おぜうさまロード   作:さろんぱす。

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チンチンチンチン書きすぎてチンチンがゲシュタルト崩壊しそう。
あと台風で家の屋根が吹き飛びました。えっ10号きてる? ハハッ、ワロス……


7本目:新たな力

「チンチンが消えないんです。」

 

「何言ってるんですかモモンガさん。さっきルプスレギナを食べた(意味深)でしょ。」

 

 おっぱいを爆破された次の日の早朝。

 緊急事態なので3人だけで話がしたいという<伝言(メッセージ)>を受け、向かった先の会議室で聞かされたのは一緒に転移した2人の目を覆いたくなるような発言だった。

 ボケたおじいちゃんと介護するおばあちゃんかな?

 

「何か取り込み中みたいだし私は帰るわね? 覚えてたら次は1ヶ月後ぐらいに来るから。」

 

 2人の発言からどうでもいい話だと悟った私は席を立ってドアへ向かう。

 しかしこの程度で逃してくれるほどこの2人は甘くなかった。

 

「駄目ですよ。元はと言えばレミリアさんのせいなんですからね。」

 

「そうですよ。モモンガさんの下の世話をボクだけに押し付けないで下さいよ。」

 

 えー、だってそんな男同士で連れションして友情高めるみたいな話に私は要らなくない?

 部屋には私たち3人だけみたいだし帰ってもいいと思うんだけどなぁ。ていうか咲夜に外出用のボディペイントを施してる途中だったんだけど……

 

「それでさっきの『ルプスレギナを真っ白にしてやったぜガハハハハ! やはり褐色肌には白濁液が似合うのぉ。』というモモンガさんの発言についてですけど……」

 

「いや言ってませんよ!? なんでギャルゲに出てくる敵怪人みたいな事になってるの!!?」

 

 今のモモンガなら割と言いそうだと思ったのは間違いだろうか? いやココ数日ではっちゃけだしたこの魔王ならあり得る。

 

「そっか。ルプスレギナも食べちゃったのね。戦闘メイド(プレイアデス)はもう駄目そうね。」

 

 ルプスレギナは割と狙ってたんだけどなぁ。これで残りはエントマとシズ。種族は蜘蛛人(アラクノイド)自動人形(オートマトン)だ……うん、駄目みたいですね。

 

「ちなみに一般メイドは全員ボクが頂きましたから。手を出さないでくださいね?」

 

「ふざけんなエロスライム! 何さらっと言ってるのよ!! 私の分は!?」

 

 ていうかモモンガも止めなさいよ!

 

「一度は止めたんですけど目を離した隙に……そういう訳で色々話すことがあるのでレミリアさんはとっとと座ってください。逃げたらそっちの部屋に押しかけますから。」

 

 くそっ、なんだこいつら! だんだん遠慮がなくなってきてね? もしかして私が女だって忘れてるんじゃなかろうか。

 しかしとりあえず帰れそうにない事を理解した私は嫌々ながら自分の席に座ることにした。

 

「じゃあ揃ったことですし、そろそろ真面目に聞いてもらっていいですか? もしまたふざけたら無理矢理に転移させますからね? 方法は幾らでもあるんですから。」

 

「モモンガさん、まさか今更その程度が脅しになるとでも?」

 

「恐怖公の部屋にぶち込みますよ?」

 

「「ひぃっ!!!」」

 

 そう言われた瞬間、私とヘロヘロは椅子ごと仰け反った。

 恐怖公、それはギルド1の問題児『るし★ふぁー』が作った体長30cmの巨大なゴキブリ。

 彼(?)はある意味、この墳墓で最も恐れられているNPCだろう。レベルこそ30台と低いものの同族の無限召喚という最悪の能力を持っており、その部屋は何千、何万匹のゴキブリが共食いしあう最悪の環境。

 さらにこの部屋は墳墓内にある転移の罠の移動先の1つであり、ユグドラシル時代はその精神的ブラクラにより数多のプレイヤーを引退に追い込んだ。

 ちなみに私は絶対に入りたくない。どれだけキャラと装備を強化しても人はゴキブリには勝てないんだって、はっきり分かんだよね。

 

「で、チンチンですよ。チンチン。消えないんです。」

 

消えない? それはひょっとして消したくないの間違いでは?

