「チンチンがほしい」
チンチンというものをご存知だろうか?いや大抵の人は知っているだろう。
チンチン、それは男たちの誇りであり女たちの希望。太古の昔から人々と共に在り、長さで、太さで、硬さで、常に人を魅了し続けてきた。そしてガチレズたちが虎視眈々と求めてきたものでもあり、つまりは私が女子高の教師という立場を利用し教え子たちとレズプレイに興じるたび、あるいは借りてきたAVを見るたびに『あればなー』と思ってしまうものである。
「あぁ~、チンチン……」
私がそんなことを呟いたここはナザリック地下大墳墓。DMMO-RPG――ユグドラシル・オンラインにて悪として名を馳せたギルド、アインズ・ウール・ゴウンの本拠地。かつては数多の異形(変態)が集った悪の園。その地下9階層の1室、大きな円卓型テーブルが置かれた部屋に、3体の異形と1人の人間の姿があった。
「2人共どう思う?やっぱり必要だと思うわよね?」
「いやちょっと意味分からないです。また変な電波を受信しちゃったんですか?……いい加減にしないとまじでギルマス権限でBANしますよ?」
まず私を電波チャン扱いしやがったのはこのギルドの長である『モモンガ』。骨だけの体に黒基調の豪華なローブを着た髑髏の魔法使い。だがその実態は魔王をロール・プレイするエンジョイ勢(ただし課金はガチ勢)であり、デスペナのきついこのゲームで容赦なく即死魔法を連発する様から『非公式魔王』と呼ばれる男。そして同時に頑なに童貞を守り続ける真の魔法使い予備軍(確定)でもある。
「というか、そもそもどういう意味の発言なんですかね?恐らく、ブチ込む、もしくはブチこまれたい、のどちらかだと思うんですけど。でもそのキャラもリアルも性別は女性でしたよね?やっぱり電波ですか?」
2人目はギルドのシステム担当である『ヘロヘロ』。コールタールのような真っ黒なスライムであり、体の表面がゴポゴポいいそうな感じに波打っている。その強力な酸能力で主に女性の装備を狙い溶かしていたことから『害悪スライム』『エロスライム』『溶かしちゃうおじさん』『漆黒の紳士』と呼ばれていたプレイヤーだ。リアルではプログラマーでブラック企業に勤めているらしく、よほど辛いことが有ったのか2年ぶりにINしてきたと思ったら、
「今さら仕様変更で作り直しなんて無理に決まってるだろぉお!」
「ていうかもうほぼ完成してるんですけど!?」
「しかも新しい仕様って、これ漁船を10階層のビルに変えるレベルの変更なんですけどぉ!!?」
「『なにがやれば出来る』だ! ふざけんなSE!! 死ね!!!」
という感じで1時間ほど叫びまくってた。そんなリアル社畜である。
そして3人目がこの私。
「決まってるでしょ。もちろん私がぶっこむ為のチンチンよ。あと電波言うな。」
プレイヤー名『おぜうさま』。過去に流行った同人ゲー、東方Project-東方紅魔郷-のラスボスであるお嬢様『レミリア・スカーレット』をロール・プレイするものにして、『電波吸血鬼』『アーパー』『バカ殿』『下ネタお姉さん』などの異名を持つ吸血鬼だ。
その姿は青みのかかった銀髪にエルフのように尖った耳があり、眼は血のように赤く、背中からはコウモリのような羽が飛び出している。服は真っ白なワンピースを赤いリボンで締め、頭にはドアノブカバーのような被り物を付けた超超かわいい美少女。
ただし原作のレミリアが見た目8~9歳ぐらいの幼な子なのに対して、私のレミリアは160cm程度まで身長が伸び、更にその胸には大きな双房が付いている。レミリアファンによって数多作れた創作の中でも、一部にカルト的人気を誇る通称『大人化レミリア』である。
「全く2人とも失礼よね。咲夜、――笑いなさい。」
さらに私の指示を受け、斜め後ろに立っていたメイドが笑顔を浮かべる。私が作った人間のメイドNPC『十六夜咲夜』だ。
このゲームでは拠点を持つと自分たちでNPCを作成することが可能であり、外見からクラス構成まで自由に設定することが出来る。それによって再現したのがこの子だ。東方Projectにおいてレミリアに仕えるメイド長。『完全で瀟洒な従者』の通り名を持つ銀の髪を3つ編みにした超美人。また胸の膨らみについてはファンによって諸説あるも、私の咲夜は巨乳長が採用されている。なんでって? だって私は大きなおっぱいが大好きだから!
