共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 救国軍事会議の危機!

 新たなる帝国の超兵器が、惑星カリダに狙いを定めている!
 帰還した哨戒艦からの情報で帝国の狙いを悟った救国軍事会議議長シャルロット・フォン・ブリュッヒャー上級大将は、アルト・エーベルヴァイン代将麾下の第3艦隊の一部に出撃を命じた。
 イオン乱流吹き荒れる航行危険地帯であるリンガリ星雲まで進出したエーベルヴァイン分艦隊は、遂に帝国軍の姿を捉える。


リンガリ星雲の戦い

~コロニーズ カリダ星系 インペレーター級艦 “リットリオ ”~

 

「…………何? 帝国軍が」

 

 通信士官からの報告を耳にしたブリュッヒャー上級大将は、怪訝な声を上げながら振り向いた。

 

「はい。帰還した〈ブラクサント・ブレイヴ〉の航海記録に残されていたデータを解析した結果です。間違いないかと」

 

 念押しとばかりに、件の通信士官は付け加える。

 今から1時間ほど前に、艦体の後ろ半分を喪った状態で帰還し艦内電源の全てが途絶えていたドレッドノート級重クルーザー〈ブラクサント・ブレイヴ〉の存在は、瞬く間に救国軍事会議首脳陣の話題を呼んだ。

 哨戒任務に就いていた本艦の異常は即ち、敵───銀河帝国軍の襲来を意味していたからである。

 

 更に同艦が持ち帰った情報を分析してみたところ、加えて不可解な点が一つ浮かび上がってきた。

 

「連結されたインペレーター級艦、か…………まさか、これが既に実用化されていたとはな…………」

 

 艦のレーダー上においては、単に2隻のインペリアル級スター・デストロイヤーとして識別されていたそれは、その実横に繋がれた一隻の双頭のスター・デストロイヤーであったのだ。

 〈ブラクサント・ブレイヴ〉の光学センサーが捉えた僅かな映像からその事実を割り出したはいいものの、その報告を受けたブリュッヒャー上級大将は思わず頭を抱え込んだ。

 

 ───スーパーレーザーを破壊したばかりだってのに、更なる惑星破壊兵器の投入だって!? 聞いてないぞ、こんなの…………

 

 そう。彼女には、件のスター・デストロイヤーについて一つだけ思い当たる節があったのだ。

 

 ───ジェミニ級スター・デストロイヤー。

 

 帝国軍が密かに建造を進めていた、惑星破壊艦の一つである。

 インペリアル級を横に2隻連結し、その中央に巨大な主砲を配置した姿は些か不恰好ながらも威圧感は凄まじく、実際に長時間主砲を惑星に向けて照射していれば天体の破壊すらも可能とされていた。

 統合作戦本部長の権限でこの計画艦の存在を朧気ながらも認知していた彼女は、既にそれが実戦投入されているという事実に思わず戦慄し、改めて帝国の技術力とパルパティーンの執念深さを思い知ったのである。

 

「敵の現在地は何処だ」

 

「ハッ! リンガリ星雲の付近にて遊弋しているとの報告です」

 

「リンガリ星雲、か……あそこは確か、乱流の吹き荒れる航行の難所だったな。何を考えている───」

 

 敵艦隊の現在位置からその意図を察知できず、彼女は無意識のうちに顎に手を当てて思案に耽る。

 惑星破壊を目的とするならば、寧ろ拠点であるカリダの付近まで進出しなければ不自然だ。自軍を集結させ態勢を整えるにしても、リンガリ星雲という地形は決してそれに向いた地理条件とはいえない。

 

「さて、何を考えているのやら…………」

 

「閣下。如何なさいますか」

 

 思考の海に沈むシャルロットを催促するかのように、参謀長であるミーバー・ガスコン宇宙軍准将の声が響く。

 小さな身体ながらよく響く声だと彼女は一瞬の感心を覚えながら、軍事指導者として必要な判断を演算した。

 

「現状、即応状態にある艦隊は誰の部隊だ?」

 

「はっ。エーベルヴァイン代将の分艦隊は既に補給と修理を終え、出撃の準備を整えております」

 

「よろしい。ならば彼女に出陣を命じる。確実に敵の惑星破壊兵器を撃滅せよ、とな。その間に我々はリシ・メイズへ向かう準備を進めるぞ。どうやら此処も、じきに安全では無くなるだろうからな」

 

「はっ!」

 

 

 

 ………………………………………………………

 

 

 …………………………………………………

 

 

 ……………………………………………

 

 

 ………………………………………

 

 

~コア・ワールド ボーメア宙域 リンガリ星雲 アクラメーターⅡ級艦 “イストリア ”~

 

