異世界に投げ込まれたロボットが世界を破壊するまでの物語 作:青汁鼈甲飴
――身体能力の異常を検知。損傷部分を確認。
――算出完了。損傷率82.7パーセント。
僕はブラン・ディッシュ。
突然ですが猛烈に頭が痛いです。どうやら岩石か何かが頭に落ちてきたようで、その衝撃で目が覚めました。
瞼を開くとマグマの中、という状況は
前後左右どちらを見ても、煮えたぎるマグマによって埋め尽くされています。いや、実際のところかなり暗いので赤外線でしか見えないですけどね。どうやらここは火山のようです。
なぜ僕は火山にいるのでしょうね!
直前までの行動の
まあ事実として私がこんなところにいるのは変わらないわけで。地上に出てから考えましょう。
それにしても、僕の身体は見れば見るほどボロボロですね。誰がどう見ても、動けるような状態ではないという判断を下すでしょう。だからって廃棄されるほどでもないと思いますけど……高コストだから?
具体的には視界に得体のしれない罅が入っていますし、右の腕は肩から先がありません。それ以外でも無事な部分はないほどで、すぐには立ち上がることも難しいです。それでも動かなければいけないので、足の復旧を優先してナノマシンを稼働させてはいますけど、どれくらい動けるようになりますかね……。人間であれば8割の臓器にダメージがあったら命はないでしょうし。
いびつな音を立てる左腕を動かし、右胸にあるハッチをひねって開けます。ここくらいしか大きなスペースをとれる場所がないから、胸の中は虚ろなの……。その中から取り出したのは、メダルのような形をした真っ黒な機械です。指の動きが悪くて落としそうなんですけど、落としたらめっちゃ怒られそう。
スイッチを入れると、ゆっくりと回転して空へと飛び出します。
どうかな。
しばらくすると、妖精の姿をしたホログラムが空中に投影されます。よかった、起動に成功したようです。
「ふあ……おはヨ……?」
「おはようございます。レモナ、調子はどうですか」
機械から流れてきたのは、まるで少女のような高い声、それでいて機械のような無機質な声でもあります。彼女は人工妖精(いわゆる生活支援用AIの一種と言うことになるのでしょうか? 割と万能性の高い電子生命体)の、レモナ・スパークルです。髪の毛からアクセサリーまで、その身体の9割以上をイエローカラーで覆っているよく目立つ妖精ですが、ここでは水蒸気のせいで輪郭がぶれています。
レモナは僕にとっては家族のようなもので、こんなところでも彼女が無事であっただけで少し落ち着きました。
「調子……電池が足りないのでス。しかしブランちゃんの方が大事に見えますけド」
電池が足りないというのはここではどうしようもないですね。やっぱり地上に出なければ。
「ブラン
レモナからの呼び方は直らないので半分は諦めていますが。僕は真っ白な見た目なので
「時間機能が少し変になっていまして。全身のタイマーがそれぞれ別の時間を示しているんですよね。レモナはどうですか?」
いったいどういうわけなのか、最後に僕が行動したときの一時間後だというデータもあれば、1000年の時が経過しているというデータもあります。自分のことなのに何も信用できませんね。
「時間ですカ? そんなに変なことにはなってないのですヨ。1997年の3月9日、午後6時11分でス」
「それは過去ですよ……」
「あレ?」
レモナの記憶領域はそこまで大きくないので、そういうこともあるのかもしれませんが……前回起動時のことも覚えていないとは知りたくありませんでしたね。
「ち、違いますヨ! ちょっと忘れていただけでス!」
「分かってますって。一応聞いておきますけど、現在地の座標は分かりますか?」
「いえ、申し訳ないでス。このような地形は初めてみましタ」
「気にしないでください。火山内部の情報までは電脳マップにも載っていなかったでしょうし、ここでは電波アクセスも不可能なようですから」
火山内部なので当然ながら電波は繋がりません。浅い地層なら別ですが、ここは少なくとも僕の性能限界である500メートル以上に亘り岩盤が存在しているようです。
話しているとナノマシンによる足の修復が終わりました。応急処置でしかないですが、設備も資材もないのでこれ以上は本格的なメンテナンスを受ける必要があるでしょう。ということで後回し。
今は動きましょう。火山の出口は、風の吹き出すところのはず。
こうして僕はマグマの海から、空気の流れに沿って歩き出したのです。
主人公はほぼ敬語ですが時々崩れます。
敬語を覚えたてで過剰に使ってしまう小学校高学年くらいのイメージです。