ブラウンシュヴァイクからフォーゲルに転生したけど、立ちはだかったのはヤン・ウェンリー(原作読破済み転生者)だった   作:ひいちゃ

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その後の状況のお話です。


第9話『シェルフスタットⅡよ、あれが新体制の灯だ!』

 さて。イゼルローンに帰還するといったな? あれは嘘だ。

 

 実際には、ファーレンハイト艦隊とアイゼナッハ艦隊だけイゼルローンに戻し、我が直属艦隊は、オーディンに一時帰還した。

 前の戦いで沈んだシェルフスタットに代わる、新しい旗艦を受領するためだ。

 

 技官に案内されて、私は、その新旗艦が係留されているドックへと向かった。そこにあったのは……。

 

「あー……これは……」

 

 そこにあったのは、シェルフスタッフとよく似た形状の戦艦。しかし細部はシェルフスタットとは違う、しかし見たことがあるものだった。

 

 それもそのはず。その戦艦は……。

 

「何か?」

「あー、技官。これはもしかしたら、巡検艦隊に配備されていたという、フェザーンの新型艦ではないかな?」

 

 そう、シェルフスタットによく似せてはいるが、オーディン衛星軌道上で戦った、宰相軍のフェザーン製新型艦であった。

 

「はい。巡検艦隊に配備されてはいたものの、編成されずにドックに眠ったままになっていた新型艦を、旗艦仕様に改修したんですよ。おまけに閣下が乗ることを考えて、艦形も、なるべくシェルフスタットに似せるように改装しました。ローエングラム元帥からの指示で」

「それはそれは……」

 

 これでまた、ローエングラム元帥に頭が下がらなくなってしまったな。恩を売ろうという意図でなければいいのだが。

 

「あ、ちゃんとハード、ソフトともに、トラップが仕掛けられていないか念入りにチェックしたので安心してください」

「それは助かる。戦闘中にトラップでどっかーん、ってことになったら笑えないからな」

「お望みなら、自爆装置もおつけしますが」

「いや、それは結構」

 

 そんなものは、ヒルデスハイムが艦長になった時、彼の艦にでもつけてやれ。

 と、そこで技官があることに気が付いたようだ。

 

「そういえば閣下。この艦、まだ名前がついてないんですよ。閣下がこいつに名前をつけてやってくれませんか?」

「そうか……それなら、うむ」

 

 この艦がわしの新しい旗艦になるということで、艦名はすぐに決まった。

 そう、その名は―――。

 

「うむ、こいつの名前はシェルフスタットⅡだ。生まれ変わったシェルフスタットだ。この名前がいい」

「わかりました。それではその名前で登録しておきます。閣下は本当に、シェルフスタットを愛していたんですね。造船技士として嬉しい限りですよ」

「当たり前だ。第5次ティアマト会戦から、エルヒンゲンで沈むまで、共に戦場を駆け抜けてきた相棒なんだからな。これからよろしく頼むぞ、シェルフスタットⅡ」

 

 わしがそう言ってシェルフスタットⅡを見上げると、気のせいか、シェルフスタットⅡが微笑んでいるように見えた。

 なお、ヒルデスハイムの顔は浮かんでこなかったので。念のため。

 

* * * * *

 

 さて、わしはさっそく、シェルフスタットⅡの習熟航海に出発した。といっても、ヴァルハラ星域のあちらこちらを飛び回るだけだが。

 

 カタログスペックによれば、このシェルフスタットⅡの元になったフェザーン艦は、インテグラ級と言って、現在配備されている攻撃空母の次世代艦のテストベットとして開発された艦なんだそうだ。

 なんでも、攻撃力と防御力を戦艦並みに引き上げたうえに、ワルキューレの運用能力をさらに向上させたんだとか。

 

 しかし、テストベットの艦を量産して宰相に譲り渡すとは、さすがフェザーン。商魂たくましいな。見習いたいとは思わんが。

 

 そんなことを考えていると、帝都からのニュース通信が入ってきた。帝国の新体制が固まった、とのニュースらしい。

 

 まず、やはり宰相はローエングラム公が就いたらしい。

 実はこれには、あるエピソードがあった。

 リヒテンラーデ元宰相が自裁する直前、ローエングラム公の人物を改めて見た彼は、彼になら帝国を譲り渡すに値すると、自ら宰相の職をローエングラム公に譲り、そのことを放送で公開したという。

 そのおかげもあって、リヒテンラーデ元宰相からローエングラム公への政権移譲は、非常にスムーズに済んだということだ。

 

 それを聞いて、わしも少しはあの老人を見直した。周囲を駒として動かすという心根は好きにはなれないものの、彼もローエングラム公ではないにしろ、大人物だったのかもしれない。さすが、長年帝国の支配を担ってきただけのことはある、というところだろうか。

 

 さて。副宰相にはキルヒアイス軍務尚書が、軍務尚書と兼任という形で就任した。公の腹心であり、人柄がとても良い彼は、まさにローエングラム公を補佐するこの役職にぴったりだろう。

 

 ローエングラム公の参謀長にして、『絶対零度の剃刀』の異名を持つオーベルシュタイン准将は、宰相府直属の、外務諜報局局長の座についた。話によれば、同盟を名乗る叛乱勢力の情報を探り、謀略を行う部署、という話だ。彼はここでも、その鋭利な軍略を振るうことだろう。同盟軍の皆さん、ご愁傷様です。

 

 内務尚書にはフロイライン・マリーンドルフの父親であるマリーンドルフ伯爵が就任した。当人はこれには驚いたそうだが、話によれば、ローエングラム公は、彼の人柄を見込み、官僚たちの意識改革を促す役割として、彼を内務尚書につけたらしい。

 

 そして軍事面だが、宇宙艦隊司令長官、統帥本部総長には引き続きローエングラム公が就く。そして軍務尚書はキルヒアイス軍務尚書がこれまた継続。

 ミッターマイヤー上級大将とロイエンタール上級大将は、宇宙艦隊副司令長官の座に就いた。

 そしてわしは引き続き、フォーゲル機動艦隊群司令を続投し、さらにイゼルローン方面軍司令として、そちらのほうの戦略を担う大任を担うことになった。これにはびっくりだ。

 まぁ、主に同盟軍がイゼルローンに攻めてきたときの対処を担当することになるのだろう。帝国軍が同盟領に攻め込む場合は、ローエングラム公が自ら出てくるだろうし。

 

 そんなことを考えながら、シェルフスタットⅡはオーディンに帰還した。この後は、再編した主力艦隊とともに、イゼルローンに帰還する予定だ。

 

 色々あったが、この帝国新体制成立をもって、リップシュタット戦役から始まる帝国内の混乱はひとまず収束したことになる。やれやれ。これでしばらくは何もないといいのだが。

 

* * * * *

 

 残念ながら、フォーゲルのこの希望はかなわなかった。

 同盟領からの、ある男からの通信が、新たな戦いを呼び込んだのだ。

 

 その男の名は、ヨブ・トリューニヒト。クーデターの一件で政権を追われ、地下に潜った、元自由惑星同盟最高評議会議長である。

 

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