ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった 作:ひいちゃ
アムリッツァを発した我が艦隊群は、ヨーツンハイム星域に達していた。
今回は、我が主力艦隊に、ファーレンハイト大将、アイゼナッハ大将、ミュラー大将のそれぞれの艦隊、そして、バルトハウザー少将、トゥルナイゼン少将、ザウケン少将らがそれぞれ率いる半個艦隊。合計44000隻全てを出動させている。
今回はウォルテンブルグ奪回のためには、力を出し惜しみしていられないことと、アムリッツァに半端な戦力を残しておいても、向こうがイゼルローン近辺に展開させているかもしれない予備戦力の攻撃を受けたら勝ち目がないことがその理由だ。アムリッツァを奪われたら、今回の戦いが終わってからまた取り返せばいい。奪回に成功したら、もうヘリウム3の心配はないのだから。
「ナイゼバッハ、ローエングラム公らの艦隊は?」
「はい。もうそろそろ、アイゼンフートに突入するころです」
わしの質問に、総参謀長のナイゼバッハがそう答える。ならば、気を引き締めなくてはな。
「よし。ローエングラム公らがアイゼンフートを突き、ウォルテンブルグの敵艦隊が星域を出たところを狙って、ウォルテンブルグ星域に突入する。気を引き締めろと伝えよ」
「はっ」
そしてわしは、戦術スクリーンをにらみつける。そして……。
ウォルテンブルグの艦隊が動き出し、そしてウォルテンブルグから出た。今だ!
「よし、全艦、ウォルテンブルグへ突入せよ!」
わしの号令一下、我がフォーゲル機動艦隊群全艦隊は、ウォルテンブルグに突入した!
目指すは、ウォルテンブルグα付近にある軍用ヘリウム3採取ステーションだ。そこを制圧すれば、作戦は成功となる!
「閣下、ステーションの周囲に敵の輸送艦が大量に放置されているようです」
「なに?」
本当だ。ステーションの前面に、まるでこちらの行く手を阻むかのように、輸送艦が並んでいる。
どういうつもりだ? わざと忘れて行った? いやそんなことはあるまい。それでは何が……。ともあれ、警戒するに越したことはあるまい。
「全艦、速度を緩めよ」
「上級大将閣下、何を言っておられるのか! 突撃、突撃ですぞーーー!! うぐっ」
ヒルデスハイムがそう喚くが、後ろから副官のナギ大尉に睡眠薬を打ち込まれて昏倒した。
と、その時!
* * * * *
「司令長官。敵艦隊、速度を緩めたようです」
同盟軍宇宙艦隊総旗艦、リオ・グランデ。その艦橋にて、チャン・ウー・チェン総参謀長が、上官であるビュコック司令長官に報告する。
「さすがに不自然と感づかれたかな? だが、わしらの役目はここで敵を食い止めることじゃ。作戦を変更する必要はない。全艦、外装を爆破せよ! 全艦、戦闘態勢じゃ!」
ビュコックの指令に従い、軍用ヘリウム3採取ステーション前面に展開していた輸送艦たちが次々と、その外装を爆破、排除していく。
そしてその中から現れたのは……。
同盟軍の主力艦隊。ビュコックの司令部直属艦隊、パエッタ艦隊、ルフェーブル艦隊、ホーウッド艦隊、ウランフ艦隊、ムーア艦隊、合計6個艦隊48000隻の姿だった!
* * * * *
「は、叛乱軍艦隊……なぜここに……! 彼らはまだここにたどり着いていなかったのでは……!」
突然目の前に現れた叛乱軍艦隊を前に、ナイゼバッハ総参謀長がそう驚愕する。そう、確かに事前の情報では、フェザーンからウォルテンブルグへは、輸送艦隊の行き来はあっても、艦隊が移動したという観測はなかった。つまり、奴らの主力はそもそも移動すらしていないはずなのだ。なのになぜ? 魔法なのか?
む、待てよ? 輸送艦隊の行き来は……? そうか、そういうことか!
「そういうことか……してやられたわい」
「提督?」
聞いてきたナイゼバッハに、わしは自らの推測を語る。
「木の葉を隠すなら森の中。船を隠すには船の中。奴らは、艦を輸送艦に偽装して、ウォルテンブルグに移動していたのだ。もちろん、本物の輸送艦と一緒にな」
「なんと……」
「うまいことを考えたものだ。情報では、フェザーンでの妨害工作によって、主力艦隊の出発は遅れていたという。彼らはそれを逆手にとって、我らに気づかれずにここまでやってきていた、というわけだ」
「なるほど……ですが、いかがなさいます?」
再びナイゼバッハが聞いてくる。だが、わしの答えは初めから決まっている。
「いかがするも何もあるまいよ。このまま攻撃を仕掛けて、敵艦隊を排除し、ウォルテンブルグαを奪回する。それ以外に何がある」
「確かにそうですな……」
「戦力はほぼ同等。やってやれないことはないはずだ。我が艦隊が敵を撃破するのが先か、それともヘリウム3が先に切れるかの勝負ではあるが。よし、全艦、前進、攻撃開始!」
かくして我が艦隊は、敵艦隊と戦端を開いた!
