専業主婦、園城寺怜のプロ麻雀観戦記   作:すごいぞ!すえはら

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第3話 プロ麻雀選手は高級外車がお好き?

「おはよー」

 

 朝9時、自室からリビングに起き出してきた怜は竜華に声をかける。

 昨日は、プロ麻雀の試合を観戦したままソファーで寝てしまったと思っていたが、最終的には寝室で寝ていたようだ。

 

「ときーおはよう」

 

 ダイニングテーブルの上に置いてあった明太ピザの残りを頬張りながら、竜華が返事をしてくれた。

 とりあえず眠いのでソファーに移動して体育座りをしていると、竜華はエスプレッソメーカーでいれたカフェラテをふたつ持ってきてソファー前のローテーブルに置いてから、隣に座った。

 

「サンキューや」

 

 コーヒーをひとくち。

 

 ふたくち。

 

 やっぱ寝起きはコーヒーに限るわあと思いながら怜は口を開いた。

 

「そういえば昨日帰ってきてたんやな?」

 

「んーまあ夜の1時くらいやけど、試合後外で食べてきたから……ピザまだ食べるな?」

 

「うん」

 

 竜華はレンジにピザを放り込んでから、カット野菜を木製の丸皿に盛り付けてローテーブルの上に置いた。

 カット野菜あんまり好きやないんやけどな……

 ドレッシングを塗りつけた紙みたいな味するし…………いや、ドレッシングかけて紙食べたことないけど。

 

「野菜はいらんで」

 

 怜はそう言ってせめてもの抵抗を示すが、竜華は聞こえないフリをして、サラダにフレンチドレッシングをあえてから怜の目の前にスプーンを持っていく。

 

「はい、あーん」

 

「あーん」

 

 諦めて食べることにした。

 あーん拒否すると竜華がこわいから、仕方がない。竜華からスプーンを受け取り怜は自分でサラダを食べ始める。

 

「そういえば、昨日の試合観てたで〜おしかったわあ」

 

「あーあれなー、でもうちでてへんからなあ」

 

 そう言いながら、竜華は明太ピザをローテーブルの上に持ってくる。

 

「ネガるのやめてーや、野依さん凄かったししゃーないやろ」

 

「野依さんのとこより、次鋒うちやと思ってたんやけど、片岡使われたのがなあ」

 

「ビハインドやったからやと思うんやけど、次鋒戦結局失敗やったしそれならなあ……」

 

 あかんやんけ……

 怜は食事を終えると、完全にネガティブモードに入った竜華から話題を逸らすために、今日の予定を振ることにした。

 

「今日は仕事はあるんか?」

 

「いや、完全オフやからないでー、明日は午後から練習いくけどなー」

 

 竜華はダイニングテーブルに牌譜を広げ、二杯目のコーヒーを飲んで、くつろぎモードに入っている。

 

「たまにはドライブでもいく?」

 

 竜華が牌譜から目を離さず、そう尋ねてきたので了解することにする。

 

「ええでー」

 

「どこ行きたい?」

 

 ほとんど家の中に引きこもってるいるため、どこに行きたいのか聞かれて怜は考え込んでしまった。

 

「ドライブできればどこでもええで」

 

「じゃあ海沿いかな」

 

「あと、アオンモールも行きたいわ」

 

「それ買い物でドライブちゃうやんけ!!!」

 

 そう言いながらも竜華は嬉しそうに、服を選び始めた。

 昨日お風呂に入りそびれたので、怜が軽くシャワーを浴びてから出発する流れとなった。

 

 マンションの地下駐車場に行くと、自分の家の車がトヨダの白い車から銀色の車に変わっていた。

 

「なあ、竜華」

 

「んーどうしたん?」

 

「車、色変わってへん?」

 

「あれ? 話してなかったっけ?」

 

 竜華は不思議そうな顔をしていたが、聞いていない。どうやらプロ麻雀選手は妻に内緒で車を買うものらしい。

 もしかしたら、怜がウトウトしていたときに車の話していてスルーした可能性もあるが、そのことに怜が思い到ることはなかった。

 怜は少しばかり腹がたったが、車にあまり興味がなかったので、そのまま助手席の方に向かうと竜華から声をかけられる。

 

「左ハンドルやから、そっち運転席やで」

 

