銀河系の中心部に程近いコロニーズ領域の北東部、平面座標M-9に位置する惑星カリダ。
温暖で快適な気候ながら高重力が故に入植者が寄り付かず、専らその重力を軍事教練に用いて発展してきたこの惑星は、銀河共和国軍救国軍事会議に残された最後の領土だ。
アナクセスを喪い、シャンドリラ、ブレンタールを失落した救国軍事会議にとってここカリダは唯一の軍事拠点であると同時に、軍事力の維持を図るための生命線でもある。
しかし、軍事的な伝統以外にこれといった有望な資源を持たないカリダに長く留まり続けることはできない。
艦隊を維持するための貴金属や食糧、ハイパードライブの燃料となるコアクシウム、負傷者を治療するためのバクダ、ブラスターやレーザーの原料となるディバナ・ガス。そのどれもが欠けたこの星系に拘ったところで、四方を帝国に囲まれては兵糧攻めでただ衰えるのみ。兵は飢え、結成の理念を達成する機会は永遠に訪れないだろう。
故に、救国軍事会議は臥薪嘗胆を選択した。
統合作戦本部長シャルロット・フォン・ブリュッヒャー上級大将が密かに築いた矮小銀河リシ・メイズの秘密拠点。
その地での再起に全てを掛け、銀河系からの脱出を図る。
───後に、長征一〇万光年として語り継がれることになる、冬の時代の到来。その幕開けの瞬間であった。
~コロニーズ カリダ星系 惑星カリダ軌道上 インペレーター級スター・デストロイヤー “リットリオ ”~
「ヴァロア・ステーションからの全人員の退避、完了しました」
「第5、第11艦隊より報告。布陣完了とのことです」
惑星カリダの軌道上では、無数のシャトルやコルベットが巨艦の間を忙しなく行き交う。
救国軍事会議が星系の放棄を定めてから僅か数時間のうちに、艦隊は着々と出港準備を整えつつある。
彼等の拠点であった宇宙ステーション、ヴァロアは既に放棄され、いまや伽藍堂の様相を呈していた。
淡々と読み上げられる報告を耳にしながら、旗艦リットリオの壇上に鎮座するブリュッヒャー上級大将は満足気に頷く。
「──全軍に達する。此れより我が軍は、ツェルベルス作戦を開始する。目標、惑星ブラッカ!!」
総司令官ブリュッヒャー上級大将の号令と同時に、何百という宇宙船のイオン・エンジンに蒼白い火が灯る。
彼等が目指す先は、退役した共和国軍や帝国軍の艦船、分離主義者の艦船が解体されているスクラップ・ヤードが所在する惑星ブラッカだ。
その目的は単純明快、スクラップヤードに遺棄されている艦船を鹵獲し、更なる戦力の増強や予備部品を確保することにある。
そうしてブラッカにおける"徴発"を終えた後は、ルーサン、トイダリア、ナル・ハッタ方面といった帝国軍の影響力が薄い星系を経由してリシ・メイズへの脱出を図る。それが、このツェルベルス作戦の骨子だ。
だが、彼等の眼前にはそれを阻む者が多数。
───銀河帝国軍カリダ艦隊
カリダ星系を封鎖するべくアルガイ・マイナー方面から進出したこの帝国軍小艦隊は、救国軍事会議の息切れを待ち望んでいた。
カリダに鎮座する救国軍事会議の動向を後続の帝国軍本隊に伝えるべく先んじて星系に肉薄していた彼等は、星系外縁を遊々しつつ徐々に惑星カリダへと接近している。
この艦隊が、ツェルベルス作戦における最初の標的となった。
「機関、最大戦速。加速一杯!」
「各ターボレーザー砲塔、照準よし!」
先頭を往く旗艦〈リットリオ〉はその巨体を蒼く迸るイオンエンジンの轟音で揺らしつつ、悠然と前進する。