* * * * *
一方、アイゼンフート星域では、すでにヤン独立軍の艦隊と、帝国軍のラインハルト率いる大本営直属艦隊、ミッターマイヤー艦隊、ロイエンタール艦隊、ビッテンフェルト艦隊が交戦を開始していた。
そのさなか、ブリュンヒルトにもその一報が入る!
「なんだと!? ウォルテンブルグにも敵艦隊が!?」
「はい。策をもって、密かに主力部隊をウォルテンブルグに移動させていたとのことです。現在、フォーゲル機動艦隊群が交戦中とのこと」
ラインハルトは唸った。この作戦しかなかったとはいえ、まんまと敵の術中にはまったことを悔やんだ。
だが、もはや退くわけにはいかない。戦いは始まっているのだ。
「仕方あるまい。ならば、このまま目前の艦隊を撃破するのみ! それによって敵軍が動揺し、撤退するか、それとも戦局が変わるのに賭けるしかない! 全艦、突撃せよ! 敵の防御陣を突き破り、敵の指揮官を討ち取るのだ!」
ラインハルトの号令一下、帝国軍艦隊は、ヤン独立軍艦隊に突撃していった。
* * * * *
一方の、同盟軍、ヤン独立軍総旗艦ヒューベリオン。その艦橋で、総参謀長のムライが、ヤンに報告する。
「閣下、敵艦隊、こちらに突進してきます。我らの陣を突破しようとしているようです」
ムライの報告に、ヤンはうなずき、紅茶を一杯すすった。
「まぁ、ローエングラム公としては、私を討つしか逆転の手はないだろうからね。フィッシャー少将。我が艦隊は所定の作戦に従い、防御戦を行う。各艦隊の運用を頼むよ」
「はっ」
「くれぐれも、ミッターマイヤー艦隊の機動力と、ビッテンフェルト艦隊の攻撃力には気を付けてくれ。これらについては、下手すると、せっかくの我が軍の陣がめちゃめちゃにされかねない」
「了解しました」
フィッシャーがそう答えると、ヤンは再び紅茶を飲み干すと、前を見据えて号令を発した!
「よし、全艦、攻撃開始!」
* * * * *
ラインハルト率いる帝国軍艦隊は、ヤンが敷いている防御陣を突破し、ヤンの直属艦隊をその牙にかけんと猛攻撃を仕掛けていた。ことに、ビッテンフェルト上級大将の艦隊の攻撃力はすさまじく、前面の同盟軍の艦艇を次々と火の玉にしていく。
同盟軍は必死に砲火を浴びせるが、ビッテンフェルトはそれ以上の攻撃力で、同盟軍の陣を崩壊させていく。もちろん、ミッターマイヤーとロイエンタール、そしてラインハルトも、猛攻を浴びせ、同盟軍の陣を崩していった。
そしてついに! 帝国軍は同盟軍の陣を突き破った!
「見たか、叛乱軍ども! 我が黒色槍騎兵艦隊に敵はない!」
「お、お待ちください、閣下! あれを!」
副官のオイゲン大佐に言われて前に向きなおったビッテンフェルトは目をむいた。彼らの目前には、新たな防御陣が広がっていたのだ!
* * * * *
一方、惑星オーディンの軍務省。その尚書室で、キルヒアイスはオーベルシュタインとともに、アイゼンフート、そしてウォルテンブルグ、各星域で行われている戦いの戦況報告に目を走らせていた。
「芳しくありませんか」
そのオーベルシュタインの問いに、キルヒアイスは表情を曇らせて答えた。
「はい。ウォルテンブルグの戦いは拮抗。ラインハルト様も、敵の陣を崩すのに難儀しているようです」
「さすが、というところでしょうな……。軍務尚書、各艦隊のヘリウム3の残りはどの程度なのでしょう?」
表情を一切変えずに聞いてくるオーベルシュタインに、キルヒアイスはさらに表情を沈ませて答える。
「そちらも厳しいようですね。あと、もう2~3時間以内にカタをつけないと、攻勢限界に達してしまうと見ています」
「では……」
「えぇ。オーベルシュタイン外務諜報局局長。例の件、進めておいてください。ただし、最後の押印は待つように」
「ローエングラム公の認可を受けてから、ということですな」
「はい。私がラインハルト様を説得してからのこととなります。ラインハルト様は良い気はしないと思いますし、我が帝国にとっても不本意な結果となりますが、この戦いを終わらせ、国民に被害を出さず、ラインハルト様を始めとした将官や兵士たちの命を無駄に損なわないためには仕方がないことです」
そう言って、キルヒアイスは瞑目した。
さてさて、ラインハルトはヤンの防御策をどう突破するのか!?
そして、ブラ公がささやかな活躍を!?
次回『アイゼンフート会戦と第二次ウォルテンブルグ会戦。え、第二次ウォルテンブルグ会戦はサブですか?そうですか』
転生提督の歴史が、また1ページ