書き込んでくれた方もそうでない方もありがとうございます。
また誤字脱字の指摘も大変助かっております。
「アタタタタタタタタターッ!!!!」
暗い闇の中を疾走する影があった。
それは体から2本の触腕を生やした黒いスライム。
ナザリックにおける3人の支配者の内の一人であるヘロヘロだ。
ヘロヘロはぎりぎり一人が通れる程度の細い通路を走りながら、掛け声と共に触腕を左右の壁に叩きつける。スキルによって物体の硬度を無視する効果を得ている拳は、まるでバターに加熱したナイフを刺すかの如く容易く壁に突き刺さった。
「ホアタァ!!!!」
更に通路の行き止まりにたどり着くとぐぐっと屈み、そこから真上に大きく跳躍。信じられない距離を飛び上がると、横にぐるぐると回転しながら周囲の壁に両の触腕を何度も叩きつけながら降下。最後は着地と同時に前の壁に左手を突き刺し、更に別のスキルを発動した。
「……お前はもう死んでいる。」
ヘロヘロは腕を抜き、クルっとかっこよく後ろを振り向きながら考えていた決め台詞を口にする。するとそれを待っていたかのように拳を突き入れた周りの壁にヒビが入る。そのヒビはピシピシという音を立てて徐々に広がり続け、ある程度の大きな亀裂になるとガラガラと一斉に崩れ落ちた。
「きゃ~、ヘロヘロ様~。カッコいい~~♥」
そんなヘロヘロへ少し離れたところから声援を送る者がいる。
ヘロヘロの嫁兼メイドであるソリュシャンだ。
ただし格好は何時ものメイド服ではない。
頭にはリボンの付いたカチューシャをつけ、へそ丸出しの上着にフワフワしたミニスカート。さらに手には黄色いボンボンを持っている。
その姿はリアルでチアガールと呼ばれていた格好だ。この2人にしては割と普通であるが、だがしかしよく見れば気づくだろう。体を動かすと胸は盛大に上下し、振り上げた足の根元には何の生地も無いことに。つまりそれはノーブラ・ノーパンだということ。完全に痴女ガールです本当にありがとうございました。
「ふぅ~。ありがとうソリュシャン。しかしやっぱりモンクコンボは細かい部分を忘れてしまってるね。」
「心配しなくともヘロヘロ様ならきっとすぐに思い出されるはずです。」
忘れた事が多いというヘロヘロに対して、大丈夫ですと告げるソリュシャン。
彼女は確信しているのだ。
「一度見ればあらゆる全てを理解・分解・再構築してしまわれる。そんな叡智あふれるヘロヘロ様ならすぐに全て取り戻せます。」
それを聞き、『えっ、なにその高評価!?』と思ったがヘロヘロは口には出さなかった。
ナザリックの者たちは忠誠心が篤すぎて言っても無駄だと分かっているからだ。
「しかし本当にこの格好でよろしかったのですか? ヘロヘロ様が望むのでしたら今すぐ全て脱ぎますが?」
「大丈夫だよソリュシャン。それは昔から伝わる由緒正しい衣装――チアガール、だからね。特にここ一番の勝負ではみんなその格好で応援をしたらしいんだ。あっ、でも下着を着けないのは愛する男の前だけらしいよ?」
だから気をつけてね? と、そんなソリュシャンにさらりと嘘を吹き込むヘロヘロ。
前半はともかく後半は完全に彼の趣味である。
この格好は飛び上がることで上着が捲れ上がりチラチラと下乳が見える。
さらに足を振り上げればそこには数瞬だけ股間がこんにちは。
それは大好きなチラリズムと露出の融合。
諦めず両方を追い求めた末にヘロヘロがたどり着いた一つの真理の形だった。
「分かりました。ではこのまま応援させてもらいます。」
そして純粋なソリュシャンは完全にそれを信じ込んだ。
元よりナザリックのNPCたちにとって創造主を疑うことなど有り得ない。
造物主がそうだと言えばたとえパンティーだって履かない事になる。それがナザリックという組織の日常なのだ。
さらにそんな嫁に対してヘロヘロには一片の悔いも見当たらない。それはまさに拳を振り上げて大往生する覇王のような潔さであった。