 

「素直にドハマリしたって言ってもいいのよ? 覚えたばかりなんだから別に笑ったりしないわ。」

 

 だって私もかなりドハマリしてるし。こんな気持ちいいの知っちゃったら止めるとか無理だよぉ。

 

「違いますよ、人を性欲魔神にしようとするの止めて下さい。……レミリアさんみたいにオフに出来ないんです。それに他にも色々おかしいんですよ。」

 

 チンチンがおかしい……性病かな? でもアンデッドって病気無効じゃなかったっけ?

 

「例えばどんな風にですか?」

 

「どうも1日に出せる回数が決まってるらしくて。それ以上に出すとHPが減るんです。」

 

 うわまじで。アルベドに2日も搾られ続けてよく死ななかったわね。

 ちなみに私のは回数制限など無い。さすがはワールド・チンチンである。

 

「装備で回復魔法を使えるようにしてなかったら危なかったですよ。」

 

「初日にシャルティアを送り込んだのはファインプレーだったのね。」

 

 モモンガが絞り殺されたら流石に他のNPCは黙っていないだろう。もしかして地味にナザリック崩壊の危機だったのでは。

 

「それからどうも感情の沈静化が無効になってるみたいなんです。」

 

 感情の沈静化? なにそれ?

 

「実は生やされるまでは感情が一定ラインを超えると強制的に沈静化されてたんです。」

 

「ああ、アンデッドの精神作用無効がそういう形になってるんですね。」

 

 えっ、そうなの?

 

「わたし生やしてないときも沈静化なんてされないんだけど。」

 

「うーん、おそらくモンスター種族の違いなんでしょうね。ほら、吸血鬼って処女の血を飲んでハジけたりとか元から感情豊富そうじゃないですか。」

 

 なーる。同じスキルでも種族毎に違った形になってるってことか。

 そういやモモンガのスケルトン系は淡々と人を襲ってそうなイメージだな。

 

「うーん、でも変ね。生やす時の願いはほぼ同じだったのに、こんなに違うチンチンになってるだなんて。」

 

「そうなんですよ。だからお二人に相談したくて呼んだんですけど、何か分かりませんか?」

 

 んなこと言われてもこれだけで分かるのは無理じゃね? 私たちはチンチンの専門家じゃないのよ。

 

「いや大体分かりました。」

 

 なん、だと……まさかヘロヘロはチンチンの専門家だった……?

 

 そう言うとヘロヘロは両肘をテーブルにつけ、組んだ手の上に顎を乗せるいつかのマダオポーズで語りだした。オマケに今回はしっかりとサングラスまで装備してやがる。体が黒いせいで全く意味なさそうだが。

 

「願った言葉はほぼ同じ、しかし光り方から機能まで二つのチンチンには明確な違いがあります。」

 

「ここから推測されるのは、言葉にしていない部分は願った者のイメージ、もしくは無意識の思いをアイテムが汲み取ってしまったのではないか? ということです。」

 

 どういうことなの?

 

「レミリアさんは女性です、チンチンは無いのが普通であり、()()()()()()()()()()()という思いがあった。だからオン/オフ機能が付いた。」

 

「対してモモンガさんは男性です。チンチンは()()()()使()()()()()()()()()()という認識がレミリアさんの中にあった。だからオン/オフ機能は無く、使えばHPを消費する形になった。」

 

 なるほど、そういうことだったのか。さすがは元プログラマーのヘロヘロ。状況の解析は手慣れてる。でもプログラマーってチンチンの分析までやらされるの? やだ、ブラック企業こわい。

 

「ってことは願いを叶える系のアイテムはしっかり詳細まで言葉にしないと駄目ってこと?」

 

「その方がいいでしょうね。」

 

「待って下さい、と言うことはつまり……」

 

 

 

 

 

 

「モモンガさんのチンチンはずっとそのままですね☆」

 

「はぁぁぁああああああ!!!?」

 

 ヘロヘロから最終告知を受けたモモンガが絶叫する。

 ぶっちゃけズボン履けばよくね? と思うが、男には譲れない何かがあるのだろう。世界の窓は開けてないと駄目とかそういう女には分からない理屈が。まぁ履いても内側から光が漏れて余計に恥ずかしい感じになりそうだけど。

 

「オフ機能が欲しいならまた流れ星の指輪(シューティングスター)を使うしかないでしょうね」

 

