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ナザリックの地下9階層にはバーがある。
副料理長が夜にだけ開けている趣味の店だ。
シックなカウンターに少数の席が並ぶショットバーのような部屋。
そこにこの墳墓の支配者の一人、レミリアの姿があった。
「――うん、すごくいい味ね。」
身を包んでいるのは普段と違う、胸元のざっくりと開いた漆黒のドレス。
頭のドアノブカバーは外されており、耳には赤い三日月型のイヤリング。
さらに首からは真っ赤な宝石の付いたネックレスを付け、それは豊満な胸の谷間をこれでもかと強調していた。
レミリアはテーブルについた左手に頬を載せ静かにグラスを傾ける。
中の氷がカランと音を立て、琥珀色の液体が静かに口へと運ばれる。
その姿は落ち着いた部屋の内装と相まり、まるで別人のように様になっていた。
「恐れ入ります。」
副料理長は感動していた。
この飲み方こそまさに自分が理想とするバーの在り方。
それをあっさりと実践してしまわれるとは、まさに至高の御方のお一人だと。
(レミリア様は最近よくいらっしゃる。恐らくアウラ様の件で思う所があったのだろう。)
副調理長は失礼にならないよう気をつけながら目の前の支配者について考える。
(しかし守護者の方々から聞いたこの御方の力は運命を操るほどだという。)
(ならばココに来たのはきっと未来を静かに思考するため。)
私も何かお力になれるとよいが、と副料理長はそんな事を考えたが決して口には出さない。
静かに客を持て成すこと。それこそが今の自分に求められている役割だと理解しているからだ。
「そろそろおかわりは如何でしょうか?」
「ええ、いただくわ。」
副料理長は思う。確かにアウラ様の件はこの地に住まう多くの者たちが驚いた。
しかし心配することはないだろう。自分たちにはこの御方々が居てくださるのだから。
きっとよりよくナザリックを導いてくれるはずだ、と。
しかしそんな外面とは逆に、レミリアの脳内は愚痴で埋め尽くされていた。
――はぁ~、やってらんないわ~。まじなんなのもう。あああああああ!!!
アウラ洗脳異伝から5日経った。
アルベドとシャルティアによって倒されたアウラは無事に蘇生。
魔獣たちは再びテイムされて元の形へと戻った。
復活したアウラは一部の記憶を失っていたが、こちらは森の賢王――現在はハムスケ(モモンガ命名)によりある程度の事情は分かっている。
さらに改めて捕虜への尋問が行われたところ、クレマンティーヌにより洗脳アイテムを使った集団は法国の漆黒聖典だと判明した。
ここまではいい、問題はこのあとだ。
全ての魔獣を再テイムし終わると、なんとアウラは私ではなくモモンガに抱きついたのだ。
「モモンガさまぁ~~!!!」
泣きながら笑顔でモモンガの胸へ飛び込むアウラ。
しょうがないな、と笑いながら受け止めるモモンガ。
それは失敗した娘を慰める温かい光景だ。
しかし本来ならアウラは私のハーレムに入るはずだった。
そのために大事な
もちろんその事について私は抗議したが、しかし現実は非情だった。
「ちょっとヘロヘロどうなってるのよ? 私のムチムチダークエルフ(予定)は?」
「(そのルートは)最初から無いです。槍を拾えずに置物化してた人は反省してどうぞ。ていうかサブ武器を持ってきてないって、どういうことですかね? ボクもキレそうだったんですけど?」
「(サブ武器を入れてた背負い袋は)に、荷物整理で出したまま忘れてただだけだし。」
ちくしょう! あのとき一緒に戦ったNPC一同からは
『自らの武器を敵中に投げることで不退転の覚悟を示すとは! さすがはレミリア様です!!』
なんて高評価だったのに!!
でもアウラがデレた先はモモンガだった。
両手を広げて飛び込んでくるのを待っていた私は完全にスルーだった。
そう、私はアウラを寝取られてしまったのだ。まじでちょっと泣きそうになった。
なので連日このバーに押しかけ、ひたすら酒を呷っている。
(モモンガのばかばかばか! 貴方にはすでに綺麗どころが沢山居るでしょ!? なのにどうしてアウラまで囲ってるのよ!? ふぁっきん!!!)