なお後日、ソリュシャンからチアガールの話を聞いたアルベドたちが嬉々としてこの格好に身を包んでモモンガを応援に行き。それにより執務中に股間からモモンガ棒が飛び出してしまう事になるのだが、それはまた別のお話である。股だけに。
ヘロヘロはふぅーと息を吐きながら周囲を見渡す。先ほどのスキル乱舞で3方の壁は大きく崩れ落ち、一人が通れる程度だった通路は楽に4~5人が通れるほどに広がった。
現在、ヘロヘロたちが居る場所はとある鉱山の地下500m。
こんな場所でスキルをぶっ放しているのは複数の理由があるが、そのうちの一つはブランクを埋めるためである。
ヘロヘロは2年間もユグドラシルにログインせず、病院と会社を往復する生活を送っていた。そのためスキル等で思い出せない部分がちらほらあった。
「これでモンクのスキルは一通り使ったかな? でもやっぱりコンボは半分も覚えていなかったね。これは急いでどうにかしないとマズイ……」
流石に良く使っていたコンボは覚えているのだが、細かい派生や分岐させる判断材料などは忘れてしまっていた。
別に訓練ならナザリックでも出来たが、しかしどうせなら何かを壊しつつ感触を確かめたかった。だからこそわざわざこんなところまで出向いてきたのだ。
それからココに来た理由がもう一つ。
「じゃあアンデッドたちを呼んでこの岩石を運ばせようか。」
「はい、ヘロヘロ様。 ナザリック・オールド・ガーダー! こっちに来て岩石を運びなさい!!」
呼びつければ待機していたアンデッドたちが一斉に駆けつけてくる。
それはナザリックにしか存在しないアンデッドだ。
普段は魔法の武具に身を包むそれらは、しかし今は手には何も持っていない。
代わりに腰にピッケルを吊り下げ頭には黄色いヘルメットを被っていた。
さらにその後ろには似たような格好のゴーレムが沢山いる。
アンデッドたちは先頭の1体がシュレッダーのような箱を通路の入口横の床に置くと、後続はヘロヘロが崩した岩石を拾ってきてその箱の上へ載せ始めた。
すると岩石は見る見る箱に吸い込まれていき、砕いた岩石の全てが消えると箱からは1枚の金貨が飛び出してきた。
「うーん、これだけ入れても金貨1枚程度か。やはりこの世界の品は材質でしか評価されないみたいだね。」
これがヘロヘロがココにきた理由の2つ目。要はユグドラシル金貨の調達だ。
言わずもがなナザリック地下大墳墓は難攻不落のダンジョンである。
しかし墳墓内のギミックや下僕たちの維持にはユグドラシル金貨が必要。
それをこの世界でどうやって手に入れるか?と考えた時、真っ先に浮かんだのが目の前のシュレッダーのような箱――エクスチェンジ・ボックスだ。
このアイテムは投入した物の価値に応じてユグドラシル金貨を吐き出す。
そこで試しにレミリアが持って帰ってきたこの世界の白金貨を何枚か入れてみると、きちんとユグドラシル金貨が吐き出されることが確認された。
それからさらに色々な物で試し続けながらパンドラと検証を重ねたところ、もしかして価値の判断は材質だけで行われているのでは? という推測に至ったのだ。そこまで分かればあとは簡単だ。
「結局レミリアさんの白金貨が一番変換率が良かったからね。」
ニグンの自白とデミウルゴスが調べた情報から良さげな金鉱山に乗り込み、人間が来れないぐらいの深さまで掘り進む。
良い感じの深さまで到達したらある程度の空間を掘り、それから進んできた穴を埋める。
もちろん地上への穴を埋めることで空気が循環しなくなるが、そこはアンデッドとゴーレムを連れてきて採掘させればいい。この2種類のモンスターは空気も食事も要らず疲労もせずに黙々と働き続ける。更にナザリックから持ってきたエクスチェンジ・ボックスの予備を設置する。
あとは指示を出してそのままにしておけば自動でユグドラシル金貨が量産されるという寸法だ。
もちろんユグドラシル金貨は後で誰かが回収に来る必要があるが、逆に言えば手間はそれぐらいである。
