一時行方不明となっていた彼等を探し当てたジェダイ・ナイトのシャルロットは、任務を解かれ待機を命ぜられる。
しかし、程なくしてジェダイ・オーダーには、二つの凶報が舞い込んだのであった………
マスタークワイ=ガンの死。
それはジェダイ・オーダーに衝撃をもたらした。
クワイ=ガンを討ち取ったシスの暗黒卿ダース・モールはクワイ=ガンのパダワンであるオビ=ワン・ケノービに討たれたものの、いよいよ評議会もシスの復活が事実であると認めざるを得なくなった。
暗躍するシスの陰謀を掴もうと躍起になる評議会だが、相手は尻尾の一つも見せない。シスの探索がすぐに暗礁に乗り上げるのは想像に難くないことだった。
加えてジェダイ・オーダーに衝撃をもたらした事件が、もう一つ。
ジェダイ・マスター、ドゥークーの離反だ。
自らの弟子であったクワイ=ガンの死から数日後。オーダーから離脱する意向を彼は伝えた。しかし、彼は人望の篤い偉大なジェダイ・マスターだった。引き留める声も多い。
しかし彼の決意は硬く、頑なに首を縦に振ることはしなかった。
「オーダーの腐敗、そして共和国の腐敗はもはや如何ともしがたい。このまま今の秩序に身を委ねているだけでは、何一つとして変わらんのだよ」
目の前に座るクリストファー・リーの生き写し…………ならぬドゥークーは、まるで教師が生徒に語りかけるような口調で話す。
「…………確かに、マスターの仰る通りです」
「左様。だからこそ、銀河には変革が必要なのだ」
ドゥークーは、力強く明言した。
「変革…………ですか。具体的には、どのような?」
さも興味がある体で身を乗り出し、彼に尋ねる。
―――このあと起こる戦争のことなんて、何年も前からお見通しだ。しかし、"私"は何も知らない。もう既に、師が目の前の男に討たれていることも。
「それはまだ言えん。暫くは、故郷のセレノーで地盤固めの予定だからの」
「地盤固め? まさか選挙ですか。貴方の人望なら、当選は容易いでしょうね」
「選挙か…………もはや死んだ民主主義如きに、私は興味などないのだよ。もっと別の方法でなければ、この銀河は変わらない」
別の方法かぁ…………。それで多くの血が流れても、彼は理想さえ遂げられればそれで構わないのだろう。――彼の気質は、革命家に近い。
自らの理想だけを信じ、他は有象無象と切って捨てる。
ある意味狂信的な思考であり、前世では、そんな人間が数々の事件やテロを起こしてきたことも知っていた。
―――だけど、彼の改革にかけるその情熱だけは、信用できた。
それ故に、彼の未来が余計に悲しい。
スクリーンを通して見た彼の姿は、あくまでも観客を楽しませるためのエンターテイナー。悪のカリスマ。アナキンに首を飛ばされたって、それでクリストファー・リーが死ぬことはない。
だけど、今私の目の前にいるのは"俳優クリストファー・リー"ではなく、"ドゥークー"という、70年の年月を生きた一人の人間なのだ。
だからこそ、彼の口から出る言葉一つ一つには、確かな熱が籠っていた。
「…………あまり無茶はしないで下さいよ? 私のマスターが心配します」
「ふむ。確かにな。老体は老体なりに頑張るとしよう。…………サイフォ=ディアスのことは、残念だった」
「ええ。ですが、ジェダイとはそういうものだと、覚悟はしていました」
嘘つけ、貴方が殺したくせに。
あたかも自然体で、何も知らない友人を装うドゥークーに、内心で反発する。
でも、彼がそこまでの悪行に至ったのも、元はその理想主義な性格な故にパルパティーンの魔の手に囚われてしまったからだ。
おのれパルパルめ…………許さん!
「そうか。…………達者でな、シャル。私は明日オーダーを発つ。最後に我が盟友の弟子と話せたことは、実に光栄だった」
「とんでもない。私こそ、偉大なマスタードゥークーとこうして話せて、光栄です」
既に日は暮れ、窓からはコルサントの目映いネオンの輝きが差していた。
そろそろ頃合いだと感じていたのか、ドゥークーが席を立つ。
私も彼の動きに合わせて、最後に握手を交わした。
「お元気で、マスタードゥークー」
「うむ。最後に其方の、成長を見られてよかった…………さらばだ、シャル」
………………………………………………
「…………はぁ、疲れた」
どさっ、と音を立てて、ソファーにどっと座り込む。
姿形は好々爺でも、彼は既に暗黒卿だ。
私と二人で話がしたいと申し出されたときは冷や汗ものだったが、終わって見れば、存外に幕引きは呆気ない。
世間話だけで終わって、本当に良かった。
…………転生する前からドゥークーは好きなキャラクターだったし、彼の理想には、共感できる部分も大いにあった。
だが、暗黒卿は暗黒卿だ。
隙を見せれば、刈り取られるのはこちらの命。まさか、話すだけでこれほど体力を使うなんて思ってもいなかった。
―――スクリーンと現実で、斯くもこれほど違うなんて。
結果としてドゥークーが純粋に話したかっただけだったから良かったものの、これが罠だったら、私は死んでいただろう。
額にびっしょりと張り付いた汗をハンカチで拭き取って、面談室を後にする。
―――ああ、今はひたすら、ブランデーが恋しい。
ファントム・メナス篇は、駆け足でしたがこれで終了になります。
ここまでは導入です。いよいよ戦争(本編)の匂いが近付いてきました。
………次回はいよいよヒロイン登場回の予定です。