宮永咲や野依理沙をはじめとして、多くのプロ麻雀選手を輩出した名門中の名門校。常勝の名をほしいままにしている最強の高校が、北九州にある。
新道寺女子高校である。
本誌では、現在は松山フロティーラで先鋒を務める、新道寺OB友清朱里プロへの取材を通して、この夏、インターハイ団体を連覇した同校の栄光の軌跡に迫る。
——友清プロ、ご協力いただきありがとうございます。まずは、インターハイでの新道寺女子の優勝おめでとうございます
『ありがとうございます、新道寺のOBとして誇らしい気持ちでいっぱいです』
——決勝では4万点差をひっくり返し、逆転の新道寺の名に相応しい素晴らしい闘牌で優勝をもぎ取りました。インターハイ準決、決勝と奇跡の逆転を演じた友清プロとしても、心に感じるところがあったんじゃないですか?
『当時の逆転劇は、7万点のビハインドでも、メンバー全員が勝てると思って、麻雀をしていましたから……副将が私でなくても、勝利は揺るがなかったと思います。そうした不屈の精神が、今の新道寺まで息づいているようで、安心しました』
——新道寺は一度優勝を経験してから、大きく力をつけて黄金時代に突入した感もあります
『優勝以来、全国から有望な中学生が新道寺に来てくれるようになってくれました。これまでは九州だけだったスカウト網も全国に伸びて、今年は、九州以外にも東京と長野の後輩が2人、インターハイに出ていたと聞いています』
——新道寺は練習が厳しいと評判ですが、友清プロは入学したばかりの時など、辛くて辞めようと思ったことはありましたか?
『いえ、私が一年生の時新道寺は北九州最強なんて言われてましたけど、九州の中だけでも永水女子(鹿児島)に劣るような評価でしたね。練習もそんなにキツくなくて、比較的ノビノビ麻雀をしていたと思います。』
『麻雀を辞めようと思ったことは、一度もありません』
——流石です、しかし練習時間のことは意外ですね
『当時の平日の練習は学校が終わってから、16時〜20時くらいでしょうか、たしか火曜日が休養日でした。変わったのは宮永さん(現横浜)が入ったあたりですね』
宮永咲は、清澄高校の麻雀部の廃部に伴い新道寺女子に転校。二年生ながらキャプテンを務め、同校をインターハイ団体優勝まで導いた。個人としても、優勝2回準優勝1回と高校麻雀時代から、驚異的な記録を残している。
——宮永プロが転校してきた時の第一印象は?
『第一印象は思っていたよりも、背が小さいなでした(笑)』
——麻雀のほうは?
『園城寺さんと宮永さんのインターハイはもちろん見ていて、とんでもない選手が転校してきたなとは思っていたんですが……』
『テレビで見ているのと、実際に打ってみるのじゃ大違いで……目の前で大人が、保育園児を蹴り飛ばす光景を目の当たりにしたくらいの衝撃を受けました』
——二年生キャプテンというのは反発はなかったのでしょうか?
『当然ありましたね、鶴田先輩(現松山)が当時キャプテンだったのを押し除けて、転校生の一年(当時)がキャプテンはおかしいですし……それで新道寺魂ば見しぇつけなつまらんち思って、鶴田先輩と花田先輩(現恵比寿)と私で半荘を挑みに行ったら、30分で二半荘負けるという記録を達成しました』
——それで、キャプテンに落ち着いたと?
『ええ、先生(監督)も宮永に任せたというし、麻雀に関しては次元が違うしで仕方がないかなと』
『宮永さんがキャプテン、副キャプテンに花田先輩、そしてエース区間の先鋒に鶴田先輩という布陣で、新体制がスタートしました』
当時を懐かしむような友清プロからは、宮永プロへの信頼が感じられた。卒業しても同期、先輩後輩の絆が続くのも強さの秘訣なのかもしれない。
——宮永プロがキャプテンになって変わったことはなんでしょう?
『目標がインターハイ出場からインターハイ優勝になりました』
『それと、練習時間が3倍になりましたね』
——さ、3倍ですか!?
『一見すると不可能に感じるんですけど、新道寺は寮生活なのでやろうと思えばできるんですよ』
友清プロの記憶を辿って再現した、当時の新道寺での一日の時間割が、以下の通りである。
4:50 起床
5:00 練習準備
5:30〜7:30 朝練
8:00 朝食
8:30〜12:00 学校
12:00〜13:00 昼練
13:00〜15:30 学校
16:00〜22:00 全体練習
22:00〜 自主練習
就寝
——凄まじいですね……自主練習の内容は?
『今はここまでやってないと思いますけど、当時は凄かったですね。自主練習は全体練習での反省会が多くて、牌譜読んだりしてる人が多かったです。もちろん、卓を囲むこともありますし……ネット麻雀をしている人もいました』
——だいたい何時くらいまで?
『人によりますけど、だいたい0時くらいまででしょうか。宮永さんは2時くらいまでいることも多かったので、後輩はキツかったでしょうね』
——睡眠時間を考えても無理があるのでは?
『授業中にレギュラー以外、保健室のベッドに行ってはいけないという暗黙の掟がありました』
——なるほど……キツかったですね
『先輩でも後輩でもなく、宮永さんと同級生で本当によかったです』
『麻雀が大好きで入ってきた新入生が練習のキツさに一ヶ月もすると、麻雀牌を見ただけで泣き出すようになったりします。でも、もう一ヶ月頑張ると、麻雀を楽しめるようになるので大丈夫なんです』
『一年生から牌に触れる時間がたくさんあるのも、新道寺の良いところですね、上下関係は厳しくないです、宮永さんが二年生でキャプテンになるくらいなので。どちらかといえば、学年よりも実力重視の空気はありましたね』
——先輩の方が良かったのでは?
『後輩に比較にならないほど上手で、自分より練習するプレイヤーがいるプレッシャーは、筆舌に尽くし難いものがあると思いますよ……花田先輩の口癖が「すばら」なんですけど、副キャプテン就任からインターハイを優勝をするまで、1回も聞くことがなくなりましたね……逆に優勝したら壊れたラジオみたいに、1時間以上繰り返していました』
——優勝した時の感慨は凄かったでしょう?
『宮永さんが泣いているのを見たのは、長い付き合いになりましたけど、その時だけでしたし……私も泣いちゃいました』
——最近では、長時間の練習の効果を疑問視する声もありますが?
『私はそうは思いません、厳しい練習があったからこそ今の私があります。こうしてプロでやらせて貰っているのも、全て新道寺のおかげだと思っています』
『あとは、宮永さんに感謝ですね』
堂々とした態度で友清プロはそう断言した。今期すでに7勝をマークした次期エースの華麗な闘牌の裏に、血の滲むような努力の跡が感じられた。
——今期の目標は?
『まずは10勝! それから、チームから信頼される先鋒になりたいです、友清に任せれば序盤は大丈夫だと、そう言われるようになってみせます』
——頑張ってください、今日はありがとうございました。
『こちらこそありがとうございました、応援のほどよろしくお願いします』
友清プロの語ってくれた新道寺女子の逆転と勝利への執念は、宮永世代がインターハイを去った後も現在まで、脈々と受け継がれていた。
来年、新道寺女子が三連覇を達成するのか、それとも、新道寺の常勝帝国を打ち倒す新鋭が現れるのか。姫松や晩成など古豪の復権はなるのか、高校麻雀から目が離せない。
今年も夏が終わり、また新しい夏に向けて雀士たちは走り続ける。
取材:西田 順子