ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった   作:ひいちゃ

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最終話『ブラ公よ、永遠に……』

「それで、シロッコとやらは見つかったのか?」

 

 シロッコ軍の残敵掃討の指揮を執っていたわしは、副官のナギ大尉にそう聞いてみた。

 

「はい。彼の乗機らしき機動兵器を、同盟軍艦隊が発見したとのことです。シロッコ氏がパイロットスーツを着ていない可能性が高いので、その機動兵器ごと、ヒューベリオンに輸送すると言ってました。オーディンに到着後、帝国側に引き渡すと」

「なんとなぁ、パイロットスーツなしでか。そんな無謀なことをするとは、シロッコとやらはよほどのバカか、それとも自信過剰か……」

 

 わしは報告を聞いて、そう呆れた。昔から艦載艇に乗る時はパイロットスーツを着るのが当たり前だというのに。機体が破壊されて宇宙に放り出される可能性だってあるのだ。わしだって、シャトルに乗り込む時には、宇宙服を着こんでいるのだぞ。

 まぁいい。捕まった奴のことより、他に優先すべきことはある。

 

「わかった。それで、掃討はどこまで進んでいる?」

「はい。70%といったところです。ほとんどの残敵が、こちらからの降伏勧告に応じず抗戦を続けていて、ほぼ全ての敵を潰して回っている状態で……」

 

 なるほどな。まぁ、予想していたことではあったが。

 

「そうか。まぁ、進んでいないわけではないからな。残敵を逃がしたりして、銀河の各地で暴れられても厄介だ。じっくりと潰していくのが一番だろう。とにかく、潰し残しがないことだけは注意して掃討を進めてくれ、と各隊に伝えよ」

「了解しました」

 

 それにしても、ここまで長かったなぁ。帝国と同盟の停戦もなったし、これで全ての戦いが終わって平和になる……といいのだが、と思っていると。

 

「閣下、ぼーっとしているところ済みません。全ての残敵の掃討が済んだと報告がありました。結局、降伏した者はなかった、とのことです」

 

 かなり長い時間物思いにふけっていたらしい。冷たい目をしたナギ大尉がそう報告してきた。

 わしはあわてて咳払いし……。

 

「そ、そうか。潰し残しはないな?」

「はい。逃がした敵もないそうです」

「そうか。よし、では艦隊を再編した後、オーディンに凱旋しよう。ナイゼバッハ、艦隊の再編準備をしてくれ」

「了解しました」

 

 そして、戦いの後始末も終えた我が艦隊は、同じく再編を終えた同盟軍艦隊とともに、オーディンへの帰途についた。

 

* * * * *

 

 そしてオーディンに到着すると、すぐにパフティマス・シロッコの身柄は、帝国の外務諜報局に引き渡された。これから、『あの』オーベルシュタイン局長の手で、容赦ない取り調べを行った末、獄中の人となるのだろう。みじめと思わないでもないが、停戦交渉を襲撃したうえ、オーディンを宇宙の藻屑にしようとしたのだ。当然の報いだろう。

 ガイエスブルグとイゼルローンの両要塞だが、ガイエスブルグ要塞はトゥールハンマーの直撃で大破し、もう完全に使い物にならなくなったので、解体することにしたそうだ。イゼルローン要塞も、帝国と同盟の和平が成った今、無用の長物である。やはり解体することになるのだろう。

 

 わしはといえば、シロッコ軍討伐の功を挙げたことで、一躍有名となり、さらには元帥の称号を授かった。このわしが元帥にまで上り詰めるとは、信じられないことだ。ナギ大尉にほっぺをつねってもらったが、夢ではなかった。

 そうそう。ガイエスブルグのエンジン破壊については、銀河帝国正統政府軍の実戦指揮官、パストーレ同盟軍元中将と、ストークス元少将、そしてなんと、わしの前世の甥、フレーゲル元男爵の、命を投げ捨てての働きがあったと、ヤン提督から報告があった。あの甥がそんな働きをするとは、たいそうな驚きである。帝国を出て、正統政府軍という非公式軍組織にいたことで、彼も苦労して、少しは真人間になったのだろうか? 嬉しいようなそうでないような、複雑な気持ちだ。

 そしてそんな彼らにも、オーディンと銀河を救ったということで、勲章が授けられることになったという。

 

 そしてオーディンで、帝国と同盟の要人が集まり、停戦成立と、シロッコ軍討伐を記念したパーティが行われた。

 そこでは、両軍の軍人や政治家とも、それまで戦っていたことが嘘のように、仲良く和気あいあいとパーティを楽しんでいた。その様子はわしに、新たな時代が到来するのを予感させるものであった。

 

 そして……

 

* * * * *

 

 あの銀河最後の戦いこと、第二次フレイア星域会戦からはや20年が経った。

 

 銀河最後の戦いが終わってからの話をしよう。

 

 ヤン提督はその後、本人の希望通り、すぐさま軍を退役したという。同じく軍を退役した元副官のフレデリカ・グリーンヒル女史と結婚し、それからは夫人とアニメやゲームを楽しみながら、年金暮らしを堪能しているということだ。そういえば、彼らとラブラ〇ブ談義に花を咲かせたこともあったな。