「いやそんな事に使いたくないですよ。はは、これじゃもうNPCたちの前に出れない……ギルド長としての仕事は無理そうですね……」

 

 そう言ってものすごい負のオーラを放出するモモンガ。しかし善意であげたチンチンで絶望されるのはコチラとしても気分が良くない。っち、しょうがないなあ。

 

 私はこっそりと流れ星の指輪(シューティングスター)を起動させる。

 それにより発動した<星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)>によって部屋中を青い光が満たす中、2人が驚いた顔でコチラに視線を向けているのを見つつ、指摘されたように思った願いをはっきりと口にする。

 

「モモンガのチンチンにオン/オフ機能をつけよ。ただしオフにしてると性欲マシマシになる感じで!」

 

「ちょっ、なに余計な機能付けてるんですか!!?」

 

 その瞬間、部屋に満ちていた青い光は閃光となり、渦のようにぐるぐる回りながらモモンガのチンチンへ吸い込まれていった。その様はまるで射精の逆再生みたいでとてもキモい。

 

「えっ? だってさっき言葉にしたほうがいいって言ったじゃない。」

 

確かに言ったはずだ。何か間違っていたのだろうか? いや私に間違いなどあろうはずがない。

 

「違うでしょ!? さっきの話は勝手に付きそうな機能は言葉で否定しておくって意味でしょう!? 思ってることと同じこと言ったら意味ないですよ!!!」

 

 え~、なにそれめんどくさい。

 う~ん、他に何か願うことあったかな? チンチンと言えば性欲だから……つまり三大欲求だ。残りは睡眠と食欲、ならば……

 

「私たち3人を飲食可能にせよ。味覚は人間と同じで。バフ効果など余計なものは要らない。」

 

 再び流れ星の指輪(シューティングスター)を起動。今度はしっかりと余計な効果が付きそうなところを否定しておく。

 本日2回目の青い光が部屋を埋め尽くし、光が収まった後に指輪はボロボロと空間に溶けるように消えていった。……ありがとう、やまいこ。貴方が残した指輪は主にモモンガのチンチンの為に使われたわ。

 

「……こんな感じでどう?」

 

「素晴らしい、完璧ですよレミリアさん! やれば出来るじゃないですか!!」

 

 私の行動にヘロヘロが喝采を上げる。そうだろうそうだろう。私だってやれば出来るのだ。これでもう女の子のこと以外は頭アーパーなんて呼ばれないはずだ。

 

「いやいやいやいや!!! 何あっさり最後の1回使ってるんですか!!? ていうか今のは流れ的にチンチンからムラムラを取り除くために使うとこでしょう!!?」

 

「モモンガさん、自分のチンチンのことだけ考えるのはどうかと思いますよ?」

 

「そうよ、それは流石にやまいこもキレると思うわよ?」

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!……ふぅ」

 

 モモンガが再び絶叫する。しかしチンチンをオフにしたせいか途中でテンションがもとに戻った。恐らくさっき言ってた精神の沈静化が発動したのだろう。傍からだとどう見ても賢者タイムに入ったようにしか見えない。

 

「それでボクたちを呼んだのはチンチンのためだけですか?」

 

 その一瞬の隙(沈静化)を突いてヘロヘロが話を進めようとする。さすがはヘロヘロだ。このギルドを作る前からモモンガとPTを組んでただけあってタイミングをよく分かっている。まぁ人のチンチンの話なんてこれ以上聞きたくないからね。

 

「あっ、いえ。デミウルゴスから報告が上がってきているので、その確認と情報の共有をしておこうと思って。詳しくは(デミウルゴスが)書類にまとめてあります。あと指輪の件については後でしっかり話しますからね?」

 

 そう言ってアイテムボックスから書類を取り出すモモンガ。

 しっかり3人分用意されていたそれは私とヘロヘロの前へ配られた。

 ちっ、誤魔化せなかったか。

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 

 私たちは黙って渡された書類を読む。

 書類はそこそこの量があったが、しかし私とヘロヘロがデミウルゴスに情報の収集を命じたのは3日前だ。ならばまだそれほど詳しいことは分かっていないだろう。

 

 えーと、なになに……墳墓から一番近くにある街エ・ランテル、及び西に在る大森林の調査書?

