ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった 作:ひいちゃ
ですが、まだ帝国でひと悶着あります。ヤンの登場まだまだ先です。待たせてしまって申し訳ない(土下座
果たして、プラ公inフォーゲルは、この罠を脱することができるか!?
第3話『その褒賞、怪しすぎませんか?』
さて。カストロプの反乱を終わらせた我々だが、ローエングラム元帥(捕虜引見式の後、伯爵から公爵となり、ローエングラム公を継いだそうだ)にそのことを報告するため、他の艦隊はイゼルローンに戻し、我が艦隊だけオーディンへと向かった。
そしてオーディンに到着し、大気圏を抜けると、美しいオーディンの自然が目に飛び込んできた。
うーん、やっぱり癒される。イゼルローン要塞にも公園はあるが、やはりそれは人工のもので、自然のものにはかなわないなと思う次第だ。癒され具合は半端ない。今度、シュザンナに会いに行くのも兼ねて、彼女の隠棲したデッサウに行ってみるか。
そう思いながらわしは、まずは艦隊司令部へと向かった。
「フォーゲル上級大将、カストロプでの叛乱を鎮圧し、帰還いたしました」
わしがそう報告すると、ローエングラム司令長官は、かすかに微笑んでうなずいた。
「うむ、ご苦労であった。相変わらず、見事な手並みだな」
「恐縮であります。私の力など、まだまだでございます」
「ふふ、相変わらず自己評価の低い男だ。私がそう思っているだけだ。ありがたく受け取っておくがよい」
「は、はぁ、ありがとうございます」
そしてわしが部屋を出ようとすると
「そういえば」
「はい?」
ローエングラム司令長官に呼び止められた。
「今、宮廷のほうで、何か陰謀が進んでいるらしい。くれぐれも気を付けよ」
「は、はぁ……了解しました。ありがとうございます」
ちょっと気にかかることはあったが、とりあえずそれで報告は終わった。
そして司令部を出ると……そこには、なぜか宮廷の使いらしき者が待っていた。
「フォーゲル上級大将ですな? リヒテンラーデ様が、卿と面会したいそうです。ぜひご同行していただければ」
「? は、はぁ……」
宰相のリヒテンラーデ候が何の用だろう? とりあえずわしは、彼の乗ってきた車に乗り、宰相の元に行くことにした。
そしてなんと! 『新無憂宮』の、しかも臣下が皇帝陛下に会うための謁見室に案内されたのだ!
めったに入ることのできないところに通されて、わしはもう緊張でがちがちである。前世では何回か訪れたことはあったが、それでも緊張するものは緊張する。ましてや、今世で訪れるのは今回が最初なのだから。
謁見室には、エルウィン・ヨーゼフ陛下はおらず、数人の大臣と、リヒテンラーデ候だけだった。
わしがその場で膝をつくと、リヒテンラーデ候が口を開いた。
「フォーゲル上級大将か。リップシュタット戦役での活躍、そして、カストロプの討伐、見事であった」
「ははっ、恐縮でございます。私はただ、帝国のためを思って働いただけでございます」
わしが緊張で固くなった声でそう言うと、リヒテンラーデ候は唇をわずかにゆがめた。
「その忠義も天晴である。そこで、その忠義とこれまでの活躍を賞して、宮廷のほうからも褒賞を出そうかと考えている。そなたに公爵位を授け、門閥どもの旧領の中から、ブラウンシュヴァイク星域とリッテンハイム星域をそなたに下賜しようと思うのだが、受けてくれるな?」
「えええええ!?」
わしが公爵となり、二星域をくれると!?
