その核心を成す主砲、ハイパー・キャノンの砲撃を受けたアルト率いる艦隊は、旗艦〈イストリア〉が中破し幾らかの主力艦を喪うなど大打撃を被った。
だがその一撃で敵超兵器の弱点を悟ったアルトは、新たな攻撃計画を策定していた………
~コア・ワールド ボーメア宙域 リンガリ星雲 ジェミニ級スター・デストロイヤー “スターブレイカーⅠ ”~
帝国軍が誇る最新鋭の超兵器、ジェミニ級スター・デストロイヤー。
又の名をツイン・スター・デストロイヤーとしても知られるこの艦級は、惑星破壊兵器であるハイパー・キャノンの運搬を専らその任務としている。
彼女が搭載するハイパー・キャノンは、ジェダイのライトセイバーの素材として知られるカイバー・クリスタルを動力源とする新型超兵器であり、出力次第では一撃で平均的なサイズの地殻惑星を粉砕可能であるという研究結果が示されていた。
帝国はこの超兵器が持つ破壊力に着目し、機動要塞用の超大型モデルと艦載用の小型モデルをそれぞれ開発。その小型モデルの搭載実験艦とされたのが、リンガリ星雲に派遣されたこの一番艦、〈スターブレイカーⅠ〉であった。
その名が示す通り惑星を砕くことのみを使命としたこの艦は、インペリアル級を2隻繋いだ威圧的な艦容とは裏腹に戦艦としての性能は決して高くない。
艦の出力の大半が艦体中央部に設置されたハイパー・キャノンに供給されている関係上、インペリアル級本来の豊富な対艦兵装はいわば宝の持ち腐れとなっていたのだ。
したがってこの艦はその図体からは些か物足りない散発的な砲撃しか繰り出すことができず、事実、格下もいいところのアクラメーター級相手に苦戦していたのである。
超兵器、ハイパー・キャノンの発射により一時的に敵艦隊に大打撃を与えたはいいものの、その一撃で敵艦隊の旗艦〈イストリア〉を破壊できなかったことが原因か、指揮官席に立つ黒い装甲服を着込んだ司令官らしき小柄な少女は眉間に深い皺を寄せたまま、眼前の宙域を睨んで歯噛みする。
彼女が睨むその先には、一面に広がる青白いガス雲が漂う雲海がどこまでも続く。
ふと、星間ガスの一角がゆらり、と陽炎のように揺らめいた。
幻想的に輝くエメラルド色の雲海の向こうから、朧気にその姿を露にする艦容───その数、4隻。
先程彼女が仕留め損ねた、銀河共和国軍第3艦隊エーベルヴァイン分艦隊の残党だ。
「敵艦隊、再捕捉!! アクラメーター級3、カンドシイ級1隻を確認!」
「…………最大戦力で挑んできたな。ハイパー・キャノンのチャージを急げ!!」
「ですが、敵の巡航艦隊がそのままです。如何致しますか、閣下」
「放っといて、そんなの。先ずは敵の指揮官を殺す…………!」
「…………了解。面舵一杯!」
ゆっくりと右に傾きながら、舳先を敵艦隊主力へと向けるジェミニ級スター・デストロイヤー。
司令官の命令を受けた艦長は、至近に捕捉していたドレッドノート級艦を中核とする敵クルーザー部隊を無視する指揮官の指示に若干の不満を抱きつつも、艦の旋回を操舵手に命じる。
「───エーベルヴァイン。今度こそ、この手で…………!」
ギシギシと、厚手のグローブが軋むほど拳を握り締め暗い闘志を撒き散らす司令官を背後にしながら、〈スターブレイカーⅠ〉のクルー達は黙々と超兵器の操作に従事する。
彼女の不満を買ったその暁には、不気味な赤いライトセーバーで瞬く間に首を跳ねられてしまうのだ。彼等の恐怖は無理もない。
しかし、そんな帝国軍の一般兵を嘲笑うかのように、共和国軍による猛攻が開始される。
敵艦隊のなかで最も大柄な巨躯を誇るカンドシイ型戦艦〈サンダーリ〉が、悠然と砲撃を開始したのだ。
四千年前の骨董品ながら徹底的な近代化改修が施されたこのカンドシイ型は帝国軍にとって未知の兵器を多数搭載しており、決して侮れない実力を持つ。