 

 ローエングラム公は、休戦が成ったのを機に、正式に銀河帝国皇帝となった。それまでは、エルウィン・ヨーゼフ皇帝陛下に代わって政務をとるという宰相の地位にいたのが、今回、名実ともに帝国の支配者となった形だ。そのエルウィン前皇帝は、オーディン郊外の荘園で一貴族として遇されるそうだ。彼の教育を任されたモルトが胃痛を訴えながらも苦闘しているとのうわさがわしの耳にも聞こえている。

 

 フェザーンは結局、恩赦によって解放されたルビンスキー氏が再び自治領主として返り咲くことになった。帝国と同盟との間で争いが起こることがなくなり、勢力バランスの変化が起こらなくなったということで、謀略などを行うことはやめるという話だ。まぁ、フェザーンには、外務諜報局長のオーベルシュタインが目を光らせているともいう。彼がにらみを利かせている限り、黒狐も下手なことはできないだろう。

 

 そしてその2年後、ついに帝国と同盟との間に終戦協定が結ばれ、本当の意味で両国の戦争は終わった。

 

 その後は、帝国も同盟もフェザーンも大きな事件が起きることがなく、穏やかに時が過ぎて行った。

 

 ……いや、10年前、一つの大きな出来事が起こった。

 

 なんと銀河帝国が、今までの専制君主制から、立憲君主制に移行したのだ! わしは政治の話には疎いからよくわからぬが、ヤン氏から聞くところによると、皇帝を抱きつつも、議会が民主主義にのっとり政治を行う仕組みということだ。

 

 その政治体制の移行については、ヤン氏の養子であるユリアン・ミンツ氏と、軍を退役して政治家に転身したアッテンボロー氏の活動があったという。あのヤン氏とともにあった二人のことだ。きっと情熱的かつ精力的に活動したことだろう。

 

 移行にともない、ラインハルト皇帝陛下は、嫡子のアレクサンデル・ジークフリード皇太子に皇帝位を譲られ、上皇へとなられた。今は、ヤン提督から教わった戦略シミュレーションゲームを楽しんでいるという。けっこうなことだ。戦争を起こすよりはよっぽどいい。

 

 それに伴い、当時の同盟首脳は、同盟の解体と、帝国への編入についての打診を検討したが、それは同盟市民の感情の問題と、編入による色々な影響を懸念して見送られたという。

 

 わしはといえば、あの戦いから10年、元帥として現場に立ち続けた。確かに同盟との戦争は終わったが、宇宙海賊への対処や、そのほかの治安の問題もある。まだまだ頑張っていかねばならないのだ。

 そして10年前、軍を退役し、シュザンナと結婚した。もちろん、その後は幸せな時間を過ごしたことは言うまでもない。

 

 だが2年前、シュザンナは病に斃れてなくなり、それからはわしは一人で余生を過ごしている。かつての部下たちや、時にはヤン氏やラインハルト上皇様が様子を見に来るので寂しくはないがな。

 

* * * * *

 

 その日もわしは、書斎でギャ〇ゲー雑誌を読みふけっていた。穏やかな日差しの中で読むラブラ〇ブ・サ〇シャイン特集は最高じゃわい。

 

 と、そこに、執事が来客を告げた。それはなんと、ジークフリード・キルヒアイス軍務大臣というではないか!

 

「お久しぶりです、フォーゲル元元帥。ご健勝なようで何よりです」

 

 そう言葉をかけてくるキルヒアイス軍務大臣。中年の域に入りはしたが、それでも闊達さは変わらないようだ。わしの目には20年前と大した変わらないように見える。

 

「キルヒアイス軍務大臣も元気なようで何よりです。それで、今回は何の御用でしょうか?」

 

 わしがそう聞くと、キルヒアイス軍務大臣は、真剣な顔になった。顔に「銀河の平和に関する重要な問題がある」と書いてあるかのようだ。

 

「はい。フォーゲル元元帥に大きな仕事を引き受けていただきたいのです。この銀河の安定にかかわることです」

「そ、それは一体……!?」

 

 わしが身を乗り出してそう聞くと、彼はうなずいて話し出した。

 

「この20年、我が帝国と自由惑星同盟は、共に手を取りあい、発展を続け、人類の生存域を広げてきました。ですが、思ったより人類の居住に適した惑星は多くはないようで、銀河の一部では開発をめぐって両国の小競り合いのようが起こりかけています。幸いにも両政府の話し合いにより、軍事衝突には発展していませんが……」

「……」

 

 そのことはわしもニュースで聞いて知っている。でもその裏で両政府がそんな苦労をしていたとは。本当に大変なことだ。

 

「このままでは、近かれ遠かれ、新しい可住惑星はなくなってしまうと、私たち帝国首脳部は見ています。そうなれば生存域をめぐって、また大戦が起こるかもしれません。そこで……」

「そこで?」

「今度、帝国と同盟とフェザーンが共同して、銀河の深宙域に可住惑星の探査を行うというプロジェクトが立ち上がったのです。既に細かい計画と、必要な船舶などの準備はできています。フォーゲル元元帥には、その探査団の団長となり、指揮をお願いしたい」

「えぇ、わしが探査団の団長ですと!?」

 

 これにはびっくりだ。まさかこの老骨が、そんな大役を担うことになろうとは!