「本来なら金を取り出すためには溶解なんかの処理が必要になるけど、エクスチェンジ・ボックスは鉱石のままでも含まれる金を評価してくれるみたいだからね。」
鉱石から直接に金を取り出せるこの方法は間違いなくチートだろう。
問題が有るとすればエクスチェンジ・ボックスを奪われることだが、それも採掘が進み鉱石を保存して置く場所ができれば解決する。必要なときだけ持ってくるようにすればいいのだ。
「もしこれが上手く行けば、ナザリックを支える重要な仕事になるね。」
「流石ヘロヘロ様です。しかしこんなに掘ってしまっても大丈夫なのですか? 余り掘りすぎると地上の鉱山が崩落するのでは?」
「大丈夫だよ。今回連れてきた人数ではそこまで掘ることは出来ないさ。じゃあそろそろ僕たちは帰ろうか。」
はい、ヘロヘロ様♥と、そう答えるソリュシャンに抱きついて2人は指輪の力でナザリックへと帰還した。
だがココでヘロヘロが読み間違えていたことが一つだけあった。
それは勅命を与えたアンデッドたちのヤル気。
二人の会話からこれがナザリックを支える重要な仕事だと聞いた彼ら(?)は、その瞬間から士気が天元を突破していた。
さらにヘロヘロがアンデッドとゴーレムに持たせたのは、レミリアが課金ピッケルを買う前に作りまくって宝物庫に放り込んでいた魔法の魔改造ピッケルだった。
数日後、そこには有り得ないくらいに掘られまくった巨大な空洞が出来上がっており、その上からはミシミシと嫌な音が響き続けていたのだった……。
■■■■■■
「武技、<斬撃>! 武技、<瞬閃>!! 武技、<神閃>!!!」
男が刀を振るう。
この世界独自の力によって増幅されたそれは用意した土人形を容易く断ち切る威力だ。
さらにその剣速はすさまじい豪風を巻き起こし、それにより周囲の草を揺らし、その勢いは使い手のチンチンすらプラプラと揺らしている。
「武技、<能力向上>! 武技、<能力超向上>!! 武技、<疾風走破>!!!」
女が地を駆ける。
武技を重ねる度に速度が上がる。最後は名前通りに疾風のような速度だ。
さらに女はそのとてつもない速度のまま縦横無尽に動き続け、その度におっぱいもタプンタプンと上下左右に揺れまくる。その姿はまるで警察官から逃亡中の痴女のよう。
「ドウデスカ、レミリア様?」
「ふーん、なるほどね。」
あの後、私たちは恐怖公に別れを告げ、死んだ魚の目をした捕虜2人を連れてそそくさと彼の守護領域を離脱した。
恐怖公は「お呼びとあらば何時でも駆けつけますぞ!」と言っていたが、しかし私たちは一度も振り返れなかった。だって怖かったのだ。実は相談したいことが……などと言われたらどうすればいいのか? もし
それから何度か咲夜の<
本来ならリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使ってさくっと目的地へ転移するところだが、しかし捕虜2人をつれた状態でそれは出来ない。
ナザリック地下大墳墓は階層間の転移が阻害されているので1階層ずつ降りていく必要があるためだ。
(ここを作った私たちが言うのもなんだけど、指輪が使えないと本当に移動がめんどうだわ。)
ついてからは捕虜の2人、ブレインとクレマンティーヌを湖へ叩き込んで全身を洗った。
それからペストーニャ――ナザリックの副メイド長に持ってきてもらったお粥を食わせ、一休みしてから武技の鑑賞タイムに入って今に至る。
「もういいわ、だいたい分かった。」
2人から一通りの武技を見せてもらい、私の崇高な頭脳はすぐさま答えをはじき出した。
――そう、何も全く分からないということを!
残念だが元が弱すぎるせいで強化? なにそれ? 状態だ。
なにより私には武技よりも気になっていることがあった。
それはこの2人の格好。なんと未だに全裸なのだ。
なんでコイツら何も言わずに裸で剣を振ってるの? しかもすげーマジ顔なんですけど?
