共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 こちらは番外編です。

 時系列としては、EPISODE2「初めての任務」の前辺りになります。


番外編
或る一日


 リリリリリリリリリ…………

 

 けたたましく鳴り響くアラームの音、喧しいエアスピーダーの駆動音。

 

 瞼の先から差し込む光と忙しなく急かす環境音に促されて、夢の中から現へと帰還する。

 

「朝ですよ、マスター! 起きてください!」

 

「うっ、ん…………アルト…………もう5分、いや10分だ」

 

 むにゃむにゃあ…………

 

 うん、お布団の心地好さは万国共通。遥か彼方の銀河系でも変わらない。

 任務もないし、どうせ大した用事もないんだ。あと少しは寝かせてくれたっていいだろう。

 

「むむむむっ…………」

 

 ゴゾリと寝返りを打って、頭から布団を被り直す。

 うん、最高。

 二度寝、ジャスティス。

 

 なんだか子ライオンのような唸り声が聞こえるが、我が愛弟子アルトのことだ。どうせ可愛く唸ることしかできまい。

 

 ……………………………………

 

 ………………………………

 

 ……………………

 

「マスターっ!!!」

 

「っわぁ!?」

 

 我が弟子史上類を見ない最大級の破壊的なヴォリューム。その壊滅的一撃に晒されて、堪らずにベッドから飛び起きる。

 

「マスター! 今日という今日は定刻通りに起きていただきます! だいたい貴女という人は、いつもぐうたらにも程がある!!」

 

「あっはは…………いやいや、何もそこまで怒らなくたって…………」

 

「マ ス タ ー ?」

 

「ひいっ!? …………ごめんってアルト。わかった、今起きるから」

 

 どこぞの青王じみた生真面目な怒号。それに急かされた私はまるで一兵卒のように、機敏に身支度を整える。

 いやはや、まさか我が弟子がここまで真面目ちゃんだとは。見た目が見た目だけに、サボり魔さんかと思ったら全く違うじゃないか。……いや、コイツもサボるときはサボっていたよなぁ、確か。

 

「全くもう。ほんとにずぼらなんですから、マスターは。もう少し騎士(ナイト)としての自覚を持って下さい!」

 

「仕方ないだろう。多少早起きしたって別に給料が上がる訳じゃないんだ。何もない時ぐらいは昼まで寝かせてくれてもいいだろう」

 

「それにも限度というものがあります! そんなに不摂生な生活を続けていたら、いつか身体を壊しますよマスター!?」

 

「…………本当に真面目だなぁ、君は」

 

 よっ、と…………

 

 ベッドシーツを整えて、寝間着は洗濯籠にボッシュート。適当に顔を洗い流した後は、朝飯でも食うか。確か、パンがまだ余っていた筈。……こうもコルサント生活が長いと、時々故郷の食事(和食)が恋しくなるなぁ。任務先で焼いて食った川魚、美味かったなぁ。まるでヤマメみたいな味でさぁ。

 

「ああそうだ、すまんが紅茶も頼むぞ」

 

「………………」

 

「いやいや! ブランデーは入れなくていいって! まだ朝っぱらだしね!」

 

 ジト目で無言の圧を加えてくるアルト。「まさか、ブランデーを入れろなんて言わないですよね?」という言外の脅迫に負けて、オーダーするのは普通の紅茶。ちぇっ。

 

「…………はいマスター。食べたら訓練に付き合ってもらいますよ」

 

「わかったわかったって。そう慌てない慌てない。何事も余裕を持って優雅たれが肝心だからね。私は後から行くから、君は準備運動でもしていなさい」

 

「はぁい、マスター」

 

 すたすたと私の袂を離れていくアルト。そんなに訓練がしたかったのか。うん、向上心があるのはいいことだ。…………まぁ、私なんかに師事している限りは”ジェダイとして”は大成できないだろうが、やれる分はやっておこう。それが、師としての務めだからね。

 

 

 ………………………………………………

 

 

 …………………………………………

 

 

 ……………………………………

 

 

 ………………………………

 