 怜は恥ずかしかったので、いつも見せないような俊敏な動きで反対側に回り座ることにした。

 

「シートベルトしてなー、それじゃあ出発や」

 

 休日にもかかわらず、海沿いの道も大きな混雑はなく快適にドライブを進めることができた。

 

「シートが結構ええ感じやけど、これどこの車なん?」

 

「ベソツやな」

 

「これが、有名なベソツかー」

 

 そう言って、怜が意味もなくシートのボタンをガチャガチャしていると、勝手に助手席のシートが倒れてかなり焦った。

 高級車怖いわあなんてことを思っていると、この車の価格が気になりはじめた。ドイツの外車ということは、高いだろうから、竜華の稼ぎで買って大丈夫なのか不安になる。

 

「どうして、急に車なんで買ったん? これ絶対高いやろ?」

 

「欲しいなーって思ってたのと、買ったというか、この車野依さんから500万で貰ったんよ」

 

 竜華がチーム内で欲しい車の話していたら、野依さんが使っていない車があるから売るという話になったらしい。

 その割には車内の内装は汚れひとつない。

 

「全然新車みたいに見えるんやけど」

 

「去年のモデルやし野依さん、1000km乗ってへんからな」

 

「えっ……それほんまにもったいないやん」

 

「セダン乗る時間があるなら、スポーツカー乗りたいらしい」

 

 竜華の話によると、野依さんは歳を重ねるにつれてやんちゃなスポーツカーよりも落ち着いたセダンに乗りたくなったらしく、ベソツを購入したが、セダンつまらない!!! と怒って手放すことにしたそうだ。

 

 常に怒っているように見えるから、実はセダンに対しては怒ってないのかもしれない。

 そのあたりは謎のままであった。

 

「竜華も野依さんみたいにスーパーカー乗れるくらい活躍できるとええな」

 

「いや、うちはこのくらいでええわランボなんか乗ってたら、目立ちすぎてアオン行けへん」

 

「たしかにそうやな」

 

 この車も、新車だと1500万を超えるので高級車ではあるが、ベソツはそこそこ街中でも走っているので目立たないらしい。

 夏の日差しが強いので、スポーツドリンクで喉を潤してから竜華に問いかける。

 

「そういえば前のトヨダの白い車はどうしたん?」

 

「あれはもう売ったでー、プロ入ったばっかりの時から乗ってるからもう車検やったしな」

 

 昔の白い車にはもう乗れないんだなと怜は思い少し残念に思ったが、こちらの方が乗り心地がだいぶ良いので気持ちを切り替えることにした。

 外行き用の私服と運転用サングラスをしているのもあって、いつもよりだいぶ竜華が大人びて見えた。

 

「プロ麻雀選手ってこんな高い車みんな乗ってるんか?」

 

 そう尋ねると、竜華はハンドルを両手で握りなおして少し考えてから答えた。

 

「人によるけど、好きな人は多いんかな? 最近玄ちゃんもマルティンのヴァンキッシュラン買っとったで」

 

「聞いたことないけど高いんか? それ?」

 

「たぶん4000万くらいやない、イギリスの車やな」

 

 玄ちゃんそんな高い車乗ってるんか!? 

 

 怜はあまりの値段に飲んでいた、スポーツドリンクを吹き出しそうになった。

 玄ちゃんごときで4000万なら宮永咲あたりは、もっと高い車に乗っているに違いないと怜は当たりをつけた。

 

「宮永さんはすごいの乗ってるんか?」

 

「宮永さん? 妹のほう?」

 

「せやせや」

 

「咲ちゃんは他のチームやから、今違うかもしれないけど……たしかトヨダのセンチュリアやな」

 

「宮永さんでも国産車なのに、高級車外車乗りまわす玄ちゃん生意気やな」

 

 そういうと竜華は笑って、たしかにそういう考えもあるなとうなずいていた。

 

「咲ちゃんは方向音痴すぎて運転免許とれへんから、車にほんま興味ないだけやと思うで」

 

 そんなこんなでプロ選手の車談議を竜華としていると、いつのまにかアオンモールに到着していた。

 

「とりあえず車乗ったら疲れたから、モールの喫茶店行きたいで」

 

 怜がそう提案すると、車でなにもしてへんやんけ! という鋭いツッコミを竜華から受けることになった。

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