飯食う人も好き好き   作:ももんじゃ

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斎賀玲と美味しいパスタ作ったお前

サンラクがオルケストラ攻略配信で一世風靡したおよそ2日後、斎賀玲は事の真相をようやく把握した。

 

「これ…ライブラリ用の検証動画が間違えて流れちゃったんですよね」

 

マッシブダイナマイトさん伝手に事件の詳細を知っていた私は、この動画を見るべきか迷っていた。偶然の産物とはいえ流失とも言えるもの。本人をよく知る身として気軽に閲覧して良いものか。

 

下手をすると彼のの心象を損ねる恐れがある。その可能性が一縷でもある限り玲は再生ボタンを押すことを躊躇っていたのである。

 

 

暫くするとくう、とお腹のなる音がした。思い人のことを考えながらお腹を鳴らしてしまうというのは、本人もいないのになんだか気恥ずかしくなってしまう。

時間は昼時、今日の午前の鍛練は終わり、次の予定はもう少し先である。今日は家内の人間の多くが所用で出かけている日であり、昼食は作って食べておくように託けられている。

何をするにもまずはここを離れよう。玲は自室から離れて炊事場に移動した。

 

 

確か今はパスタが残っていたはず。

この家にパスタというとなんとも違和感のある話だが、斎賀の人間たるもの和食のみをレパートリーにするのも如何なものかという流れで基本的な食材は家に揃えているのである。

 

と言うことで今日は冷蔵庫の食材を使ってほうれん草とキノコのクリームパスタを作ることにした。

 

ほうれん草のシュウ酸を抜くために下茹でを行い、その間にタップリのお湯に塩をぱらり。

 

 

なんの事はない。つつがなく調理を行っている間も、玲の心はあの動画に囚われていた。

 

正直言うと、見たい。彼がユニークモンスターと死力を尽くし闘う姿を、全身全霊にゲームを楽しんでいる姿を。

 

リュカオーン戦の時でも、あの時のことを後から何回も反芻して浸っていたのだ。新たな戦いの記録が再生ボタンを押すだけで補給できるとなると、それはもう見るしかないのでは…。

 

 

悶々と思考を張り巡らせている間にもテキパキと調理を進行させ、茹で上がったパスタとソースを絡ませ、遂にカルボナーラが出来上がった。

 

 

 

……?????

 

 

説明しよう!

斎賀玲はもちろん料理の面でも他の追随を許さないレベルで完璧である!そして調理上のちょっとしたミスも工夫を凝らし挽回する手段も弁えている!これらのスキルが合体した結果、思考を楽郎に奪われている間に間違えて取り出した卵をそのまま使い、手癖だけで料理する所謂オートパイロット状態のまま流れるようにカルボナーラの調理に移行したのだ!!

 

 

「…何故、カルボナーラが??」

 

先ほど茹でたほうれん草もしっかり一口サイズにカットされて具材の一部になっている。手順も具材の入れ忘れもなく、ただただ当初の予定と異なる品が出来ただけ。

 

「…具材の使い残しもない事ですし、一先ず食べましょうか」

 

普通に美味しかった。

 

 

後片付けを終えた辺りで着信が来た。

どうやら仙姉さんからのようだ。

 

「はい、玲です。」

「玲、昼食はもう食べたのですか?」

「はい。食べました。」

「そうですか…。」

私の返答を聞く仙姉さんは、何か残念そうな声色だった。

「…何か差し支えがありましたか?」

「いえ、そうでは無いのですが…

 

今日は予定を開けておいたでしょう?逢引の一つや二つ準備をしても良かったのでは「余計なお世話です!!!」

 

 

何という事だ。確かに今日の予定は何故かいつも以上に午後のゆとりがあったがそんな意図が含まれていたとは。

 

要らぬ気遣いについ心が荒み通話終了ボタンを何回か押してしまう。しかしながら既に通話は終了しており、その指先は動画再生ボタンへと…

 

 

 

ちょっと長い休憩時間全部使ってめっちゃ堪能した。

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