ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった   作:ひいちゃ

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さぁ、いよいよ宰相との決戦ですぞ!


第7話『この世界は銀英伝であって、ヤ〇トではありません!』

 わしはなんとか生き残ることができた。

 

 シェルフスタットが爆沈する寸前というきわどいタイミングで、わしは乗組員と共にシャトルで脱出し、爆発の危険圏内から逃れることができたのだ。

 

「本当に危なかったな……。ぞっとしたぞ」

「そうですな。でも、安心してばかりもいられません。旗艦が沈んだことで、我が艦隊が浮足立っております」

「うむ。急いで、レグナシュトルムに乗り込み、司令部機能を復旧させなければなるまい」

 

 そしてレグナシュトルムに移乗し、そこに司令部を移したのだが、それでも戦局は芳しくなかった。

 

 艦隊群はなんとか、あの新兵器の攻撃範囲外から逃れることはできたが、後方からはやはり無人艦隊が襲い掛かっているのだ。

 しかも、追い込む役割は果たしたと判断しているのか、特攻することはせず、距離を置いて、砲撃を仕掛けてきているのだ。

 

 かといって転回などした日には、その隙を突かれて大打撃を受けるのは目に見えている。かといって、Uターンして向きなおったら、その移動中に新兵器の範囲に入る可能性もある。いや、その移動しているところを狙った無人艦隊に攻撃され、範囲内に押し込まれる可能性もある。

 

 結果として我が艦隊は後ろ向きのまま敵艦隊に対する、という不利な態勢のまま戦わざるを得ないという窮地に陥ってるわけだ。しかも、背水の陣に追い込まれて。

 

 だからといって、このままでいるわけにもいかない。現に、我が艦隊群はかなりの損害を出している。ミュラー艦隊の防御のおかげで、最悪の事態は免れているが、このままでは削られていき、エルヒンゲン攻略どころか、目の前の無人艦隊を撃破することすら危うくなりかねないのは目に見えている。

 

 わしは覚悟を決めた。

 

「仕方あるまい。全艦、Uターンして敵無人艦隊に向きなおる!」

「しかしそれでは、新兵器の攻撃範囲内に入ってしまう可能性もありますが……」

 

 参謀長のナイゼバッハの懸念に、わしはうなずいて返し、続ける。

 

「それも覚悟のうえだ。このままではいずれ、削り倒されてしまう。ならばイチかバチか、損害を覚悟してでも態勢を立て直し、背後の無人艦隊に対するしかあるまい。私のなけなしの頭では、これが考え付く精いっぱいだよ、ナイゼバッハ中将」

「そういうことなら了解しました。私たち一同も覚悟を決めましょう」

「すまんな」

 

 わしはナイゼバッハにそう答えると、一度目をつぶり、そして号令した!

 

「よし、全艦、高速機動、準備! エネルギー中和磁場を最大出力にせよ! 最悪、発生装置がオーバーヒートしてもかまわん!」

 

 しかし、そう言ったところで……。

 

 チカ、チカチカッ!!

 

 その無人艦隊に、いくつかの爆発の光が見えた。なんだ!?

 同時に艦橋に響く、通信士の明るい声。

 

「主力艦隊です! ローエングラム司令長官の主力艦隊が増援に来てくれました! 助かった!」

 

 レーダースクリーンを見ると、確かに主力艦隊がこちらに接近してくるのが映っている。無人艦隊は迅速に方向転換し、主力艦隊のほうに回頭しているところだ。これはチャンスだ!

 

「よし、全艦、その場で回頭! それが済んだのち、敵無人艦隊を、ローエングラム司令長官の主力艦隊と挟撃してたたくぞ!」

 

* * * * *

 

 さて、なんとか窮地を脱した我が艦隊は、敵無人艦隊を突破し、星域外縁で主力艦隊と合流した。

 

『手ひどくやられたな、フォーゲル上級大将。卿には、『私が到着するまで、エルヒンゲンへの攻撃は控えるように』と言っておいたはずだが』

 

 スクリーンに映し出されているローエングラム司令長官は、意地悪な笑みを浮かべながら、そう言ってきた。

 ……くっ、こいつ、わかって言ってやがるな!