救国軍事会議艦隊の前進を見た帝国軍カリダ艦隊は戦闘態勢を整えるべく加速しつつ陣形転換に入ったが、既にそれがもう遅いと言わんばかりに、彼等の横腹で盛大な爆発が起きる。
「敵艦隊右翼にて連鎖的な爆発を確認」
「〈ノーチラス〉より打電"我奇襲二成功セリ"!」
「───よし。全艦、最大戦速! 敵艦隊を正面から食い破るぞ」
ステルス・シップを活用した、側面からの奇襲攻撃。
それが、開戦の号砲を告げる火蓋となった
至近で発射された震盪ミサイルを被弾した帝国軍のデストロイヤーは、行き足を止めて早くも隊列から落伍している。
クルーザーやコルベットに至っては更に悲惨で、弾薬庫や機関部といったウィークポイントに被弾した艦は一撃で吹き飛び新星と化した。
「敵艦隊、光学照準可能距離です」
「では、帝国軍に我ら共和国軍健在と知らしめてやるとしよう。Feuer!!」
ブリュッヒャー上級大将の号令とともに、幾多ものターボレーザーの輝きが帝国軍艦隊前衛に殺到する。
共和国軍艦隊の放った青白の槍は戦域前面に展開する帝国軍艦に突き刺さり、その幾らかはシールドを突き抜けて敵主力艦に明確なダメージを与えた。
「敵巡航艦4、コルベット3隻の撃沈を確認。主力艦の落伍は確認できません」
「わが艦隊の勢力は敵に対して遥かに優勢だ。敵増援の到着前に此を破るぞ。攻撃の手を緩めるな」
「イエッサー!」
共和国軍艦隊は、上級大将の命令に従い敵艦隊への攻撃を継続しつつ前進する。
既に艦隊の先鋒は彼方をターボレーザーの有効射程圏内に捉えており、目に見えて戦果とともに損害が拡大する。
「第7巡航艦戦隊が損害多数につき後退許可を求めています」
「承知した。抜けた穴には第35巡航艦戦隊と第8コルベット戦隊を充てろ」
「敵デストロイヤー1隻の撃沈を確認。敵艦隊の隊列、乱れます」
帝国軍は劣勢ながら、よく善戦していた。
自らの数倍はあろうかという数千隻単位の大艦隊を前にして、未だ統制を保っているのは銀河帝国軍の面目躍如といえよう。
だが、如何なる戦術奇策を以てしても埋めようのない戦力差は如実に彼等の余命を削り取っていった。
救国軍事会議艦隊の監視と足止めがその任務とはいえ、一目散に星系外への脱出を企図し全戦力を集中する共和国軍を前にしては、あまりにも艦艇数が足りなかった。
「このまま敵艦隊を蹂躙する。全艦、鶴翼陣形を維持しつつ前進せよ」
救国軍事会議艦隊は、その火力を十全に発揮するべく横に広く散開し、帝国軍に十字砲火を浴びせる。
自らの圧倒的な規模を生かした蹂躙劇の前には流石に帝国軍といえども耐えきれず、各所で陣形に乱れが生じる。
「敵艦隊、総崩れです」
「左翼の崩壊が特に激しいな。残敵掃討に移行する。ドラッヘ将軍の第172分艦隊を突撃させろ」
戦局の大勢は決したと見たブリュッヒャー上級大将は、帝国軍艦隊のうち陣形の乱れが目立つ左翼集団に対する更なる追撃を指示した。
~ヴェネターⅡ級スター・デストロイヤー “ガーララ ”~
ヴェネター級艦〈ガーララ〉を中心とする第172分艦隊は、ジェダイ将軍ティーガー・ドラッヘ中将を指揮官に戴く部隊だ。
作戦開始前の艦隊再編によりゴルドルフ・ムジーク少将率いる第5艦隊から分派されたこの分艦隊は、ヴェネター級〈ガーララ〉を旗艦に4隻のサーベイター級スター・デストロイヤー*1、2隻のラディアント級スター・デストロイヤーを中核とする砲戦主体の編成を取っている。
