ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった   作:ひいちゃ

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今回はカストロプ動乱の後編です!

最後にはあの男が登場するというクロスオーバーも!
しかも今回もあの男は、腹にいちもつ持っているようで……?

※なおこの話は、宇宙戦艦ヤマト2199の楽曲『ヤマト渦中へ』をBGMにしてお読みいただくと、さらに楽しんでいただけると思います(笑


第2話『おいでませ、カストロプへ』

 作戦を立て、カストロプ星域にやってきた我が艦隊群は、艦隊を二つに分けた。

 ナイゼバッハ中将が説明してくれたレーザ・フリント帯の外側にわしの直属艦隊とアイゼナッハ艦隊、ミュラー艦隊。そして内側にファーレンハイト艦隊が布陣している。

 

 わしの旗艦、シェルフスタットの艦橋の通信スクリーン。それに映し出されているファーレンハイト提督に、さっそくわしは指示を飛ばした。

 

「それではよろしく頼むぞ、ファーレンハイト提督。機動戦の名手である卿に言うのは野暮かもしれんが、奴らのフレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーア(火炎直撃砲)には、くれぐれも注意してくれ」

「助言感謝します。私も、あの兵器を喰らって塵になるのは勘弁していただきたいので、強く肝に銘じてまいります。それでは」

 

 そうして通信は切れ、ファーレンハイト艦隊は、カストロプ星域の主星・ケーニッヒグラーツに向けて移動を開始した。

 

* * * * *

 

 一方のカストロプ艦隊。

 

「公爵。敵1個艦隊が急速に接近してきました。この行軍の巧さからすると、相手はファーレンハイト艦隊のようです」

 

 その報告を聞いて、マキシミリアン公は笑いをもらす。

 

「くくく、わずか1個艦隊で、このフレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーアを擁する我が艦隊に挑むとは、なめられたものだな。よし、一発で奴らを宇宙の塵にしてやれ! フレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーア、発射用意!」

 

 号令一下、ブリッジクルーたちが作業を開始する。

 

「フレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーア、回路接続。エネルギーチャージ開始!」

「敵艦隊の座標計測、開始!」

 

 マキシミリアンの旗艦、『エリザベート』の前方下部のカバーが開き、巨大な砲身――フレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーアが姿を現す。そしてその先端に光が発生し、それはどんどんと強さを増していく。

 

「エネルギーチャージ120%! チャージ完了!」

「座標固定、設定完了! フレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーア、発射準備、完了!」

 

 その報告を聞いてマキシミリアンは不敵に笑い、そして言い放った!

 

「発射!」

 

* * * * *

 

 一方のファーレンハイト艦隊。

 

 旗艦アースグリムの艦橋で、副官のザンデルスが報告する。

 

「提督、やはり敵艦隊は、旗艦が前面に出ている陣形になっております。解析結果の通りですな」

 

 その報告に、ファーレンハイトもうなずく。

 

「あぁ。ワープは、前面に障害物があると転移座標がずれる。ましてや、あれだけのエネルギー弾だ。正確な転送をするためには、搭載艦を一番前に出すしかない、ということだな」

 

 と、そこに。

 

「提督! 我が艦隊の前方、射程外に高エネルギー反応!」

 

 緊迫するアースグリムの艦橋内。ファーレンハイトがすかさず指示を出す。

 

「来たか……! 全艦、回避運動、用意! ワープアウト位置の計測、正確に頼むぞ!」

「り、了解……!」

 

 さらに緊迫する艦橋。それは当然だろう。もしこれに失敗すれば、作戦成功する前に、自分たちはアースグリムこと宇宙の塵となり果てるからだ。

 

 限界を超えた集中力で、観測機器を注視するブリッジクルー。そして。

 

「来ました! 本艦の正面、誤差修正コンマ35! 距離2光秒(60万km)!」

「よし、全艦、データリンクで送られた射線の射線上より退避! 戦隊規模が無理なら各艦ごとの判断で構わん! 急げ!」

 

 ただちに散開するファーレンハイト艦隊。そして射線上からほとんどの艦が退避したところで、フレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーアの射線がその空間を薙ぎ払う。回避し損ねた何隻かの巡航艦がそのエネルギーを受け大破、轟沈した。