その証拠だと言わんばかりに、この艦は帝国軍のプロカーセイター級を一騎討ちで沈めて尚有り余る耐久力を見せつけているのだ。
だが、この砲撃で自艦を沈められないことを深く理解していた〈スターブレイカーⅠ〉の艦長は、微動だにせず敵軍の動きを注視していた。
「敵艦発砲!」
「シールド出力を保て。主砲のチャージ完了まで持ち堪えるんだ」
自軍の最大射程を上回る距離からの攻撃に、経験の浅いオペレーターが浮き足立つ。
だが、艦の性能を熟知する艦長は冷静沈着に的確な指示を飛ばし、癇癪持ちの上官と勇壮な敵軍の覇気に当てられて恐慌状態寸前の将兵の支えにならんと努めた。
「チィッ…………忌々しい敵。早く沈められないの!?」
「ご安心下さい、閣下。確かに本艦の火力は"主砲"の影響で不安定ですが、防御力に関しては原型艦譲りのタフさを受け継いでいます。キャノンのチャージさえ終われば我々の勝ちです」
「───わかってる。でも鬱陶しいの! アレが!」
「ここは座して機を待つべきです、閣下。どうか抑えて下さい」
「…………わかった。アンタが提督じゃなかったら、殺していたところよ」
「ご理解いただけたようで何よりです」
艦長からの進言を受けて、司令官の少女は怒りのあまりライトセーバーを彼の首元に添える。
それが起動されることはなく、彼女は幾ばくか残る僅かな理性に従って、大人しくセーバーを下げた。
「敵艦隊に、更なる動きです!! 敵コルベット多数、接近!」
「後方からも、敵ドレッドノート級及びヴィンディケーター級が接近しつつあります!」
「残存する護衛艦は後方の敵クルーザーの対処に当たらせろ。前方のコルベット群にはファイターで当たれ」
カンドシイ型の砲撃に援護されながら、敵主力部隊の護衛とみられるアークワイテンズ級とカンサラー級、ドレッドノート級が突出する。
比較的射程の長いサウザーン級は、恐らく主力艦の戦列に加わり援護射撃する腹積もりなのだろう。
更に後方からも、先程まで自艦が追撃していた巡航艦の分艦隊が待ってましたとばかりに迫るのを見て、艦長は敵が包囲殲滅を企図しているのだろうと察した。
自分がもし敵指揮官だとしたら、全く同じ戦法を取るだろう。
未熟で短期な得体の知れないジェダイ擬きに指揮を取らせた結果がこうだ。
艦長は心中で自軍の司令官に毒吐きながら、ベターな選択肢を演算する。
規模の上でより厄介なのは、後方のクルーザー艦隊だ。
背後に位置する敵のドレッドノート級艦は、カンドシイ型のように得体の知れない長射程重ターボレーザーを装備した改造艦で、更に新型のヴィンディケーター級の姿も見える。加えて自軍の巡航艦戦隊を擂り潰した敵の手腕を見るに、敵クルーザー艦隊の指揮官は相当な切れ者だ。
故に艦長はこれをより脅威度の高い目標と見做し、スーパー・キャノンのチャージ完了までの肉壁とするべく残存する護衛艦を全て差し向けたのだ。
対して眼前のコルベット部隊は少数かつ一般的な艤装であり、比較的与しやすい相手だ。艦長がファイター隊で対処しようとするのも道理といえよう。
「駄目!! ───キャプテン、あのクルーザーを最優先で叩き潰して!」
「…………は?」
「いいから! 早く!」
「了解しました。全ターボレーザー砲塔は前方の敵ドレッドノート級艦を狙え。牽制でもいい。あれを本艦に近付けるな」
司令官からの唐突かつ意図が分からぬ指示を前に、艦長は彼女の心中を掴みきれず混乱する。
だが、この癇癪持ちに無為に逆らえば自身の身の安全もない。
大人しく艦長は彼女が指し示す眼前の赤い塗装が特徴的な敵のドレッドノート級艦にターボレーザーの照準を向けるが、結果的にその指示は一歩遅かった。
〈スターブレイカーⅠ〉の前方から猛速で迫る敵のドレッドノート級艦───〈モルオルト〉からは、既に一機のオミクロン級アタック・シャトルが発進していた。
