もちろん、私直属の調査団に調査させて裏を取りましたが……。後々、私のためになるかと考え、またあまり戦略的に役に立ちそうにないこともあって、他には秘密にしていたのです。おそらく、『かの』ヤン・ウェンリーもご存じありますまい」
「そうか……それは助かる。それではもう一つ。卿がそのような重要な情報を提供するからには、何か目論見があるのではないか? 何が所望だ?」
その質問に、トリューニヒトは大げさな身振りをしながら答えた。
本当に大げさな男だ。政治家より俳優になったほうがいいのではないか?
「いえいえ。特に何もありませんとも。ただ、私のやぼ……もとい、我々の活動のためには、皆さんに負けてもらっては困るだけでございます。しいていうなら、これをきっかけに、少しでも皆さま方帝国と私たちの間に、つながりができれば僥倖というぐらいで」
「そうか。期待には添えないと思うが、ご協力に感謝する」
「いえいえ。それでは健闘をお祈りしておりますぞ」
そして通信は切れた。
「これで、本隊が壊滅する前に救援に行けるめどはついたな。だが……」
「はい。例え救援に行けても、ティアマトから撤退する術をどうするかという問題があります」
そのナイゼバッハ中将の言葉に、ファーレンハイト大将もうなずいて同意する。
「そうだな。叛乱軍が我が主力を追い詰めるのが目的なら、ティアマトとイゼルローンの境界にも機雷群を敷設しないわけがあるまい」
「……」
「はっ。皆さま、アイゼナッハ大将の言葉を代弁させていただきます。『ファーレンハイト大将の言う通りだ。それをどうにかする術を考えなければ、例え救援に成功して、奴らを一時撃退できても、向こうが態勢を整え治して、再び攻撃してきたら、我々も本隊と運命を共にすることになりかねない』と」
「ふむ……」
再び考え込む我々。だがそこに!
「フォーゲル上級大将、心配は無用です」
……と、ヒルデスハイムが言った。え、ヒルデスハイム?
「ひ、ヒルデスハイム? いきなりどうしたのだ?」
「いえ、フォーゲル上級大将。私は実はヒルデスハイムではありません」
そう言ってヒルデスハイムが、軍服を脱ぎ捨てると……。
「えええええ!? キルヒアイス軍務尚書!?」
キルヒアイス!? キルヒアイスナンデ!?
そのあまりの出来事に、その場にいたみんなが口をあんぐりと開けたまま固まった。あのアイゼナッハ提督まで口を開けたまま茫然としている。
「実は軍務尚書の仕事は、副尚書に一時お任せして、兵士の一人に扮してこの艦隊に紛れ込んでいたのです。たまにはこんなことをするのもいいものですね」
「はぁ……」
そう言って、笑顔を浮かべるキルヒアイス軍務尚書。
引き続き、現実に頭が追い付いていないわしは、そう返すしかなかった。
と、そこで、キルヒアイスは軍服の下に着こんでいた軍服を直し、真顔に戻って言った。
「さて。私がここにいるのは、おふざけのためだけではありません。実は、こうなることを予期して、卿の艦隊の輸送艦に、あるものを密かに積み込んでいたのです。イゼルローンにもそれを用意してあります。それがあれば、あの機雷群をまとめて吹き飛ばすことが可能です」
「そ、それは……?」
おふざけのため『だけでは』ないのね? おふざけのためという理由もいくらかあったのね?
まぁそれはおいといて、果たしてキルヒアイス軍務尚書が用意したものはなんなのだろう。
あれ? そういえば、会議室にいたヒルデスハイムがキルヒアイス軍務尚書が変装した偽物だとしたら、本物はどこだ?
* * * * *
その後、シェルフスタットⅡの医務室に、睡眠薬を打ち込まれて眠り込んでいるヒルデスハイム伯の姿が目撃されたとかなんとか。
ここで一大企画!
ブラ公の新しい副官を募集します!
男女は問いませんw
「こういうキャラを副官に!」と言う方は、後で更新報告にスレをたてますので、そこにリプの形で書いて言ってください。
皆様の投稿、お待ちしています!
さてさて。次回
「細工はりゅうりゅう、仕掛けは、、、」
転生体得の歴史が、また1ページ