ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった   作:ひいちゃ

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さあ、いよいよ新章!
ラインハルトとヤンの決戦が始まりますぞ!(あれ、ブラ公は?)
果たして、ヤンが次に放つ一手は?


帝国対同盟、決着編
第21話『プラン・ガンマ』


 イゼルローン攻略戦から半年後。時は既に、ブラウンシュヴァイク公がフォーゲルに転生した第四次ティアマト会戦から三年が経過していた。

 

 アスターテ星域の惑星アトラ・ハシースにある、同盟軍ヤン独立軍司令部。そこで、独立軍司令官ヤン・ウェンリーは気をもみながら、ある情報を待っていた。

 帝国軍の同盟領侵攻に対して仕掛けたプラン・ベータ、そして前回のイゼルローン攻略戦、プラン・アルファ。それはいずれも、あともう少しということでひっくり返され、結果的に失敗に終わってしまった。

 そして今。第七次ティアマト会戦での帝国のダメージ、そしてイゼルローン要塞の無力化で、情勢は同盟側に傾きつつある。これは、プラン・ガンマを発動する好機であると彼は感じていた。

 

 しかし、プラン・ガンマを発動するには肝心なピースが一つ足りないのだ。前々回のベータ、前回のアルファの轍を踏まないためにも、彼はピースが全て揃い、発動するに十分な状態になるまで、発動を保留していた。

 

 そして数日後。フレデリカが、彼が待ち望んでいた情報を持ってやってきた。

 

「ヤン様、お待たせしました。情報部から報告が届きました」

 

 フレデリカが手渡してきた資料を、ヤンは手に取り、読みふけった。

 それは、帝国の政財界に対するコネについての情報、そして、ある星域についての情報だった。

 ピースがそろったことを確信した彼は、表情を引き締めた。

 

「よし、これで必要なものはそろったな……帝国領に侵攻するか」

 

 それを聞いて、フレデリカは目を丸くした。

 

「や、ヤン様、正気ですか? そんなことをしたら、アムリッツァみたくなるのでは……」

 

 そのフレデリカの懸念に、ヤンは苦笑を浮かべて返した。

 

「心配しなくていいよ。行き当たりばったりのことではないし、ちゃんと目的があってのことだから。それに、だらだら侵攻するつもりもない。この後、政府と統合作戦本部、宇宙艦隊司令部、そして我が独立軍とで作戦会議を行う。オンライン会議の準備をしてくれないか」

「あ、はい、わかりました」

 

* * * * *

 

 そして、ヤン独立軍、同盟政府、統合作戦本部、宇宙艦隊司令部四者によるオンライン会議が始まった。

 

「では、これより会議を始めます。作戦の大筋としては、以下の通りです。フェザーンを攻略して制圧し、しかる後に帝国領に侵攻します。侵攻の最終目的は、ウォルテンブルグ星域とその周辺宙域です」

 

 その作戦案に、参加者がざわめいた。やがて、ビュコックが挙手して発言を許可する。

 

「既にイゼルローンが無力化された今、フェザーンを通らずとも、イゼルローンから進めばよかろう。なぜわざわざフェザーンを通るか、説明してもらえるかね?」

「はい。理由は二つあります。一つは、この後にとっておくとしまして、もう一つについて説明しますと、目的はフェザーンを通過することだけではありません。フェザーンを制圧することで、情報と金融を抑えることです」

「む……」

 

 うなるビュコック。彼は、ヤンの答えから、その考えを読み取ったのだ。さすが老将というところだろう。

 

「フェザーンは、同盟、帝国双方にとっての金融の要です。ここを制圧すれば、帝国の金融は少なからず動揺することでしょう。これによって、帝国に揺さぶりをかけます」

「なるほどな……」

 

 ビュコックは、ヤンの作戦に感心しながらうなずいた。続いて、ムーア提督が手をあげる。

 

「ウォルテンブルグまで攻めるのならば、そのまま一気にオーディンを突いたほうがいいと考えるが?」

 

 また、別の意見も出た。ボロディン提督からだ。

 

「だが、あまり進出しすぎると、帝国軍に補給線を寸断され、先の同盟領侵攻作戦の帝国軍と同じになる可能性もある。オーディンまで攻め込むのはもちろん、ウォルテンブルグまで進出するのも危険が伴うのではないだろうか」

 

 両方の意見はもっともだ。ヤンはうなずいて、口を開いた。

 

「ムーア提督の意見はもっともですし、ボロディン提督の懸念ももっともです。ですが、その危険を覚悟してでもウォルテンブルグとその周辺宙域に進出することは不可欠ですし、オーティンまで行く必要はありません。なぜなら、この作戦の目的は、オーディンではなく、このウォルテンブルグにあるガス惑星、ウォルテンブルグαにあるからです」

「……なるほど、ヘリウム3か」

 

 ウランフ提督が得心したように、そう言ってうなずいた。ウォルテンブルグαは、ウォルテンブルグ星域にある巨大なガス惑星だ。

 

「はい。フェザーンを抑えて、帝国を金融面から揺さぶるのと同時に、帝国内における、最大のヘリウム3供給源であるウォルテンブルグαを抑えることで、ヘリウム3の軍への供給を断ちます。そして我が軍が周辺宙域でゲリラ戦を繰り返して、帝国軍の出撃を促せば、そのうちヘリウム3の備蓄が足りなくなり、帝国軍は半身不随になっていくでしょう」

