I世が落下した亀裂の底から、低く冷たい声が響く。
「もうやめだ」
I世は短く呟くと、勢いよく亀裂の狭間から飛び出してくる。
その背中には、漆黒に染まった翼が翻っていた。
I世は、空からイチロー達を見下すように俯瞰する。
「おっ、でてきた! 穴の中で少しは反省はした?」
アミリアは多少姿が変わったくらいでは動じない。
むしろ、こいつのことだから翼くらい生やすだろうと納得していた。
「貴様らの土俵に立って遊ぶのはもう終わりにすることにした」
「まだ反省が足りないみたいだね? よし、もう一回今のフルコース味わおうか」
腕を鳴らし、アミリアは仕置きと称して再び集団リンチを仕掛けるつもりだ。
イチカとイチローに目配せをして、襲いかかるタイミングを伝える。
そんな彼等をI世は特に気にする様子もなく、どんどん空へと浮かび上がっていく。
常人ならば決して手の届かない高さまで、イチロー達との距離を離す。
太陽に重なる位置にまで浮かび上がると、そこでようやくI世は動きを止めた。
I世の背後から太陽の光が射し、イチロー達は眩しそうに目を細める。
それはまるで、I世から後光が生まれているかのようだった。
「なんだー? そんな高く飛び上がって、逃げるのかー!!」
物理的に距離が開いたため、イチローは声が届くように大きな声で呼びかける。
I世は呼びかけに答えない。
返事代わりに、一瞥をくれるだけだ。
I世は下にいるイチロー達には目もくれず、片手を空に掲げた。
「何やってんだあいつ……?」
そうイチローが口にした時だ。
地上に影が差した。
その影は、あまりにも大きかった。
「………マジかよ」
I世の掲げる掌から遥か彼方。
大気圏を超えた向こう側に、超巨大隕石が蒼漢山目掛けて降り注ごうとしていた。
「あいつ、たった一人でどんだけの力を持ってやがる……隕石まで落としやがった……!」
イチローは、空に悠々と佇んでいるI世を睨みつける。
I世はそれを知らん振りして自分一人、隕石が当たらない場所まで飛んで行く。
見る見るうちにI世の姿は小さくなっていき、十分に安全な距離を取ったと判断したI世は、イチロー達が隕石に潰されて死ぬ姿を高みの見物するようだ。
「あいつマジクソ野郎だな」
I世がいる方向に中指を立てて、イチローは吐き捨てるように言う。
目を凝らしてみると、遠く向こうに離れて、豆粒ほどのサイズになったI世が確認できる。
そんなイチローの方に、背後から肩が置かれる。
振り向いてみれば、アミリアが悲しげな顔で立っていた。
「じゃ、やろうか。アルマゲドン」
「え?」
空いているもう片方の肩にも優しく手が乗せられる。
その手はイチカのものだ。
「イチローさん、短い間でしたけど、貴方と過ごした日々は忘れません……」
「ちょっと待てや! 俺が死ぬ前提で話を進めんな!?」
肩に乗せられた手を振り払ってイチローは真面目に語り始める。
「お前らが名作映画を再現したいって気持ちはよーく伝わったけど、無茶言うんじゃねえ! つーか、あんなでけえもんが降ってきたら俺たちどころかこの山ごと跡形もなく吹き飛ぶぞ!」
どうにも緊張感に欠ける二人に対して、イチローは必死の形相で捲し立てる。
隕石はどんどん近づいてくる。もはや、I世を殺したところでどうすることもできないだろう。
「まあ、そんなに焦らないでよ」
「逆にお前はなんでこんな状況なのに落ち着いてるんだよ!」
焦るイチローとは打って変わって、普段通りの態度のアミリア。
彼女は、朝の挨拶でもするかのようにイチローの質問に答えた。
「さっきも言ったでしょ。勝てるからだよ」
「だからその根拠は!」
「イチロー、根拠はお前だよ」
「……は?」
理解不能なその根拠に、イチローの思考は一瞬止まった。
そんなことはお構いなしに、アミリアは話を続ける。
「さっきは冗談みたいに言ったけど、イチローならあの隕石を止められる」
「……いやいやいやいや! 無茶を言うなって!? あんな大きいもん、俺の爆破できる限界を超えてるんだって! 龍との戦い見たろ? デカい奴を一撃で爆破させるのは無理なんだ!」