個人的には今すぐモモンガのチンチンをもぎたかった。
しかしそれは出来ない。やろうにももう
さらに数日前にアルベド含むモモンガハーレム勢がお礼を言いに来たのだ。
『モモンガ様におチンチンを与えて下さりありがとうございました! 我々一同、レミリア様への感謝の念に堪えまチンチン!!』『ありがとうございましたチンチン!!』 と。
お礼の語尾にチンチンを付けるだなんて、どれだけ頭がチンチンだったのか。
流石にこんな状況では『あのチンチンは間違だった。今はもぎ取りたいと思ってチンチン』なんてとても言えない。
(もしかするとこんなお礼を言われたのはこの世界で私が初めてかもしれないわね。)
いや間違いないだろう。
しかしこの時に出来たのはせいぜいカッコつけるぐらいだった。
本心を隠した私は、代わりに
『フフ、良いのよ。貴方達は私にとって娘みたいな存在だもの。沢山幸せになりなさい(キリッ』
なんて言ったのだが、結果ものすごくキラキラした眼で見られることになった。
おかげで私の女性陣からの支持は鰻登りだ。ただし恋のキューピッド扱いで。
(はぁ~。ままならないものね。)
現実は非情だ(2回目)
さらに悩んでいることがもう一つある。
私は眼だけを動かして左右に視線を向ける。
今この部屋にいるのはアウラの件から何故か
まず私の側にいるメイド兼嫁である咲夜。
執事服で給仕をしてくれてるフウマ。
ココまでは良い。むしろ居てもらわないと困る2人だ。
しかしさらに左の席ではコキュートスが静かに飲んでおり。
それにクールな相槌を打っているのが恐怖公。
右の席を見ればエントマがオヤツをバリバリ食べていて。
そして天井には透明になったエイトエッジ・アサシンたちが張り付いている。
正面戦闘から集団戦、さらには暗殺まで何でも出来る頼もしいメンバー達だ。
だが一つだけ言っていいだろうか?
――蟲の比率高すぎぃ!!!
(あっれぇー、モモンガとヘロヘロはハーレムパだったよね? なのにどうして私のパーティだけ蟲パになってるの?)
ちょっと前に復刻されたポケット○ンスター・ギエピー! だとこんな感じかな?
サーナ○トLv100(咲夜) 超・妖
アギ○ダーLv85(フウマ) 虫
グ○クムシャLv100(コキュートス) 虫・水
フェ○ーチェLv70(恐怖公) 虫・格
オニシ○クモLv51(エントマ) 虫・水
アリ○ドスLv49(エイトエッジ・アサシン) 虫・毒
……上からブレバで全員死にそう(耐性持ち不在
(どうしてこうなった?)
いや冷静に考えれば理由は分かるのだ。
はっきり言ってしまえば前の戦いで私が調子に乗りすぎたせいだ。
あの戦いは全力を出せるということもあり各々が奮闘していた。
特に私は最初に武器を手放してしまったので代わりに全力でバフを掛けまくっていた。
それにより特に目立っていたのがコキュートスと恐怖公の2人だ。
4本腕の魔法剣士であるコキュートスは元々手数に長けている。
それは攻撃回数だけバフ効果を乗せられるということ。
物理・魔法の両面で火力が強化された彼は一人だけ無双ゲーになっていた。
さらにもっとやばかったのが恐怖公だ。
一定範囲内をまとめて強化する私の能力と恐怖公の物量戦術は残念ながら相性がよかった。
もともと恐怖公の眷属は精神的ブラクラをメインとしており攻撃力はほとんどない。
本来であれば全くダメージを与えられないので何万匹いても無視されたら終わりだ。
しかしそこに1ダメージを追加で与えるバフ、それも防御無視のもの、が付与されたら?