 

「第一波は、なんとかよけられたか。よし、全艦、Uターンして撤退! 奴らをXポイントまでおびき寄せる!」

 

 ファーレンハイト艦隊はUの字を描くように旋回し、星域の外縁に向かって移動していった。

 

 それを見て、マキシミリアンは歯噛みする。

 

「おのれ、仕留め損ねたか……! 特殊砲撃態勢解除! 奴らを追撃する。死にぞこないどもを逃がすな!」

「御意!」

 

 戦艦『エリザベート』のフレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーアが収納される。それが終わると、そのエリザベートを先頭にして、カストロプ艦隊が追撃を開始するのであった。

 

* * * * *

 

 ファーレンハイト艦隊が、カストロプ艦隊を誘導して、所定ポイントに移動する様子は、我が艦隊シェルフスタットのレーダーモニターにも映し出されていた。

 

 いや、実に見事だ。速度を巧みに調節し、引き離したかと思えば、奴らのフレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーア……あぁ長い。火炎直撃砲と呼ぼう……の射程にもう少しでかかろうかというところまで距離を縮め、そこからまた逃げて、見事に敵の「捕まえてやる」という欲を駆り立てるように艦隊を動かしている。こんな細かすぎる芸当は、わしではさすがに無理だな。

 

「さすがはファーレンハイト提督だな。うまく、奴らをポイントまでおびき寄せている」

「その通りですな。ただ、提督には餌役を任せて申し訳ないですが」

「そうだな。だが、こんなことはファーレンハイト提督ぐらいにしかできないだろう。後で特別手当を出してやらねばなるまい」

 

 と、そこに。

 

「司令! まもなく、敵艦隊がXポイントに到達します!」

 

 来たか! よし、ここから一大作戦の始まりだ!

 

「ファーレンハイト艦隊に、停止の指示を出せ! コンテナ、敵艦隊に向けて射出! 目標、敵旗艦!」

 

* * * * *

 

 一方のカストロプ艦隊。追っていたファーレンハイト艦隊が停止したことは、カストロプ艦隊側でも把握していた。

 エリザベートのマキシミリアンが笑みを浮かべて言う。

 

「奴らめ、ついに諦めたか。よし、フレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーア発射用意」

 

 しかしそこに。

 

「こ、公爵! 我が艦隊の周囲から隕石が!」

「なに!?」

 

 驚くマキシミリアン。部下の報告の通り、艦隊に向けて、いくつもの隕石らしきものが投射されてきたのだ。それはかなりの大きさで、直撃すれば戦艦でも撃沈を免れないほどのものである。

 

「ちっ、邪魔が入りおったか。全艦、砲門開け! 隕石を我が艦隊に一個たりとも近づけるな!」

 

 カストロプ艦隊の各艦が対空砲火で、隕石らしきものを撃ち落としていく。意外と、隕石は簡単に破壊されていく。

 しかし、その隕石はそれだけではなかった。中から、何か青い小隕石のようなものが飛び出してきたのだ!

 

「な、なんだあれは!?」

 

 驚く副官。一方のマキシミリアンはその正体に気づいて、愕然とした。

 

「あれは、まさか……!」

 

 そんな中、対空砲火のレーザーの一条が、振ってきた小隕石に直撃する。すると、小隕石は簡単に砕け散り、対空砲火を発射した戦艦にレーザーを撃ち返してきたのだ!

 

 降り注ぐ小隕石群から次々とレーザーが降り注ぎ、何隻ものカストロプ軍艦艇を沈めていく。

 

「全艦、砲撃やめ!」

「公爵!?」

「あれは、レーザ・フリントだ!」

 

 レーザ・フリント――。 レーザーが励起結晶化した物質である。

 レーザ・フリントは共通した性質として、ある一定以上の衝撃を受けると崩壊し、内部に封じ込められたレーザーを、その衝撃の方向に発射する性質を持つ。

 つまりレーザ・フリントは、破壊した時、それを発射したものに向けてレーザーを撃ち返す特質を持っているのだ。

 

