ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった   作:ひいちゃ

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引き続き、宰相の企みの話です。

「立ちはだかったのはヤン」とタイトルであおっていましたが、彼の登場はもうちょい先です。申し訳ない(土下座


第4話『宰相の企み、ラインハルトの企み』

 さて、『新無憂宮』から出てきたわしは、その足で宇宙艦隊総司令部に直行した。

 

 そして受付にこう伝えたのだ。

 

「わしの命運にかかわることなのだ。ローエングラム元帥と……できればオーベルシュタイン准将に取り次いでもらいたいのだが」

 

 そう伝えると、受付は既に手配がしてあったのか、すぐに取り次いでくれた。

 しかし。

 

「残念ながら、オーベルシュタイン准将は所用があり、今日はお会いできないそうです。ただ、1時間ほど待ってくだされば、司令長官とその秘書官殿と面会することはできますが」

「そうか……いや、ではそれで頼む」

 

 すると、別の係員がやってきて、わしを会議室まで案内してくれた。

 

 そして待つこと一時間……。ローエングラム元帥が、一人の女性を連れてやってきた。

 その女性をわしは知っている。前世の記憶で、だが。

 

 ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ。マリーンドルフ伯の令嬢で、頭脳明晰と評判の女性だ。

 アンスバッハの話では、彼女の先見の明で、マリーンドルフ伯は門閥側にではなく、枢軸側に就くことを決めたという。その後の門閥の敗北を見れば、彼女の先見の明は間違っていなかったことは明らかである。

 そんな彼女は、今世でもローエングラム元帥の秘書官となっていたようだ。詳しいことは不明だが、今世でも同じようなことがあったのだろう。

 

「待たせたな。それで、どうしたのだ?」

「ははっ、それが……」

 

 わしは正直に、宰相がわしに褒賞を出して、何かの計画に利用していることを伝えた。

 それを聞いたローエングラム元帥は、得心した、というようにうなずいた。そして、ヒルデガルド女史に向かって、互いにうなずいた。何かあるのだろうか?

 

「フロイライン・マリーンドルフ。やはり、貴方の言う通りになったようだな」

「そうですわね。それで閣下を倒せると思っているのなら、甘くみられたものでありますが」

「あ、あの……?」

 

 一体彼らは何を知っている、あるいはわかっているのだろうか? わしにはてんでわからない。

 

「こちらから話す前に聞いておきたい」

「は、なにか……?」

「素直に答えよ。卿は私と宰相、どちらにつく?」

「……っ」

 

 それでわしも、宰相の狙いについてピンときた。

 宰相は、将来、その武力で脅威となるであろうローエングラム元帥を倒すため、わしを手駒にしようとしていたのではないか。そしてわしとローエングラム元帥を戦い合わせ、どちらかが倒れたところで、残ったほうを宰相の手でとどめを刺す。それで宰相の権力は安泰、というわけだ。

 なんという憎らしい手であろうか! やはりわしの予感は正しかった。もしあそこで宰相の褒賞を受けていれば、わしは彼の手駒として、ローエングラム元帥と戦う羽目になっていただろう。そうなれば、わしの未来はおしまいだ。ローエングラム元帥に勝てるわけがないからな。

 それに、宰相の手はあまりにいけ好かない、というか唾棄するに値する。わしがアスターテでやらかした抜け駆けも、食えないことだと自分でも思うが、これはそれ以上だ! 自分の手を全く汚さずに、おいしいところだけ頂こうとは。

 それと、もう一つの理由で、わしがどちらにつくかはすぐに固まった。

 

「もちろん、ローエングラム元帥のほうでございます。私がローエングラム元帥に勝てるとは思えませんし、自分の手を汚さずに事を為そうなど、私にとっても許せるものではありません。何より、帝国をより良い方向に導けるのは、そんな心根を持ち、貴族でもある宰相よりも、ローエングラム元帥のほうだと思いますゆえ」

 

 そう、わしの考えを素直に言うと、ローエングラム元帥は満足そうにうなずいた。

 

「ありがとう。卿の協力に感謝する。実は、宰相が私に対抗して策を弄して蠢いているというのは、既に把握していたのだ」

「そ、そうなのでありますか」

 

 と、そこでヒルデガルド女史が、話を引き継いで口を開く。

 

「えぇ。物流の流れを分析した結果、フェザーンから宰相派の巡検艦隊へと、新型艦が納入されていることがわかったのです。それと、宰相の私領であるリヒテンラーデ星域にも、新型艦や軍事物資が届けられていることも」

「なるほど、そこから、宰相が元帥を倒す策を弄していると考えたわけですな」

「はい。そしてそこから、ローエングラム公と誰かを戦い合わせて、弱体化させ、弱ったところにとどめを刺そうとしていると考えたのです。そう考えた理由は、説明しなくてもおわかりになるかと」

「うむ」

 

 それはわしにもわかる。宰相のリヒテンラーデ候は、周りを駒として動かすことで、自ら損害を受けるリスクを減らして成果を得ようとする、唾棄すべき心根の老人だ。それが、自らも戦力を蓄えているのはおかしい。

 となれば答えは一つ。まさに、先ほどヒルデガルド女史が言ったとおりのことだ。そうすれば、宰相は大きな被害を出すことなく、彼はローエングラム元帥を排除することができる。うまくいけば、の話だが。

 本来文官である宰相に戦力は必要ないものだし、そもそもフェザーンからのもらいものだ。例え戦力を損耗したとしても、宰相の懐は大した痛まない、という寸法だ。

 