サーベイター級艦はクローン戦争末期に就役したヴェネター級艦の準同型艦で、航空艤装の大部分を撤去する代わりに重ターボレーザーを艦体の軸線上に敷き詰めた砲戦艦だ。
外観は遠目にはヴェネター級とさほど変わらないものの、特徴的な並列式の艦橋はセキューター級艦のものと同じ大型艦橋*2一基に改められ、増設された遠距離砲戦用のレーダーユニットが目を引く。
統率もままならない状態の帝国軍艦隊にとって、これらの艦艇が持つ火力は極めて脅威的だ。
「旗艦リットリオより暗号通信です。"帝国軍艦隊へ突撃し、更なる戦果拡大に努めよ"と」
旗艦からの作戦命令通信を受け取った将軍の副官―――ジェダイ・パダワンのサツキが、その命令を自らのマスターでもあるドラッヘ将軍に伝達する。
その命令を受けた将軍は、不敵な笑みを浮かべながら暗澹とした淡黄色の瞳で眼前の敵艦隊を見据える。
「承知した。全艦、突撃隊形! 殺せぇー!!」
「了解。機関、最大戦速」
旗艦〈ガーララ〉を先頭に、7隻のスター・デストロイヤーが帝国軍艦隊の側面目掛けて猛烈な勢いで加速を始めた。
敵艦隊に突撃する第172分艦隊はまるで帝国軍に打ち込まれた楔の如くその薄っぺらな防御陣形を食い破り、その火力を十全に発揮する。
護衛艦艇の散発的な抵抗を跳ね除けながら進む〈ガーララ〉の最初の犠牲をなったのは、帝国軍の同型艦〈アルベド・ブレイヴ〉だった。
オーダー66の発動に伴う副次被害で反応炉に重大な損傷を負っていたこの艦は、修理が完了しても尚艦の耐久性に重大な問題を抱えていた。
病み上がりの如き不調を御して戦列に復帰した同艦であったが、それがかえって仇となり最期の時を迎えることになる。
同型艦〈ガーララ〉とサーベイター級艦〈プロファンディティ〉〈ハンド・オブ・リパブリック〉からの集中砲火を受けた〈アルベド・ブレイヴ〉のシールドは瞬く間に剥げ上り、万全とは程遠い艦体はターボレーザーの嵐に引き裂かれて風船のように吹き飛んだ。
「敵デストロイヤー1隻、撃沈」
「目標を切り替えろ! 前方の敵アクラメーター級を撃沈する!」
「全主砲、敵アクラメーター級に照準。撃て」
敵艦の轟沈を確認した〈ガーララ〉のバロー・オイカン艦長代理は、将軍が指示した次なる目標である帝国軍のアクラメーター級艦〈ネヴータ・ビー〉にターボレーザーの照準を向ける。
嘗てムーリニンストの戦いに参加し、アナキン・スカイウォーカー将軍の旗艦に輝いた経歴を誇るこの艦もまた、〈ガーララ〉の次なる餌食となった。
戦域からの離脱を図る〈ネヴータ・ビー〉はハイパードライブを起動しジャンプの準備を整えていたところ、その無防備な側面を滅多打ちにされる。
ヴェネター級艦に耐久力で遥かに劣るアクラメーター級艦の身では〈ガーララ〉率いる分艦隊の猛攻を到底耐えきることもできず、ものの僅かな時間でその艦体は自慢のスターファイター隊とともに新星のように弾け飛んだ。
「敵左翼集団の撃滅を確認しました。如何なさいますか、将軍」
「戦果を拡大する! 敵艦隊の左後背に回り込み包囲陣形を敷け! くれぐれも友軍艦艇の前には出るなよ」
「ハッ!」
敵艦隊左翼に位置する目ぼしい主力艦を粗方片付けたドラッヘ将軍は、更なる戦いを求めて帝国軍艦隊残余を完全に包囲することを企図した。
友軍艦隊より一歩先んじた地点に位置していた第172分艦隊は帝国軍艦隊の背後を目指して転舵して、敵艦隊側面に砲撃を浴びせ続ける。