ブレインは剣を振る度にチンチンがブルンブルン揺れていて、それはいつかのニグンのよう。
クレマンティーヌは武技を使う時の走り方――クラウチングスタートのような構えでお尻の穴まで丸見えだった。犯してほしいのかな?
いちおう体を拭く時にバスローブは与えたはずなのだが、何故かそれも身に着けずに2人は頑なに全裸スタイルを維持している。
しかし誰も何も言わない。咲夜も食事を持ってきたペストーニャもだ。
まぁこの2人はメイドなので私が黙っているから言わないだけかもしれないが。
私は必死に頭を切り替え、今見せてもらった武技を思い出す。
「最初のは<神閃>だったかしら。」
私に向かって<神閃>という武技を打たせてみた。
ゆっくり歩いて間合いを詰める私に対して、ブレインは3mの地点で抜刀してきた。
説明によれば「剣速がものすごく速くなる」らしいのだが、しかし普通に指で掴めてしまった。それもゲームをしながらポテトチップスを摘むような気軽さで。
ブレインはかなりびっくりしていたが、しかし私からすれば欠伸が出る遅さだった。
余りにも遅かったので手加減されてると勘違いした私は2刀目を避けつつ、ブラブラゆれるチンチンにデコピンをしたのだが、ブレインは刀を繰り出すことが出来ずにそのまま受け泡を噴いて倒れてしまった。
「次が<疾風走破>だったわね。」
<疾風走破>という武技もそうだ。
試しに5mほど間を開けて追いかけっこをしてみた。
「めちゃくちゃ素早くなります」と言われたが、しかし私からすればとても遅い。
クレマンティーヌは全力で走っていたのだろうが、何度か軽く地面を蹴るとあっさりと追いついてしまった。
その後もどうにか逃げようとクレマンティーヌはフェイントを交えて前後に動き回るが、しかし私は彼女の動きに併せて0距離を維持し、そのまま乳首とクリ○リスを摘んで優しく愛撫をするとこちらもその場に倒れてしまった。
「どっちも微妙だったわね。」
「確かに。」
私の発言に周囲のナザリック勢がみんな頷く。
もちろん、これはこのレミリアボディがチートということもあるのだろう。
指揮官系はスキルを除いた戦闘能力は基本的に戦士系と同じだ。
この世界に来てから試してなかったため今までは気づかなかったが、レベル100である私は動体視力や反射神経がとんでもない事になっていた。
恐らく今の私であれば、自身に降り注ぐ全ての雨粒を乳首で弾きながらコサックダンスを踊ることすら可能なはずだ。それほどのスペックだ。
「コキュートス、貴方はどう思う?」
私は何一つ理解出来なかった事を誤魔化すため、ここに来る途中で拾ってきたNPC『コキュートス』に質問を投げかける。
彼は5階層の守護を命じられたレベル100NPCであり、武器を用いた攻撃はナザリック随一。
さらに性格は武人系なので何か分かるかなと思って連れてきたのだ。
「ハッ、タシカニ多少ハ強クナッテイルヨウデス。シカシ元ガ弱スギルカト。」
「やっぱりそう思う? せめてレベル70……いや50ぐらいあればねぇ」
話を聞く限り確かに強化はされているのだろう。
しかし私には違いが良くわからない。
例えるなら100ダメージ単位でやり取りしてるところに10ダメージが11ダメージぐらいになる様を見せられた感じだろうか。
1ダメージ増えてます! なんて言われても、それ誤差じゃね? としか思えないのはしょうがない事だろう。
「この2人の戦い方にも問題があると思いますが。」
咲夜の言うことも一理ある。
この2人はガン待ちのカウンター剣士と速度特化フェンサーだった。
正当派の剣士に比べてかなり毛色が違うらしく、使える武技は攻撃系のものが少なく他は地味な物ばかりだ。
「まぁクレマンティーヌの方は分かるわ。速度は奇襲にも逃亡にも使えるものね。」
「でもブレインだっけ? 貴方の『領域』は使ってる間は自分が動けなくなるんでしょ? 魔法とか撃ち込まれたらどうするの?」
大抵のゲームにおいて、足を止めてどっしり構えるのは盾をもったタンク役だ。
対して武器を両手持ちするクラスというのは大体がアタッカーになる。
しかし、このブレインは刀を両手持ちしながら動かずにガン待ちするという。
剣士、それも盾を持っていない軽戦士が足を止めてどうするのか?
