ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった 作:ひいちゃ
果たしてブラ公はラインハルトを助けることができるのか!?
キルヒアイスが託した『仕掛け』とは……?
さぁ、どうぞ!
※ヤンはともかく、原作では抜群の記憶力を持つフレデリカ(前世にて原作読破済み)が、指向性ゼッフル粒子のことを知らないのはおかしいのではないか?という指摘があったので、それに関する描写を少し修正しました。
ティアマトでの戦いは、同盟軍優勢に進んでいた。
旋回して、敵艦隊の方向に向きなおそうとしたところに、同盟軍を強襲を受けた帝国軍は不利な態勢に陥ってしまった。さらに、後背に機雷群を抱えた帝国軍は、まさに追い詰められた形となり、なおさら不利になったのである。
しかしそれでも、帝国軍はラインハルトの巧みな防戦指揮のおかげもあり、なんとか崩れずに戦えていた。
だがそこに!
「か、閣下! 7時方向から敵軍!」
「なに!?」
戦術スクリーンに映し出される、7時方向から急速に移動してくる光点。それはまさに、ヤン率いる独立軍の艦隊であった。
「叛乱軍は、アスターテの守りを捨てるつもりか! ああ、そうか。私を討ち取れば、アスターテを失ってもお釣りがくるからな。叛乱軍の将はかなりのやり手のようだ」
そう言ってうなずくラインハルト。
このヤン独立軍の参戦で、戦況は大きく動き出した。別方向からの敵の襲撃によって、それに対応しようとした帝国軍艦隊の布陣はささやかながらも崩れてしまった。
そして布陣の崩れを同盟軍が突き、帝国軍はさらに被害を拡大してしまう。
帝国軍右翼のワーレン艦隊は、その被害をさらに多く受けることになった。
「ワーレン提督。我が艦隊の損耗率が7割に達しました。このままでは瓦解するのも目前かと……」
「やむをえまい。大本営に連絡後、ただちに後退、再編成を……」
ワーレンがそのように、後退を指示した、その時だ!
「直撃、来ます!」
「!!」
ワーレンの旗艦、サラマンドルの横腹にレーザーが直撃した!
艦の各所に爆発が巻き起こり、艦橋にも爆発が発生した。
それによって吹き飛ばされた部材が、ワーレンの左腕を切断した!
「か、閣下!」
うろたえて叫ぶ副官をワーレンは一喝した。
「騒ぐな。副官の仕事に、上官に代わって騒ぐというものはなかったはずだぞ。……心配するな、俺の左腕は義手だ。以前の戦いで、元の左腕を失ったのでな。また同じ腕を失うとは皮肉なものだが」
そう言って、ワーレンは義手の残骸を蹴り飛ばした。
「よし、これで不運を切り離したぞ。それで、艦のほうはどうだ?」
ワーレンの言葉に、オペレーターが、艦の各所をチェックし、上官に報告する。
「誘爆多数、火器管制システムダウン、動力室に被弾、動力炉、制御不能! 申し訳ありません閣下、この艦の命運は尽きました」
「仕方あるまい。旗艦を他の艦に移す。ただちに、脱出の準備を急がせろ」
「はっ」
そしてワーレンの迅速な対応により、サラマンドルのクルーは彼を含めて一人欠けることなく、旗艦からの脱出に成功。そして、彼らが戦艦ヴァイデンに移乗した直後、サラマンドルは爆砕した。
だが、ワーレンはそこに腰を落ち着けることはできなかった。その戦艦ヴァイデンも、敵の猛攻を受け、航行不能に陥り、ワーレンは、さらに戦艦リシテアに、さらにその数分後には戦艦エルベに移乗せざるを得なかったのである。
リシテアからの脱出後、ワーレンはシャトルの中でこうひとりごちたのだった。
「全く、まだ不運が残っていたとはな。この分では、俺にも鉄壁の異名がついてしまいそうだ」
そんな中でも、ワーレンはしぶとく指揮を続け、臨時旗艦としたエルベとともに、配下の艦隊を後退させることに成功したのである。
* * * * *
同盟軍の猛攻はさらに続く。正面9時方向と、7時方向の2方向から攻撃を受けた帝国軍は、なんとか持ちこたえながらも相手より大きな被害を受け続け、今にも敗北への階段を転げ落ちそうになっていたのである。
そして、ついに独立軍艦隊の砲火が、ラインハルトの旗艦、ブリュンヒルトをとらえようとしていた!
