「流しそうめんがしたい?」
「イエス!日本のフーブツシなんでしょ?」
そう言いながらシルヴィアは巨大な流しそうめんキットと同じくバックをズドン!と床に置く。バックの中からひと夏を乗り切れそうなほど大量の素麺を覗かせているのは気のせいだと思いたい。
唐突なアイデアとともにこの陽気な隣人が押し掛けてくるシチュエーションは、今では日常に組み込まれている。
何故か大量の知育菓子を持ち込んで一緒に食べる羽目になったのは記憶に新しい。ねるねるねるねであぁまで盛り上がることができるのは彼女くらいではないか。
「因みに、何処でやるかは決めてる?」
「そーね!ここだと手狭だしこの辺がいいんじゃない?」
僕の部屋が選択肢に含まれていたことをサラッと流しながら、彼女は地図アプリを見せた。
シルヴィアが提案した場所はここから車で1時間ほどのキャンプ場だ。川沿いに建てられたそれは、日帰りでも十分に楽しめると評判であった。
破天荒な発想がついて回るシルヴィアにしては、案外的をついた候補だと言えるだろう。
「…良いね。ここだと場所も取れるし、それなりに楽しめるんじゃない?」
「でしょ!?明日貸切の予約しておいたから一緒に行きましょ!」
「はっ!?明日っていうかもう予約しちゃったの??」
「当然!日本ではゼンは急げって言うでしょ?」
流石の行動力。発想が現実的であった代償にすでにお膳立ては完了しているらしい。僕が明日オフなことを踏まえて前々から準備していたと考えると、もうレールの上から逃れられないことは確実だろう。
「はぁ…わかったよ。因みにキャンプ場までどうやっていくつもり?そんなに大きいものだと僕の車に乗るか微妙なんだよね」
「ノープロブレム!車はアメリーに頼んどいたわ!!」
「えっ!?アメリーってアメリアサリヴァン!??」
「そうよ!明日暇だって言うから来てもらうことにしたの!!彼女もナガシソーメンに興味あるみたい!」
興味があるのはナガシソーメンではなく僕が振り回される様では無いだろうか。そんな疑念がよぎる。
しかしながらここに来て更なる大物ゲストが発覚した。このままでは明日は確実に酷いことになる。彼女達のパッションを受け止め切れるほどタフな自分ではないのは魚臣自身よく知っている。
というか、自分側の知り合いが欲しい…!何とかしてこの魑魅魍魎に対する清涼剤的人員が必要だ…!じゃないと僕がストレスで死ぬ!!
焦りながら何人かのメンバーを候補に挙げていると、一通のメールが届いていることに気づく。
From 夏目恵
To魚臣慧
件名:明日暇?
慧って明日オフだったよね?私も明日暇なんだけど、良かったらどこか遊びに行かない?
「オーケーシルヴィア。その車、あと1人追加で乗れる?」
藁にもすがる思いで、僕は救援メールを送った。