 

「いえ、これはこちらから行ったわけではなく、追い込まれた結果でして……」

『ふっ、わかっている。言ってみただけだ』

 

 と、そこまで言ったところで、司令長官は真顔になった。

 

『卿の偵察と奮闘のおかげで、敵の新兵器の詳細が明らかになった。どうやらあれは、ビームを特別な鏡を備えた衛星で反射して、あらゆる角度から攻撃することを可能とした新型砲であるようだ』

「なるほど……名前をつけるなら、反射衛星砲といったところでしょうか。なんとも我が世界の常識とはかけ離れたような兵器のような気がしますが」

 

 わしがそう言うと、司令長官は苦笑をもらした。

 

『それを言うなら、イゼルローンのトゥールハンマーや、ハイネセンのアルテミスの首飾りなど、常識からかけ離れていそうな兵器はいくらかあるがな。卿もこの前、火炎直撃砲という、常識を逸した兵器と戦ってきたばかりではないか』

「あ、そういえばそうですな。それで、それよりも今は目の前にあるあの反射衛星砲への対処ですが……」

 

 そのわしの言葉に、ローエングラム司令長官は会心の笑みをもらした。どうやら秘策があるらしい。

 

『その点なら心配はいらぬ。軍務尚書のキルヒアイスが、こんなこともあろうかと、対策となりうるものを用意してくれている。それを積載するのに時間を取られて、ここに来るのが遅れてしまったがな』

「それなら安心ですな。ということは、我々はそれを使って反射衛星砲を排除するのを高みの見物をしているだけでいい、と」

 

 そう思っていたことがわしにもあったが、残念ながらそう簡単にはいかないらしい。

 司令長官は首を振って返してきた。

 

『そういうわけにもいかんだろう。それに対して、宰相が何も手立てを講じないわけがあるまい。おそらく、反射衛星砲の無力化を阻止しようと、再び無人艦隊を差し向けてくるはずだ』

「はぁ……すると、その時に敵艦隊を迎撃するのが、我らの役割と」

『その通りだ。その時には、卿はミッターマイヤーらの艦隊と協力して、奴らに対処せよ』

「了解しました」

 

 そして通信は切れた。

 さてさて、ローエングラムはどんな手を使ってくるのか、楽しみだな。

 

* * * * *

 

 ローエングラム司令長官が持ち込んできたのは、岩石射出用のマスドライバーだった。

 

「あれで、反射衛星を狙い撃ちして破壊するつもりか? しかし、敵がそれを許すかな?」

「敵には反射衛星砲がありますからな。それで破壊を狙う可能性はありますな」

 

 そのナイゼバッハの推測に、副官のバルトハウザー准将もうなずく。

 

「小官もそう考えます。艦砲で破壊する手もありますが、それより反射衛星砲のほうがより確実に破壊できるでしょうし、せっかくあるのを、小惑星破壊に活用しない手はありますまい」

 

 そこで、ヒルデスハイムが一言。

 

「なぁに、ローエングラム公のことだ。色々と考えておられるだろう。外野がとやかく言うより、今は目の前で開催されるショーを楽しもうではないか」

 

 なるほどそれもそうか。ヒルデスハイムも、たまにはいいことを言うな。

 

 そうしてるうちに、そのショーが始まったようだ。

 マスドライバーに備え付けられたアームが、近くの小惑星をつかみ、マスドライバーの中に装填する。

 そして……発射!

 

 発射された小惑星はかなりの速度でエルヒンゲンに飛んでいき……え? 反射衛星砲で迎撃しない?

 ……そして地表に衝突した。

 

「どういうことだ? なぜ奴らは、反射衛星砲なり艦砲なりで破壊しないんだ?」

「さぁ……」

 

 わしも、副官のバルトハウザー准将も、そして我が艦隊一の切れ者である参謀長、ナイゼバッハ中将も首をひねるばかりだ。

 その疑問に答えを出してくれたのは、ファーレンハイト大将だった。

 

『なるほど、司令長官も考えたものですな』

「? どういうことだ、ファーレンハイト大将?」

 

 わしがそう聞くと、彼はうなずきながら説明を始めた。

 

『おそらく元宰相は、我々がレーザ・フリントを詰め込んだ隕石偽装コンテナを使って、カストロプ艦隊を攻略したことを知っているはず。そんな我々が小惑星を発射したらどう思うでしょう?』

「なるほどな。それなら藪蛇になるのを避けるために迎撃を控えようとするだろうな」

 

 わしの横で、ナイゼバッハ中将もうなずいて続けた。

 

「そうですな。しかも、あれがコンテナだとしたら、途中で燃え尽きるか、もし落ちても大した被害になるとは考えにくい。ならば素通ししてしまおうと考えるのが筋、というわけですか」

 

 わしとナイゼバッハの推測は正しかったようだ。ファーレンハイト大将はうなずいて、口を開いた。

 

『そういうことです。そして今のが本物の隕石だったことで、元宰相側は次の発射されるものが策が仕込まれたダミーか、本物の小惑星かわからず混乱しているはず。次からは例えコンテナだったとしても、破壊しようとするでしょう』

 

 そう彼が言っているそばから、次の小惑星が発射された。

 そしてファーレンハイト大将が言う通り、今度の小惑星は反射衛星砲に破壊された。その中から出てきたのは……。

 