 

 まずはコキュートス、エントマ、恐怖公を始めとした昆虫たちによる街と周辺の一斉探索。

 目的はLV15を超えてそうで、かつ居なくなっても問題なさそうな者の捕獲。

 結果、捕獲したのは72名。内訳は風花聖典、ズーラーノーン、死を撒く剣団、その他色々。

 

 それから隠蔽に特化した者たちによる情報の収集。

 目的は各拠点の重要そうな書類の入手および写しの作成。

 結果、都市長宅、冒険者組合、魔術師組合、神殿各種から裏帳簿まで入手済み。

 

 最後がアウラを始めとした大森林の探索。

 魔獣100匹+移動能力の高いシモベ複数による森の一斉探索。

 結果、脅威になりそうなモンスターは発見されず。ただし現地で得た協力者の言によればずっと昔、北の端に高レベルの魔樹のようなものが封印されており、そろそろ出てきそうだとのこと。対処出来ない可能性がある為、現在は調査を保留中。

 

「ふむふむ、なるほどなるほど。」

 

 えっ、これ3日で終わらせたの? マジで??

 

「フフ、さすがはデミウルゴス(震え声。私の目に間違いは無かったようね。」

 

「恐らくボクたち3人がやってたらこの3割も終わってませんよ。」

 

 ウルベルトの息子さん有能すぎワロタ。もう全部アイツでいいんじゃないかな? 全権預けて引き籠っていたら全部終わってそうな気がする。

 

「でも面白そうな情報は特に無いわね。レベル30超えが1人だけとか。」

 

「ボク思ったんですけど、もしかしたらこの世界はレベルに上限……才能限界とでも言うべきもの? が有るんじゃないでしょうか。しかもそれがものすごく低いのでは。」

 

「言われてみればそうかもしれませんね。この風花聖典ってのも特殊部隊って割には弱いですし。」

 

 特殊部隊ってのは国の精鋭のはずだ。それが低レベルってことは才能上限の話はほぼ確定ではなかろうか? ってことは私たち超強いんじゃね??

 

「あっ、それと武技が使えるのが何人か居たみたいですよ? 他人と同じ武技しか使えないのは始末済みみたいですけど。」

 

 武技かー、ちょっと気になるかな。資料によると魔法とも重複するみたいだし、覚えられたらモモンガとのPvPでもワンチャンありそう。ちなみに今は95:5ぐらいだ。もちろん5のほうが私。

 

「話はこれで終わり? なら私は武技ってのを見に行ってみるわ。2人はどうするの?」

 

「ボクはこれから出かけるのでそっちはお願いします。」

 

「俺は久しぶりに部屋でゆっくりしてますよ。チンチンオフのムラムラがどれぐらいで増えるのか検証しないといけませんし。」

 

 部屋でゆっくりと言いつつ考えるのはチンチンのことか。最近こいつ何時もチンチンのことばっかりだな。

 まぁよかった。チンチンをムラムラさせた責任を! とか言われないで。そしたらまたアルベドを呼ばなければいけないとこだった。

 

「ところでこの武技を使える2人……ブレインとクレマンティーヌってのはどこにいるの?」

 

 私の質問に対してヘロヘロは資料をペラペラとめくる。

 

「えーと、王国戦士長と互角と言われる男、それと法国の元漆黒聖典だった女。資料によれば尋問後は捕虜になってるみたいですね。そして捕虜の管理は捕獲した者に一任とあるので……」

 

「つまり?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「恐怖公の部屋です。」

 

「「えっ」」

 

捕……虜……?

 

 

 

 

 

■■■■■■

 

 

 

 

 

 

カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ

 

 

 リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンの力で私たちが転移してきた第二階層の一角。

 そこはまさに地獄だった。まだ部屋に入っていないにも関わらずドア越しに聞こえてくる音だけで全身の鳥肌が止まらない。一体どれだけの数が中にいるのか? モモンガが言うには召喚した眷属が消えずに一度溢れ出したらしいのだ。中は10畳以上の広い空間だったはずなので、ホントだとすれば万でも足りない数が居ることになる。

 

「よろしければ私が行ってまいりますが?」

 

 一緒に来た咲夜はそんな事を言ってくれるが、しかし行かせる訳にはいかない。

 

「駄目よ。ゴキブリなんかに貴方が汚されるのは耐えられないわ。それは私自身が汚れる以上によ。貴方はここで待っていなさい。」

 