だがそこでヤンはかすかに躊躇した。これはまさにラインハルトを討ち取るチャンスだ。しかし、果たして彼を討ち取ってしまっていいものか、と。
彼を討ち取っては、ラインハルトを失った帝国が怒りや怨恨で和平を拒むのではないか、いや、それ以前にラインハルトという軸を失った帝国が再び内乱状態になり、和平どころではなくなるのではないか。
ではここで一時停戦し、和平を持ち掛けたところで、ラインハルトがこの停戦と和平に応じてくれるだろうか? プライドの高い彼が、この停戦と和平を断るのではないか?
さすがのヤンでも、討ち取るべきか、和平を打診するかの判断がつかなかったのである。
それで彼がなんとか、和平を打診するという考えを固め、攻撃を中止させようとしたその時。
同盟軍の艦艇が数隻、火の玉となって爆散した。
「閣下、4時のほうから帝国軍の新手の艦隊! 3個艦隊です!」
それはまさに、ヴァンフリート~ティアマト間の細い回廊を抜けて、援軍に駆け付けたフォーゲル機動艦隊群であった。
「これは参ったね。敵はどうやってヴァンフリートからティアマトまでやってきたんだろうか。まさに魔術師だね。それに、いいタイミングで援軍に駆け付ける。まさに良将と言っても過言じゃないだろうな」
そう感嘆する彼に、参謀長のムライがせきばらいをして言う。
「閣下、そう感嘆している場合ではありません」
「おっと、そうだった。こちらもいくらか損耗している状態で、本隊とこの援軍とを相手するのはまさに無謀だ。フィッシャー准将。我が艦隊は後退。ビュコック司令長官の主力艦隊と合流して、艦隊を再編。再び仕掛ける」
「了解しました。しかし、ここで攻勢を中止していいものでしょうか?」
「大丈夫だと思うよ。彼らの後ろには機雷群がとうせんぼしているし、援軍がここに駆け付けるのに時間がかかったことを考えると、彼らがやってきた道も大軍が通るのは難しいと思える。結局、帝国軍が追い詰められてるのは変わらない……はずさ。彼らが、後ろの機雷群をどうにかする魔法を持っていない限りはね」
そう。『魔法』がなければ、帝国軍に逃れる術はない。だが……。
「ですが、閣下……」
傍らに立つフレデリカが、小声でヤンに話しかけてきた。ヤンも小声で返す。
「ん?」
「もしかして忘れてませんか? ほら、原作でのアムリッツァで帝国が使った……」
「あぁ、そうか……。それはしまったなぁ」
どうやら、ヤンの頭の中の悪魔が悪さしていたらしい。彼は忘れていたのだ。原作のアムリッツァで、帝国が同盟軍の背後に敷かれていた機雷群を一掃した『魔法』を。
「だが、今思い出したところで仕方ない話さ。今は、帝国軍が都合よく、あれを持ち出していないことを祈ろう」
「そうですね……」
だが、そのような都合のいい願望こそ、得てしてかなわないものである。
* * * * *
「フォーゲル司令。敵艦隊は10時方向に後退を開始。どうやら、敵の本隊と合流を図るようです」
「そうか。とりあえず、どうにかなったな。後は仕掛けだけか。仕掛けを持たせたアイゼナッハ艦隊のほうはどうだ?」
「はい。まもなく、イゼルローンとティアマトの境界付近に到着すると連絡がありました」
「うむ」
わしは副官のバルトハウザー准将の報告にそううなずいて、再び正面を見据える。
敵艦隊はいまだ決着をつけるのを諦めていないようだ。再編を行っているものの、撤退する気配がないのがそれを物語っている。
おそらく、再編が済み次第、再び攻勢をかけてくるはずだ。ローエングラム公を討ち取り、この戦いに決着をつけるために。アスターテにいたと思われる艦隊までここにいるということは、まさにそのつもりなのだろう。
願わくば、奴らが再び攻め込んでくれる前に、仕掛けが完成してくれるといいのだが。