「敵艦隊、ハイパードライブを起動した模様です。恐らく、戦域からの離脱を試みているものかと」
「追撃せよ! 帝国艦隊を逃すな!!」
「イエッサー!」
ハイパージャンプによる緊急FTLを試みる帝国軍艦隊に対し、ドラッヘ将軍隷下の共和国艦隊は容赦なく襲い掛かった。
戦果拡大のチャンスとばかりに無防備な敵艦隊の側面を痛打した彼女の艦隊は、鋭利な刃の如く帝国軍の陣形の内側へと斬り込んでいく。
「敵クルーザー、6隻の撃沈を確認」
「正面の敵インペレーター級を沈めよ。活きの良い奴から仕留める」
「右舷より敵ボマー編隊接近!」
「構うな! 敵の息の根を止めるのが先だ。インターセプターを差し向けつつ、適当に対処せよ」
帝国軍の戦隊旗艦を狙う将軍の艦隊に、帝国のYウイング編隊による散発的な空襲が実施される。
しかしその規模はたかが知れたものであり、その被害は微々たるものと看破した将軍は敵旗艦の撃沈を優先させた。
「敵艦、射程内です」
「砲撃開始! 沈めぇ!!」
〈ガーララ〉を含む7隻のデストロイヤーの主砲が一斉に青白い火を吹き、溢れんばかりの殺意を帝国軍に叩き付ける。
一隻の敵インペレーター級相手に主力艦の全火力を集中させた彼女の指示は見事に嵌まり、ハイパージャンプ前の脆弱な体制の敵主力艦隊は満足な抵抗もできずに轟沈する。
「敵インペレーター級艦の落伍を確認しました」
「───そろそろ頃合いか」
中将がその右掌を挙げるのとともに、艦隊の砲撃が一斉に止んだ。
直後、帝国軍艦隊残存艦艇は一斉にハイパースペースへと逃げ去るように消えていく。
最初から彼我の差は圧倒的に開いていたのだ。流石に不利を悟ったのだろう。
今しがた潰走した帝国軍艦隊の指揮官は皇帝の怒りに触れるやもしれないが、そんなことはこの戦を制した救国軍事会議側の将兵にとっては些事に過ぎない。
「帝国軍艦隊、撤退します」
「ファイター隊の収容を急げ! 損傷の酷い艦艇は放棄し、乗員は速やかに最寄りの友軍艦艇に退避せよ。時間はないぞ、速やかに取り掛かれ!」
「ハッ!!」
ドラッヘ中将麾下の第172分艦隊に限らず、救国軍事会議側は急ぎ足で艦隊の再編と生存者の収容作業に取り掛かった。
艦隊戦を制したとはいえ、追手の帝国軍がいつ来るやもしれぬという緊張感が艦隊を包み込む。
つい先刻撃破した艦隊はあくまで警戒監視艦隊であり、帝国軍は未だコア・ワールドに完全編成の二個正規艦隊を抱えているのだ。此れと真っ向からぶつかってはツェルベルス作戦そのものが破綻しかねない。
慌ただしく、かつ正確さを心掛けて乗員達が収容作業に励んだ成果か、救国軍事会議艦隊はものの20分程度で艦隊の再編作業を概ね完了していた。
程なくして、幾千もの光線が足早に虚空へと身を投じる。
彼等が去った後にはただ、静寂が支配する星系だけが取り残された。
「RC-1138、出頭しました」
薄暗い司令室に、小気味良い軍靴のリズムが響く。
人一人見当たらない伽藍堂の空間に、バイザーの青白い光だけがぼんやりと輝く。
彼───クローン・コマンドーRC-1138“ボス”は、自らを呼び出した上官のデスクの前で機敏に停止し、敬礼を披露する。
「───来たか」
彼女、ブリュッヒャー上級大将はそう小さくそう独り言ちると、椅子を回して彼に向き合う。
灰色の空間を弱々しく照らす蒼白の光はその病的なまでに白い肌を浮かび上がらせ、暗く濁った灰金の瞳は何処までも無機質だ。