「レミリア様……」

 

 私の発言を聞いて咲夜が顔を赤らめる。私は勇気をもらうため、咲夜に正面から抱きつきおっぱいに顔を埋めてスリスリ、更にお尻をサワサワしながら揉みしだく。本来ならここで心のチンチンがムクムクと立ち上がるはずだが、しかし背後のカサカサ音のせいでとてもそんな気分にはなれなかった。

 

「大丈夫よ、部屋に入らなくても外から呼びかけて連れ出せばいいの。」

 

 幸い私が持ってるスキルの中には、どんな騒音の中でも味方に声を届けることが出来るようになるパッシブがある。大声援だった帝国の闘技場の中ですんなりと指示を出せたのはこのスキルのおかげだ。

 

 しかし、私たちがそんな事をやってると『ガコンッ』とドアが開く音がした。

 

「「ひっ……!」」

 

 その音に私と咲夜は抱き合ったまま大きく後ろへと下がる。

 そしてそのまま注意深く観察していると、部屋のドアはまるで時間切れだと言わんばかりに()()()()()()()()ゆっくりと開いていった。

 

「ああああぁぁぁぁ……!!」

 

 私はゴキブリが雪崩のように飛び出てくる様を幻視して悲鳴を挙げる。しかし予想に反してそこから這い出てきたのは30cmほどのゴキブリが一匹だけだった。

 

「これはこれはレミリア様。お久しぶりでございます。忠義の士、恐怖公でございます。」

 

 そう言いながら丁寧なお辞儀をするゴキブリ。それは頭に王冠を被り、背にマントを羽織って手に王笏のようなものを持っている。彼こそがこの墳墓最恐のNPC、恐怖公だ。

 

「ひ、久しぶりね。」

 

 私はその姿を直視しないようにしながら恐怖公へと挨拶を返す。

 リアルではゴキブリ一匹ぐらいなら余裕で叩き潰せた。それは女に受けが良かったからだ。

 しかしこの大きさは無理。こっちに向かって走り出されるだけで心が折れる気がする。

 

「ところで1つ聞いていい? どうして私たちに気づいたの?」

 

 もしかして部屋の外にも眷属がいたのかな? もしそうなら私はもう二度とこの階に来ることはないだろう。いや居なくても二度と来たくないが。

 

「それなら先程モモンガ様より<伝言(メッセージ)>で連絡を頂きまして。なんでもレミリア様たちが捕虜を受け取りにいくので眷属を挙げて歓迎してほしいとの事。なので吾輩、魔法で中から外が分かるようにしてお待ちしておりました。」

 

「モモンガァアアアア!!!!!!」

 

 それを聞いて私は絶叫する。

 あの骨野郎やりやがった! 下手したら私たちゴキブリに囲まれてたじゃねーか!! 絶対許さねぇ!!! 

 私は帰ったらニューロスト(水死体のようなNPC)をモモンガにけしかける事を心に誓う。あとニグレド(顔に表皮が無いNPC)にも許可を出しておこう。

 

「それで捕虜の件ですが。」

 

「え、ええ。実は武技ってのを見てみたくなってね。貴方の部屋から2人連れ出したいんだけどいいかしら?」

 

「もちろんでございます。この墳墓の全ては至高のお方々の物。何を持ち出そうと一切文句などあるはずがございませんぞ。」

 

 そう言って再び礼をするゴキブリ。なんだろう、動作と発言だけならすごい有能そうなんだけどなぁ。

 

 そんな恐怖公に私は「お邪魔するわね」と返し、目をつぶって少しだけ開いたドアの隙間から中へ叫んだ。

 

「おい、ココから出たかったら答えろ! ブレインとクレマンティーヌは居るか!?」

 

「私です!」「私です!」「私です!」「俺です!」「俺です!」「俺です!」「俺だ!!」「おれぇ!!!!」「くわjsこうれ!!!」……

 

 私の問いかけに対して、恐らく部屋の中にいた全員から絶叫にも近い声が起きる。

 それは地獄に垂らされた一本の糸を必死につかもうとする亡者達を想像させる返事だ。

 

「どういうことなの? もしかして回復魔法を使ってたら分裂しちゃったの?」

 

