クッキーリレー、というものをご存知だろうか?
身近な友人にクッキーを作ってあげる、若しくはクッキーを作った写真を共有することでバトンを渡したことになり、渡された相手は他の人に同じ事をする。という一連の流れがそう呼ばれている。
これが現在SNS上で軽い流行を起こしているのである。
元はアイドルの企画か何かで行われていたものが有名芸能人の目に留まり、ハッシュタグ#クッキーリレー が付いた彼らの投稿がバズったのである。各種様々なSNSで流行したそれは、友達間の遊びから料理研究家達の宣伝の場やフォロワーとの交流、そしてちょっぴり気になる人へのコミュニケーション手段としても有効という事で、その需要も多岐にわたっていた。
今日の目的は、慧にクッキーリレーの名目で自作のクッキーを渡す事である!
ということで今日はクッキーを作る。
柔らかくしたバターをクリーム状になるまで練り混ぜると、グラニュー糖とひとつまみの塩を加える。
卵黄を加えて混ぜた後は、薄力粉を奮いにかけながら混ぜていく。
ハラハラと舞い落ちていく粉はちょっぴり気分を高揚させる。なんだろうか、お菓子を作ってる感が凄いするのだ。
普段女子力について考えたりはしないのだが、こうやって想い人のためにお菓子を作るというシチュエーションは女子力高いなと客観視してしまう。
…いけない。これは邪念だ。
うまくは言えないのだが、好きな人のために頑張る私と言うものを美化してしまうと、そちらに比重が寄ってしまいかねない。ましてやクッキーリレーは流行コンテンツ。可愛くクッキーを作れた暁には投稿したい欲に囚われるかもしれない…
と、ここで恵はある事を思い出した。
現在のクッキーリレー事情として、その主戦場はネット上である事。そしてわざわざ手渡しや物理的な行動を伴うリレー行為は少々重い、ガチ感が醸し出されてしまうという事を…
バレンタインで言う友チョコ以上本命未満というか、相手のことを意識している、みたいにならないだろうか?
何事もなく作り終えて渡すつもりだったが事情が変わった。意識しているのは間違い無いが、ここでその域に踏み込むのは、こう、心の準備が…
-個人チャット-
夏目恵:#クッキーリレー
夏目恵:[画像]
夏目恵:仕事仲間からリレー貰ったから、慧に渡すね
魚臣慧:お、クッキーリレーだ。僕これ貰うの初めてだなぁ
魚臣慧:と言うか、これってタイムラインとかに流すんじゃないっけ?
夏目恵:投稿するにはなんか不格好だったから、まぁ、慧に見せるのはリレーに必要だし仕方ないんだけど他に見られるのはなんか恥ずかしくてさ
魚臣慧:ん、そうなんだ。
魚臣慧:結構綺麗にできてると思うけどね
夏目恵:私としてはあんまり満足してないのよ
魚臣慧:そっか。じゃあ僕はこれを別の人に渡せばいいんだね。
夏目恵:そうよ。別に私みたいに個人チャットでやらなくてもタイムラインに投げても良いしね。
魚臣慧:オッケー。クッキー作るなんて久しぶりだから、ちょっと楽しみかも。
〜〜
「結構綺麗にできてる。かぁ…」
写真を撮り会話をしているうちに程よく冷めたクッキーを頬張りながら、慧の言葉を繰り返していた。口の中に甘さが残るのが心地いい。
やはりお菓子は砂糖多めが好きだ。
…慧もそうだったら良いな。
前進も後退もしないまま、クッキーリレーはつつがなく進行した。