~共和国軍第28巡航艦戦隊旗艦 ドレッドノート級重クルーザー “モルオルト ”~
時は、暫し遡る。
帝国軍の超兵器、ジェミニ級スター・デストロイヤーに対する攻略計画を策定したエーベルヴァイン代将は、腹心のARCトルーパーらを引き連れて新たな艦隊旗艦〈デファイアント〉から第28巡航艦戦隊の旗艦〈モルオルト〉に移乗していた。
ジュディシアル・フォースから続く伝統的な赤いカラーリングを纏い、舷側に共和国の国章を誇示するかの如く描いたこの艦の艦内では、来るべき戦闘に備えて着々と準備が進められている。
「ハハ、これはまた豪胆な方だ。噂通りの猪突猛進さ、感服致しましたよ」
代将から作戦計画を聞かされて、その勇壮さとある意味無謀な内容に思わず感嘆の息を漏らすのは、ドレッドノート級艦〈モルオルト〉の艦長と戦隊指揮官を務めるトリスタン小佐だ。
自らが指揮する艦体のカラーと同じ赤い長髪を靡かせて常に目を瞑りながら皮肉気に話すこの男性士官は、その穏やかな見た目とは裏腹に毒舌気味な性格らしい。本人に悪気が無さそうな分、より厄介だ。
そんな彼の言葉が大層気に障ったのか、アルトは可愛気に頬を膨らませながら反論する。
「むぅ…………猪突猛進とはなんですかトリスタン小佐。わたしはそんなに突撃馬鹿ではないと思いますが…………」
「ご冗談を。閣下が先陣を切るのはこれで四度目ですぞ。一回目はスキピオ、二度目はガーララ、そして三回目は───」
「ああああ! 聞こえない聞こえない。とにかく! 今回の作戦は貴方の働きが重要なのですトリスタン小佐! そこを履き違えないように!」
「サー・イエス・マム。ご命令を、閣下」
「ああもう! うるさい! 作戦開始! 突撃ぃー!!」
本来部下である筈のトリスタンに弄られたことが原因か、アルトは不満気なやけくそさを滲ませた声で全軍に命じる。
〈モルオルト〉以下第28巡航艦戦隊に所属する艦艇は徐々にイオン・エンジンの青白い輝きを力強く滾らせながら、梯形陣を組みながら前進する〈デファイアント〉以下の主力艦列を追い越していく。
「最大射程までの距離、残り6000!」
「ヘヴィ・ターボレーザー・タレットにエネルギーを充填しなさい。砲撃用意」
「ハッ!」
友軍の戦艦〈サンダーリ〉からの砲撃が始まり、帝国軍超兵器のシールド表面には幾らかの弾着痕が生じる。
それに遅れること十数秒、自艦の戦闘距離がいよいよ至近まで迫ることから、トリスタン艦長は主砲の発射用意を命じた。
「───ではトリスタン小佐。私達は事前の手筈通りに動きます。以後は〈デファイアント〉のポーチュン参謀長の指揮に従うように」
「了解致しました。ご健闘を、閣下」
敵の旗艦、ジェミニ級スター・デストロイヤーの姿をその肉眼で明瞭に捉えられる位置にまで進出を果たした〈モルオルト〉。
次第に近付きつつある眼前の敵艦の姿を固唾を飲んで見守っていたアルトは、意を決したように踵を返して振り返る。
前線で苛烈な戦闘に身を置くことになるだろうトリスタンら将兵への激励を残してブリッジを後にした彼女は、少数のARCトルーパーら精鋭部隊を伴い格納庫のオミクロン級アタック・シャトルに乗り込んだ。
コックピット前面に即席の増加装甲を施したそのオミクロン級は、護衛機のARC-170スターファイターとともに〈モルオルト〉の舷側デッキを飛び出すと、一目散に敵艦───ジェミニ級スター・デストロイヤーを目指して飛翔する。
「閣下。敵の攻撃が前進した巡航艦隊に向かっています。我々はノーマークです」
「この隙に敵艦を強襲します。機長、最大速度であの超兵器へ!」
「了解、飛ばしますよ閣下。何かにお掴まり下さい」
エーベルヴァイン代将の思い描いた作戦計画はこうだ。
前衛の主力と後衛のメリュジーヌ分艦隊、この2つの部隊を以て敵超兵器を攻撃するように見せかける。