「創造主である『るし★ふぁー』様に誓って、そんなことは行っておりません。捕虜を傷つけるなど紳士の行いとは言えませんからな。あとちぎれた部分は眷属どもが全て平らげておりますし。」

 

 えっ、ちぎれたの? どこがどんなふうに? ……いや考えるのはよそう。

 

「何か特徴はございませんか? 教えて頂ければ我輩が見つけ出してご覧にいれますが?」

 

 あくまで真摯に対応しようとする恐怖公。

 それを姿を見て私は必死に記憶から書類の内容を思い出した。

 

「青髪の男と猫っぽいボブカット、だったかしらね。」

 

 私の答えに対し、しかし恐怖公はさらに丁寧にお辞儀をしつつ謝罪を述べる。

 

「申し訳ございません。体毛はその、眷属共がモグモグと……」

 

「……もしかして食べちゃったの?」

 

「はい、共食いには飽きたようでして。傷付けるなと厳命はしていたのですが、どうも体毛と衣類はそれに当たらないと判断したのかバクバクと。」

 

 おお~と、何ということだ。ここまで来ておいて探す方法がなくなったぞ~。めんどくさっ!

 

「ちなみになかなか美味しかったそうでございます。」

 

「そっかー。……もう置いて帰って良い気がしてきた。」

 

 すでに私のヤル気は0になりつつあった。対して中からは先の発言が聞こえたのか『待って!』『置いていかないで!!』等と叫びが聞こえてくる。どうしたもんかなぁ。

 

「よろしければ私が連れ出しますが?」

 

「どうやって?」

 

 おっと、ここで我がパーフェクトメイドのエントリーだ! そうだ、こんな状況でも咲夜なら! きっと咲夜ならなんとかしてくれる!!

 

「範囲を拡大した<集団人間種魅了(マス・チャームパーソン)>を使おうと思います。この魔法なら人間にしか効きませんので違うものまで出てくる心配はないかと。」

 

 さすがは咲夜だ。確かにそれなら一発ですべて解決することが出来る。でも出来れば最初に言ってほしかった。

 

「しょうがないわね、お願いするわ。」

 

「かしこまりました。」

 

 そうして咲夜の魔法によってようやくブレインとクレマンティーヌが部屋から出てきた。

 しかし2人は目にはハイライトが無くフラフラしており、さらに体毛を全て食われていて全裸なのでかなり不気味だ。

 とりあえず武技の前に水にぶちこんで汚れを落とし、それから飯も食わせる必要があるだろう。ん、飯といえば。

 

「そう言えば食事とかはどうしてたの? デミウルゴスからは捕虜として扱うように言われたと思うけど。」

 

「ご安心下さい。食事はしっかり1日2回与えております。食料はデミウルゴス様が外の物を用意してくれましたので。ただ何故かどなたも口にしてくれないのです。」

 

 誰も口にしない……あっ(察し

 

「一応聞くけど、その食事は誰が運んでたのかしら?」

 

「もちろん我輩の眷属ですが? 中には1mを超える眷属もおりますので、食事を運ぶぐらい簡単でございます。こぼれないように上からもしっかり押さえて運んでますぞ。」

 

 そっかー。眷属が運んでたのかぁ。しかも上下からプッシュして……そりゃ誰も食べないわ。

 

「それじゃあブレインとクレマンティーヌの2人は私が連れて行くから。」

 

「かしこまりました。」

 

「あっ、そうそう、捕虜共がもし今日も食事を食べそうになかったら無理矢理口に詰めてやりなさい。」

 

 私の指示に丁寧なお辞儀で答える恐怖公。部屋の中からはものすごい悲鳴が上がっていたが気にする必要はないだろう。嘘の返事をして私を手間取らせたのだ、ならばこれぐらいは許されるはず。嫌なら自分で食べてどうぞ。

 

「とりあえず6階層に行くわよ。まずは湖でこの2人を本格的に洗わないと。」

 

 私たちは恐怖公に別れを告げると、死んだ目をしている二人を連れ、まっすぐ6階層へ向かうのだった。




モモンガ「ちっ、ゴキブリアーマーは装備されなかったか。」

レミリア「絶対に許さない。絶対にだ。」

恐怖公「さぁ今日の食事ですぞ。食べなければ眷属に胃の中まで(・・・・・)運ばせますので。」

残された捕虜s「ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”!!!!!」
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