「敵艦隊発見! インペリアル級2、アークワイテンズ級7、サウザーン級1を確認! その他、護衛のコルベットクラスの艦影を12隻確認!! 艦種不明のデストロイヤー級主力艦の姿も2隻捕捉しております」

 

「データを更新して。敵は新型艦の筈です」

 

「ハッ!」

 

 ブリュッヒャー上級大将の命令に従ってリンガリ星雲に進出した銀河共和国軍第3艦隊エーベルヴァイン分艦隊は、数時間に渡る索敵を経て遂に星雲内に身を隠す敵艦隊の姿を捉えた。

 分艦隊司令エーベルヴァイン代将の指示に従って、識別画面のホログラムに投影されていた敵艦の情報がロードされると共に切り替わる。

 

「艦種、再識別。敵はジェミニ級スター・デストロイヤー1隻を含む攻撃部隊です!」

 

「敵未確認艦の識別完了。敵、不明デストロイヤー級はプロカーセイター級と判明。新鋭艦です!」

 

 2隻のインペリアル級スター・デストロイヤーとして識別されていた艦影は、その実それを二つ横に繋ぎ、中央に巨大な主砲を備えた特異な艦影の1隻の主力艦だ。別名ツイン・スター・デストロイヤーという名が示す通りの形状のそれを、アルトは力強く睨む。

 

 更に敵艦隊の主力艦には1200m級のプロカーセイター級スター・デストロイヤーの姿までもが含まれており、共和国軍艦隊に緊張が走る。

 このクラスはインペリアル級をそのまま縮小したような艦容が特徴なのだが、それでもヴェネター級を上回る巨躯を誇る大型艦だ。その分、堅牢な装甲と高い火力を併せ持っている。

 それに加えてエーベルヴァイン分艦隊の主力艦には対艦攻撃力に乏しいアクラメーターⅠ級艦が複数含まれており、深刻な打撃力の不足が懸念された。

 

「敵艦に主砲を撃たせるな。全艦、散開陣形を取りつつ有効射程内まで接近します。機関、最大戦速!」

 

「了解。機関、最大」

 

 しかし、エーベルヴァイン代将は躊躇無く自艦隊を突撃させた。

 代将の命令を受けたアグラヴェイン艦長の号令とともに、〈イストリア〉の艦尾底部に備えられた2機の大型イオン・エンジンが勇壮な轟音を響かせながらその巨体を徐々に押し出していく。

 

「!? っ……」

 

 直後、レーダー員が僅かに眉を顰めスコープ画面を凝視した。

 その挙動を視界の片隅に捉えたエーベルヴァイン代将は、彼にその意図を問う。

 

「どうかしましたか?」

 

「ハッ…………左舷前方、10時の方角より新たな敵艦隊の反応です!!」

 

「敵艦隊の編成は?」

 

「現在、解析中になります」

 

 アナクセスの戦いで受けた傷から未だに回復しきっていないエーベルヴァイン分艦隊の編成は、万全とは言い難いのが実情だ。そんな中で、更なる敵艦隊の増援など悪夢にも等しい。

 しかし代将は臆すること無く、貪欲に敵に関する情報を求めた。

 

「解析結果、出ました! どうやら敵艦隊は、ドレッドノート級重クルーザーとランサー級フリゲート、サウザーン級軽クルーザーを中核とする軽快部隊のようです。敵艦隊の総数、35隻!」

 

「巡航艦隊か…………参謀長、〈オーロラ〉に通信を」

 

「御意」

 

 代将は腹心であるパウアン種族の男性将校、ポーチュン宇宙軍中佐に命じて隷下の一隻の巡航艦に通信を繋いだ。

 

 程なくしてホログラムに現れたのは、未だあどけなさを残した軍服に身を包んだ低身の少女の姿。

 つい先日、エーベルヴァイン代将の一計により大尉の階級に任ぜられたアナクセス軍事大学校唯一の生存者、メリュジーヌ宇宙軍大尉であった。

 ただ一人の生き残りというだけに心理的な外傷をアルトは懸念していたのだが、その熱意に押されて自身の配下に据え置いたまではいい。だが彼女は、本当に戦場へ連れてきてよかったのだろうか。そんな懸念が、メリュジーヌの姿を目にする度に自身の心の中を駆け巡るのをアルトはひしひしと感じていた。

 

「───お呼びですか? 代将閣下」

 

 ホログラムに表示されたその姿を見て、抱いた懸念が肥大化する。

 だが、私情に囚われて彼女を箱娘にしてしまうことこそ、彼女の決意に対する非礼ではないのか。

 聞けば彼女は、アナクセス軍事大学校では首位の成績にあったと聞く。

 ならば、自らのマスターであればどう決断したのだろうか。

 

