ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった   作:ひいちゃ

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第33話『主役は私なのだ!』

 シロッコ軍は壊滅の危機に陥っていた。

 

 虎の子のMS隊がハチの巣にされ、さらに艦隊も正面と左右からの攻撃で瞬く間に瓦解していくのを、シロッコは自機ジ・OⅡのコクピットから眺めていた。

 

「おのれ……! だが、これで勝ったと思ってもらっては困る!」

 

 そう吐き捨てると、シロッコはジ・OⅡを転回させ、ガイエスブルグ要塞へと飛び去って行った。

 

* * * * *

 

「か、閣下!」

 

 ヒューベリオンの艦橋で、レーダー要員が驚愕と恐怖に満ちた表情で報告した。

 

「どうした?」

「が、ガイエスブルグが移動を開始しました! イゼルローンのわきを通り、ヴァルハラ星域に向かうルートをとっています!」

「やはりそう来たか。でもこんなに早くこの手を打ってくるとはなあ。さすがにやりすぎたかな?」

 

 シロッコは最後の手段として、ガイエスブルグを移動させ、ワープ可能エリアまで到達したところで、再びワープし、ヴァルハラへ向かおうとしていた。そしてガイエスブルグをオーディンに衝突させればそれでおしまいだと。ガイエスブルグほどの質量のものを衝突させれば、さすがにオーディンは一たまりもない。

 ヤンもそれは読んでいた。だが彼にとって誤算だったのは、戦局が彼の予想よりも早く進み、シロッコが想定よりも早くこの手段をとってきたことだ。

 他の艦隊の機能が回復すれば、もしここで逃がしてしまっても、ヴァルハラで他の艦隊で待ち構え、彼が前世で得た解決法を使って、ガイエスブルグのオーディンへの衝突を防ぐことができる。だが今のタイミング、ここでガイエスブルグのワープを許してしまえば、オーディンの破滅を防ぐのは不可能だ。

 そこに、通信士が振り返った報告してきた。

 

「閣下。帝国軍のフォーゲル上級大将から通信です」

「うん、つないでくれ」

 

 すると通信スクリーンに、フォーゲルの姿が現れた。

 

『ヤン提督。そちらでも確認していると思うが……』

「はい。ガイエスブルグが移動を開始したのを確認しました。おそらく、再びワープして、ヴァルハラ星域に向かうつもりだと思います。最初はここで我々を撃破してから、悠々と再ワープするつもりだったのでしょうが、敗勢になったことで、無理してでも我々を突破して再ワープしようと考えたのでしょう」

『オーディンのほうからは、まだ艦隊の出撃準備はできていないとの報告が入っている。ここで奴のワープを許せば我々の負けは確実だ。ヤン提督、今からトゥールハンマーでガイエスブルグを吹き飛ばせないだろうか?』

 

 フォーゲルのその質問に、ヤンは申し訳ない気持ちと苦渋をミックスさせた表情を浮かべて首を振った。

 

「いえ。ガイエスブルグがこのままの速度で移動すると仮定した場合、ガイエスブルグがトゥールハンマーの射程圏内を脱するまでにチャージを終えるのは不可能です。足止めをすることができればなんとかなるでしょうが……」

『そうか……』

「とはいえ、その足止めをするための手がないわけではないのです」

『そ、それは!?』

 

 フォーゲルが身を乗り出すように質問すると、ヤンは通信士にあるデータを送信するよう伝えた。

 

* * * * *

 

 わしの旗艦、シェルフスタットⅡ。その艦橋の通信スクリーンの一部に、ガイエスブルグの図面データが映し出された。そのうちの右上に赤い丸がつけられている。ここを狙え、ということか?

 

『事前調査の結果、ガイエスブルグには、通常移動のため、ちょうど円を描くように12基のエンジンが取り付けられていることが判明しています』

「ふむ。そのエンジンをつぶすというわけか。だが12基全て潰すというのはコトだぞ……」

『いえ。実は12基全て潰す必要はないのです。その丸のつけられているこの右上のエンジンを狙うだけで……』

 

 通信スクリーンの中の、赤丸をつけられたエンジンを表す記号が消えた。すると、ガイエスブルグはくるくると高速自転を始めたではないか!

