ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった   作:ひいちゃ

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さぁ、ここから新章が始まります!
いよいよラストスパート!


最終章~銀河最後の戦い編
第30話『柊館の喜劇』


 フェザーンにある柊館。原作においてラインハルト終焉の地であったここでは今、銀河帝国側と自由惑星同盟側との停戦交渉が行われていた。

 フェザーンの行政と治安を預かる臨時自治領主のシロッコが突然行方不明になった、ということでここで開催するには不安はあったが、帝国と同盟、どちらにも組しない中立の地ということで、治安の不安を承知のうえで、ここを開催の場に選んだのである。

 もちろんそれだけあって、警備は厳重を極めた。同盟側の薔薇の騎士連隊、そして帝国側のオフレッサー率いる防衛部隊の両者が警備にあたっている、というこれ以上ない厳重な警備の度合いである。

 ただ、なぜか帝国側の警備責任者であるオフレッサーは、その警備の中にはいなかったが。

 

 さて、交渉のほうはそれほど難航はしていないようであった。帝国側のキルヒアイスとオーベルシュタインが、かなり深いところまで予備交渉を(ラインハルトには秘して)進めていたことと、相手の同盟側が柔軟さを示し、あまり自分たちに有利な条件に固執しなかったことが理由である。

 

 先だって出された二つの条件――『自由惑星同盟の存在の認知』と『互いの政権(帝国のローエングラム政権と同盟のアイランズ政権)が健在な間の休戦』――についてはもちろん、そのほかの事柄についても話し合われた。

 

 当然、すんなり交渉に決着がつくわけではない。帝国はもちろん、同盟も、交渉が決裂しない範囲内で、自分に有利な条件を獲得するために、ささやかな火花を散らしていた。

 

 その一方、ホールのほうでは……。

 

「卿がヤン大将か! 俺の突撃を受けて持ちこたえたのは卿が初めてだ。なかなかやるではないか! はっはっはっ!」

「はぁ……(やっぱりビッテンフェルト提督の声を聴くと、一〇さんの〇衛門さんを想像してしまうな。それと声が大きい)」

 

 と、このように両軍の提督たちが、親睦を深めていた。

 

「ん、グリーンヒル大尉、どうしたのかな? 何か目をキラキラさせてるけど」

「はい。先ほど、ローエングラム公が話しているのを聞いたんですけど、やっぱり声がコウ・ウ〇キなんですね! 感動しました! 本当に彼に教授を受けた鈴木〇奈さんがうらやましいです!」

「ははは……ちなみに私は、あの中の人といえばベ〇ータだけどね」

 

 と、そこでヤンは何かを思い出した。

 

「あ、そうだ。ちょっとローエングラム公のところへ行ってくるよ」

「どうしたんです? ヤン様も、コ〇・ウラキな声を聞きに?」

「いや、例の件について一応事後承諾を取っておきたくてね。大丈夫だとは思うけど、この件については間違いがあったらいけないから」

「あ、それでしたら、私もお供します」

「うん、そうしてくれると心強いよ」

 

 そして二人はラインハルトのところへ歩いて行った。

 

「卿がヤン・ウェンリーか。卿の戦略、戦術には恐れ入った。私がここまで完敗を喫したのは卿が初めてだ」

「恐れ入ります。閣下のアイゼンフートでの戦術にも感嘆いたしました」

「そう言ってくれると、いくらか留飲が下がった気持ちだ。感謝する」

「いえ。あの、それで……」

 

 そこでヤンはラインハルトに、あることを伝えた。それは帝国の安保態勢に問題を生じかねないことではあるが、彼は表情を曇らせることはなかった。

 

「かまわぬ。卿のことだ。それをもって帝国に仇をなすことはあるまい。キルヒアイスもオーベルシュタインも、卿が卑劣な手を使う人物ではない、と評価しているしな」

「ありがとうございます。そう言っていただけると……」

 

 と、そこで爆音が響いた。

 

* * * * *

 

 柊館の外。そこから見えるフェザーンの市街に爆炎が上がった。それが何者かによるテロ攻撃であることは明らかだった。

 

 色めきだつ警備部隊の面々に、ケスラーの指示が飛ぶ!

 

「うろたえるな! これは陽動だ! 奴らの目的は、この館の中の会議しかない! この館の警備のみに注力せよ!」

 

 ケスラーがそう指示して少しの時が経ち、市街地のほうから黒ずくめの一団がやってきた。間違いなく襲撃者、地球教の宗教テロリストたちだった。すぐに彼らとの間で銃撃戦が始まる。

 

 その銃撃戦を指揮しながら、ケスラーはひとり呟いた。

 

「こちらのほうは大丈夫だろうが……。フォーゲル上級大将のもしもの手が必要になることがなければいいが……」

 

 なお、この銃撃戦には、地球教徒の他にも、同盟内の反体制組織・トリューニヒトの子ら(トリューニヒツ・チルドレン)も加わっており、その首魁であり、自由惑星同盟前評議会議長ヨブ・トリューニヒトの名はこの世界と歴史から完全に抹消されることになった。

 

* * * * *

 

 柊館の会議室。そこでは、帝国と同盟の担当者の間で、熱を帯びた交渉が行われていた。

 そこに! 扉を開け、一人の男が入り込んできた!