むろん魔獣たちも反撃はしていた。
せまりくるゴキブリの群れに対してその爪を牙を尻尾を振り回した。
しかしユグドラシルにおいて、
さらに精神効果も無効なので、魔獣がどれだけ咆哮を上げてもビビって逃げ出すことがない。
そんな蟲達は魔獣たちにとってあまりにも相性が悪すぎた。
中には特殊能力で対応する魔獣もいたが、しかし恐怖公の召喚で増える方が早かった。
『フハハハハ! レミリア様のお力が注がれた吾輩の眷属は最強ですぞぉ!!』
そう言いつつ銀色のゴキブリ型ゴーレムに乗り、
魔獣たちは全身をゴキブリに覆われ、一匹一匹とその場に倒れていった。
その時の鳴き声は今でもはっきりと思い出せる。
『クゥ"ウ"ゥ"ゥ"ーン!!!(こんなのやだー!!!)』
そんな鳴き声だった。
聞いたみんなが目を伏せ、戦いが終わった後には黙祷を捧げていた。
(たぶん、この子たちは私の側にいた方が活躍できると思っているんでしょうね。)
それは間違いではない。私は指揮官系クラスの中でもさらに攻撃強化に特化している。
だから手数が多かったり、数を用意できるこの2人はとても相性がいい。
エントマはちょっとわからないが、恐らくは私のカリスマに引かれてしまったのだろう。
ならば蟲ハーレムになるのも当たり前なのだろうか……
「いや、やっぱりおかしいわ。そうよね咲夜?」
あぶないあぶない。危うく納得してしまうところだった。
よく考えれば戦闘の相性とハーレムメンバーは別の話だ。
蟲ハーレムなんて断じて認める訳にはいかない。
「申し訳ございません。それだけでは何のことか判断出来ず。」
頭を下げる咲夜に併せて巨乳長として設定された巨大なおっぱいが上下に揺れる。
もちろん私の目はそのおっぱいに釘付けだ。ここがBARでなければむしゃぶりついていただろう。部屋に戻ったらあの胸で谷間酒とかいいなぁ。
「……もしかして私の忠誠心をお望みでしょうか?」
「忠誠心?」
どういうことだ? 今更そんなの疑う必要なんて無いと思うけど。
まさか伝説の武技・忠誠心パフパフを習得したとでも言うのだろうか?
「はい。レミリア様がそうあれと決められた事柄では『忠誠心は鼻から出る』との事でした。しかし無能なこの身では未だに出すことが出来ず……」
んんん、設定にそんな事書いたか? いや書いた気がする。
確か咲夜の設定は
『ナザリック地下大墳墓のメイド長。
完璧で瀟洒な従者。
おぜうさまの嫁。二人の相性は抜群。
あと忠誠心は鼻から出る。』
だったかな? 他にも色々書いたな。
『うなじが弱点』『お散歩大好き(意味深』『乳首を押しながら↑↑↓↓→←→←BAでHモード突入』とか。そういえば調べて出てきた設定と私の趣味を詰め込みまくったんだった。
(あれ、じゃあもしかして今までたまにモジモジしてたのは鼻から出そうと頑張ってたって事?)
なにそれかわいい。今日は犬耳と尻尾をつけてお散歩しなきゃ(使命感
「それなら気にしなくていいわ。フフ、忠誠心というのは気づいたら溢れているものなのよ。」
「さようですか。」
鼻血が出るとか書かなくてよかった。ボタボタやられたら色々と台無しだった。
あれはギャグだからいいのであって、現実だとものすごく迷惑だ。
いや、どうせなら忠誠心は乳首から出るって書いておけばよかった……。
母乳でミルクティーとか最高じゃね?
「フム、忠誠心デスカ。私ナラバ何時デモゴ覧ニイレテミセマス。」
げぇ! 忠誠心というナザリックでもっともホットそうな単語でコキュートスが釣れちゃった! 馬鹿野郎、お前がこっちの会話に加わったら……
「忠誠心ならば、吾輩も負けませんぞ。」
ぎゃあああ、恐怖公がこっちに交ざってきたぁあああ!!
「フフ、このナザリックに忠誠心無き者など居るはずがございません。ですがそれでも目に見える形で、と言われるのであれば吾輩すぐに示してご覧にいれます。」
そう言いつつ、複数ある左手の一本を胸、もう一本を腹に当てて見事な礼をする恐怖公。
うん、そんなこと言うなら自分の部屋に帰ってくれないかな?
最近毎日顔を合わせているせいで微妙に慣れてしまった自分が憎い。
「そ、それなら私ではなくモモンガの力になってあげてはどうかしら? ほら、最近はアウラもべったりになっちゃったし大変そうでしょ?」
私はなんとか恐怖公をモモンガに押し付けようとする。しかし現実は非情だった(3回目
「それならご心配なく。モモンガ様からはしばらくコキュートス殿と共にレミリア様の下で学んでこいと言われておりますので。」
「ソノトオリデス。」
モモンガァアアアアア!!!