 

『このように、推力バランスが崩れ、自転を始めます。確かに耐久力や防御力は要塞本体に劣るとはいえ、破壊するのは簡単にはいきませんが、本体を攻撃するよりはマシでしょう』

「なるほど、確かにそうだな。さすがヤン提督だ!」

『ありがとうございます。エンジン破壊の役は、私の艦隊と正統政府軍艦隊が受け持ちます。フォーゲル提督は、引き続き、カールセン提督の艦隊とともに、イゼルローンの前面で、敵残存艦隊の牽制をお願いします』

 

 そのヤン提督の要請にわしはうなずいた。わしの悪い頭では、彼の作戦以上の案を出すのは不可能だからな。

 

「あいわかった! ヤン提督! 卿の武運を祈る。いや、必ずエンジンを破壊して、帝国を、いやオーディンの人々を救ってくれ!」

『はい。最善を尽くします』

 

 そして通信は切れた。

 

* * * * *

 

「よし、さっそくやるぞ。全艦発進。我が艦隊は右から、正統政府軍艦隊は左から回り込んで、ガイエスブルグの後ろに回り込む。準備ができ次第、エンジンに攻撃開始だ!」

「了解!」

 

 ヤンの号令一下、同盟軍艦隊はすぐに移動を開始した。二手に別れ、シロッコ軍残存艦隊の阻止も意に介さず、後ろに回り込んでいく。

 そして、ヤンの砲撃指令を待たず、移動が済んだ分艦隊が順次攻撃を開始していく。だが。

 

「どうだ?」

「芳しくありません。シロッコ軍の残存艦艇がこちらとガイエスブルグとの間に立ちはだかって、砲火の到達を阻止していて……」

 

 フレデリカの報告に、ヤンは渋い顔をする。それは、敵がこちらの思惑を阻止にかかりにきてるからだけではなかった。

 

「我が身を顧みず、要塞を守ろうとするとは……。とんだ使命感だな。いや、シロッコ氏め、サイオキシンで手下たちを洗脳したな……。いや、そんなことを考えている場合ではないか。とにかく、攻撃を続けてくれ。こちらには、それしか取れるオプションがない」

 

 引き続きガイエスブルグに猛攻を仕掛ける同盟軍艦隊。しかし、やはりエンジンの破壊に難儀していた。

 艦艇だけではなく、残ったMSまでガイエスブルグの前に立ちはだかり、砲火の到達を阻止しようとしているのだ。さらにそれらを破壊すればその残骸が砲火を遮り、破壊を阻害しているのだ。

 

 それでも必死にガイエスブルグを攻撃する艦隊。その中の一つ、銀河帝国正統政府軍艦隊、旗艦ノーエンブルン。

 

「パストーレ軍事補佐官。ガイエスブルグの移動は早く、このままではガイエスブルグは我が艦隊の射程圏から逃れてしまいます」

「むぅ、あと一歩なんだが……。よし、ならば奴らに、超大型の核融合弾をぶちかましてやろうではないか」

「超大型の核融合弾? そんなものはどこにも……まさか!」

 

 驚きを浮かべるストークス副軍事補佐官。その二人の様子に、彼らの形式上の主君であるフレーゲル元男爵も、パストーレの考えていることに気づいたが、帝国の危機を前に覚醒した帝国貴族の誇りと義務感が、彼に覚悟を固めさせた。

 

「いよいよ、我らも覚悟をするときだと思うが、どうかな? 軍事補佐官殿」

 

 その言葉に、パストーレとストークスは目を丸くしたが、すぐに真顔に戻った。

 

「フレーゲル男爵もそうお考えなのでしたら、そうでありましょう。よし、ストークス准将。30才未満の士官、貴族たちを退艦させろ。あの世への直行便の乗客は、我々年寄りとフレーゲル男爵殿だけで十分だ」

「了解しました」

「よし! この超大型核融合弾ノーエンブルンを、帝国の誇る要塞の一つ、ガイエスブルグにお見舞いしてやろう!」

 

 ノーエンブルンから退艦者をのせたシャトルが発進していく。それらを全て排出させた後、ノーエンブルンも全速力でガイエスブルグに突撃していった。

 

 ちょうどその時、パストーレたちの思惑を察知したシロッコが、ジ・OⅡでガイエスブルグから発進していた。

 

「特攻するつもりか! させるものか!!」

 

 そしてノーエンブルンに向けて突撃していく。

 

 そのノーエンブルンの艦橋。

 

「本当にいいのですな、フレーゲル男爵!?」

 