「それはあの時の限界でしょ? 今はもっと強くなってる。それは自覚してるはず」
アミリアは指を刺して、イチローに突きつける。
「けど……」
「けどもデモもなし! やらなきゃこの山ごと滅びて死ぬだけだよ!」
「無茶苦茶言いやがって……」
心を落ち着かせるため、深いため息を吐いてイチローは空を睨みつける。
覚悟は決まったようだ。
「いいぜ! やってやるよ! 蒼漢山の人全員この俺様が救ってやらあ!!」
「よっ! 主人公!」
「もしなにかあっても私達がフォローしますからね」
イチカの頼もしい言葉もあって、イチローの心中に焦りは消えて無くなっていた。
チラッと横目で遠くのI世を一瞥すると、イチカに声を掛ける。
「イチカ、俺を上まで連れてってくれ」
「了解ですっ!」
その一言で、イチカは水でできた龍を手元から生み出す。
水の龍は、背中にイチローとアミリアを乗っけると、ぐんぐんと上昇していった。
イチロー達は地上に落下しようとする巨大隕石に、自ら近づいていく。
「迫力すっげえな……」
「ビビってる?」
「当たり前だろ。そういうお前はどうなんだ?」
「あたしは別に。失敗してもあたしがなんとかしてあげるから、イチローも気楽にやりなよ」
隕石に衝突する、そのすぐ手前でイチカの操る水の龍は上昇を止めた。
イチローは膝を曲げて、両足に力を込める。
膝のバネを存分に使って、イチローは隕石目掛けて跳び上がった。
「うおおおおおお怖ええぇぇぇぇえええ!!!」
叫びながらも、一直線に降下する隕石に向かって行く。
「んがあっ!?」
そして、派手に隕石と正面衝突。
ぶつかった衝撃で、イチローの意識がとびかける。
そのまま重力に従ってイチローは落下する。
「イチローっ!!」
アミリアが身を乗り出して手を伸ばす。
混濁した意識の中、その小さな手をイチローはなんとか掴むことに成功した。
アミリアに引き上げられ、再び水龍の背中の上に戻る。
「それで、成功したの?」
「ああ、もちろん」
イチローの能力の発動条件は、掌で触れたものを爆弾に変えるというもの。
ジャンプした勢いそのままに衝突した瞬間、イチローはたしかにその掌で隕石に触れた。
「痛い思いをした甲斐あった。余裕もないし、さっさと爆破するぞ」
そう言って、イチローはすぐさま能力を発動させる。
その爆発の威力は凄まじく、間違いなく過去最高の力を発揮した。
隕石は見事に爆発四散。
破片すら残さず、粉々に砕け散った。
「うわ、すっご……フォローのためについてきたけど、あたしいらなかったじゃん」
「ああ、でも俺はもうクタクタだ……予想以上に今の爆破に力を持ってかれた……」
イチローは大の字になって背中から倒れ込む。
アミリアは今回頑張ったご褒美として、そんなイチローの頭を持って膝に乗せる。
「ちょっとの間だけ、膝枕してあげる」
「………可愛いとはいえ、おっさんに膝枕されてもなぁ……」
「空から落っことされたいの?」
水龍の上で、こんなやりとりをしながらイチロー達は地上へと戻ってきた。
「お疲れ様です」
イチカの労いを素直に受け取り、イチローはなんとか一人で立ち上がる。
アミリアに膝枕をされていたのを見られて、照れているのである。
そのため、フラフラだというのに、見栄を張ってしまうのだ。
「ふふっ」
そんなイチローを、イチカは微笑ましいと思う。
ついつい口から笑いが漏れてしまうほどに。
男の子だなぁ……などと考えていた、その瞬間。
「うっざい」
いつの間にかこの場に現れていたI世に頭から殴り飛ばされる。
I世はその勢いのまま、フラフラのイチローに蹴りを入れ、その意識を奪った。
殴り飛ばされたイチカも、不意打ちで頭部に衝撃を与えられたため、同じく昏倒してしまう。
残されたのはただ一人。アミリアだけだった。
「このクソ野郎っ!! もうあたしらの勝ちでいいじゃん!! いい加減しつこいんだよ!!」
「何を言ってるんだ? 我はお前らを殺すって言っただろ。まだ一人も殺していないではないか」
そう言うI世の身体に傷はなく、余力もまだまだ残していそうだった。
対して、勇者パーティーの方は二人が意識を失い戦闘不能。