 

「わ、わしでよろしいのですか? そのような大任?」

「はい。むしろあなたではなくてはならないと思っています。あなたの柔軟な思考、和をもってよしとする姿勢。それがなくては、このプロジェクトは立ちいかないでしょう。強制ではありませんが、ぜひともあなたにこの大役を引き受けていただきたいのです」

 

 そう言って、キルヒアイス軍務大臣は、真摯な目でわしを見つめてきた。その瞳には嘘の一分子も混じっていないように思える。

 それを感じて、66になるこの老体に力がみなぎってくるのを感じた。銀河と人類のために、この枯れ果てた老骨にまだできることがあるとは!

 シュザンナを失って一人になったことだし、引き受けようではないか! 人々の幸せな未来のために生きることが、わしの生きる道なのだ!

 

「わかりました。そこまで言っていただいて断ったのでは礼を欠くというもの。この老骨でよければ喜んで引き受けましょう」

 

 わしがそういうと、キルヒアイス軍務大臣は目を潤ませて、わしの手を握ってきた。

 

「ありがとうございます! フォーゲル元元帥ならそう言うと思っていました! 深宇宙の探査、よろしくお願いします!」

 

* * * * *

 

 そして一カ月後、わしは首都星オーディンのあるヴァルハラ星域の外縁にある探査船団の停泊ステーションにやってきた。

 そこでわしはびっくりした! かつてのわしの旗艦、シェルフスタットⅡが当時のままそこにあるではないか! そしてイゼルローン要塞も!

 

「キルヒアイス軍務大臣、これは……?」

 

 わしがそう聞くと、キルヒアイス軍務大臣はいたずらっぽい笑顔を浮かべて答えた。

 

「再びフォーゲル元元帥の力を必要するときがあるだろうと思って、閣下が退役されてからも、ずっと整備をしていたのです。閣下もこの艦があれば百人力でしょう? あぁ、もちろん今の時代の技術を使って近代化改装を施してあるので安心してください」

「な、なるほど……。それで、イゼルローンは?」

「はい。探査団の移動居住コロニーとして復元、改造を施したのです。団員たちの住む場所も必要でしょう? 居住性能に特化させるために、トゥールハンマーなどの兵装は排除しましたが」

「な、なるほど……」

 

 そう答えて、わしは再び、シェルフスタットⅡとイゼルローン要塞に目を向けた。ここに来る前は不安しかなかったが、かつて死線をともにした艦と要塞を見ているうちに、その不安は霧散していった。キルヒアイス軍務大臣の言ったことではないが、彼らとともにあればどんなことでも乗り越えられる。そう思った。

 

 そして、懐かしい顔はそれだけではなかった!

 

「おぉ、ファーレンハイト提督!」

 

 わしの艦隊群に所属していた司令官の一人、ファーレンハイト提督、そしてかつての副官だったナギ大尉が、艦の艦橋で待っていたのだ!

 

「お久しぶりです、フォーゲル閣下。閣下がこの探査計画に参加されると聞き、急いで軍を退役して、この計画に参加させていただきました。この探査団の護衛艦隊司令を務めさせていただきます」

「閣下には、お世話する人が必要みたいですからね。私も軍を退役して、閣下の補佐役に着任させていただきました」

「ははは……」

「はせ参じたのは私だけではありませんぞ。ミュラー提督とアイゼナッハ提督も護衛艦隊の分艦隊司令として参加しております」

「そうか。まるで、フォーゲル機動艦隊群の同窓会みたいだな。だが、卿らと一緒なら、この探査計画、必ず成功しそうな気がするぞ」

 

 そう言って彼らと握手を交わす。その暖かさは20年前と何ら変わらなかった。

 

 そして。

 

 探査団出発のセレモニーが開かれた。ラインハルト上皇陛下が祝辞を述べ、宇宙に鮮やかな映像が映し出される。

 それが終わり……。

 

「それでは閣下、号令をお願いします」

「うむ……。全艦、発進!」

 

 そのわしの号令とともに。

 わしの旗艦、シェルフスタットⅡのエンジン、そしてイゼルローンのエンジンに火が入れられ、探査艦隊とイゼルローン要塞はゆっくりと、しかし確実にそこへ向かっていった。

 

 宇宙の深宙域、そして、人類のさらなる未来へと……。

 

 

 

FIN

 




ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
前にも書きましたが、今までは泣かず飛ばずだったひいちゃの作品ですが、そんな拙作に感想やUVをくださり、本当に感謝です!
無事に最終話まで書き上げることができたのは、皆さんのおかげです!!

次の新作は、異能バトルか、それとも戦国戦記ものになるか、まだわかりませんが、そちらのほうも応援していただけると幸いです。

あとそれと、同じくひいちゃが書いている「ラブライブAnotherx2」と「ラブライブアフター」のほうもご愛顧してもらえると嬉しいです。

それでは改めて……

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!!
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