専業主婦、園城寺怜のプロ麻雀観戦記   作:すごいぞ!すえはら

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第57話 専業主婦と惑星最高の先鋒

 恵比寿ウイニングラビッツのエース、花田煌への評価を下す東京地元紙の手のひら返しが激しすぎると、インターネット上で話題になっている。

 開幕から10戦の評価が、以下のとおりである。

 

開幕戦(負け 先鋒−38500)

 

「花田、ウイニングラビッツを破滅させる」

 

第2戦(勝ち負けなし 先鋒−8000)

 

「こんなの花田じゃない」

 

第3戦(勝ち負けなし 先鋒+3900)

 

「花田、小さなボートのような内容」

 

第4戦(勝ち 先鋒+22600)

 

「花田、お目覚め」

 

第5戦(勝ち 先鋒+12600次鋒+26900)

 

「史上最強右腕の復活、エースの帰還」

 

第6戦(負け 先鋒−32600)

 

「(恵比寿ウイニングラビッツのなかで)最も価値のない選手」

 

第7戦(勝ち負けなし 先鋒−18300)

 

「先鋒を務めると試合のどこかに亀裂が入ってしまう」

 

第8戦(勝ち 先鋒+12000)

 

「宝石のような煌が帰ってきた!!!」

 

第9戦(勝ち 先鋒+5200次鋒+13600)

 

「日本車のような花田、今日も安定」

 

第10戦(負け 先鋒−36700)

 

「現金自動預払機が登板」

 

 最強右腕と書いた5日後には、最も価値のない選手と評する凄まじいまでの手のひら返しである。

 花田ちゃんのストロングポイントは、高い対応力とスタミナにある。先鋒、次鋒と調子が良いときには軽々こなしてくれる。安定して結果を残してくれるイニングイーターとして、ファンの評価以上にチームからの評価が高いタイプだ。

 同じようなタイプに佐久の赤土晴絵が挙げられるが、直近の試合内容を見る限り、牌を扱うセンスは、花田ちゃんのほうがあるのかなと怜は思っていた。

 

「次鋒なんて、レギュラーのなかで一番微妙なやつがやるポジションやしなあ。そこ将跨ぎでスキップできたら、そら重宝されるわ」

 

 守護神が固定できているなら、先鋒が将跨ぎしたとき勝ちパターンから切るのは、中堅と副将の二枚だけあればいい。戦力を温存しつつ良い選手を起用できる。先鋒の負担を考えなければ、将跨ぎにはメリットしかない。

 

プロ麻雀トップリーグ

先鋒戦 第2半荘 東3局

恵比寿 花田 煌   118900

松山  友清 朱里  106300

佐久  辻垣内 智葉 97800

神戸  椿野 美幸  77000

 

花田 煌

ドラフト1位  前年個人戦順位 9位

新道寺女子→恵比寿

14勝9敗0H

宝石のような輝きを魅せる恵比寿のエース。堅実な守備と流れを支配する鳴きに定評がある。

 

友清 朱里

ドラフト3位  前年個人戦順位 55位

新道寺女子→松山

11勝15敗0H

怪我に泣いた高校時代を糧に不屈の雀士がついに覚醒。松山飛躍の原動力として存在感を示す。

 

辻垣内 智葉

ドラフト1位  前年個人戦順位 12位

臨海→佐久

10勝17敗0H

赤土晴絵との佐久のダブルエース体制を支える鍛え抜かれた最高純度の玉鋼。

 

椿野 美幸

ドラフト3位  前年個人戦順位 19位

劔谷→神戸

8勝14敗0H

華麗な闘牌と河作りに定評のあるファンに人気の兵庫の生え抜き。エミネンシア先鋒の柱。

 

 

 シーズンも終盤に突入し首位を走る松山に対して、2位恵比寿は勝ち点差6と迫っている。この直接対決でエースの花田煌を起用し、逆転を狙う構えだ。

 松山、恵比寿の熾烈な首位争いに呼応するように、各チームとも今一番信頼できる選手を先鋒に送り込む鬼勝負となった。

 

「この面子のなかでも、花田ちゃんが格上なんやな……すばらですわあ」

 

 怜はソファーに寝転んでいた体を起こしながら、食い入るようにテレビを見つめた。各チームの先鋒エース級の選手が揃う試合内容に、怜のテンションも上がる。いつか見た小鍛治健夜四段活用の試合とは、大違いである。捨て牌の一枚一枚にまで、明確な意志や根拠がかんじられる。

 

ロン! 12000です

 

 椿野さんが辻垣内さんから、跳満直撃を奪い3位に浮上する。

 末原さんは椿野さんに対して怪物級という最上級の評価をしていた。しかし、怜のなかではあまり評価は高くはない。

 怜が迷彩への価値をあまり見出していないからだ。そんなことをするより、速く和了った方がええやろと怜は思っていた。能力者のくせに変なところで、デジタルにかぶれている。

 

【エース対決】プロ麻雀トップリーグ実況34

186名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:tokichan

椿野さんだけ格落ち感ある

迷彩とか意味ないねん

 

191名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:emi6rwa!

>>186

格で友清に負けるのか……

 

205名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:hea6wigj

>>191

そらそうよ

新道寺女子高校は神、新道寺女子高校は神

 

230名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:emi0iazg

椿野の麻雀の魅力は素人さんにはわかりにくいからしゃーない

 

241名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:harmrsan

>>230

牌効率を無視してまで河作りするクソ雀士ですね

 

256名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:emi0iazg

>>241

デジタル脳のくせに頭悪くて草

それで神戸の先鋒務めてるんやで? 名人様かな?