 さて。それからも次々と、隕石……実は隕石に偽装したコンテナは射出され、カストロプ艦隊に向けてレーザ・フリントをばらまいていく。たちまち、エリザベートは、無数のレーザ・フリントに取り囲まれてしまった。今、対空砲火を撃ったり、ましてや――。

 

「おのれ、奴らめ。レーザ・フリントで我らのフレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーアを無力化するとは……!」

 

 そう、フレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーアを使うことがあれば、エリザベートは、無数のレーザ・フリントからのレーザーでまる焼けにされてしまうだろう。

 

 そしてそこに。

 

「こ、公爵。我が艦隊の左右に、帝国軍艦隊が!」

 

* * * * *

 

 レーザ・フリントがいい具合に敵旗艦を取り巻いたのを見て、我が艦隊は通信妨害を解除し、敵艦隊に接近していった。

 

 作戦は見事に成功したようだ。敵をこのポイントまでおびき寄せて、レーザ・フリントを詰めたコンテナを射出し、あの火炎直撃砲を持つ艦を取り巻いて、それを封じる。

 とはいっても、あの旗艦が他の艦に囲まれて守られている状態では、レーザ・フリントで取り巻いてもただそれだけで、敵を撃滅するのにはつながらない。その状態の敵にうっかり攻撃すれば、逆に自分たちがレーザーで黒焦げにされるからだ。

 だが、あの火炎直撃砲を使うには、ワープを使うという特性上、艦隊の先頭にあの艦がなければならない。その特性が幸いした。先頭に立っているあの艦をフリントで取り巻いてやれば、あの厄介な艦の動きを封じたうえに、その後方の敵艦隊を自由に攻撃することができるからだ。

 

「見事ですな、提督。レーザ・フリントで敵の火炎直撃砲を封じるとは」

「しかも、あの艦だけを孤立させるとは、さすがです」

 

 ナイゼバッハ中将と、副官のバルトハウザー准将に言われて、わしは少し照れながら返す。

 

「いや、ナイゼバッハ中将があのレーザ・フリントのことを教えてくれたからだ。データを解析して得られたあの兵器の特性と、レーザ・フリントのことを知らなければ、この作戦は立てられなかったからな」

 

 そのわしの後ろでは

 

「今こそ、突撃! 突撃! とつげーき!!」

 

 と、我が艦隊の政治参謀、ヒルデスハイム伯が騒いでる。ではそろそろ、彼の期待に応えてやるとしようか。

 

「これで、敵の新兵器は封じた! 全艦隊、突撃! くれぐれも、敵旗艦には当てないように気をつけろよ!」

 

 かくして、右から我が艦隊とアイゼナッハ艦隊。左からミュラー艦隊が襲い掛かる。

 ファーレンハイト艦隊は、下の方から回り込み、敵艦隊を襲う。

 

* * * * *

 

 一方のカストロプ艦隊である。

 

「公爵! 左右から帝国軍艦隊が!」

「おのれ……! だがこのままで終わると思うなよ! エリザベート! ここはお前に任せる! 帝国軍のハエどもを追い払え!」

 

 スクリーンに映し出されたマキシミリアンの妹、エリザベートが優雅に微笑みながら一礼する。

 

「かしこまりましたわ、お兄様。お兄様の艦には、指一本触れさせません。その代わり、この戦いが終わったら、また私を抱いてくださいませね?」

「おぉ、いくらでも抱いてやるともさ!」

 

 そのマキシミリアンの言葉を聞いたエリザベートは再び一礼すると通信を切り、主力艦隊に号令を下した!

 

「全艦、左右に展開! お兄様の艦を囲むように布陣し、敵を迎撃せよ!」

 

* * * * *

 

 残念ながら、敵の火炎直撃砲を封じれば楽勝、とはならなかったようだ。

 敵艦隊は左右に分かれ、ちょうど敵旗艦を背にするような配置で迎撃してきたからだ。

 こうなると、今度はレーザ・フリントで旗艦を取り囲んだのが仇になってしまう。うかつに攻撃して弾を外せば、旗艦を取り巻いているレーザ・フリントを崩壊させてしまい、今度は自分がレーザーに焼かれることになるからだ。

 その巧みな戦術に、我が軍は攻めあぐねていた。

 

