シーズンも無事終了し、年末年始のオフシーズン、雀士たちにもつかの間の休息が訪れる。
そんなプロ麻雀選手の邸宅に、家事をすることもなくテレビを見続ける一人の女がいた。
コタツで磯辺巻きを喰う者、園城寺怜。
そのひとである。
キッチンでおせち料理作りに勤しむ竜華が片手間に提供するおもちを、コタツに入って食べる。
これが園城寺怜の年末のスタイルだ。
221 名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:tokichan
今年も恵比寿優勝でつまらなかったわ。
230 名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:emij36ji
>> 221
来年は横浜が優勝するで
234 名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:emio4dg
>> 230
勝ち点差−72も来年になれば0になるんだ!
( ・∇・)
怜はタブレットを操作し、どうでもいい話を重ねながら掲示板を巡回する。
そんななか怜は気になる情報を目にした。
250 名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:safag2m8
そろそろクビになった女たちはじまるで
レスに反応して、怜は慌ててテレビのチャンネルを変える。
プロ麻雀戦力外通告、クビになった女たちは年一回放送されるドキュメンタリー番組で、テレビ局と麻雀雑誌WEEKLY麻雀TODAYのタイアップで作られ、丁寧な取材に定評のある長寿番組である。
番組自体かなり面白く、プロ麻雀にあまり興味がない人でも楽しめるつくりに仕上がっている。
怜も毎年とても楽しみにしているが、この番組は年末年始に放送されることが多いため、気を抜くと見逃してしまうことが最大の欠点といえる。
そのため怜は放送前10分前からからそのチャンネルにスタンバイして、磯辺巻きを食べながらはじまる時を心待ちにしていた。
竜華がキッチンから出てきて、コタツにきなこもちをサーブし、キッチンに戻って行ったところで番組は始まった。
20XX年 今年もプロ麻雀界を去る
多くの雀士たちがいた。
栄光と挫折。
今年、佐久フェレッターズから戦力外通告を受けた末原恭子、23歳。
名門姫松高校の大将から、ドラフト5位で佐久フェレッターズに入団。2年目にはプロ初ホールド、全てが順調なように見えた。
『ああっと末原放銃! 瑞原です! きっちりとあわせました!!!』
敗戦選手。二軍落ち。
プロの一軍選手たちの壁は高い。
「末原さんやんけ!!!!!!!!!」
あまりの驚きに怜は、すごい速度でソファーから立ち上がった。
「ときーどうしたん? なんか言ったー?」
シンクで水を使っていたため、竜華には怜の声はよく聞き取れなかったようだ。
怜は末原さんが出ているので、竜華も呼んで一緒に見ようかとも思った。しかし番組が現役選手にはデリケートな内容であるし、高校時代交流のあった末原さんが、クビになったのを知って竜華が悲しみそうなので、黙っていることにした。
「なんでもないでー」
そう大声で返事をすると、テレビをまた見つめる。
——戦力外通告を受けたときの気持ちは?
『実力の世界なんで……覚悟はしていましたけど…………実際に戦力外になると色々なことがフラッシュバックしますよね、それで終わりの方に色々実感がでてきてクビかあ……みたいな』
——受け入れられない?
『そういうのとも違くて……シーズンで来年に向けての課題とかチーム事情だったり……練習したほうが良いこととかあるじゃないですか? それが全部役に立つことはないなと冷静に分析する自分もいましたね』
——努力をできる場が欲しいということでしょうか?
『そうですね、おおむね。トライアウトもあるので、しっかり調整していきたいと思います』
怜は自宅で記者からインタビューを受ける末原さんの声を聞いて、ほんとに本物の末原さんやわあと感心していた。
489 名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:tokichan
末原さん、可哀想やわあ
491 名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:sak3mgd7
>> 489
さすがにさん付けは草
495 名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:ebi6gjw9
>> 491
プロじゃないからねしょうがないね
520 名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:sakmd21n
末原結構期待してたんだけどなあ、プロ入りから一軍早かったし
姫松の大将って考えたらもう1、2年待ったほうがよかったやろ、大将やったことある選手は伸びしろある。
539 名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:emi3mgw5
>> 520
そもそもプロ麻雀、ほとんどアマチュアで先鋒か大将してた人しかいない定期
610名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:sakmd21n
>> 539
グッバイ末原、フォーエバー末原
末原恭子は、姫松高校の大将として愛宕洋榎(現松山)らと共にインターハイ出場、団体ベストベスト8入りの実績を評価され、ドラフト5位、契約金3000万円でプロ入りを果たした。
末原さんの高校時代の映像が流され、宮永咲が一瞬映り掲示板が沸く。
——当時は大学は考えなかった?
『いえ、三年時の成績でプロ指名もあるかなと意識していましたが、それまで大学進学するものだろうと思っていました』
——チームメイトも同じような認識を?
『えーそうですね……洋榎はまあ本人も周囲もプロ入りするだろうと思っていたので、インターハイで結果を意識した面はあるかと思います。他の選手は推薦で大学を本線に置いていたような気がしますね』
——高校時代、愛宕洋榎は別格?
『まあ、そうですね。そういうと本人調子乗るんで言えませんけど(笑)』
通算成績
末原 恭子
ドラフト5位 個人戦最高順位 73位
姫松→ 佐久フェレッターズ
0勝1敗2H
佐久フェレッターズでは、2年目に一軍に昇格、2ホールドをあげたものの、一度の敗戦で二軍降格。その後は一軍出場なしという結果に終わった。
「やっぱプロは厳しいわあ」
850 名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:hea6mg74
ドラフト5位の無能力者のわりにようやっとる。
884名前:名無し:20XX/12/30(金)
ななしの雀士の住民 ID:tokichan
一敗しかさせてあげないのに、プロの厳しさを感じる
秋季キャンプで閑散とした佐久フェレッターズの室内練習場。
そんななかに育成選手たちに混じって、自動卓で黙々と打ち込みを続ける、末原さんの姿があった。
——普段はここで練習を?
『そうですね、今年いっぱいは使っていいということを言われているので……感謝ですね』
「末原さん頑張っているんやなあ……雀団もクビにしても協力してくれとるし」
「頑張ってれば周りもついてくるし、いいことがある」
「きっとそのはずや!」
磯辺巻きを食べ終わり、竜華の作ってくれたきなこもちに食べるおもちを切り替えていきながら、怜は努力の大切さを語る。
——トライアウトに向けて自信はありますか?
『自信というかやるしかないなって気持ちです、どこも怪我してませんし……このままでは終われないですよ』
——どんなところが、強みだと思いますか?
『火力で勝負する選手ではないので……守備力と速度ですね。一軍で闘牌したのもそこなのでアピールしていきたい』
運命のトライアウトに向け、準備を進める末原さん。
後のない戦いがはじまる。