 わしのその考えを肯定するように、ローエングラム元帥はうなずいた。そして。

 

「ということだ。それでは改めて、宰相に対する策を伝えよう」

「は、はっ」

「卿の艦隊群は、イゼルローンに1艦隊残し、後はヴァルハラ星域の、惑星アースガルズに駐留させよ。私のほうから艦隊司令部として駐留の命令書を出しておく」

「はい。ということは、ローエングラム元帥は、オーディン衛星軌道上、及びヴァルハラ星域を掌握するお考えで?」

 

 わしがそう尋ねると、ローエングラム元帥はうなずいた。

 

「さすがに鋭いな、その通り。地上のほうは、軍務尚書となったキルヒアイスに命じて、地上兵を動かせて制圧させる。実はこうなることを予想して、キルヒアイスを軍務尚書に据えていたのだ」

「な、なるほど……」

 

 そういえば、通達か何かで、キルヒアイスが軍務尚書になったとか言ってたな。あと、統帥本部総長にはローエングラム元帥自らが兼任したとかなんとか。カストロプ討伐のごたごたで、良く見ていなかったが。

 

「卿は作戦が発動したらただちに艦隊を動かし、オーディン衛星軌道上を抑え、さらにヴァルハラ星域を掌握せよ。大義名分はこちらのほうで整えておくゆえ心配はいらぬ」

「御意。それで、決起するまでは、宰相からの褒賞攻勢はいかがいたしましょうか?」

 

 これがわしにとって肝心かなめだ。宰相側についたという既成事実を作られたらどうにもならない。

 

「拒絶し続けては、宰相をかえって警戒させてしまうだろう。領地の下賜は断ってもらうが、それ以外の艦や物資などについては素直に受け入れよ。ただし、それらを受けたら、それをただちに私かキルヒアイスに伝え、決してそれらに手を触れぬように」

「トラップが仕掛けられてる可能性もありますからな。了解しました」

 

 そこで気づく。そういえば、最初この話をしたときに、ローエングラム元帥は、傍らのヒルデガルド女史に「貴方の言った通りになったな」と言ってたな。

 ということは、彼女は、ローエングラム元帥より先に、こうなることに気づいていたってことか。大したお方だ。

 

 そして、その後、細かいことを話した後、わしは宇宙港に戻り、艦隊をアースガルズへと向かわせた。もちろん、イゼルローンから、ファーレンハイト大将、アイゼナッハ大将の艦隊をアースガルズまで呼び出すことも忘れない。イゼルローンは、ミュラー中将の艦隊がいれば大丈夫だろう。

 

 さて、後はあとは野となれ、山となれ、か。

 

* * * * *

 

 その夜、宇宙艦隊司令部。

 

「お呼びでしょうか、ローエングラム閣下」

 

 執務室のラインハルトのもとにやってきたのは、准将ながら宇宙艦隊の総参謀長となったオーベルシュタインだ。その彼に、ラインハルトが顔を向け、口を開いた。

 

「宰相が、いよいよ私を排除しようと蠢き始めたらしい。そこで、我が宇宙艦隊は、フォーゲル上級大将の機動艦隊群と組んで、先手を打ち宰相を討つことにした」

「それで、宰相を討つために、大義名分が必要、ということですか」

「そうだ。それで、何か案はあるか?」

 

 そのラインハルトの言葉に、オーベルシュタインは即座に答えた。

 

「それならば、先のアンスバッハによる、閣下とキルヒアイス元帥、そしてフォーゲル上級大将の暗殺未遂事件。あれの背後にリヒテンラーデがいたとすればよいかと」

 

 その答えに、ラインハルトは皮肉そうにうなずいた。

 

「ふ……。あの男には気の毒だが、確かにそれだけの計画なら、十分動く口実にはなるな。あとはフォーゲル上級大将がちゃんと動いてくれるか、だが」

 

 そのラインハルトの懸念に、オーベルシュタインは彼らしくもなく、わずか、本当にごくわずかに表情を緩めて言った。

 

「それに関しては問題ないかと。あの者は、純粋に帝国のことを考えている様子。閣下が帝国をよりよき、開明的な方向に向けていこうと考えている限り、協力は惜しみますまい」

「そうだな……それにしても、卿がそのように誰かを信頼するとは珍しいな」

「……事実を述べたまでです」

 

 そのオーベルシュタインの答えに、ラインハルトはかすかに表情を緩めるが、すぐに顔を引き締める。

 

「まぁいい。オーベルシュタイン、ただちに軍務省のキルヒアイスに、例の命令書を発送せよ」

「御意。宰相及び現政府首脳たちの捕縛と、主要軍事・政府施設の占拠の命令書ですな」

「その通りだ。政治の中枢にあの老人がいる以上、時間はあの老人の味方になる。そう時間をかけるわけにはいかん」

「御意」

 

 ラインハルトを打倒せんとする宰相リヒテンラーデ。

 だが彼が謀略を始動するより先に、事態の主導権は、既に英雄に握られていたのである。

 それを知らぬのは策士のみ―――

 

 そして、その時が訪れる!!

 

 




次回から、いよいよラインハルトと宰相のバトルが始まりますよ!
お楽しみにです!

ちなみに、リップシュタットの後に、ラインハルトとリヒテンラーデがバトルする、という展開は、SRCシナリオ『艦隊戦リレーシナリオ』にあった展開を参考にさせていただきました。同作品の作者様たちに感謝です。

というわけで次回
『策士策に溺れtter!』

転生提督の歴史が、また1ページ
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