まだ立っているアミリアさえ、身体はボロボロだ。
せめてイチカに回復してもらっていれば状況は変わったのかもしれないが、そんなもしもの話をしたところで意味はない。
今度こそ、正真正銘の絶体絶命である。
「諦めろ。我はあの隕石をまだまだ降らすことができる。勝ち目なんて最初からなかったのだ」
「…………畜生」
大太刀を持って、I世はアミリアに近づいてくる。
それでも、アミリアは拳を構えない。
ようやく諦めたのだ。
そう感じたI世は意気揚々とアミリアのすぐ隣まで近づく。
「死ねッッ!!」
「グフォオッ!?」
そこに、不意打ちでアミリアの拳が腹に叩き込まれた。
だが、アミリアも消耗が激しい。
I世の身体に穴を開けることもできず、内臓と骨をぐちゃぐちゃにすることしかできなかった。
「ぐぅ……『痛覚抑制』の能力を持っていてよかった。貴様、まだ諦めていないのか!」
「誰が諦めるもんか! 死んでもお前だけは反省させてやるっ!!」
不意打ちを決めて、アミリアは拳を構えた。
その構えを見て、I世もアミリアの覚悟を知ったのか、態度を改める。
「……お前を殺すには、我も本気を出さないと駄目そうだ。最後まで我に立ち向かったその心意気に免じて、この一撃に我の全力を込めよう」
I世は大太刀を正中線に構え、その眼を鋭くさせる。
アミリアはその刀に宿る力の強大さを理解して、自身の死を悟った。
それでも、戦いの構えだけは絶対に解かない。
「安らかに眠るがいい」
断頭の刃が振り下ろされる。
もはやこれまで。アミリアは一瞬後の痛みに備えて目を瞑った。
「…………?」
だが、いつまで経っても首筋に痛みはやってこない。
アミリア恐る恐る目を見開く。
そこには──────
「…………誰?」
黒い髪をつんつんとさせた筋骨隆々の男がアミリアの目の前に立ち塞がり、I世の大太刀を指で受け止めていた。
「ば、馬鹿な……!?」
I世も今回ばかりは本気で驚いた。
何せ正真正銘、全身全霊の斬撃を人差し指と中指のたった二本だけで受け止められていたからだ。
「き、貴様何者だ!? どうやって我の攻撃を受け止めた!?」
I世は目の前の男が自身の本気の一撃を防いだとは信じられず、何かトリックを使ったに決まっていると、内心動揺しながらも考えていた。
黒髪の男はI世の大太刀を片手で受け止め、空いているもう片方の手をあげながら、その口を開いた。
「オッス! オラ田中一郎!」
「勝ったわこれ」
アミリアは勝利を確信した。
「ふ、ふざけるなよ……貴様がどんな能力を持っていようとも、最強は我だ!」
I世は自身に身体能力を強化する魔法をかけて、肥大した筋力で大太刀を奪い返そうとする。
しかし、大太刀はビクともしない。
大太刀は使えないと瞬時に判断したI世は、素手で黒髪の田中一郎に殴りかかる。
「くたばれーッッ!!」
田中一郎は、大太刀を指でへし折ると、I世のパンチに合わせてカウンターを腹に叩き込む。
水風船が破裂したような音を響かせて、I世の身体は弾け飛んだ。
「うわ! やり過ぎちまったか?」
そう田中一郎が心配した束の間の瞬間に、I世の身体は修復していた。
「はぁ、はぁ。貴様の攻撃なんていくら喰らったところで、直ぐに回復する。我は不死身だ!」
「そりゃあ良かった」
自身を鼓舞するするように大声で叫ぶI世。
そんな彼を田中一郎は執拗に殴り続ける。
腹を殴っては消し飛び、頭を殴っては破裂した。
「クッソォォォオ!!! 最強は俺だ! 俺なんだ!!」
一方的に殴られ続け、もはやなりふり構っていられなくなったI世は翼をはためかせ上空へと身を移す。
「この大陸ごと消し飛びやがれーーッッッ!!!」
両手に莫大な魔力を貯めて、空から地上に向かって魔力のエネルギー波を撃ち出す。
I世の言葉の通り、もし地上に着弾すれば大陸が消えて無くなるくらいは容易いほどの魔力がそのエネルギー波には込められていた。
────しかし目の前の田中一郎は惑星を容易く消し飛ばす能力の持ち主。
田中一郎は腰を引いて両手を構え、何かを呟く。
そして────
「波ァーーーーー!!」
田中一郎もエネルギー波を撃ち出した。
両者のエネルギー波は拮抗!
