共和国の旗の下に   作:旭日提督

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コルサントへ

「すみませんマスタークワイ=ガン。熱くなりすぎました」

 

「いや、そう謝るな。君がいなければ、私も危ないところだった」

 

 モールを追いかけて、マスタークワイ=ガンと共に彼を退けた私は、ナブーの船に身を寄せていた。

 船を壊されちゃったからね、仕方ない。

 そうしてコルサントに到着した私達は、元老院へ向かうアミダラ議員の一行と別れ、ジェダイ・テンプルに向かっていた。

 

「いえ、お気になさらず。感情に身を任せたのは事実ですし」

 

 私は、ダース・モールと戦っているとき、船……研究成果を破壊された腹いせに、感情に身を任せて戦った。

 …………ジェダイとして、あるまじき暴挙だというのは、理解している。

 ただ、このアウトローなジェダイ・マスターは、必要以上にそれを窘めることはしなかった。

 

「そうか……まぁ理解しているなら良い。ところで、最近君のマスターとは上手くやっているか?」

 

 クワイ=ガンが投げ掛けた何気ない質問。それが、私の胸を抉る。

 

「マスターと、ですか…………ええ、まぁ。程々に」

 

 負い目のある私は、歯切れの悪い言葉しか返すことができない。

 そんな私を訝しんだのか、マスタークワイ=ガンはさらに追及の手を強めた。

 

「……確か、君のマスターは随分血気盛んだったと記憶している。それで何か、あったのか」

 

 彼が指摘したのは、私のマスター、リック・ディアス―――じゃなかった。サイフォ=ディアスが、軍隊創設を唱えるいわゆる"タカ派"だったことだ。

 だけど、それは関係ない。問題なのは―――

 

「いえ、それは問題ではないのです。マスターの意見には、正鵠を射ている部分もあると思いますから。ただ―――」

 

「ただ、どうした?」

 

「…………ヴィジョンを、見たんです」

 

 ヴィジョン。ああ、なんて都合の良い言葉なのだろうか。

 私は、その魔法の言葉で、誤魔化した。

 ある意味では"ヴィジョン"というのは間違いではないのだが。

 

「……マスターが、倒れるヴィジョンか」

 

 無言で頷き、肯定する。

 

「…………未来は、不確定だ。…………だから今は、祈るしかない」

 

「マスターの無事を、ですか」

 

「ああ。ヴィジョンとはいっても、鮮明なものから不鮮明なものまで千差万別だ。鮮明ならばやりようはあるかもしれない。だが、不鮮明ならば、今は時に委ねるしか方法はない」

 

「…………はい、マスター」

 

 ジェダイとて、全知全能には程遠い。マスタークワイ=ガンの言う通りだ。

 幾らジェダイがヴィジョンを通して未来予知ができるとしても、いつ、どこで起こる出来事なのか。それが分からなければ、対策のしようすらない。

 

 ―――確か、クローンウォーズのアソーカは、繰り返しの瞑想で次第に鮮明なヴィジョンを得て、アミダラ議員の暗殺を防いだことがあったと思う。…………だけど、私にはもう、そんな時間も余裕も残されていなかった。

 

 つん、と、胸の片隅を突くような、冷たいフォース。

 

 ―――マスターが、死んだ。

 

 異端児だった彼の隣に、パダワンとして数年間一緒にいた私だからこそ、感じ取れた些細なフォース。

 

 氷柱のような脆いフォースが、刺さっては砕け散った。

 

 ―――これだから、人が死ぬ瞬間っていうのは嫌なんだ。

 

 これから、大勢人が死ぬっていうのに。

 

「どうしたシャルロット? 顔色が悪いぞ」

 

「…………いえ、何でもありません。先を急ぎましょう」

 

 足早に、評議会の議事堂へ向かう。

 今はとにかく、この感情から逃れたかった。

 

 

 ……………………………………………………

 

 …………………………………………

 

 ………………………………

 