と、そこに、ローエングラム司令長官から通信が入った。
「援軍ご苦労であった。卿のおかげで、私も、主力艦隊の将兵たちも助かった。礼を言う」
「いえ、とんでもありません。主君を助けるのは、臣下の務めでありますゆえ」
「そうだな。だがそれでも、この厳しい状況は変わらぬ。背後に機雷群がある限り、追い詰められていることに変わりはないのだからな」
「いえ、心配には及びません。実は、キルヒアイス軍務尚書が、我らにこの事態を打開する仕掛けを渡してくれておりました。ただいま、その仕掛けを持ったアイゼナッハ提督が、それを仕掛けている最中ですので」
「そうか……」
と、そこに警報が鳴り響いた! そして、バルトハウザーがさっそく報告してくる。
「司令。叛乱軍艦隊が再び前進してきました!」
「よし、艦隊群全艦隊前進! 他の艦隊と共に大本営直属艦隊の前面に展開。『仕掛け』ができるまで、ローエングラム公を守り切るぞ!」
「……あの、フォーゲル司令。水を差すようで済まぬが、それでは『仕掛け』ができたら見殺しにしていい、というようにも聞こえるが」
「まぁ、細かいことは気にするな」
というかヒルデスハイム、いたのね。
* * * * *
かくして再び戦いは始まった。我が艦隊もいるとはいえ、機雷源と敵艦隊にはさまれ、我が軍はかなり不利な戦いを……
強いられているんだっっ!!
……こほん。違う作品のネタはおいといて。
さらには敵軍も、ここでローエングラム公の首をあげようと必死に攻撃を仕掛けてくる。我がシェルフスタットⅡの僚艦も何隻か、敵の猛攻を受けて火の玉となっている。
このままでは、仕掛けができるより先に、こちらがやられてしまいそうだ。
「司令、敵の攻勢は激しく、このままでは突破を許すことに……」
「むむぅ……仕掛けはまだか!? このままでは持たんぞ!」
と、その時!
後方で爆発が発生した! アイゼナッハ艦隊の仕掛けか!?
「司令。アイゼナッハ提督より通信。『花火は盛大にあがった』とのことです」
「見てくれたまえ、司令! 後方の機雷群が!」
ヒルデスハイムの言葉に、背後を振り返ると……。
おぉ、やった! 後方の機雷群がきれいさっぱりなくなっているではないか!
これこそ、キルヒアイス軍務尚書がわしに持たせてくれた切り札の仕掛け、『指向性ゼッフル粒子』だ。
これを機雷群のある空間に充満させ、あとは艦砲で火をつければ、大爆発が起こりご覧の通り、というわけだ。
今回わしはこれを、アイゼナッハ提督に持たせ、まずはヴァンフリートにある機雷群を吹き飛ばした。そして、イゼルローンで指向性ゼッフル粒子を再び補充した後、ティアマトの境界に向かわせ、機雷群を排除してもらった、というわけだ。
どうして、一緒にここまで持ってこなかったか、というと、こちらのほうでやろうとすると、それを敵軍が阻止しようとしてくる可能性があるからだ。それでこちらに火がついてしまったら、大変なことになってしまう。
時間はかかったが、安全第一に事を進めた結果がいい結果を生んだようだ。急がば回れ、安全第一、これ絶対。
「よし、退路は開かれた! 大本営に撤退を打診せよ! 我が艦隊も、敵の追撃を阻みながら後退する!」
この撤退の打診は誠意をもって報われた。すぐさま大本営直属艦隊が撤退を開始し、他の艦隊も後退を開始した。
* * * * *
退路が開かれ、ただちに撤退を開始する帝国軍艦隊。だが、そのまま撤退を許すほど、敵も甘くない。
同盟軍は、ラインハルトの直属艦隊に追いつき、彼の首をあげようと、激しい追撃を仕掛けてくる。
フォーゲルの機動艦隊群は、他の艦隊とともに、後退しながらその追撃を阻むべく防戦する。
その戦いの中!