普通なら遠距離から魔法と弓を撃ち込まれてゲームオーバーだ。
だがもしかしたら、そんな常識を覆す武技があるのかもしれない。そしてそういうモノこそ私たちが求めているものだろう。
しかし、そんな私の気持ちはあっさり裏切られる。
「解除して逃げます。」
これである。尋問の資料には『最強を目指している』って書いてあった覚えがあるんですけど。もしかして私と同じエンジョイ勢か?
「俺の目標はガゼフ・ストロノーフだ……あっ、です。あいつなら堂々と切り込んで来てくれるはず。」
「無理に敬語を使わなくていいわよ。普通にしゃべりなさい。」
慣れてなさそうなので敬語は使わなくていいと告げておく。あとはコキュートスに任せれば勝手に質問してくれるだろう。
「フム、少々火力不足ノヨウニ思エルガ、ソコハドウスルノダ?」
「ガゼフの首さえ落とせればいい。そのための神閃だ。」
「四光連斬トイウモノヲ使ワナイノハナゼダ?」
「ガゼフのオリジナルだから覚えただけだ。アイツに勝つまでそれは封印することに決めた。」
なんだこいつ?
つまりガゼフが切り込んできてくれると信じての<領域>であり、
ガゼフの首を取るための<神閃>であり、
ガゼフの武技だから<四光連斬>を覚えたのか……これはちょっとアレじゃね??
「ブレちゃん、ガゼフ・ストロノーフ好き過ぎでしょ。ぶっちゃけキモいわー。」
私があえて言わなかったことをクレマンティーヌがぶっちゃける。
だが私も同意見だ。こいつガゼフに人生賭けすぎだろう。恋する乙女かな?
これがもしギャルゲであればガゼフは間違いなく女だろう。
イメージは美しいポニーテールの天才剣士。一目惚れした主人公に「私に勝てたら結婚してあげるわよ!」なんて勇ましい発言をすることでストーリーが始まるのだ。
その後、主人公は騎士団に入って様々なイベントをこなしながら腕を磨き、最後はガゼフに勝って団長の座を受け継ぎ2人は幸せなキスをしてハッピーエンドだ。
「つまりガゼフは美少女剣士だった?」
「いえ、違います。報告書によれば40代前後の男とのことです。」
私の発言に咲夜が容赦なく突っ込みを入れる。
そう、残念ながらココは現実。モモンガから聞いた話でもガゼフは暑苦しいおっさんだったはずで、そんなのに人生賭けてます! なんて言われてもキモいだけである。
「一人ノ男ニ勝ツタメ全テヲ賭ケテイルノカ。ソレハスバラシイ。」
だがコキュートスはその生き方に感じるものがあったのか称賛を送っている。
うーむ、しかしそういう物なのだろうか。当たり前だが女の私にはそういう男の考えは理解できない。ふレんズとおホモ達は近いようでものすごく遠い世界なのだ。
更にそのままさり気なくコキュートスの様子を窺えば、こちらも2人の衣服を気にする様子は全く無かった。しかしよくよく考えてみればコキュートスの鎧は外皮鎧。それはぶっちゃけるとただの分厚い皮な訳で、つまり彼もまた全裸ということ。
それもこの2人と違い、どんな場所でも常に全裸という全裸のベテラン。気にしろという方が無理だった。
私は6階層の空――ギルメンだったブルー・プラネットが作った偽物、を見上げつつ思う。
恐怖公の部屋へ出向いて怖い思いをして2人を連れてきた、しかし結果は全裸ユーザーが3人に増えただけで収穫は0だ。つまり。
「完全に無駄だったわね。2人を部屋に戻しましょう。」
私は後ろで上がった悲鳴を聞きながらそのまま空を見続けた。
■■■■■■
私はガタガタ震える2人を無視して考える。
あの後、なぜ全裸なのか聞いてみたら「体に何かが触れているとアレが全身を這い回っている感じを思い出すから。」ということだった。ああ、そりゃ服とか着れないわ。ていうかこれはもう一生全裸じゃね? やったねコキュートス! 仲間が増えるよ!!
