専業主婦、園城寺怜のプロ麻雀観戦記   作:すごいぞ!すえはら

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第90話 ネット麻雀最強の女とエミネンシア神戸 後編

 

 半荘と半荘の間の休憩時間、通称モグモグタイムが終わり、第二半荘が開始された。

 卓についた各選手に配牌が配られる。

 

プロ麻雀トップリーグ

先鋒戦 第二半荘 東1局

神戸  二条 泉  121,300

恵比寿 花田 煌  114,900

横浜  弘世 菫  92,600

大宮  愛宕 絹恵 71,200

 

「お、第二半荘になっても悪くないやん。いけるで泉!」

 

 泉の配牌を見て、怜はメガホンを叩いて喜んだ。赤が一枚あるし、三色も狙えそうな配牌だ。

 弘世さんの配牌はまあまあだが、花田ちゃんと絹恵ちゃんの配牌は本当に酷い。運の格差社会が卓上に再現されていた。

 それぞれの配牌を見て、このまま素直に進んでいくと、泉が和了しそうだなと怜は思った。

 

ポン!!!

 

 絹恵ちゃんが捨てた二索を花田ちゃんが、無理矢理鳴いていった。泉のツモ番がスキップされて、少し牌の流れが変わったのを怜は感じた。

 

「ま、まあ……そう簡単に勝たせてくれへんよなあ。花田ちゃんやし」

 

 泉を追い抜いて先に聴牌した花田ちゃんに、照準を合わせるように弘世さんが待ちを絞り始める。

 その様子を見て、三宅アナが小鍛治さんに問いかける。

 

『弘世プロは、待ちを狭い方にとりましたね。四筒の単騎にとりましたが、これはどういうことでしょうか?』

 

『絞っているんでしょう』

 

『絞る?』

 

『ええ。弘世さんは、弓に矢をつがえて引き絞るように、他家からの和了を狙ってるんですよ』

 

『となると狙いは、トップの二条選手でしょうか?』

 

『いえ、やはりこの卓では恵比寿の花田プロの力が一枚抜けているので……』

 

 小鍛治さんがそこまで言うと、花田さんが弘世さんの当たり牌である四筒をツモってきて手が止まる。

 花田ちゃんは、5秒ほど手が止まったが聴牌を崩して現物を切り出した。

 

『あ、止まりましたね。良い判断だと思います。さすが花田プロです』

 

534名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi6rwgw

こどおば、ヤバすぎて草

なんでそんなんわかるねん

 

580名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:hea0mgmc

ここで四筒が止まるのも意味不明だし

弘世が寄せていっている相手がわかるのも謎すぎて草

 

621名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:yokrmjzg

【朗報】プロ麻雀、やっぱりすごかった

 

669名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emid6mra

麻雀界のレジェンド小鍛治健夜と

ちばらぎ毒舌行き遅れこどおばネキは別人

 

「この人、ほんまに麻雀のことにかけてはすごいやんな……」

 

 怜は、そうつぶやいて小鍛治さんのことを褒めた。

 タブレットで掲示板を更新しながら、ボーッと眺めていると、テレビから大きな歓声が上がった。

 河に置かれた四筒が画面に映し出される。やっちゃったって顔をしている泉と、不思議そうな顔をしている弘世さん。

 

 大空に煌めく恵比寿の怪鳥を撃ち落とそうと射掛けた矢が、麻雀界のステラーカイギュウこと二条泉さんにブチ当たっていた。

 

「邪魔だイズ二軍行け 燃えるカッスマン

突っ走れ鳴尾浜 勝利を消す女〜♪  ゴーゴー泉、レッツゴー泉♪」

 

 当たり前のように、流れ矢に当たり討ち死する二条泉さんに、精一杯のエールを怜は送った。

 ここまで泉の運が良すぎて、試合前から作っておいた応援歌を歌う機会は、このまま訪れないのではないかと思ったが、杞憂に終わったようだ。

 

「なんで、おまえが振り込むんやwwwwwおかしいやろ!」

 

 点数は横移動だが、この弘世さんの満貫和了で花田ちゃんが一位に躍り出る。

 

プロ麻雀トップリーグ

先鋒戦 第二半荘 東2局

恵比寿 花田 煌  114,900

神戸  二条 泉  113,300

横浜  弘世 菫  100,600

大宮  愛宕 絹恵 71,200

 

「ま、まあ……振り込んでもうたもんはしゃーない。まだ点差もないしな。泉、取り返すんや!」

 