 そのパストーレの問いに、フレーゲルは、死への恐怖と自己陶酔が入り混じった表情で答えた。

 

「当たり前だ! ここで帝国が救われれば、銀河の英雄の名は、このフレーゲルのものとして語り継がれるってものだ! 景気よくやってくれ、パストーレ軍事補佐官殿!」

「了解であります! ストークス副軍事補佐官。動力炉はいつでも暴走させられるようにしてくれよ! くれぐれも体当たりする前に暴走させることのないようにな!」

「了解です! させるものですか、そんなこと!」

 

 そして、ノーエンブルンは、シロッコ軍残存艦隊の砲撃や、MS隊の攻撃を受け、満身創痍になりながらも、そのままエンジンへと特攻していく。

 しかし、もうすぐ体当たりというところで―――

 

 ドグオオオォォォォ!!

 

 ノーエンブルンの艦橋を激しい振動が襲った!

 

「どうした!?」

「ど、動力炉に直撃! 反応炉、制御不能!」

 

 そう、それはノーエンブルンの死角をつき、その懐にもぐりこんだ、シロッコのジ・OⅡの攻撃だった。

 爆発を繰り返すノーエンブルンを一瞥し、勝利の笑みを浮かべるシロッコ。だが。

 

「やってくれたな……。だが、残念だったな! この距離ではどっちみち、動力炉が爆発する前に体当たりできる! むしろ、動力炉を派手に暴走させてくれて、ありがたいくらいだ! そぉれ! 勢いよくぶつけてやれ!!」

 

 そのパストーレの叫びとともに、速度を上げたノーエンブルンはガイエスブルグのエンジンに衝突した! そしてそれと同時に、ノーエンブルンの動力炉が暴走し、臨界を迎える!!

 

 ガイエスブルグの一角にまばゆい閃光が走った。それは、ノーエンブルンがついに、ガイエスブルグのエンジンを破壊したことを証明するものだった。とたんに、ガイエスブルグは、前進をやめて高速回転を始めた。その回転は残存艦隊の艦艇やMSを吹き飛ばし、次々と破壊あるいは戦闘能力を奪っていった。シロッコのジ・OⅡも、その吹き飛ばされた破片に激突され、大破したのである。

 

* * * * *

 

 ガイエスブルグ要塞の一角にまばゆい光が発生したかと思うと、要塞が高速自転を始めたではないか! まさに、ヤン提督の作戦が成功したのだ! それから30分後、待ちかねていた報告が届いた!

 

「フォーゲル提督! イゼルローン要塞から通信! トゥールハンマーのエネルギーチャージが完了したそうです!」

「よし、全艦、トゥールハンマーの射線上から退避せよ! 退避が済み次第、トゥールハンマー、発射だ!」

 

 わしの号令一下、艦隊が一斉に退避を始めた。そして。

 

「閣下、全艦、射線上からの退避、完了しました!」

「よし、トゥールハンマー、発射ああぁぁっっ!!」

 

 わしの号令とともに、イゼルローン要塞の表面にまばゆい光があらわれ、それは巨大なビームとなって回転を続けるガイエスブルグへと発射された!

 ガイエスブルグにその光の槍が突き刺さり、その要塞のあちらこちらに炎の柱が立ち上る。

 

 そして。

 

「閣下、ガイエスブルグの反応停止。どうやら、機能を停止したようです」

 

 ナギ大尉の報告を聞き、わしは一息ついた。やれやれ、どうにかなったな……。

 

「よし、残存する敵の掃討にかかる。まず必要ないかもしれんが、一応、全周波で投降を打電せよ。あくまで抵抗する奴らは容赦なく殲滅してかまわん」

「了解しました」

 

 わしの指示に従い、わしの直属艦隊や、ヤン提督の艦隊、そして銀河帝国正統政府軍の艦隊から、戦隊規模の小艦隊がガイエスブルグへと向かっていく。それにしても、やっと終わったか。本当に今回は大変だったわい。

 

 ともあれ、これにて後に銀河最後の戦いと称される、第二次フレイア星域会戦は幕を閉じたのだった。

 




かくして、これで全ての戦いが終わりました。
次回はいよいよ最終回。その後の銀河の話と、ブラ公の未来の話となります。

というわけで次回、『ブラ公よ、永遠に……』

転生提督の歴史も、いよいよ最後のページへ……

※最終回の更新は、正月明けの予定です。それまでお待ちくださると幸いでございます。
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