───なんてする筈もなく、一瞬でI世のエネルギー波は飲み込まれて、その勢いのまま向かってくる。
「クッ……!!」
間一髪、I世はギリギリのところでそのエネルギー波を上に飛んで回避する。
もしも直撃すれば、I世の回復能力といえども瀕死は免れないだろう。
今のは危なかった……とI世は胸を撫で下ろす。
安堵したその時、なんとはなしに地上に視線を向けると、イチローが意識を取り戻していることに気がついた。
「(なんだあいつ……? 今更起きたところで、あの程度の奴は戦力にも────)」
I世はイチローに嘲りの視線を向けていたが、その表情を見て固まる。
イチローは満面の笑みでI世を見ていた。
そして、親指を下に向けて地獄に落ちろとハンドサインで伝えた。
「(まさかあいつ、気絶する直前に俺に触って───)」
────そう思い至った瞬間、I世の身体が大爆発を起こす。
爆発の傷自体はすぐさま治った。
だが、突然身体が爆発させられて空中でバランスを保っていることができる者はいない。
I世は空中から墜落する。
そして、落下する先には未だ放たれ続けているエネルギー波が待ち構えていた。
「ちくしょぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!!」
I世はエネルギー波に飲み込まれた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「それじゃあ、魔神ターヌァーカI世討伐記念に! 乾杯!」
「「「乾杯!!」」」
イチロー達勇者パーティーは、初めてお互いがキチンと顔を合わせた場所である、王国の酒場で祝勝のお祝いをしていた。
「「「クゥ〜〜! 酒うんめぇ〜!」」」
「皆さんお酒はほどほどにしておくんデスよ?」
以前とは違い、この場にはクラリスという新たな人物が加わっている。
「ちょっとくらいハメを外したって見逃してよ〜! せっかく王様からI世討伐報酬としてたんまりお金貰ったんだからさー!」
「駄目デス! ここ最近一緒に生活して、皆さんが自堕落な人だと分かりました。皆さんを放置したら倒れるまで飲むでしょう? だからほどほどにするデス!」
「クラリスちゃんのケチー!」
アミリアがぶーぶー言いながら口を尖らせている。
その元気な様子は、少し前に起こったあの激戦の時のボロボロな姿とは正反対だ。
イチローはそれを見て、いつもの日常が戻ってきたことを改めて実感する。
あの戦いの後、I世は瀕死であるも、かろうじで生きていた。
そんなI世を更生させると言って、黒髪の田中一郎がどこかしらに連れて行ってしまったため、その後の行方は彼しか知らない。
彼がI世を連れて行く際に、イチローはある質問を投げかけていた。
『あんたの実年齢は何歳なんだ?』と。
その問いに、彼はこう答えた。
『オラか? オラは6歳だ!』
イチローはそれを聞いて、吹き出さずにはいられなかった。
結局、あれこれとチート能力を付け足すよりも、6歳の少年が思い描く主人公の方が強いというのが滑稽だったからだ。
I世を連れて行くと聞いた時は、否定的だったイチローだが、未だ純粋である彼ならきっと良い方向に導いてくれるだろうと感じた。
それに、さすがのI世も今回の件で上には上がいると懲りただろう。
ただ、I世が去り際に呟いた言葉がイチローの脳にこびり付いて離れない。
I世はこう言っていた。
『やってくれたな……大変なことが起こるぞ……!』
そう呟いたのを最後に、I世は気を失ってしまったため、それ以上聞きだせなかった。
モヤモヤとした感情が、イチローの中に今も残っている。