 12000円もした二条の名字の刺繍の入ったチームジャンパー代が勿体無いので、怜は精一杯泉のことを応援する。

 しかし、怜の応援も虚しく泉の手は一向に進まない。先に花田ちゃんのリーチがかかって、あっさりと泉はオリることを選択した。

 

ツモ 1300、2600です

 

 花田ちゃんの元気の良いツモ発声が響く。

 そのツモ和了をきっかけに、泉との点差がどんどん広がっていく。

 

496名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emigk3sl

駄目みたいですね……

 

531名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi3rrav

でも、他の先鋒よりはマシだったからセーフ

 

590名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emirdazg

花田煌、強すぎて草

無理やろ

 

624名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:hea6razg

二条でネガるなや、うちの愛宕妹なんか第2半荘で一度もすこやんに触れられてへんぞ

 

638名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:ebi6a1rmj

>>624

失言対策やぞ

 

「押せや! スジになってるから押せるやろ! なんで押さないんや!」

 

 眉間にシワを寄せながら生まれたての子鹿のような闘牌をする泉に、フラストレーションが溜まっていく。

 

 路肩の水溜りよりも深い寛容な心で、後輩の闘牌を応援していた怜だったが、もう我慢の限界である。

 こっちはジャンパーまで買って、わざわざ応援してあげているのに、何故1度放銃したくらいで、どうしてそんな消極的な闘牌をするのか。

 

「泉、戦う姿勢を見せろや! 気持ちで相手に勝つんや! クソザコが気持ちで負けたらもうなにも残らへんぞ!」

 

 テレビ画面に向かって強く叱咤した怜の言葉も、卓についている泉には届かない。

 

プロ麻雀トップリーグ

先鋒戦 第二半荘 南1局

恵比寿 花田 煌  124,100

神戸  二条 泉  108,000

横浜  弘世 菫  94,000

大宮  愛宕 絹恵 73,900

 

 南入し、これは負けにしてもうたなあと怜が思い始めた時に、神戸側からタイムアウトの申し出がされた。

 

 審判がタイムアウトを告げると、泉は大きく息を吐くような仕草をしてから、背もたれに体を預けた。

 黄昏れるように卓の点数表示を人差し指でなぞる泉の前に、神戸の守護神がゆっくり姿を表した。

 

 それに気づいた泉の体が跳ね、大慌てで席から立ち上がる。

 両足の踵をつけ、つま先を開く。手は両脇に伸ばして軽く顎をひいて直立不動。

 

 表面上こそ笑顔だが、目が全く笑っていない竜華から、色々と指示を受けている。その間、一切身じろぎしない。

 完璧な起立姿勢に、掲示板が慄く。

 

121名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi0mrza

起立するの早すぎて草

 

150名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:yok3rrjg

やばい(確信)

 

191名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:ebi6rwaz

なぜ千里山に人が集まらなくなったのか、すぐにわかる映像

 

209名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emim4d2m

高校麻雀界の闇

 

214名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emim3r6g

千里山出身だけあって、片岡と違って教育がしっかりされてるな(白目)

 

226名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:ebi0rm0a

>>191

なお、新たに台頭してきた新道寺は6月までに新入生の半数以上が寮から脱走する模様

 

240名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi0gegg

普通、試合中に後輩詰めたりするか?

ありえへんやろ

 

269名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi3uwag

白糸台、千里山、新道寺とかいう闇の系譜

 

286名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:hea6rmj6

胃がキュッってなるから辞めてくれ

というかベンチでやれ

 

316名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:ebi6mrwa

加治木「どういう場面でかは言えないが、片手で軽々人を持ち上げていた」

 

336名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi9rmjz

>>316

これすき

 

351名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi6d6rw

>>316

片岡定期

 

 牌譜を持った竜華から色々と言われているのか、泉の顔が青白く変わっていく。

 

 竜華は、今年は後輩に優しくしようと思うと意気込みをシーズン前に語っていたが、意気込みだけだったらしい。

 例年通りのブラック竜華である。

 詰められている様子を見て微笑みを絶やさない、花田ちゃんの様子もなにかがおかしい。

 泉の肩をグッと掴んで激励してから、ベンチに竜華は戻って行った。

 

 姿が見えなくなるまで、気をつけのポーズをとり続ける二条泉さんの顔が、絶望に染まっている。何を言われたのだろうか?