「まさか、レーザ・フリントで取り囲んだ敵旗艦のあのように利用するとはな。なかなかやる……」

 

 わしはその戦術に舌を巻いた。こちらの策を逆に利用するとはなかなかな軍才だ。敵でなければ、我が艦隊の陣容に加えたいぐらいだ。

 とはいえ、感嘆してばかりもいられない。何か手を打たなくては。

 

 戦術スクリーンを見ると、敵艦隊は旗艦の左右に展開してはいるが、上下には布陣していないようだ。……よし。

 

「ファーレンハイト提督に通信! 我が艦隊の側に展開している敵艦隊を、その下方向から襲えと伝えろ!」

「了解!」

 

 それで戦局は再びこちらに傾いた。下方から襲われた敵艦隊はたちまち動揺し、崩れだしたのだ。一方のミュラー艦隊は、ピンポイント攻撃を心掛けながら、敵艦隊に猛攻を仕掛けている。ミュラー艦隊は、電磁シールド『イージスの盾』を持つパーツィバルはもちろん、所属している各艦もエネルギー中和磁場の出力は高い。ちょっとやそっとのレーザーぐらいであれば大した被害は出ないのだ。

 

* * * * *

 

 カストロプ艦隊旗艦エリザベートの艦橋には、悲壮な報告が入り乱れている。

 

「左翼艦隊、壊滅! ザイデリッツ提督、戦死の模様!」

「右翼の艦隊、被害多数! 損耗率、73%!」

 

 そしてそこに、彼らの艦隊に致命的となる一瞬をもたらす報告がもたらされた。

 

「公爵! 戦艦『マキシミリア』撃沈!」

 

 それは、彼の妹、エリザベートの座乗艦の名前である。その報告に、マキシミリアンは愕然とし、目をむいた。

 

「な、なんだと!? エリザベートは!? エリザベートはどうなった!?」

 

 彼の問いに、レーダー手は悲痛な面持ちで答えた。

 

「シャトルの脱出は確認されていません。おそらく、『マキシミリア』と共に戦死されたものと……」

 

 その報告に、マキシミリアンの表情が、悲しみと狂気が入り混じったものに変貌する。

 

「おのれ、帝国軍ども! よくぞ私のエリザベートを……! 死なばもろともだ! フレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーア、発射用意!」

 

 その命令に、ブリッジクルーたちは驚愕し、戦慄する。そんなことをすればどうなるか……。

 さっそくフレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーアの担当オペレーターが異を唱える。

 

「お、お待ちください公爵! そんなことをすればこの艦は……!」

 

 レーザ・フリントのレーザーを浴び爆沈する。

 それを言おうとするが、その時間は与えられなかった。ブリッジクルーは再び驚愕する。

 

 マキシミリアンが、そのオペレータを射殺したからだ。

 

「黙れ、黙れ黙れ! 我々の身がどうなってもかまわん! 例え地獄の炎に焼かれようが、帝国軍の奴らを一人でも多く道連れにしてやるのだ! 反対するものはよもやおるまいな!?」

 

 そう言うと、マキシミリアンがフレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーアの制御席に走っていき、操作を始める。

 だが。

 

「公爵!」

「ん?」

 

 声にマキシミリアンが振り向いたとたん。

 

 ズキューン!!

 

 銃弾が、彼の左胸を貫いた。副官が、主君を撃ったのだ。

 

「死ぬなら勝手に一人で死になさい! 我々はあなたの巻き添えになるのはまっぴらごめんだ!」

「き、貴様ぁ……!!」

 

 マキシミリアンは反撃しようとするが、ふらついていて照準が定まらない。彼は銃を乱射し、その一発がコンソールを貫いた。

 

 さらに、ブリッジクルーたちもマキシミリアンに向けて発砲し、カストロプ公マキシミリアンは、ハチの巣になり、血まみれになるという無様な姿で息絶えた。

 

 ことを終えた副官がブリッジクルーに命令を下す。

 

「帝国軍に降伏を打電せよ! フレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーア、緊急停止!」

 

 だがすぐに絶望的な報告がもたらされる。

 

「だ、ダメです! コンソールに撃ち込まれた公の銃弾で、システムが暴走、止められません!」

「なんだと!?」

「ふ、副官! 周囲のレーザ・フリントが!!」

 

* * * * *

 

 幕切れはあっけなかった。

 

 敵の旗艦は再び火炎直撃砲の発射態勢に入ったのだ。発狂でもしたのか?