それからとりあえず武技は私たちには使えそうにないことが分かった。
ただし現地人は低レベルなようなので今の所はあまり気にする必要はないだろう。
それより重要なのは自身の戦闘力の確認だ。
武技を試させた最中に気づいたスペックを考えれば、恐らく攻撃力なんかも同じくやばいことになってるはずで、そうするとナザリックの中では試しづらい。もし何かを壊してしまうと修復に金貨が掛かるからだ。ならば外でということになるが、できれば見られたくないので誰も居ない所を探す必要がある。
「出来れば人の居ない山奥なんかがいいのだけどね。」
レミリアをロールしていた私のメイン武器はもちろん槍だ。それも持って戦うのではなくぶん投げるタイプの、いわば投擲兵スタイルである。
ユグドラシルでは無理せず狙えるのは100mぐらいが限界で、届くのは最大でも500mぐらいまでだった。しかしコチラの世界ではどこまで飛んでいくのか見当が付かない。だからその辺を調べるためにもある程度は広さも必要だ。それからもう一つ。
「出来れば
「コノ子? ソレハモシヤ、レミリア様ガ使役サレテイル、モンスターノ事デショウカ?」
私が
「そう言えば貴方は見たことが無かったかしら?」
「ハイ。私ハ自身ノ階層ヨリ下ニ行ッタコトハ有リマセンデシタノデ。」
なるほど。そういえばコキュートスはずっと5階層に配置されていたんだっけ? ならば6階層に置いてあった私のペットを見たことが無いのも道理だろう。
ユグドラシルにはモンスターを連れ歩くことが可能になるクラスがあった。
代表的なものはアウラのテイマー、マーレのドルイド。若干変則的なところでは自身が乗る乗騎モンスターを呼び出す聖騎士や闇騎士だ。そして私の指揮官系もその内の1つ。
「それなら丁度いい機会だから紹介しておくわ。――出てきなさい! メイリン!!」
「おおおおおおおおん!!!」
私が呼びかけた瞬間、雄叫びとともに湖から巨大な何かが湧き上がってくる。
大きな水柱を上げ、咆哮と共に飛び出してきたのは体の長い龍。
それも全長40mはあろうかという巨大なドラゴンだ。
あまりにも巨体だったため巻き上げられた水が雨のように降り注ぎ、短い滝のような勢いであたり一面をずぶ濡れにしていく。
しかし私が濡れることはない。こうなることを察知した咲夜が何時の間にか傘をさしてくれていたためだ。
「オオ! コレガ、レミリア様ノ……」
コキュートスが驚愕とともに龍を見上げる。
それは蛇のような細長い体に黒い鱗と赤い光のような模様があった。
背中には短いヒレのような翼が1対有り、四肢は3本指の両手だけで足はない。
額からは2本の角が後方へ伸び、口の横からは尖った顎が前方へと飛び出している。
さらに体中から紐のように後ろへ伸びている赤い光。
その姿はユグドラシルのスレにおいて『赤びかりの黒メガレッ○ウザじゃねーか! 任○堂とゲー○リ来ちゃう!!』『もう著作権切れてるよw』『馬鹿野郎、切れてても奴らは来るぞ!!!』等の議論を巻き起こした事がある。
これが私のペットである『メイリン』。
『
使役モンスターの枠を2体分使うがそれだけに強力で、そのレベルは元々90を超え、さらに私のクラススキルでレベル100相当まで強化されている。
ちなみに名前は原作東方Projectでレミリアの館の門番だった
「スバラシイ。流石レミリア様。コレホドノモンスターヲ使役ナサルトハ。」
「フフ、もっと褒めていいのよ?」
私はコキュートスの称賛を聞いて体の一部が熱くなるのを感じた。
それはこの子を使うための超レアアイテムを当てるために回した課金ガチャ、そしてそのせいでリアルのデート代が足りなくなりブチギレた女生徒から刺された部分だ。
(確か最初に刺されたのは左肩だったっけ? それから右脇腹と左太モモ……相手が刃物を扱ったことがないお嬢様だったからギリギリ急所は外れて助かった……いやぁ懐かしいわね。)
そのカッコよさに一目見惚れした私は夢中で回したので一体いくら使ったのか覚えていない。
だが上級市民(ガチ)だった私が一時的に金欠になった事からやばい額が注ぎ込まれたはずで、そういう意味でも私にとってはとても思い出深い存在である。
「久しぶりね、メイリン。」
私の呼びかけ対してメイリンは「ぐるるぅ!!」と鳴きながらゆっくり頭を擦り付けてくる。
くぅ~、カッコかわいいいい!!!