当然、敵は接近するコルベットに対する阻止行動を図るだろう。残存する敵の護衛艦とファイター隊は、ジェミニ級の前後から接近する軽快艦艇とボマーの攻撃に回る筈だ。
その攻撃部隊に紛れて敵艦に接近し、少数精鋭部隊による破壊工作を展開する。
これが、今回の攻勢計画の概要だ。
先刻までの戦いの結果得られた情報から、敵超兵器の攻撃力、チャージ速度、シールド出力などの概算を得た代将は、次なる敵超兵器の発射までに自軍の残存戦力でこれを叩き潰すのは困難だと判断していた。
それが故に、代将は敵超兵器への突入という危険な賭けを決断したのだ。
敵艦の通常攻撃力は、原型艦に比べて著しく低い。恐らく、超兵器にエネルギー供給の大多数を吸われているからだろう。
だが、防御力はインペリアル級譲りのタフネスさを誇る。
シールド発生装置だけを取ってもその設置数は原型艦の2倍、さらに装甲も据え置きだ。
この頑丈極まりない超兵器を撃沈するためにはアクラメーター級では火力が足りないことは目に見えており、強力な戦艦であるカンドシイ型の力を以てしても完全撃破に至るかどうかは微妙なところだ。
したがって、突入部隊にはより一層、迅速かつ的確な行動も求められる。
この作戦に於いて最大の懸念は、やはり敵指揮官の存在だろう。
敵が放つ暗黒面に染まった覚えのあるフォースの波動を感じ取った代将は、敵司令官が自らのクローンであると看破していた。
ジェダイと同等の戦闘力を持つアルトのクローンを、共和国軍のクローン・トルーパーだけで相手取るのは些か荷が重い。オーダー66に於いてクローン兵が容易く大半のジェダイを殺害できたのは単に奇襲効果に依るところが大きく、完全戦闘態勢のジェダイ一人を仕留めるにあたっては501軍団のような精鋭部隊でさえ夥しい数の犠牲を出しているのだ。
代将自ら敵艦に突入するのは、その対策という側面が大きい。
───大丈夫…………落ち着いて。わたしなら、できる筈。
震える身体を両腕で抱いて、心中で自分自身を鼓舞するアルト。
一度、"彼女"に敗北したという記憶が恐怖を呼び起こすものの、懸命にそれに蓋をして取り繕う。
───あいつは、"私"しか見えていない。なら…………!
敵の狙いは、自分だけだ。
今も虚空を通じて響く暗いフォースの波動を通して、アルトは敵の目的を悟る。
そこに、彼女は勝機を見出だしていた。
ようは、"戦略的勝利"だ。
アルト率いる救国軍事会議の目的は、敵超兵器の破壊。
それさえ達成できてしまえば、自分とクローンの戦いの結果───戦術的勝利は最悪どうでもいいもの。
殺されるのだけは勘弁だが、敗北が濃厚だとしても隙を見て脱出の機を窺うことぐらいならまだ可能性が残されている。
自分が"彼女"を抑えている間に、特殊部隊が作戦目的を達すればいい。
怒りと嫉妬の感情に呑まれて暗黒面に邁進するクローンとは対称的に、師から受けた薰陶に指揮官として、軍人として誠実に応える彼女らしい作戦だ。
「閣下。間もなく敵艦の艦底部です」
「できることなら、"主砲"の間下に付けたいものですね。コマンダー・グラント、スキャン結果は出ていますか?」
「ハッ。恐らく、この地点からなら侵入は容易かと。ドッキングポートの類はありませんが、ライトセーバーなら簡単に外壁を破壊できます」
「良い働きです、コマンダー。寧ろ、ドッキングポートでない方が敵に感付かれる虞が減って好都合です。機長、そのポイントに船を付けて下さい」
「イエッサー!」
戦場を乱舞するARC-170やVウィング、試作型TIEファイターの隊列に混ざりながら、アルト達を乗せたオミクロン級アタック・シャトルは人知れずジェミニ級スター・デストロイヤーの主砲、ハイパー・キャノンの底部に着陸する。
「敵艦との接続を確認。工作用ハッチ、展開します」
「では行きましょう! みんな、戦闘準備!!」