■■■■■■
以上がここに居る3体+1人だ。元は41人居たギルドメンバーがゲームの過疎に応じて徐々に居なくなる中、最後まで残った4人のうちの3人である。
「まぁおぜうさまさんが電波なのは最初からでしたけどね。……まさか最後までそのままとは思いませんでしたけど。」
「はっ?何言ってるのよモモンガ、かもすわよ?」
ちなみに私のリアルは普通に女子高の体育教師であり、ちょっとおっぱいが大好きなだけのガチレズだ。電波扱いは原作のレミリアの能力『運命を操る程度の能力』のロールとして運命がどうのと言ってたせいであって、断じてリアル電波チャンではない。
「そういえばはっきりと聞いたことは無かったですけど、2人はいつから知り合いなんです?このギルドで1番付き合いが長いってホントですか?」
「ええ、残念なことに事実です。というのも俺がこのゲームを始めて最初に出会ったプレイヤーがおぜうさまさんなんですよ。なので知り合ってからの年月なら1番長いということになりますね。いやほんと残念ですが。」
「あー、確か最初に会ったのはどこぞのフィールドだったかしら?レベル上げしてたら動いてる骨がいたのよね」
「ああ、それでそのまま臨時PT組んだ感じですか?」
「よく覚えてないけど多分そうよ。ねっ、モモンガ?」
「そうです。初めて会ったのはフィールドでした。……ポップモンスターと間違えてPKされました。」
「えっ」
だって初期装備のスケルトン系プレイヤーだったんだもん! フィールドのポップモンスターと区別つかないのはしょうがなくない?つまり私は悪くねぇ!
「そ、それで次に会ったのはレアアイテム狙いで狩りしてたときよ。私は8時間以上ぶっ続けで狩ってたのに全く出なかったわけ、なのに後から来たこの骨が10分ぐらいでポロっと出しやがってね」
「物欲センサーあるあるですねぇ」
「いやぁアレは笑ったわ。ね、モモンガ?」
「いや笑えませんよ。微塵も迷わずに俺をPKしてアイテム持っていきましたよね?」
「えっ」
よりにもよって私の目の前でドロップしやがったからね、仕方ないね。
「いや、返しましょうよ」
すでに使用済みだぞ☆
「そして3回目の出会いはまたフィールドだったわ。軍服着てドイツ語で煽りながら逃げてる骨が居て、それを切れた人間種6人が追いかけててね。」
「何やってるんですかモモンガさん」
「違うんです、若いときの過ちっていうか」
「まぁゲームが始まったばっかりの頃は異形種への迫害がひどかったですし、煽りたくなった気持ちは分かりますよ。ドイツ語の方は意味分かりませんが」
「orz」
「ま、そんな訳でモモンガに夢中になってる間にさくっと人間共をPKしてやったわけ」
「お~、そこだけ聞くとまるでタッチさんみたいですね」
たっち・みー、それはリアル警察官にしてカワイイ奥さんと子供がいたリア充。人助けを是とし、このギルド最強の実力を持つワールド・チャンピオンだった男。
「まぁほら、私も異形種で吸血鬼だし? たまには人(骨)助けもいいかなって」
「なるほどー。まぁタッチさんには憧れてる人も多かったですからねー」
「いや何を良い話風にしてるんですか。その後で俺までPKしましたよね?」
「えっ」
フフッ、7人分のドロップはとても美味しゅうございました。
「いや、だから返しましょうよ」
私のビルドには合わなかったからすぐ売っちゃった☆
■■■■■■
「それで2人とも最後はどうするの?」
このままだと過去のやらかしにまで追及されそうなので無理矢理話題を変える。
とはいえ私自身はすでに出来そうな事はすべて終わらせてある。装備の外装として使った3Dデータは自分のPCに保存したし、ギルド内の各施設もムービーで撮影済みだ。だからもはややるべきことはない。