まあ、そのモヤモヤも、酒を飲み始めて数時間もしたら消えて無くなっていたのだが。
「「「ワッハッハッハッハ!!」」」
悪酔いしたおっさん達は酒臭さを漂わせながら新しく勇者パーティーに正式に加入したクラリスにウザ絡みする。
「クラリスちゃ〜ん! ぶっちゃけこの中の3人だったら誰が1番好き〜?」
「あっそれ気になりますねぇ〜!! 教えてくださ〜い!」
「俺だよな! な!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてくださいデス!」
アミリアに肩をガックンガックン揺らされて、クラリスは食べた物を戻しそうになる。
3人の酒癖の悪さに辟易としながらも、クラリスは素直に答える。
「皆さんのことは等しく大好きデスよ」
「今そういうの求めてないよ〜」
「そうですそうです! 意見をはっきりさせなさーい!」
「やっぱり俺か! 俺なのか!?」
「(この人たちめんどくさいデスね……)」
命の恩人ではあるものの、そう思ってしまうのは仕方がないだろう。
暫しの間、自分が真に好きな人は誰かについてクラリスは考え込む。
やがて答えは出たのか、クラリスは顔を上げた。
「クラリスが好きなのは─────」
ごくり、と唾を飲み込む音が聞こえる。
それは、イチローが漏らしたのか、はたまた隣にいるアミリアか。もしかしたら、普段は落ち着いた物腰を見せるイチカかもしれない。
クラリスが唇が、続きの言葉を紡ぎ出す─────
「大変です!!」
───その前に、酒場に一人の兵士が入り込んできた。
イチロー達はいいところで雰囲気をぶち壊した兵士に鋭い視線を向ける。
その兵士はイチロー達を見つけると、必死の形相で近づいてきた。
「大変なのです勇者さま!!」
「いったい何があったんだよ? 下らない用事だったら殴るからな」
そう言われて一瞬怯んだ様子を見せる兵士だったが、すぐに気を持ち直してイチロー達にある事を伝える。
「実は………魔神ターヌァーカI世の生み出したと思われる魔物達が世界各地で暴れ回っているとの報告が入っているのです!」
「は?」
「なんでも、『造物主様とのリンクが切れた今、我らは好き勝手に暴れされてもらう』等の発言が確認されています!」
「えー……」
「つきましては、我が王からの伝令であります! 『魔神を倒したのはお前達なのだから、お前達が責任を持って奴等も退治せよ』とのことです!」
「ちょっと待ってよ」
「では、しかと伝えましたので!」
最後にそう言って、兵士は去っていた。
アミリアとイチカが未だ状況を飲み込めていない中、イチローはI世の言葉を思い出していた。
『やってくれたな……大変なことが起こるぞ……!』
「(大変なことって、これのことかァ〜〜!!)」
イチローは頭を抱える。
自分達がI世を倒してしまったことで、奴の管理下にあった魔物達が皆暴れまわっているのだ。
責任の一端はイチロー達にある。
イチローは自責の念に囚われ────
「(いや、本当にそうか? 本当に俺たちが悪いのか?)」
────そうになる前に、これまでのことを思い返した。
「(そもそもあいつが魔物なんか生み出さなかったらこうはならなかったし、しっかり魔物の管理を怠っていなかったら暴れ出したりもしないだろ)」
冷静になって考える。
そうすると、誰が悪いかは一目瞭然だった。
「(フッ……なるほどな……)」
周りを見ると、アミリアとイチカも同じ判断に至ったようでお互いの顔を見合わせて頷き合う。
そして、息を合わせて口を開いた。
「「「何やってんだI世ィィィィィィ!!!!!」」」
田中一郎達の受難は、終わらない。
最後までお付き合いありがとうございました〜