シャトルの床部分から伸びる浸透用の円筒形通路が完全に敵艦と接続したその瞬間、アルトは勢いよくセーバーを敵艦の外壁に突き立てて、外界と艦内を隔てるスター・デストロイヤーの装甲を丸くくり貫いた。
その空間に身を滑らせて、すっ、と敵艦の艦内に着地するアルト。
続いて慣れた手付きでレッドデインらARCトルーパー部隊が降り立ち、分隊は素早く周囲のクリアリングを済ませる。
「付近に敵はいません、閣下」
「とりあえず侵入は成功、っと。コマンダー、超兵器の動力炉までの道程は分かっていますか?」
「無論です。スキャンの結果によれば───あの方角かと」
アルトに目的地の場所を尋ねられて、クローン・コマンダー・グラントは、侵入した部屋の一角を指し示す。
「───なるほど。確かに、私の"勘"もそう言っています。スキャン結果は確かでしょう。コマンダー、そちらは任せました。私達は陽動に転じます。どうか武運を!」
「イエッサー! 任されました、将軍」
コマンダーが示した方角からアルトが感じ取ったのは、カイバー・クリスタルが発する特有のフォースだ。
ジェダイ時代の感覚でそれを察したアルトは、彼のスキャン結果は確実なものだと悟る。
───カイバー・クリスタルを応用した超兵器。そんなの歴史の座学で聞いたことがあるぐらいだったけど、まさか本当に作っていたなんて。
これほどの規模を誇る兵器ならば、設計段階から数えるとそれはもうとんでもない開発期間が必要だ。もしかしたら、自分が生まれる前から研究されていたのかもしれない。
邪悪で不気味な惑星破壊兵器が、よりによって自らが仕える国で造られていたという事実に、アルトは驚嘆と強い怒りを覚えた。
三年間、将軍として自分は最前線で命を懸けていたというのに、政治屋共はとんでもない玩具を造ってくれたものだ。
その金があれば、果たして幾らのスター・デストロイヤーを建造できていただろうか。果たして幾らの困窮する人々に手を差し伸べられていただろうか。
成る程、マスターもパルパティーンを見限るわけだ。
「───止まれ」
コマンダー・グラント率いる破壊工作部隊と別れ、超兵器の内部を行く宛もなくさすらうアルトとARCトルーパーの一個分隊。
その先頭を行く彼女は不意に立ち止まり、部下に停止の合図を送る。
「…………ようやく出たな、この偽物め」
普段より一段も二段階も低い声色で、彼女は眼前に立ちはだかる影を一瞥する。
全身を黒い装甲服で覆い、回転式のダブルブレードセーバーを備えた華奢な人影。
間違えようもない。つい数日前に、敗北を喫した自らのクローン。
それが再び、彼女の行く道を阻んでいた。
「───エーベルヴァイン。ここで…………殺す!」
セーバーを眼前に翳し、血のように赤いプラズマの刃を滾らせるアルトのクローン。
憎悪に染まった金色の瞳は、隠さんばかりの殺気を放ちアルトを睨む。
「来ましたね。総員、構えてください」
あくまでも冷静に、沈着に。普段通りの指揮を意識し、アルトはすかさず腹心のARCトルーパー達に指示を送る。
彼女に付き従うレッドデインら歴戦のトルーパー達がDC-15Aブラスター・ライフルを構えるのと同時に、アルトのクローンに付き従う黒いアーマーを纏うトルーパー達もライフルとエレクトロハンマーを彼等に向かって突き立てた。
「───撃て!!」
「死んで!!!」
開戦を告げる、互いの号令。
青と赤のライトセーバーが切り結ぶその瞬間、同色のブラスターレーザーが戦場を染め上げた。
■艦艇解説
〈モルオルト〉
共和国宇宙軍第3艦隊エーベルヴァイン分艦隊に属するドレッドノート級艦。第28
艦体の塗装は赤を基調に白のラインが入ったジュディシアル・フォース時代のものを受け継いでいるのが特徴。
艦名の由来は『銀河英雄伝説外伝/わが征くは星の大海』におけるロイエンタール分艦隊旗艦の標準型戦艦〈モルオルト〉から。
◎登場エピソード
本作オリジナル