「俺は……最後は玉座の間で迎えるつもりです。それでその、よければお2人もどうですか?あとあの時のアイテムは返してください。」
玉座の間、それは地下10階層に作られた、この拠点でもっとも豪華な部屋。
いずれ攻め込んでくるであろう勇者たちとの最終決戦の場として作られたその部屋は、結局9階層以降に攻め込んだ者が居なかったため、最後までその真価が発揮されることは無かった。だが最後を迎える場所としては相応しいだろう。
「おっ、いいですね。ボクも最後にメイドたちを見ておきたかったですし行きましょうか。」
モモンガの提案にヘロヘロが同意する。私としても断る理由は無い。過去にぱくったアイテムは返さないが。
「私もいいわよ。でも意外ね、ヘロヘロはてっきり落ちると思ってたわ。眠気が限界とか言ってたけど大丈夫なの?」
「やだなぁ、ここで『もう落ちますね』なんて、そんな空気読めないこと言うのはおぜうさまさんぐらいですよ」
あれ、こいつも私に失礼じゃね?いったい何なのコイツラ?私って結構ギルドに貢献してたと思うんですけど。
「それにココで落ちたらボクのメイド達が何されるか分かりませんし……」
「ああ、それは確かにありそうですね」
「失礼ね、せいぜい装備を替えてポージングさせるぐらいよ」
「エロ装備に替えるんですね、分かります。」
さすがはヘロヘロ。このギルドのドスケベ四天王なだけあり理解が早い。
「ほどほどにしてくださいよ?このゲームはエロにやたらと厳しいんですから。」
このゲームではR18どころかR15ですら禁止であり、そのためエロ関係は全く行うことが出来ない。そしてそれは恐ろしい程に徹底されており、ちょっと相手に触れるどころか下手をすればローアングルからの撮影ですら警告が来るほどだ。
「大丈夫よ。私たちを信じなさい。」
「そうですよモモンガさん、ボクたちだってそれぐらい弁えますよ。」
「いや前に同じこと言ってギルドごと警告食らいましたよね。忘れたとは言わせませんよ?」
ギルド警告……それは9階層に娼館を作ろうとした時のことだ。部屋の中を透明の板でショーケースのように区切り、そこにエロ装備のメイド達を並べた。あとはポージング――M時開脚かY字バランスかそれ以外か、で議論していたところ急に運営から警告が来たのだ。それもギルドメンバー全員に対して。そのせいでその時は諦めざるをえなかったのだが……
「エロに走って崩壊する拠点が有ってもいい、それが自由というものではないかしら?」
真の自由とは何か?それはきっと過去を振り返らないこと。リアルで調子にノリすぎて訴えられたときも、教え子に7股がバレて刺されたときも、私は態度を改めたりはしなかった。ならば突き進むことこそ真理ではなかろうか。
「その気持ちは分かります。ボクだって自分が作ったNPCたちとエロ出来るなら突っ走りますよ。モモンガさんもそうでしょ?」
「いや、ないです。マジでないです。それは流石に俺でもキレますからね?」
「始まってすぐの頃はまだ緩かったのにねぇ……」
浅くてきれいな海エリアに出向き、海底の砂に潜り込んで下から女性キャラの食い込みを撮りまくった事もあった。あまりにも夢中になりすぎて呼吸を忘れた変態バードマンが溺死し、デスペナでドロップしたメイン武器が沖合に流れて失われたのは懐かしい思い出だ。
「ちなみにたっち・みーは最後までI字バランス押しだったわ。振り上げた足の膝裏がすごくそそるんですって。」
「何言ってんだリアル警察官……やったらモモンガ玉使いますからね?」
「エロでギルド崩壊→ブチギレて玉発動って色々な意味で伝説になりそうですね~。動画にするならタイトルは『ギルド長の玉が割れる日』かな?再生数めっちゃ稼げそう」