 そして、火炎直撃砲の砲口に熱エネルギーが発生する。その熱エネルギーによって、周囲のレーザ・フリントが崩壊し、そのフリントからのレーザーが、火炎直撃砲の砲身に集中した。

 火炎直撃砲は大爆発し、さらに艦体の接続部からもスパークが発生する。チャージしていた火炎直撃砲のエネルギーが逆流したのだろう。それで、あの艦の末路は確定した。すなわち―――。

 敵の旗艦は各部から火を噴き始めた。何しろ、プチ・トゥールハンマーと言っても差し支えないほどのエネルギーがたちまち艦内に逆流したのだ。それが弾薬などに引火したのだろう。

 そして旗艦は、激しい爆炎とともに爆発四散した。あの厄介な火炎直撃砲とともに。その爆発によって、さらに周囲のフリントが崩壊していき、敵旗艦のあったポイントは、レーザーの激しい光が飛び交い、美しい文様を形作った。そしてそれもやがて消えていく。

 

 それを見て、わしは一息ついた。

 

「これで終わったな……。各艦隊は、ただちに敵艦隊の残存部隊に投降を打電せよ。投降に従わない部隊は、容赦なく殲滅してかまわん」

「了解」

 

 わしの命を受け、バルトハウザーがクルーに指示を飛ばす。やれやれ、大変な戦いだった。

 

 だが、ともあれこれで、カストロプ戦役は終わりを告げた。

 

 だがそれは、また新たなる戦いのプレリュードに過ぎなかったのである。

 

* * * * *

 

 銀河帝国と自由惑星同盟にはさまれた星域にある小さな惑星国家フェザーン。

 そのフェザーンの領主府の豪奢な部屋にて、フェザーンの自治領主、アドリアン・ルビンスキーが、彼の腹心とともに、部下から報告を受けている。

 

「――以上が、カストロプでの戦闘についての詳報です」

「わかった。引き続き、情勢の調査を続けろ」

「ははっ」

 

 部下が退室すると、ルビンスキーは傍らに立つ、自分の腹心に顔を向けた。

 

「シロッコ。お前がカストロプにくれてやった『フレーメン・ゲットローフェン・ゲヴェーア』。大した役には立たなかったようだな」

 

 その嫌味が少し混じった言葉に、彼の腹心……パフティマス・シロッコは、表情を一切崩さずに答えた。

 

「道具は良き使い手があってこそ、ということでしょう。あのカストロプ公とかいう男は、所詮カトンボに過ぎなかった、ということかと」

 

 彼の言葉を聞いたルビンスキーは鼻を一度鳴らした。

 

「まぁいいだろう。だが、カストロプの件が失敗に終わったとなれば、計画は予備プランに移行せねばならんな」

「わかりました。あの男への軍事力供与をさらに強化することとします」

「うむ、お前に任せる」

 

 そう言うと、ルビンスキーはあとをシロッコに任せて、執務室を退室していった。閉じられた扉を見つめながら、シロッコは独白する。

 

(カミーユ・ビダンに殺されたことは無念だったが、このような世界に転生できたのは、まさに僥倖だった。そう考えれば、あのような末路も悪くない)

 

(アドリアン・ルビンスキー。私をいいように使っているつもりだろうが、私はこのままで終わる男ではないぞ。必ずお前を追い落とし、私がこのフェザーンを、いやこの銀河を奪い取ってみせよう。お前が、所詮は品性のない俗人に過ぎないということを思い知らせてくれる)

 

 パフテマス・シロッコは、その顔に、邪悪な笑みを浮かべた。

 




なお、この世界でのシロッコは、原作でのケッセルリンクを謀殺して、ルビンスキーの腹心に収まっています。
果たしてこの男が、どのような謀略を仕掛けるのか……?

それは、作者の筆のノリこそ知る(笑

次回『その勲章、怪しすぎませんか?』

転生提督の歴史が、また1ページ
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