あの野郎、恐怖公が超有能だけど見た目がアレだからって私に押し付けやがった!!!
どうやらニューロニスト&ニグレドはお気に召さなかったみたいね。
しかしどうすればいいんだ?
ここからハーレムを作ろうにも、もはやナザリックに綺麗どころは残っていない。
強いて言えばマーレだが、流石に男の娘は範囲外だ。茶釜の趣味にはついて行けないわ。
「ちなみにシズはどうしてるの?」
「シズはヘロヘロ様の方にいってますぅ。でも今はヘロヘロ様はモモンガ様と共に外に出かけてるので、自分はお留守番だって言ってましたぁ。」
ぐぬぬぬ、シズはヘロヘロか。
「ん、2人で外出してる?」
「はい。アウラ様とマーレ様をつれてカルネ村で畑を作ってるみたいですぅ。」
えっ、なにそれ? 私誘われてないんですけど??
いやまて外に出てる…? 外、外、外……そうか!
ナザリックにいないなら他から連れてくればいいじゃないか!!
(フフ、なんという……。これほどの事にあっさり気づいてしまうなんて! やはり私は天才だったようね!!)
どうもこの世界は顔面偏差値が高いようだし探せばいい子がいるはずだ。
そして私は自他ともに認める過去を振り返らない女。ならば前進あるのみ。
よし、そうと決まれば。
「娼館に行こう。」
「はぁ、娼館ですか。」
咲夜が驚いた顔でこちらを見てくる。
そう、娼館だ。恋愛のように1から少しずつ口説き落とすのもいいが、ここはこの世界の性のレベルを調べる意味でも遊びながら気に入った子を身請けするスタイルが良いだろう。
「帝国は前に一度行ったから今度は王国がいいわね。」
ただ、回ってきた報告書によれば
なので行くなら王都のほうが良いだろう。それに八本指とかいう
「今、仕事で外に出てる者はいたかしら?」
「はい。セバス様が情報収集で王都へ。それとデミウルゴス様も謹慎を解かれて聖王国方面へ向かっていたかと。」
あー、王都はセバスか。
たっちが作ったNPCでカルマ値は極善。
うーん、私とはなんとなく話が合わなそうな気がする。
それに見た目と執事って役職から几帳面そうだし。
報告もこまめにしてるだろうからバレると面倒くさいかな?
しょうがない、ここは気付かれないようにまた変装しよう。
それからあの2人も連れて行こう。
漆黒聖典についての情報提供で6階層に住まいを与えられたクレマンティーヌと、オマケで一緒に住んでいるブレインだ。
咲夜とフウマで大抵は何とかなるけど、しかし人手は多いほうが良い(雑用的な意味で)。
「あと奴隷も購入したいわね。」
異世界ハーレムの王道といえばやはり奴隷だ。
王国は平民の扱いが酷いらしいのできっと売られているに違いない。
(ボロボロの女の子を買って治療したら超美人。しかも別の国の高貴な出とかお約束よね!)
そして奴隷に落ちることになった原因を聞き、復讐を手伝うことで身も心もトロトロに。最後は母乳でミルクティーを作ってハッピーエンドだ。
よーし、想像したら楽しくなってきたぞ!!
「副料理長、今日はここまでにしておくわ。」
考えがまとまった私は飲み干したグラスを置き、ゆっくりと椅子から立ち上がる。
するとまるでそれを待っていたかのように
「護衛ナラバオ任セ下サイ!」
「再び吾輩の眷属の力をお見せする時のようですな!」
「おやつが沢山有るとうれしいですぅ~!」
「周囲の警戒ならばぜひ我らアサシンズに!」
「えっ」
もしかしてお前らも来る気なの!?
モモンガ「気づいたら美女ハーレムだった。」
ヘロヘロ「気づいたらメイドハーレムだった。」
レミリア「気づいたら蟲ハーレムだった。oi……おい。」
ちょっと短いですが王国編の導入部でした。
次から蟲パのドキドキ王都見学はっじまっるよー!