もう驚くほかない。わしは上級大将で艦隊群司令とはいえ、一介の軍人に過ぎないのだから。なんだこのボーナスは。
しかも前世でわしが収めていたブラウンシュヴァイク星域をいただけると聞き、思わず「はい」と言いそうになったが、その時わしはふと気づいた。リヒテンラーデ候の表情に不穏な色が浮かんでいるのを。
前世で散々権謀術数の中で生きてきたからわかる。これは何か陰謀をたくらんでいて、それにわしを利用しようとしている表情だ。
そして思い浮かぶ、先ほどのローエングラム司令長官の言葉。
――宮廷のほうで、何か陰謀が進んでいるらしい。くれぐれも気を付けよ。
間違いない。これにうなずけばやばいことになりかねない。
「どうしたのだ、フォーゲル上級大将? 断る道理はあるまい」
「いえ、宰相閣下、申し訳ありません。私はまだその資格はありませぬ。不敬とは存じますが、今回は辞退させていただきます」
そういうと、リヒテンラーデ宰相は少し意外そうな顔をした。それだけの褒賞を出せば、わしは必ず食いつくと思っていたのだろう。確かに前世のわしなら確実に食いついていただろうな。本当に、フォーゲルに生まれ変わってよかった。
「そうか、残念じゃ。では新たな褒賞については、後で知らせる」
「い、いえいえ。結構でございます。お気持ちだけで十分。それでは失礼いたします」
そしてわしは慌てて逃げるように、謁見室を出て行った。
* * * * *
そしてわしは、なんとか新無憂宮から出てきた。そこで考える。
これからどうするべきだろうか? 目的は不明だが、リヒテンラーデ候は自分の企みのために、わしを味方に引き入れようとしている。何も手を打たなければ、宰相はわしを引き入れるために色々工作をしてきて、おしまいには既成事実を作ってしまいかねない。そうなればわしに逃れる術はない。
そうなる前に、何か身を守る手立てを打たなければ……。
うーん……
うーん…………
思い浮かばなかった。くっ、前世のわしであれば容易に思いつけたものを!
仕方あるまい。ここはこういったことに関して一日の長がある者に頼むしかあるまい。
わしはその足でただちに、宇宙艦隊司令部へと向かった。
* * * * *
その夜、宰相府の会議室。そこでリヒテンラーデによる秘密の会議を行われていた。
「フォーゲル上級大将は針にかからなかったようですな」
そういうのは、内務尚書のエルレンマイアーだ。それにリヒテンラーデは少々忌々しげな表情を浮かべて答えた。
「うむ。あれだけの褒賞を出せばかかると思っていたのだがな。なかなかうまくはいかぬものよ。だがまぁよい。他にも手はある」
「フォーゲル上級大将に褒賞を出して味方につけるとともに、ローエングラム公との関係を悪化させ、上級大将とローエングラム公との戦いを起こさせる……」
ツィルヒャー財務尚書が、前から知らされていたリヒテンラーデの策を改めて口にする。それに、司法尚書のヴァイツェネガーが続ける。
「そして、どちらかが相手を潰したところで、宰相の奥の手で、弱ったもう片方にとどめを刺す……さすがですな宰相。ブラウンシュヴァイク公やリッテンハイム伯にも負けない策略で」
「わしも、伊達にこの世界を渡り歩いていない、ということよ。なに、もしどちらかが優れていて、かなりの力を残していたとしても、それでも消耗は避けられまい。奥の手がダメでも、ダメ押しを加えればなんとかなろう」
しかし、そこに異を唱える者がいた。典礼尚書のハイドフェルドだ。
「しかし、果たしてうまくいくものでしょうか……?」
そのハイドフェルドの懸念に、リヒテンラーデは苦笑して答える。
「ふふ、ハイドフェルド典礼尚書は本当に心配性だ。楽観視はしておらぬが心配もしておらぬ。フォーゲルめに褒賞攻勢を仕掛ければ、そのうちに、フォーゲルがわしと結んだという既成事実が出来上がり、奴は網から逃げられなくなる。それがダメなら、ローエングラム討伐の勅命を出せば済むことだ」
「な、なるほど……」
「すんなりいくとは思っておらぬが、やらねばなるまい。武力は、我々文官が統御できる大きさにしておかねばならんのだ」
そう言って不敵な笑みを浮かべるリヒテンラーデ。だが彼は、ある致命的なことを忘れていた。
『策士、策に溺れる』ということを……。
さて、宰相の最初の魔の手をなんとかすり抜けたブラ公。でも、宰相はまだまだやる気満々のようです。
果たしてブラ公が頼る相手とは!? まぁ、一人しかいませんけどねw
ということで、次回
『宰相の企み、ラインハルトの企み』
転生提督の歴史が、また1ページ