「司令長官の決め手が出てきたようですな」

「あれは……ワルキューレか? 小惑星に偽装したコンテナの中に隠して送り出すとは考えたな。だが、あの大きさでは、まとめて反射衛星砲に……」

 

 吹き飛ばされるのでは……と思ったが、そうはならなかった。

 反射衛星は我が軍のワルキューレたちの攻撃をただ無防備に受け続け、やがて大破して機能停止した。

 

『……』

『はっ。アイゼナッハ大将の言葉によれば、どうやら、敵の反射衛星砲は対艦攻撃を前提に作られているようだ。戦艦クラスのものになら反応するが、戦闘艇クラスのものには全く反応しないと思われる、と』

 

 アイゼナッハ大将の意見を聞いたグリース准将がそう上官の推論を述べる。そしてそれは正しかったらしい。

 

 再び小惑星が発射され、破壊され、中からワルキューレが飛び出し、別の反射衛星を大破させていく。

 

 さらに、何度もコンテナばかりを射出していれば、コンテナであることを見抜かれるからか、時々は本物の隕石も射出している。当然ながら素通ししてしまったそれは、エルヒンゲンの地表にダメージを与える。

 

「まさか、こんな心理的な手も絡めた作戦を仕掛けるとはな。さすがはローエングラム司令長官だ」

 

 わしはそう感嘆の声をもらした。さすが、前世でわしらを一蹴しただけのことはあるわい。

 と、そこに。

 

「司令、感心してばかりもいられません。敵無人艦隊が再び、こちらに向かってきております」

 

 バルトハウザーがそう報告してきた。どうやら、これ以上反射衛星を無力化されるのを防ぐために、こちらを潰す気になったらしい。

 だが。

 

「よし、我が艦隊群は前進する。ミッターマイヤー大将らの艦隊と連携し、敵無人艦隊をたたく! 敵は先ほどの戦いでかなり数を減らしているうえに、こちらには主力艦隊の援軍もある。恐れるに足らんぞ!」

 

 我が艦隊群は、ミッターマイヤー大将の艦隊や他の艦隊とともに、マスドライバーの前面に展開し、無人艦隊との戦闘を開始した。もちろん、マスドライバーの射線に入らないように注意しているのは言うまでもない。

 

 そして……

 

* * * * *

 

「司令。ローエングラム司令長官より通信。戦闘を停止せよ、と。どうやら元宰相軍は降伏したようです」

 

 無人艦隊を壊滅させ、反射衛星が残り数機になったところで、バルトハウザーがそう伝えてきた。

 やっと終わったか……正直、今回は生きた心地がしなかったわい。できれば、こんな目には二度と遭いたくないな。

 

 さて、一息ついてばかりもいられない。

 

「そうか。これからのことについては、何か言ってきたか?」

「はい。司令長官がエルヒンゲンに降りて、元宰相を逮捕するまでの間、衛星軌道上の安全を確保せよ、と」

「わかった。元宰相がどんな恨み言を吐くのか、興味があったがな……。仕方あるまい。エルヒンゲンの衛星軌道上まで進出し、残った反射衛星を破壊しつつ、軌道上を確保する」

 

 後から聞いた話だが、やはり元宰相は散々恨み言を言っていたらしい。だが最後には、ローエングラム公の器の大きさを見せつけられて、潔く敗北を認めたそうだ。

 

 その後のことだが、さすがに宰相であった者を裁判にかけて処刑するわけにもいかず、リヒテンラーデ元宰相は自邸で服毒自殺を遂げたらしい。その最期の言葉は、

 

『このわしも、まさか葬られるべき貴族の一人だったとはな……。なんとも皮肉なものだ』

 

だったそうである。恨み言を言っていたとはいえ、最後には素直に負けを認め、自分の運命を悟ったのはさすが、宰相だった者というべきだろうな。

 

 元宰相の一族は、今回の事件には関わりがなく、命まで取ることはなかろう、ということで、財産を、平民として生きていける分だけを残して没収したうえで、市井に追放、ということになった。

 甘い処分のような気がしないでもないが、下手に恨みを買って、未来の叛逆者を作り出すこともあるまい。これはこれでいいのかもしれない。今は彼らのささやかな幸せを祈るとしよう。

 

 そして全てが終わったところで、我が艦隊はイゼルローンに帰還することにした。

 さて、これでしばらくは平穏に過ごせたらいいのだが……どうなることやら。

 

* * *

 

 一方、そのころ。自由惑星同盟首都星・ハイネセン。

 

 その宇宙艦隊司令部に、一人のさえない男がやってきた。

 

 今後の戦いの行く末の一端を担う、彼の名は……

 




お待たせしました! いよいよ次の回から、ヤンが登場してきますよ!

次回、『ヤン独立軍、誕生』

転生提督の歴史が、また1ページ
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