 

「では、今日は一対多の対ブラスター戦の訓練だ。ソレスは一通り教えたから、そろそろ応用も始めるぞ」

 

「了解です、マスター!」

 

 いつもの道場とは違う、大広間のような訓練室。

 そこに連れられた私は、マスターの真意を理解した。

 

 ───浮遊するドロイドは…………成程。射撃標的か。見たところ、二、四、六…………八体。

 

「では始めるぞ。構えろ、来るぞ」

 

 マスターが、左手に持ったスイッチを押す。

 それと時を同じくして、8体の浮遊ドロイドは低出力の訓練用レーザー弾を撃ち始めた。

 

「はっ、やっ! とぉーう!」

 

 一つ、二つ、三つ。

 迫り来るレーザーを弾き返し、じっくりと反撃の機会を伺う。

 ソレスの真骨頂は弾き返したレーザーをも攻撃に利用して立ち直りを図ることだが、まだまだ未熟な私では弾いたレーザーの方向まで上手くコントロールすることができない。

 だけど、やらなければ上達は見込めない。

 なんとかコントロールできそうな弾は特に集中して、ドロイドの方向に弾くように意識して刃を反らす。

 何度目の挑戦だろうか。…………開始から凡そ10分。漸く弾き返したレーザーがドロイドに当たり、浮遊ドロイドはダウンして床に転がり落ちた。

 

「やった!?」

 

「甘いぞ、アルト」

 

「ぐえっ」

 

 初めての命中───その事実にぬか喜びするのも束の間。背後から放たれたレーザーをまともに浴びた私は全身が痺れて倒れ込んでしまう。

 

「…………まだまだだな。油断しすぎだ。戦場では生き残れんぞ」

 

「ううっ、はい、マスター」

 

 初めて成功して小躍りした挙げ句の大失敗。マスターは怒っているだろうか。

 だけど、見上げた先にある紅の双眸は穏やかで、マスターは優しく私の頭に手を置いた。

 

「だけど、よくやった。この調子だぞ、アルト。次は残心を覚えるように」

 

「───はいっ、マスター!」

 

 痺れが切れ、身体に自由が戻ってくる。

 マスターの言葉は、厳しくもあるがまるで道標のように眩しくて。

 その言葉に励まされて、私は再び剣を構えた。

 

「マスター! 次もお願いします!」

 

「大丈夫かい? 少し休んでもいいんだぞ」

 

「いえ、まだ大丈夫! あの感覚を忘れないうちに、もう一度やりたいんです」

 

「そうか……なら良いだろう。次行くぞアルト。連戦だからって、レベルを落としたりはしないからな」

 

「ええ! では──はぁぁっ!!」

 

 …………………………………………

 

 立ち上がり、再びセーバーを構えたアルトは、ひらりとレーザーを躱しつつ、悪戦苦闘しながら必死にレーザーを弾き返そうとしている。

 いやはや、想像以上の上達だ。うんうん、これも師匠冥利に尽きるというもの。やはり弟子の成長は喜ばしい。

 

 だけど…………クローン戦争まであと一年もない。

 それまでに、何とか無事に生き残れるレベルまでは育てないと。

 

 ────はぁ。

 

 前途多難、とは正にこの事か。この辺りでいいんじゃない? と思うことも幾星霜。だけど、足を止めるなんて許されない。

 

 彼女の為にも、此から死に行く兵士の為にも。

 …………止まる訳にはいかないんだ。




 以上、ニューリーダー様からの「シャルのジェダイ時代の日常」のリクエスト回でした。
 普段の魔術師よろしくぐうたらなシャルっちと、青王じみた健気なキャストリアモドキ、アルトちゃんの日常の一幕です。
 アルトちゃんもメンタル面は原型のキャストリアに近いのですが、マスターに星を見ているのと幾ばくかの青王要素のお陰でLB6のキャストリアよりはだいぶ前向きで真面目な性格しています。彼女自身もサボり魔な一面はありますが、シャルっちが反面教師になっているので鳴りを潜めています。
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