「止めてくださいよ、みんなで作ったナザリックじゃないですか」
「もちろん冗談ですよ。……ボクにとってココはとても大切な場所でしたから。」
「でもこうしてひっそり消えるぐらいなら最後にそれぐらいやっても良かったかもしれないわね……」
どうせなら最後に何かパーッとやってもよかったかもしれない。うちは知名度だけならゲーム内でダントツだったのだ。きっと告知すれば来てくれる人も多かったはずだ。
■■■■■■
そうしてやってきた玉座の間。そこにはココを守るために配置された複数のNPCたちの姿があった。黒髪の悪魔にしてギルドNPCの統括として作られたアルベド。白髪の執事であるセバス・チャンとその部下の男性使用人達。さらに戦闘用のメイドとして作られた各々が違ったタイプの美人が6人。――ただし、なぜか全員が女用のスクール水着を着ている。
「なんですかこれ? ……いや本当になにこれ?? 昨日見たときは普通の格好だったはずですけど!? うわ、セバスきもっ!!!」
そう言えば忘れていた。半日前にタブラ・スマラグディナ――設定厨の触手野郎、がログインしたとき、2人でスク水に着せ替えたのを……
「おぜうさまさん?」
「……てへっ☆」
私はなんとか誤魔化そうと出来る限り可愛らしい声とともに笑顔マークの感情アイコンを表示する。しかしそんな私に対し、ヘロヘロは空中からバケツのようなものを取り出し、躊躇なく中身をぶっかけた。
「そぉい☆」
それは完全耐性すら貫通する強力な酸の塊。モンクであるヘロヘロが中距離攻撃用として作った自身の名を冠するアイテム『ヘロヘロの我慢汁』である。
「ほぎゃぁあああ!!」
バシャァーという音と共にぶっかけられた私はずぶ濡れに……はならない。このゲームではフレンドリーファイヤは禁止されているので仲間の攻撃は影響を受けずダメージも0だ。しかしながらアイテムの名前を知っている私としては乙女的に大ダメージである。
「いきなり何ぶっかけてるのよ!?」
「こっちのセリフですよ! ボクの嫁にナニやってるんですか!?」
ヘロヘロが言う嫁とは自身が作った戦闘用メイドのうちの1人、『ソリュシャン・イプシロン』だ。垂れ目系の金髪美人で胸もお尻もバインバイン。さらに普段装備のメイド服は上乳丸出しの上、スカートは超ミニスカでスリットまで入っている。まさに『ボクが考えた最強のエロメイド嫁』である。
「どう考えてもやったのおぜうさまさんですよね?なんでこんな格好に?」
「だってユグドラシルも最終日だし。もしここまで来る勇者が居たらなら喜ぶかなって。それにもしかしたらエロいことしようとしてBANされるかもしれないじゃない」
「ここまで来て垢BANトラップとかひどいと思うんですけど……。歓迎したいのかネタにしたいのかどっちですか?……とりあえず戻しますね。」
『全員、装備変更、標準』とモモンガがギルド長権限で命令を下す。それを受け、予め設定された行動AIによって全員の装備が標準の物へと変更された。
……ちっ、スクール水着かわいいのに。いったい何がいけないというのか。ちゃんと胸に名前書いたんだぞ。
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「ところで今更ですけど、ボクがログイン出来なかった2年間はどんな感じだったんですか?何か驚くことってありました?」
「うーん、俺の方は特には。みんな徐々に引退して行って、ここ1年はギルドの運営資金を稼いで落ちる毎日でしたね。最近は攻め込んでくる人も居なかったですし」
「私も特に無かったわねぇ。自分用のカロリックストーンを作って、あとはNPC達の衣装を何着か作ったぐらいかしら。」