 そんな考えを胸中に抱きつつ、アルトは彼女に一つの任務を与えることにした。

 

「はい。貴女の戦隊には敵の巡航艦隊の撃破を命じます。その力、見せていただきますよ、メリュジーヌ大尉」

 

「ハッ!! 瞬きの間に終わらせてみせましょう。どうかご覧あれ、代将閣下」

 

 精悍な眼光を滾らせ機敏な敬礼を披露した彼女は、凛と澄んだ声でアルトの命令に返答する。

 その様を目にしたエーベルヴァイン代将は、彼女が気負いしすぎているのではないかという自身の心配はどうやら杞憂であったと確信した。

 

 自身の分艦隊から離れゆく1隻のサウザーン級クルーザーと9隻のドレッドノート改級重クルーザー、2隻のヴィンディケーター級重クルーザーの姿を見守る彼女の胸の内には、自らが命じたにも関わらず未だにメリュジーヌの身を案じる声が渦巻いていた。

 

「───左翼の敵は、彼女に任せましょう。ポーチュン参謀長、本艦を含めた主力艦は、全力で敵旗艦を攻撃します。付近の敵クルーザーへの対処は、第28巡航艦戦隊のトリスタン少佐に一任してください」

 

「了解です」

 

 旗艦〈イストリア〉周囲に展開していたドレッドノート級艦1隻、サウザーン級艦4隻、アークワイテンズ級艦1隻を中核とする小艦隊が、部隊の前面に躍り出る。

 接近する敵小型艦を迎撃するとともに、帝国軍の巡航艦を排除するためだ。

 既に足の速い両軍のカンサラー級クルーザーとCR90コルベットの部隊は牽制を兼ねてレーザーの応酬を開始しており、巡航艦部隊もそれに続く。

 

「しかし、妙ですな」

 

「何か気にかかる点でも? ポーチュン参謀長」

 

 戦況分析を進めていたポーチュン中佐が、その手を止めて顎に置く。

 

「敵の旗艦───ジェミニ級にまるで動きがない。一体、何を企んでいるのやら」

 

「話によれば、あれは惑星破壊兵器だというではないか。ならば、我等の支配下にある星を砕くためにエネルギーのチャージ中と考えるべきでは」

 

 そこで自らの推論を披露したのは、旗艦イストリアの艦長を務めるアグラヴェイン宇宙軍中佐だ。

 彼は事前に推定された状況から、敵が惑星破壊兵器の充電中ではないかと指摘する。

 

「わたしも、アグラヴェイン艦長と同意見です。敵の狙いが何であれ、惑星破壊兵器は優先的に叩かなければなりません」

 

 艦隊を預かるエーベルヴァイン代将も、彼の推測に同調した。

 凛とした佇まいを崩すことなく断言した彼女は、眼前の敵艦隊を凝視したまま次なる指示を下す。

 

「先ずはその障害となる両舷のプロカーセイター級を排除します。〈エンフォーサ・ワン〉と〈デファイアント〉は本艦に続き、右舷目標Aを攻撃。〈サンダーリ〉は左舷目標Bを排除! 然る後に、敵旗艦に総攻撃を掛けます」

 

「了解!」

 

 エーベルヴァイン代将率いる本隊は、二つに別れてそれぞれ梯形陣を取りながら前進する。

 火力に欠けるアクラメーター級は一纏めに運用することで、その不足を補おうという算段だ。

 

「敵艦隊、射程に入った!」

 

「撃て!!」

 

 ───直後、両軍の主力艦から青と緑に輝くエネルギーの槍が無数に飛び出す。

 

 それは戦いの開始を告げる、狼煙代わりの号砲だった。

 

 

~サウザーン級巡航艦 “オーロラ ”~

 

「旗艦イストリアより発光信号! ポイントB2通過、全艦戦闘用意を取りつつ散開陣形!!」

 

「───来たね。巡航艦オーロラ抜錨! メリュジーヌ分艦隊、出るぞ!!」

 

「Sir,Yes sir!」

 

 時はやや巻き戻る。

 星雲内に現れた敵艦隊を捕捉したエーベルヴァイン代将麾下の銀河共和国軍第3艦隊は、これを迎撃するべく最大戦速にて肉薄を図った。

 その例に漏れず彼女の麾下にあるメリュジーヌ分艦隊所属の巡航艦戦隊も、代将直率の本隊に追随すべくそれぞれのイオン・エンジンの炉に火を入れた。

 