「なるほどな……」

「さすがに帝国軍が動けなくなれば、こちらからの和平に応じざるを得なくなるでしょう。民需分まで軍事に回して戦いを継続しようとすれば、民衆の帝国への反感が高まってしまいますから。改革者としてありたいであろうローエングラム公としては、それは避けたいところでしょう」

「なるほど。もしかすると、半身不随になる前に、決戦に挑んでくる可能性もあるな。そうなれば……」

 

 ビュコックがそう言うと、ヤンはうなずいて答えた。

 

「はい。そうなれば、今一度、プラン・ベータ……帝国軍と決戦して、帝国軍に決定的なダメージを与える……に持っていける可能性もあります。もっとも、そうなったとしても、無理に勝つ必要はありません。その決戦をしのげば、その決戦でヘリウム3を使いつくした帝国軍はおしまいです」

 

 ヤンがそう言うと、皆から感嘆の言葉がもれた。

 

「フェザーンを抑えるもう一つの理由もそこにあるのです。情報も抑えて、帝国軍にこちらの狙いを気付かせないようにすること、これが大事です。あのローエングラム公のことですから、それでもこちらの狙いに気づくかもしれませんが、それでも、こちらが作戦を遂行する時間をいくらか稼ぐことはできると考えます」

 

 そこでヤンは、政府代表の、アイランズ議長に目を向けた。

 

「前にも言った通り、この戦略プランは、帝国を倒すことではなく、帝国を和平の席に引きずり出すことが目的です。政府には、帝国政府へのコネを通して、和平の準備をお願いします」

「うむ、了解した」

 

 アイランズがそう言うと、ヤンはうなずき、統合作戦本部と宇宙艦隊の面々に向きなおった。

 

「それでは、続いて、細かい作戦案の立案に入ります。先ほどボロディン提督が指摘されたように、この作戦はかなりの危険が伴います。補給を断たれれば、窮地に陥るのはこちらのほうでしょう。それだけに、作戦案と、兵站計画は、ペーパープランではない、しっかりしたものにしなければなりません。それではまず……」

 

 そして会議は、細かい作戦プランの立案に入っていった。

 

* * * * *

 

 一方、フェザーン。

 その自治領主公館にて、補佐官のシロッコが、自治領主のルビンスキーに報告を行っていた。それは、同盟軍が帝国領への侵攻作戦を練っている、という話だ。

 

「なるほど、了解した。ではシロッコ、その情報をただちに帝国に流せ」

「帝国へ、ですか?」

「そうだ。その作戦を成功させるわけにはいかん。今、帝国と同盟の軍事バランスを崩させるべきではない。軍事バランスが崩れることは、このフェザーンの消滅を意味する」

「とは言いましても、もうバランスの復元は難しいのでは。あえてバランスを保つよりは……」

 

 シロッコがそう反論しようとすると、ルビンスキーは、不敵で不気味な笑いを浮かべて、彼のほうを見た。

 

「シロッコ、貴様が何を考えているか知らんが、余計なことはするなよ。この俺が、先のイゼルローン攻略戦で、お前が何をしたか知らないと思っていたのか?」

「……!」

「貴様が俺を出し抜かんとしているのはお見通しだ。いいか、俺を失望させることはするなよ。少なくとも俺は、権謀術数の世界において、お前より一日の長があると思っている」

「は……」

 

 そう言って、シロッコはその場を退出した。自分のオフィスに向かう途中で、シロッコは改めて、ルビンスキーの底知れなさを感じていた。

 

(イゼルローン攻略の情報を握りつぶしていたことに気づいていたとは、確かにルビンスキー、恐るべき男だ。ジャミトフより上かもしれん)

 

 だがシロッコは、自らの策謀を止めるつもりはなかった。なぜなら。

 

(だが私とて、ジャミトフやハマーンと策謀を戦わせた男だ。このまますごすごと、奴の下に甘んじる気はない。まさに今が、我が野望の一歩を踏み出すべき時なのだ。ルビンスキーは幸いにも、私の切り札に気づいていないようだし、今を逃す手はない)

 

 そう言うとシロッコは、レポートを破り捨てた。

 

(私の元に駆け込んできたグリルなんとかという男はどうするか……。あんな男でも、まだ使いようがあるかもしれん。もうしばらく生かしておくことにしよう)

 

 そう考えをまとめると、シロッコは自室の中へと入っていった。

 

* * * * *

 

「閣下、ボロディン提督、アップルトン提督、アル・サレム提督の艦隊が到着しました」

 

 惑星アトラ・ハシースの衛星軌道上。旗艦ヒューベリオンの艦橋の指揮デスクにあぐらをかいているヤンに、フレデリカがそう報告する。さらに、艦隊の副司令官のフィッシャー少将が続いて報告する。

 

「我が独立軍の各艦隊、出撃準備完了。いつでもいけます」

 

 ヤンはその報告にうなずくと、表情を引き締め、前を見据えて言った。

 

「よし、全艦出撃。目標はフェザーンだ!」

 

 かくして、ヤン独立軍艦隊は、イゼルローンを出発した。

 

 ラインハルトとヤンの対決の第二弾、その前哨戦を知らせる角笛が、今鳴り出したのだ。

 




次回、シロッコがいよいよ動き出します!

次回「シロッコ、立つその2(その2なのは、既にZガンダムのサブタイトルにあったからです)」

転生提督の歴史が、また1ページ
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