「デルタ分隊、貴官らに任務を与える」
重々しいその口から発せられた命令を、ボスは襟を正して静聴する。
「貴官らは艦隊に先行して惑星ブラッカを調査し、ランディングポイントを確保せよ。艦隊の迅速な補給活動の為には事前の調査活動が重要だ。貴官らの働きに期待する」
「サー、イエッサー!!」
〈ガーララ〉の救出任務以降暇を持て余していた彼にとって、暫く無いと思っていた作戦行動を命じられるのは意外だった。
しかし、自らの本分を全うできる待望の任務だ。
久方振りの出撃を前に、彼は気を引き締め直す。
「ああそれと……分隊には新しい船も与えよう。余剰になっているオミクロン級シャトルが一機ある。特殊部隊向けにカスタムした特別仕様だ。存分に使ってくれ」
「ハッ。有難き御配慮、感謝致します」
上級大将から渡されたデータパットを受け取った彼は、作戦計画の骨子と任務遂行にあたって補充される物資のリストを一瞥した。
「………では、失礼致します」
「少しお待ちを。ボス」
命令を受けたボスは、早速出撃準備とばかりに司令室を去る素振りを見せた。
それを上級大将は、願うように引き止める。
「───これを」
「はい?」
彼女は懐から小包を三個、徐に取り出した。
掌の上に差し出されたそれを、ボスは怪訝な眼差しで見詰める。
「将軍、これは?」
「"お守り"ですよ、ボス」
「お守り?何故、小官などに………」
先程までの無機質さが嘘のように、穏やかな声色で話す彼女。
予想外の贈呈品を貰った彼はその意図を掴みかねて、彼女の真意を確認する。
「貴方達には、開戦以来お世話になりましたからね。そのささやかな返礼とでも思って貰えれば」
「は、はぁ………」
彼女が言うには、これはクローン戦争を通して苦楽を共にした故の礼だという。
しかし何故このタイミングで、とボスが疑問に思うのは当然だった。
タイミング的にも、別に今渡す必要は無いのではと。
「それに………ゼヴのことは残念でした。貴方達も、これ以上分隊の仲間を喪うのは辛いでしょう。少しでも、全員で生きて帰る助けになればと。中身は砕いたカイバークリスタルの欠片ですから、元ジェダイの
「とんでもございません。我々のような身分からしたらご厚意だけでも勿体無いばかりです。お心遣い、切に感謝致します」
どうやらこのうら若き上級大将は、付き合いが長い戦友を喪った分隊のメンバーの士気を案じていたらしい。
戦場で見せる苛烈さとはかけ離れたその気遣いには驚くばかりだが、さりとて彼女の厚意を無碍にすることこそ失礼だ。
ボスは一礼して差し出された小包を受け取り、懐に仕舞い込む。
三つということは、残りは他のメンバーの分だろう。
出撃前に忘れずに渡しておかなければ、お調子者のスコーチ等は恨み言を吐くに違いない。
「ありがとうございます。必ずや、戦果をご覧に入れて差し上げます」
「ええ。期待していますよ」
少しだけ柔らかい声色で激励を贈る上級大将の姿は、さながら年頃の娘のようだ。
それまでの無機質な姿との相違に面食らうものの、彼は努めて驚きを表に出さずに踵を返す。
彼が去った後の司令室には、屍のように佇む少女だけが残された。
「───ごふっ。………さて、と」
咳に混ざる赤黒い液体を吐き捨てて、彼女はぼんやりと浮かぶホログラムの羅列を睨む。
クローン・トルーパー達のプロフィールに紛れて表示される、一人の少女に関する身体情報。
あからさまに場違いなそれを、彼女は無機質な瞳で凝視していた。