ユグドラシルでもカッコよかったが、こうして現実になると一層カッコよくなって見える。何より大きさからくる迫力が最高だ。
本来なら全長20mのところを課金指輪によって2倍の大きさにしたかいがあったというもの。
さらにさり気なく周囲を窺えば、メイリンを見たブレインとクレマンティーヌは顎が外れるほど大きく口を開いてびっくりしている。
「フフ、私のメイリンに驚いたようね。」
そうそう、それだよ! その反応が見たかった(愉悦)。
2人の反応に私は深い満足感を得る。
実は私がメイリンに装備させているこの指輪は純粋に大きくなるだけで能力値は変わらない。
つまり装備箇所を1箇所潰して被弾面積が大きくなるだけという、実質弱体化するだけの、ほとんど使ってる者がいなかったゴミ指輪だ。
しかし私はユグドラシルの時からずっとこの指輪を装備させたままにしてきた。なぜなら大きなモンスターはカッコイイからだ! そしてそれがこの世界に来てついに証明されたのだ!! ブラボー!!! やはり私は間違っていなかった!!!!(確信)。
「今度ゆっくりと外の空を飛びましょうね。」
私の声にメイリンはぐるるるる~♪と嬉しそうに返事をする。
街の上とか飛ばせても平気かな? とりあえず今度一緒にどこか遊びに行ってみよう。この子ともう一度帝国に行くのも面白そうだ。
それからペットを自慢できて満足した私は休憩を兼ねて食事にすることにした。
せっかく
「ご注文の料理をお持ちしました、ワン。」
「ありがとうペス。」
運ばれてきたエンシェント・フロスト・ドラゴンのステーキは超が3つ付くほど美味しく、私は夢中になって食べ続けた。
ちなみに捕虜の2人は私が視線を向ける度に「ひぃいい!!!」と叫んでガタガタ震えていたが、しかし私のステーキが運ばれてくると涎を垂らしながら見つめ続け、しょうがなく2人の分も用意してやると何も言わずに無心で食いだした。
ちょっとサービスしすぎかと思ったが、しかし武技について得るものがないと分かった以上、恐らくこれがシャバでの最後の食事だ。だからまぁ、ゆっくり味わって食え。
そんな感じで私たちはダラダラしていたが、しかしささやかな休憩は長く続かなかった。
その原因は急に届いたアルベドからの<
『――レミリア様。アウラが離反しました。』
……はっ?
『森の中央の湖で休憩してから帰るとのことだったのですが連絡が取れません。マスターコンソールの表示も白い文字から黒へと変わっております。……つまり離反と考えて間違いないかと。』
私は言われた内容が全く理解できず。しばらく経ってからようやく声を出した。
「はぁああああ!!?」
@次回予告
モモンガ「おい、ここの責任者を出せ。おう、あくすんだよ。」
ザリュース「えっ、いやあの……」
平穏に暮らしてたトカゲ村に突如ガチ切れしたナザリック勢が現れる。
それは黒い巨龍に乗った漆黒の後光を輝かせる死の神に率いられた神話の軍団だった。
果たしてトカゲたちは生き残れるのか?
やめて! ナザリックの総軍(ガチ)で襲われたらトカゲの村が燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでザリュース! 貴方が倒れたら一部ファンに大好評のトカゲックスはどうなっちゃうの?
次回、「トカゲ絶滅」。デュエルスタンバイ!