珠手ちゆは激怒した。必ず、この男を越えなければいけないと決意した。珠手ちゆにはこの男がわからぬ。珠手ちゆはチュチュと呼ばれ、RAISE A SUILEN というバンドのプロデューサー兼DJである。最強の曲を書き、最強のメンバーを集めてきた。けれど他人の考えていることを推し量ることは人一倍苦手であった。
彼の名は音宝条 奏司(おんほうじ そうじ)、チュチュとは親同士が仕事仲間であり、幼少期から面識があった。とは言え顔を合わせたのは七年ぶりほどである。長らく疎遠だった二人がこうして会っているのは、奏司が羽丘の地に引っ越して来たからである。それを聞いたチュチュの母親が近くに住んでいる娘と久しぶりに会ってはどうかと奏司に連絡したからである。この男がチュチュを何故怒らせたのかというとそれは4時間前の出来事である。
チュチュ(Hello!!everyone!!!今日は私達のLIVEに来てくれてthank you!!早速新曲行くわよ!!
引っ越して二日目、まさかこんなところであの幼馴染がライブをしているとは思わなかった。それもキャパもなかなかのものだ。そうそう集められるものではない。
奏司(流石、おばさんとおじさんの子だ...いや...ちゆ自身の力か...
前からおばさん達がすごい人なのは知っていたが、最近音楽の仕事に携わるようになってあの人達の凄さを実感するようになっていた。その両親の存在を感じさせる程のクオリティだ、しかし、親を基準値にして評価されることの重さは僕が一番知ってるはずなのに僕がそんな見方をしてしまうなんて情けない。
レイヤ(じゃあ、次が最後の曲....みんな、暴れていくよ!!
会場の熱気は最高潮に達し終演を迎えた。このバンドの実力を感じさせる素晴らしいライブだった。おばさんにもらったチケットだったので関係者席の様なものだったが後ろで「チュチュはやっぱりいい曲書くなぁ...レイ達にも負けてられないな。私も歯ギターもっと練習しなきゃ」とか言ってたロングヘア―の少女が居たがあの子もちゆの関係者なのだろうか。
そんなことを考えながら挨拶をしにちゆの居るであろう楽屋へ足を運ぶ。
ドアにRAISE A SUILEN様 と書かれた部屋の前へ立つと軽くノックをする。
はーいと元気よく返事が聞こえ、ドアが開き女の子が出てくる。このカラフルな髪色はたしかキーボードの子だ。
パレオ(あれ?見ない顔の方ですね?何のご用でしょうか?
まずい、完全にアポなしだったから怪しまれてしまった。とにかくちゆを出してもらおう。
奏司(珠手ちゆに挨拶に来たんだけど、今大丈夫かな?
パレオ(チュチュ様の関係者の方ですか?少々お待ちくださいー
ドアが閉まりきらない程度に閉じ少女は部屋の中へ消える。30秒ほどするとマイク越し以外では久しぶりに聞いた声がする
チュチュ(men`sなんて今日は呼んでないわよ!質の悪いfanじゃないでしょうね!?
ドアを開け僕の顔を見ると彼女は驚きの表情で硬直した
チュチュ(......オンホウジ.....ソウジ.......!