このゲームは装備の見た目(外装)を自由にいじれるため、やろうと思えばどんな服だって再現できる。もちろんエロすぎるのは作れないが、だからこそギリギリを見極めるのが楽しいのだ。
「見たらきっとびっくりするわよ。昔の小説から再現した堕天使エロメイド……」
「いやちょっと待って下さい。ボク的にはその堕天使エロメイドも興味深いですけど、その前にカロリックストーン作ったって言いませんでした?まさか1人で?」
「いやー、自分でも作り始めたときはまさか完成するとは思わなかったわ。」
ただしその希少性のため殺してでも奪おうとする者はとても多く、だからこそ取得しても公開するものは滅多にいない。このゲームは始まってから12年ほど立つが、ネットやWikiで調べても出てくる情報はせいぜいが数十個分ぐらいだろう。私が1人で入手できたのは前にギルドの活動で偶然手に入れたことが有り、取り方を知っていたからである。
「いったいどうやって鉱石集めたんですか?ていうかそんなことやってたなら教えて下さいよ。言ってくれれば俺だって手伝ったのに。」
「なに言ってるのよモモンガ、こういうのはコッソリやるから良いんでしょ」
このアイテムの入手方法はある意味とても単純で、それは七色鉱――超希少金属を大量に集めて消滅させることだ。簡単そうに思えるが恐ろしい量の鉱石が必要であり、1度目の入手はギルドで鉱山を丸々占領した時だった。
「
「それなら自分で掘ったわ。」
このゲームで鉱山とは金のなる木であり金策としては最高の場所だ。だからこそ見つけた場合はギルドで、場合によっては他と連合を組んでも占領する。
しかし私達のギルド、アインズ・ウール・ゴウンはモモンガを筆頭に「悪の華」たらんと悪役をロールしていたギルドだ。そのため一部のプレイヤーからは蛇蝎のごとく嫌われ、超希少金属の鉱山を占領――私達から奪ったギルドよりずっと取引を拒否されていた。だがそんな連中もゲームが本格的に過疎ってくるとみんな姿を消してしまった。
「1年ぐらい前からかしらね。ほとんどの鉱山が放置されるようになって、行けば誰でも掘れるような状態だったのよ。」
その日のスキルの使用回数が尽きるまで狩りをし、その後に採集用装備に着替えて鉱山へ。課金のピッケルでアポイタカラを掘り、ヒヒイロカネを掘り、スターシルバーを掘り……そうして毎日採掘し少しずつ鉱石を貯めていったのだ。
「それはそれで寂しいような……それで何に使う予定なんです? 運営にお願いも出来るタイプのアイテムですし、いっそのこと頭を良くしてもらう(知力上昇)とかどうです? もしくは電波を遮断してもらうとか。」
ふざけんな。私のはロールの一環だぞ。ていうか私のビルドって指揮官系だし、INTが多少上がってもほぼ意味が無いんですけど。
「……まぁ使いみちは特に決めてないのよね。ぶっちゃけ最初はただの暇つぶしだったから」
1年前の時点でやることはほぼ無くなったが、それでもこのゲームを止めたくなかった。だからこそ無理矢理に目的を作ったのだ。もとより達成できるかなんてどうでもよかった。
「ボクが言うのもなんですけど、なんともおぜうさまさんらしいですね~。無駄なことを無駄にやりきっちゃう所が特に」
「まっ、それももうすぐ全部消えちゃうけどねー。」
このゲームは本日でサービスが終了する。そして現在時刻はもうすぐ23時59分だ。――つまりあと1分ちょいで全てが消える。
サービス停止まであと60秒……
「モモンガさん、おぜうさまさん。2人ともありがとうございます。」
「はっきり言うと、ボクはもうココが無くなっていると思ってました。」