 

「ま、まあ……あの麻雀じゃあ言われることもあるやんな……あんまり気にしなくてええで。こ、これから頑張るんや泉」

 

 先ほどまで自分も罵声を浴びせていたことを忘れて、怜は泉に慰めの言葉をかける。隣人があまりにも怒っていると、かえって冷静になれるというよくある現象である。

 

 タイムアウトが終わり、配牌が配られると泉はこの世の終わりのような顔をした。

 

 五向聴。

 

 泉の最後の親番で、これはあんまりだ。

 手が震えて、配牌を眺めやったまま全く切り出さない泉だったが、意を決したように南を切り出した。

 決して諦めない闘志が、ここにきて泉に戻ってきたようだ。

 竜華に怒られたくない一心で、懸命に闘牌を続ける泉に、麻雀の神様が微笑む。ペンチャンだらけの泉の手牌に、吸い込まれるように有効牌が集まっていく。

 

「泉! いけるで! めっちゃ運ええやん! 押せ押せ!!!」

 

 花田ちゃんの索子の混一色のリーチが先に入ったが、泉は気に留めず全ツッパする。

 震える手で危険牌の三索をノータイムで切って聴牌を維持した泉の闘牌を見て、思わず見直しそうになったが、直接口にすると調子に乗りそうなので本人には黙っておくことにした。

 花田ちゃんの索子の四面待ちと、泉の七萬ペンチャン待ちどちらが、めくり勝つのかその未来を園城寺怜は知っていた。

 

ツモ!!! 6000オール!

 

 純全帯么九、三色。

 豪運を持つものしか許されない跳満和了を一番欲しい場面で決めて、泉は試合を決定づけた。

 南場の途中に、花田ちゃんに追いつかれそうになった場面があったが、流れは変わらない。

 

プロ麻雀トップリーグ

先鋒戦 〜終了〜

神戸  二条 泉  123,700

恵比寿 花田 煌  120,600

横浜  弘世 菫  94,500

大宮  愛宕 絹恵 61,200

 

「ほんまに勝つとは思わへんかったわ……泉いけるやん!」

 

 泉の闘牌に怜は歓声をあげる。ずっと信じて応援をした甲斐があったというものだ。

 その後エミネンシア神戸は、野依理沙→のよりん→荒川憩→清水谷竜華の勝ちパターンで僅かなリードを守り切った。

 

 先鋒の泉に勝ちがつくことで、掲示板の神戸ファンは狂喜乱舞のお祭り騒ぎである。

 

580名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:tokichan

二条泉ちゃん、大勝利や!!!

 

634名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi6rwaz

花田に勝ったでええええええ

二条、おまえがエミネンシア先鋒の柱や!!!!

 

649名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emie4d6g

夢抱きはばたけよ 鋭い和了を魅せてくれ

さあ、君がヒロインだ! 二条泉

 

661名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi6rdzg

>>649

応援歌に偽りなし

 

695名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi0mrza

>>649

これはエース

 

703名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi0mrza

【朗報】ネット麻雀最強の女、やっぱり強かった

 

730名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi3rmjz

第1巡選択選手 

横浜  亦野 誠子 →神

松山  安福 莉子 →中継ぎで活躍

恵比寿 真屋由暉子 →一軍登板なし^^

大宮  原村 和  →大宮の第二先鋒

佐久  高鴨 穏乃 →佐久の守護神

神戸  二条 泉  →神戸先鋒の柱

 

746名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi3m3rn

>>730

一人だけハズレ引いたエビカス哀れやなあ^^

769名前:名無し:20XX/3/25(木)

ななしの雀士の住民 ID:emi0smlz

>>730

恵比寿、ご自慢のエースwwwwww

うちの泉が、強すぎて申し訳ない^^

 

 チームの先鋒初勝利は、誰も期待していなかったドラフト4位の新人から、もたらされることとなった。しかも憎き恵比寿のエース花田煌を撃破し、チームに勝利をもたらしたとあれば値千金である。

 

 花田ちゃんとの競り合いを制した、泉のファンからの評価はストップ高。

 

 せっかくなので、怜も掲示板に宮永咲や小鍛治健夜を超えうる存在と、書き込みをしておいた。

 

 満員の神戸麻雀遊技場。

 その場内に、夢叶えた少女の応援歌が響く。

 

『夢抱きはばたけよ 鋭い和了を見せてくれ! さあ君がヒロインだ! 二条泉〜』

 

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