ルッツ艦隊の旗艦、スキールニルのエネルギー中和磁場を突き破り、レーザーがその艦体に突き刺さった!
運悪く、そこはメインのヘリウム3貯蔵庫で、爆発を起こしたヘリウム3が、艦隊を大きく激しく引き裂く!!
艦橋に大爆発が巻き起こり、爆炎が艦橋を多い、爆風が駆け抜ける!
気が付いた副官が見たのは、胸に建材が突き刺さったルッツの姿であった。
「て、提督!」
「ふ……。以前ローエングラム公と交わした。『生きて元帥杖を頂く』という約束、守れなくなってしまったな……」
「何をおっしゃいます。傷は軽いですぞ!」
そういう副官に、ルッツは首を振ってこたえた。
「バカを言え。胸に建材が刺さっているのに、何が軽いものか……。副官、済まぬが、俺の代わりに、ローエングラム公に約束を守れなかったこと……詫びておいて……くれ……」
そしてルッツはこと切れた。
そして彼の死に寄り添うように、しかし、彼の遺志を尊重するように、副官をはじめとしたクルーが旗艦を脱出した直後、スキールニルは大きな閃光を発して爆沈した。
ルッツという犠牲を出しながらも、帝国軍艦隊はそれからも粘り強く防戦を続け、どうにかイゼルローンの防空圏内まで到達、撤退に成功したのだった。
一方の同盟軍も、これ以上深追いして、トゥールハンマーの射程に入る愚を避け、撤退を開始。ここに帝国軍の同盟領侵攻作戦、そして第7次ティアマト会戦は終結したのである。
しかし、この戦いによる損害は軽視できないものがあった。
レンネンカンプとルッツという二人の将の死に加え、艦艇もかなりの数を損失。回復はいまだ可能ではあるものの、フォーゲル機動艦隊群以外の主力艦隊は、再編し、再び活動可能になるまで、少なくない時間を必要とすることを余儀なくされたのである。もっともフォーゲルの機動艦隊群も、かなりの損害を受け、再編しなければ再び動けない状態であるが。
もっとも、同盟軍のほうも、ラインハルトと停戦、和平するか、彼を討ち取るという戦略的目標を達成できなかった。こちらも、戦術的には勝ったが、戦略的には負けた、という結果に落ち着く。
かくして、帝国軍による同盟領侵攻作戦は、双方ともに不本意な形で終結を迎えたのである。
さてさて、お待たせしました!
新しい副官が決定しました!
新しい副官は、荒覇吐さんが投稿してくれたナギ・シュトラール(25・女)です! 荒覇吐さん、投稿、ありがとうございます!
なお、名前やキャラクターは、こちらで多少アレンジする場合がありますので、そこはご了承くださいませ(なるべく原案に近いようにする努力はします)
さてさて、次回は、戦いの後の色々の話です。ほっと一休み。
次回
『次なる戦いへの序曲(オーバーチュア)』
転生提督の歴史が、また1ページ
※事情により、次話の掲載は、来週の月曜日、10月19日になります。それまでお待ちいただけると幸いです。