ユグドラシル・オンラインというゲームは私にとって癒やしだった。リアルの仕事が辛いときも、ログインして自キャラやNPCを眺めれば生きる気力が湧いてきた。だがもうそれも出来なくなる。
サービス停止まであと50秒……
「2年前、リアルで体調が悪化したせいで病院に通う事になって」
「医者にナノマシンの使用を止められたせいでINできなくなって」
2人も同じ思いだったのだろう。表情は変わらないが、その言葉からは寂しさが伝わってくる。
サービス停止まであと40秒……
「それでもずっと思ってたんです。もう1度この場所に立ちたいって」
「ヘロヘロさん……」
サービス停止まであと30秒……
「そしてソリュシャンに思いっきり抱きつきたいって」
「ヘロヘロさん……?」
サービス停止まであと20秒……
「出来ればスカートの中に潜り込んで、太ももをペロペロしながらBANされたいって」
「ヘロヘロさーーーん!!?」
サービス停止まであと10秒……
「だから、だから最後ぐらいやっちゃってもいいですよね?」
「いや駄目に決まってますよ!! どうして最後に聞いてもいない性癖暴露してんの!? お願いだから最後ぐらい大人しくして下さいって!!」
「えっ、駄目なんですか!!?」
まじかよ。私も最後は咲夜の胸で迎えたかったんだけどなぁ。まぁ今まで散々迷惑かけたし最後ぐらい従ってあげるべきか。でも咲夜の胸に手を伸ばすぐらいはいいわよね?
そうしてサービス停止まで残り5秒を切り……
4……
3……
2……
1……
モミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミモミ……
「あっ♥」
それはいったい誰の声だったのか。私だったのかヘロヘロだったのか、それともモモンガか……気づけば私の手は何時の間にか咲夜の胸を捉え、その果実をフヨフヨと揉みしだいていた。
「柔らかい、それにすごくいい匂いがする……」
でもまだ終わってないってどういう事だろう?それとユグドラシルでは匂いは実装されて無かったはずだ。それにこんなリアルな感触も。いったいなにがどうなっているのか……
そうして混乱しながらもチラリと横を見れば、ヘロヘロも体から伸ばした触手でソリュシャンの胸をモニュモニュと揉みしだいている姿が目に入った。
「ちょっ、ちょっと2人共何やってるんですかBANされますよ!? ていうかヘロヘロさんの方からジュージュー音してるんですけど!? しかもなんか焦げ臭いんですけど!!?」
そして最後の1名は盛大に取り乱し中だ。だが今はそれどころではない。私は慌てているモモンガを無視し、この中で1番PCに詳しい男へと問いかける。
「どういうことなのヘロヘロ? もしかしてユグドラシルⅡでも始まったの??」
対して「ソリュシャン! ソリュシャン!! ウホオオオオオオ良いにほいいいいいいい!!!」などと叫んでいたヘロヘロは、それでも長年培われた社畜としての習性なのか、投げられた質問に対し律儀に自分なりの回答を述べ始める。
「ん~、それはたぶん無いです。やろうとするとサーバー側とユーザー側、両方のプログラムを更新する必要があるんで。うわぁ肌もスベスベェ! 仮にサーバーの方はコッソリやったとしても、ユーザーのPCへ勝手にプログラムを入れるのは犯罪なんですよ。おほぉ!!」
恐らく長年の夢だったソリュシャンの胸へ接続した事で、彼の思考はこれまでになく冴え渡っているのだろう。賢者状態を飛び越し明鏡止水へと至ったであろう彼は的確に現状を分析していく。
「じゃあ今はどうなってるんですか?」
「ボクたちがこうしてココで会話できてることから、恐らくサーバーは落ちてません。もしかしたら糞運営でストライキでもあったのか、もしくはサボってるのかもしれませんね。」