 

「ジークフリード・キルヒアイスゥゥゥゥゥゥ!!」

 

 それは、目を血走らせて狂人の表情をした帝国軍の元少将、グリルパルツァーであった。彼は狂人の目をキルヒアイスに向けて、銃を向けた。その時!

 

「痴れ者が! 恥を知れい!!」

 

 野太い声とともに、グリルパルツァーの体は大きく吹き飛ばされた。彼は壁にたたきつけられ、意識を失った。

 

「助かりました、オフレッサー大将」

 

 キルヒアイスが、そう礼を述べる。

 そう、グリルパルツァーを吹き飛ばし、会議中の面々を凶弾から救ったのは、帝国側防衛部隊を預かるオフレッサーであった。そのオフレッサーは面白くなさそうに鼻を鳴らした。

 

「ふん。赤毛の小僧、お前のためにやったわけではない。わしはただ、フォーゲル上級大将に頼まれて、ここに侵入してくる不届き者を排除しただけだ」

 

 と、そこにそのフォーゲルがやってきた。

 

* * * * *

 

 わしが会議室に入ると、出席者の中に死人どころか、けが人すらもいないようだった。やれやれ、館の中にオフレッサーを配置しておいてよかった。シロッコとか言う男がこの会議を狙っている、という情報を提供してくれた同盟軍のヤン提督には感謝の言葉しかないわい。

 

 しかし、まさかこのグリルパルツァーがテロリストにまで身をやつして、こんなことになるとは……。ため息をつきながら彼の様子を見ると、ぐったりしているようだが、命に別状はない……ように見える。

 

「ご苦労だった、オフレッサー。命までは取ってないだろうな?」

「はっ。急所には当ててないし、殺す気ではやってないので大丈夫だと思います。激突したショックで死んでいたらお手上げですが」

 

 オフレッサーがそういうのなら大丈夫だろう。人を殴り殺すことに対して熟知している彼の言うことなら間違いはあるまい。グリルパルツァーには、背後関係について色々聞かなければならぬからな。ここで死なれては困る。

 

 と、そこでキルヒアイス軍務尚書が再び、頭を下げてきた。

 

「フォーゲル上級大将も、助けてくださり、ありがとうございます。あなたに助けられたのは、これで二度目ですね」

 

 まさかあのキルヒアイス軍務尚書が、上級大将でしかないわしに頭を下げるとは!

 思わずわしは慌ててしまった。

 

「い、いえ。とんでもありませぬ。キルヒアイス軍務尚書には、同盟領侵攻作戦の時と、イゼルローンの時の二度も助けられましたから。そのお返しと思っていただければ」

 

 と、忘れていた。わしは真顔に戻り、オーベルシュタイン局長に向きなおった。

 

「オーベルシュタイン外務諜報局長。この男の尋問、お願いする」

「……任せてもらおう」

 

 オーベルシュタインは表情を一切変えずに即答してきた。うーむ、さすがだ。

 

* * * * *

 

 それから一カ月後。停戦交渉は無事にまとまった。フェザーンは、自治領主の座が決まるまで帝国と同盟の間で共同統治することとなり、そしてイゼルローンとフェザーンの両回廊を緩衝地帯とすることで停戦となった。

 そして、帝国と同盟が共に共存していく形で、貿易や外交関係についても固まり、とりあえず帝国と同盟との間の戦争は、ひとまず終結とあいなったのである。

 

 そして柊館襲撃についての調査も滞りなく済んだ。やはり、彼らの背後にはパフティマス・シロッコがいたと判明したのである。その目的は、この交渉を襲撃することで再び両陣営の緊張を高め、再び交戦状態にする、ということで、ヤンが予想し、ルビンスキーからの情報で裏付けられた情報とほぼ同じであった。

 これを受け、ただちにシロッコに対して、国事犯として指名手配がなされたのは言うまでもない。

 

 しかし、これで全て解決、とはならなかった。

 

 それはなんと、帝国領からもたらされた。

 

 いつの間にか帝国領に潜入していたパフティマス・シロッコと彼の部下たちが、ガイエスブルグ要塞に潜入して占拠、そこを拠点に決起したというのだ。

 




次回はいよいよガイエスブルグに立てこもったシロッコとの決戦ですが、次回の更新までは一週間時間を開けさせていただきます。ごめんなさい;
次回更新は12月14日の予定です。それまでお待ちいただけると幸い(平伏
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