 

270名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:harmrsan

>>256

偶然ですよ

先制リーチの価値を理解できない哀れな雀士は淘汰されなくてはいけません

 

290名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:emi0iazg

>>270

この能力者大正義の現代麻雀の中でデジタル信仰してて草

本当に確率だけで麻雀があるなら、なんで同じ人が勝ち続けるんですかね?

 

308名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:tokichan

なんかレスバトルはじまってて草

迷彩派は絶滅させなあかん

 

320名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:sakrwawg

今年は友清まで出てきて

新道寺女子高校の優勝メンバーの活躍がやばすぎる

でも、今日の同門対決は花田で決まりかな?

 

501名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:harmrsan

牌効率を高めて、先制良形リーチをかけることこれに尽きますね

出和了なんてどうでもいいんです、ツモればいいしダマにしたって大して和了率変わらないんですから 迷彩してる暇があるなら先に聴牌した方がいい

一発もあるし裏ドラものるリーチこそが麻雀最強の役です

 

527名前:名無し:20XX/9/29(日)

ななしの雀士の住民 ID:tokichan

>>501

サンキューウホウホ立直マン

 

 その後オカルト派とデジタル派による不毛な言い争いになってきたので、スレに出現したデジタル立直ゴリラにお礼を言ってから、怜はタブレットを閉じた。

 怜はリーチの扱い方と供託した1000点棒を立てることに関しては、人よりちょっとだけ上手な自信がある。自分と同じ考えのリーチが好きな人に、掲示板で遭遇できて嬉しかった。

 なお、怜の一番好きな役は清一色である。

 高打点を狙える手が入るワクワク感を、怜は大事にしているのだ。

 

 花田ちゃんのチーが入る。四索六索を晒し、間五索を拾ってきた。

 

「ん……なんかこれ……なんで鳴いたんやろか」

 

 花田ちゃんの手牌はあまり良い手牌ではないので、ここで鳴くくらいならオリ気味に面前で行った方が良い。というより、鳴くと役がなくなる。不自然な鳴きだったので、流れが見えたのだろうか。ブラフなのかイマイチよくわからない。

 結局、辻垣内さんが満貫をツモ和了しどんな仕掛けだったのかは謎のまま終わった。

 

「まあええか、花田ちゃん最近こういうのよくあるしな」

 

 前半戦も終わりにさしかかり、花田ちゃんは、エースとしては物足りない成績を残していた。不調の6月には3連敗したこともあった。

 地元紙は、炎上のたび花田ちゃんに痛烈な批判を浴びせた。しかし、シーズン中盤戦に差し掛かると、花田煌本人に活躍をお願いし始めるという新たな戦術を地元紙は披露し、花田ちゃんの成績は回復した。

 

第22戦(負け 先鋒−3900次鋒−23600)

 

「恐怖の花田、出現」

 

第23戦(負け 先鋒−11300)

 

「花田、臆病な闘牌で試合を粉砕」

 

第24戦(負け 先鋒−42300)

 

「謎の存在」

 

第25戦(勝ち負けなし 先鋒+2000次鋒+8300)

 

「頼むからこのままの素晴らしい花田でいてくれ!」

 

第26戦(負け 先鋒−18600)

 

「花田よ、我々の心を弄ぶのがそんなに楽しいのか?」

 

第27戦(勝ち 先鋒+22300)

 

「エース帰還!!!もうどこへも行くな!」

 

第28戦(勝ち 先鋒+5200次鋒+7700)

 

「THE GAME ー支配者ー」

 

第29戦(勝ち 先鋒+20600次鋒+36200)

 

「惑星最高の先鋒」

 

第30戦(勝ち負けなし 先鋒+12000次鋒−1300)

 

「ウイニングラビッツは、花田の好闘牌を無駄にした」

 

第31戦(勝ち 先鋒+42300)

 

「光り輝く」

 

 

 花田ちゃんはシーズン後半は良い内容が続き、地元紙からの評価がとてつもないものになっている。このシーズン後半、首位松山との直接対決を制したら、どんな評価になってしまうのか怜は興味がある。

 

「惑星最高はもう使ったから、銀河系最高の先鋒とか言われるかもしれへんな! ついに宇宙デビューや!」

 

ツモ! 6000オールです!

 

 第2半荘南4局、花田ちゃんの親っ跳が炸裂し先鋒戦は幕を閉じた。終始他家を牽制する丁寧な闘牌を続けた花田煌に、勝利の女神が微笑んだ。

 

プロ麻雀トップリーグ

先鋒戦 終了

恵比寿 花田 煌   130200

松山  友清 朱里  100800

神戸  椿野 美幸  89000

佐久  辻垣内 智葉 80000

 

 先鋒で卓を降りる友清さんに、花田ちゃんが声をかけている様子が映し出される。なにを話しているのかわからないが、先輩後輩がお互いの健闘を称えあっているようにも見えた。

 

「なんかここだけ切り取ってみると、新道寺女子が良い高校に見えるな……」

 

 卒業後も、固い絆で結ばれた大会メンバーってええなあと怜は思った。柄にもなく泉、セーラ、ふなQ、竜華の顔を思い浮かべる。怜は高校時代の思い出に、少しほっこりした気持ちになった。

 

「まあ、千里山も新道寺に負けてへんけどな」

 

 その後、次鋒戦でも花田ちゃんは完璧な闘牌を続けて他家を圧倒した。シーズン最終盤での恵比寿の勝利は大きい。

 翌日の東京駅構内の売店に、花田煌のすばらな一面写真が並んだ。

 

 

第39戦(勝ち 先鋒+30200次鋒+41900)

 

「小鍛治健夜、白築慕と肩を並べるレジェンド」

 

 

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