なんだいつもの糞運営か。
「なら感覚と匂いが感じられるのは?」
「ユグドラシルというか全てのDMMOはサーバーとユーザーのPCが電気的信号でやり取りし、受け取った情報をPCがナノマシンでユーザーに伝えるというシステムです。」
「ただし電脳法で味覚と嗅覚情報のやり取りは禁止されてますし、触覚も厳しい制限が有って、しかもハード的にも制限がかけられています。」
「なので現状で最も可能性が高いのはユグドラシルのプログラムにウィルスが入り込んだとかで、そのせいで諸々が変になっているのかもですね。まぁその場合、責任はサービスの提供元にあるはずですけど。」
「なるほど、全く分からないから3行でよろ」
「1.プログラム暴走中
2.責任は運営が取る
3.今ならエロやり放題」
OK、把握した。なんだそんなことか。つまり慌てる必要は無いということだ。
「いやいやいや、つまり犯罪に巻き込まれてる可能性が高いってことじゃないですか!? 2人とも揉んでる場合じゃないですよ!? ていうか何時まで揉んでるんですか!!?」
「確かにそれどころじゃないわね。」
そう、たしかに揉んでる場合ではない。その話が本当なら、つまり今は
再びちらりと横に視線を向ければ、なんと黒いスライムの一部、人間なら腰にあたるであろう部分がゆっくりと隆起し、細長い棒のようなものを形成していく。恐らくはスライムのスキルである触手生成、しかしてそれはまるで黒いチンコのようっ……! ――こいつ、やる気だ。
「ボクはね、ずっとこうしたかったんです……」
その眼はまさに澄み切った殉職者の眼であり。同時にドロドロとした欲望に汚れきったコールタールのような黒さも併せ持っていた。
対して、私も自身のスカートの中に手を入れ、中のモノを取り出そうとする。しかし……
「って、あああああああ!! これ女キャラだったああああああ!!!」
そこには期待したモノは無かった。代わりに顔を見せたのは黒いアダルティーなパンティである。
ちくしょぉおお、せっかくのチャンスなのに! こんな機会はもう無いかもしれないのに!! 今すぐキャラの容姿変更アイテムで男キャラに変えるか? いや駄目だ、ユグドラシルではたとえ装備を全て外しても強制的にインナーが表示されるだけ。それはつまり男キャラになってもデータ的に下着の下は作られていないということ。
「ああああああああ!!!!」
絶望によって私の心が埋め尽くされそうになる。だが諦めるわけには行かない。これは恐らく2度と訪れない、ある意味で奇跡とも言うべきチャンスなのだ。諦めるな私! 頑張れ! 頑張れ!! 行けるいける!! そうして今までの人生の中で恐らく1番酷使されたであろう私の頭脳は、結果としてある1つの可能性を導き出すことに成功する。
……もしかしてこれなら!!!
私はいそいそと
「ちょっ、何使おうとしてるんですか!? えっ、待って、お願いだから待って!!」
驚くモモンガをよそに、私は取り出したそれを頭上へと掲げる。
――そして叫んだ。
「チンチンおくれーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」
Q.どうしてこんなものを書いたんですか?
A.暑すぎて頭が沸いたせいです。自分でもよく分からない……なんだこれ。
今のところまだ転移後の話は有りません。
でも感想欄に「チンチン」を沢山頂ければ続きが生えるかもしれません。チンチンだけに。
もちろん普通の感想も募集しております。
・追記(08/20)
誤字脱字を修整しました。指摘してくれた方々、有難うございました!
※―(ハイフン)等と区別しづらいため漢数字はあえて使わないようにしております。