 更に現れた敵巡航艦部隊の迎撃をエーベルヴァイン代将直々に命じられたメリュジーヌは、これを撃破するべく艦隊を転進させる。

 重巡航艦を中核とした優勢な敵艦隊を前にしても、分艦隊を率いる若き大将は毅然とした佇まいを崩さずに腕を組ながら迫り来る敵艦隊を睨んだ。

 

「ドレッドノートを前に出せ! 主砲エネルギー充填しつつ前進!」

 

「敵艦隊より複数の小型エネルギー反応確認! ファイター隊です!」

 

 メリュジーヌ分艦隊と相対する敵艦隊は、ドレッドノート級艦とサウザーン級艦からVウィングとYウィング・スターファイターの編隊を繰り出す。その編成から、敵が対艦攻撃を意図していることは明らかだ。

 

「陣形そのまま、敵キャラック級を優先的に狙え」

 

「キャラック級ですか? アレは火力の低いい防空艦です。脅威度は低いでしょう。それよりも、此方もファイター隊を出撃させ迎撃するべきでは」

 

「いや、このままでいい。最大射程に入り次第、全力でキャラック級を沈めて」

 

 キャラック級軽クルーザーは、高速で一撃離脱戦法や対ファイター戦において有用な艦種として知られている350m級のクルーザーだ。しかし、敵艦隊を構成する艦種の中では火力に乏しく、比較的脅威度は低いと言える。

 そのキャラック級を優先的に撃破しろという彼女の意図を掴みかねたのか、新たに副官として配属されたクローンの軍曹は敵に応じてファイターを出すように進言した。

 

「ハッ! 照準、敵キャラック級に向けます」

 

 だが、彼女は命令を変更せず引き続きキャラック級を狙うように指示する。

 

「敵艦隊、射程に入った!」

 

撃て(Feuer)ッ!!」

 

 指揮台の壇上に立つメリュジーヌが、振りかざしたその右手を機敏と垂直に振り下ろす。直後、ドレッドノート改級のDBY-899連装重ターボレーザーとサウザーン級の艦首軸線重レーザー砲塔が一斉に火を吹いた。

 メリュジーヌ分艦隊から繰り出された蒼白のレーザーの槍は幾らかの敵ファイターを貫いて、敵艦隊に殺到する。

 彼女の艦隊の集中砲火を受けたキャラック級はその小さな艦体では膨大な破壊力を秘めた対艦重レーザーのエネルギーを受け止めきれず、火達磨になりながら爆沈する。

 

「敵クルーザー、3隻撃沈!」

 

「第二射用意! すかさず撃て!!」

 

 間髪入れずに、メリュジーヌ分艦隊から次なるレーザーの雨が繰り出される。

 帝国軍艦隊もここは負けじと撃ち返したいところではあったのだが、ある事情から満足に反撃できずにいた。

 

「成程。敵ファイター隊を盾にした訳ですな」

 

「まあね。これで暫くの間は、敵は同士討ちを恐れてこっちにまともに反撃できない。その隙を突くよ」

 

「了解です。いやいや、お若いのに良く思い付きましたね」

 

「こんなもの、造作もないさ。さて、大口叩いた以上は一気呵成に畳み掛けるよ。キャラックは粗方排除したから、此方もファイター隊を出す。爆撃隊には敵艦隊左翼を狙わせて。艦隊の照準は敵右翼のドレッドノート級に変更だ」

 

「イエッサー!」

 

 帝国軍が痛打を浴びせられて怯んでいる隙に、メリュジーヌは艦隊の陣形転換を完了させた。

 サイナー・フリート・システムズ社が手掛けた最新鋭の巡航艦であるヴィンディケーター級重クルーザー、〈オード・セクタス〉〈レダⅡ〉の2隻を先頭に立てつつ、その後方からドレッドノート改級艦の戦隊とサウザーン級艦〈オーロラ〉が長射程を生かして敵に遠距離砲戦を強要する陣形だ。

 

 今しがた慌ただしく各艦のデッキを蹴って発進したVウィングとARC-170の編隊は敵ファイター隊残余との格闘戦に回り、BTL-B Yウィング・スターファイターは敵艦隊の半数を拘束するべく飛行する。

 防空艦のキャラック級が優先的に排除されたことでYウィング隊を阻む障害は半減したも同然であり、彼等は比較的簡単に帝国軍艦隊の上空を支配することができた。

 

「帝国艦隊発砲! 巡航艦〈レダⅡ〉並びにドレッドノート級艦〈ホノーグル〉〈ビルブリンギⅢ〉に被弾! なれど戦闘航行に支障無し!」

 