 ……………………

 

「見ての通り、二人は無事です。しかし、通商連合が二人を始末しようとしたのも、また事実です」

 

 ジェダイ・テンプルの最上階、5本の聳える尖塔のうちの1本で開催される最高評議会。その議事堂に、私は足を踏み入れていた。

 

 マスターウィンドゥから命じられた探索任務の成果を報告した私は、マスタークワイ=ガンに発言の場を譲る。

 

 議題は、主にシスの復活について、そして、マスタークワイ=ガンが連れてきた類希な才能を秘めたフォース・センシティブの少年―――アナキン・スカイウォーカーをオーダーの一員とするか否かについてだ。

 この辺りの流れは、原作と変わらない。つまり、結論も変わらなかった。唯一違う点があるとすれば、シスの復活について、私も発言を求められた点ぐらいか。

 それも、言うことなんて何もない。せいぜい"暗黒面の力を感じた"と言っておいて、マスタークワイ=ガンの援護射撃をするぐらいだ。

 

 そうして評議会から解放された私は、マスタークワイ=ガンが連れてきた少年、アナキンに声を掛けた。

 

「…………こんにちは、少年。オーダーの空気はどうだったかな?」

 

 初めて、アナキンに声を掛ける。

 何やかんやで船の中では、マスタークワイ=ガンやオビ=ワンとの話し合いに、R3の整備やらに時間を取られて、彼と交流する機会はなかったのだ。

 

 ―――それにしても。こんな可愛い少年が、未来にはあの悪のカリスマ、ダース・ヴェイダーになるなんて、俄には信じ難いことだ。何かの冗談ではないかとすら思えてしまう。

 

「……なんともいえないです。来たばかりだし」

 

 少年らしい、澄んだ声。

 その瞳には、不安と緊張が浮かんでいるように見えた。

 

「そうか。…………まぁ、そう構えないでくれ。まだ君がジェダイになるかどうか、決まった訳じゃない。このあとは検査があるから、それまでは寛いでいるといい…………といっても、オーダーで娯楽なんてないか。どうだ? 私の部屋にでも来てみる?」

 

「ええっ…………?」

 

 アナキンは機械弄りが大好きだし、私の部屋も、そういったものがわんさかと転がっている。検査の予定時刻まではあと1時間ほどあるから、いい暇潰しにでもなれば―――と思っての提案だった。

 

 …………のだけれど。

 

「わあっ、凄いよ、Rシリーズの最新パーツだ!」

 

「これは…………ライトセーバー? でも何だか普通のやつとは違うような」

 

 ブォン(迸る赤い光刀)

 

「あっ、ちょっと待て、それは試作人工カイバークリスタルのテスト品…………!」

 

「へぇ、このR3ユニット、特注の改造品かぁ……なんだ、この部品?」

 

「##З&♪ 〇!?」

 

「えっと…………このスイッチは?」

 

《緊急プロトコル始動。30秒後に当施設は自爆します。カウントダウン開始。29、28……》

 

「あ"あ"あ"っ!! それは緊急用の自爆スイッチ! やばいやばいって…………!」

 

 ―――甘かった。

 

 甘く見すぎていた、子供の好奇心というやつを。

 軽い気持ちで私のラボを紹介したはいいものの、お陰でラボは大混乱。めちゃくちゃだ。

 

 幸いにも、自爆だけ食い止められたのは僥倖だった。

 

 このあと彼を検査へと連れていった私は、マスタークワイ=ガンはともかく、オビ=ワンにはこってりと絞られました。

 一応ナイトの私の方が格上だけど、年は彼の方が上だからねぇ…………あははは…………

 




ここの主人公はマッド仕様です。某技師長といい勝負です。
(なお容姿は白髪赤眼の沖田さんモドキ)
次回か次々回辺りにはヒロインを出せたらいいなぁ。
モデルとデザインは既に決めてあります。セ◯バー成分を強めていきますよ。

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