「怯むな! 撃ち返せ、Feuer!!」

 

 皮肉にも自らのファイター隊が無力化されたことで、漸く帝国軍艦隊は組織的な反撃に打って出た。

 未だに数の上で有利に立っている帝国軍艦隊の砲撃はメリュジーヌ分艦隊の先鋒を務める重クルーザー群の正面を痛打したが、未だ決定打には至っていない。

 その隙を突いて、メリュジーヌは更なる戦果の拡大を図り追撃戦を指示した。

 

「敵重クルーザー、2隻撃沈!」

 

「巡航艦〈オード・セクタス〉シールド消失、大破です!」

 

「損傷艦を後退させろ。重クルーザーを並べて陣形に抜けを作るな! 全艦、艦首シールドの出力を最大にして。手痛いのが来るぞ……!」

 

「ハッ!」

 

 最前列を務めていた巡航艦の一隻が、被害担当艦となって戦列から離れる。

 帝国軍はその陣形の崩れを突かんと猛烈な砲撃を加えるが、彼等の動きを読んでいたメリュジーヌは一時的に砲撃の手を緩め、全ての機関出力をシールドに回すように指示する。

 その甲斐もあって、彼女の分艦隊は最低限の損害てこの猛攻を凌ぎきった。

 

「反転攻勢だ! 全砲塔、斉射!! 目標、敵艦隊グリッドβ!」

 

「イエッサー! 全ターボレーザー、目標帝国軍クルーザー。撃て!!」

 

 仕返しとばかりに、メリュジーヌ分艦隊の重巡航艦から一斉に重ターボレーザーの嵐が解き放たれる。

 一点集中砲火により一気に損害が蓄積した帝国軍クルーザーのうち何隻かは、シールドが抜かれ表面装甲を貫かれる。そうした不幸な帝国軍艦の数は6隻にも及び、両軍の戦力差は一気に縮まる。

 

「敵、ドレッドノート級1隻並びにサウザーン級4、コルベット1隻の撃沈を確認!」

 

「追撃する。攻勢の手を緩めるな!」

 

 戦場のイニシアティブを握りつつあることを自覚したメリュジーヌは、そのペースを敵に奪われまいと攻勢を続ける。

 帝国軍艦隊は未だに充分な戦力を残してはいるものの、眼前の共和国軍艦隊とスターファイター隊の対応に二分されて雁字搦めの様相を呈していた。

 

 

 ………………………………………………………

 

 

 …………………………………………………

 

 

 ……………………………………………

 

 

 ………………………………………

 

 

 

~銀河帝国軍 ジェミニ級スター・デストロイヤー ~

 

 一方、ここはエーベルヴァイン代将率いる銀河共和国軍艦隊と相対する帝国軍艦隊旗艦のブリッジ。

 そこには、自軍の戦況を虚ろな瞳で眺めながら佇む一人の小柄な少女の姿があった。

 義手となった右手を労りながら、黒い独特な装甲服に身を包んだ彼女はぎしぎしと歯を食い縛る。

 

「───っ、こんのッ!?」

 

 直後、空を裂く風斬り音とともに赤い閃光がブリッジを飛び交い、その場にいた哀れな機械が切り刻まれる。

 

「どうされましたか、尋問官殿───」

 

「うるさい、ッ!!」

 

 ブォンッ、と。閃光が薙ぎ払われる。

 彼女になにかを進言しにきたであろう黒いクローン・トルーパーの首は、ボトリと呆気なく床に転がり落ちた。

 

「────はぁ、はぁ、っ…………"兵器"のチャージは?」

 

「ハッ! 現在69%です」

 

「このウスノロ。さっさとすすめて!」

 

「は、ハッ……!」

 

 少女に問い詰められた女性士官が、額に汗を滲ませながら報告する。

 いつ少女の癇癪が自分に飛んで来るものかとヒヤヒヤしていた彼女は、報告を聞いた少女がその金髪を靡かせながら踵を返しブリッジを去ったことで、ホッと安堵の溜め息を吐いた。

 

 ───ちっ。本当。どいつもこいつも使えない奴……!! 

 

 カツカツと足早にリノリウムの床を強く鳴らしながら、少女は自身の部下と現在の状況への悪態を吐露する。

 

「まぁ、いいか。どうせみんな死ぬんだもん」

 

 プシュー、と。盛大に蒸気を吐きながら鎮座する不格好で巨大な機械。

 まるで玉座にも似たそれに腰掛けた少女の姿は憎悪に染まった金色の双眸を除けば、皮肉なことに帝国軍が相対するアルト・エーベルヴァイン共和国宇宙軍代将その人と言えるほど瓜二つだった。

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