共和国の旗の下に   作:旭日提督

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シャーテンブルク要塞

~ワイルド・スペース ヘリオス宙域 平面座標U-16 ムーンフラワー星雲 インペレーター級スター・デストロイヤー “リットリオ ”

 

 帝国軍からの追跡を逃れて銀河系の外縁に位置するリシ・メイズへの逃避行の最中、超兵器“アイ・オブ・パルパティーン ”と交戦の末これを撃破・占拠した救国軍事会議艦隊。

 彼等はこの超兵器を新たなる戦略拠点とするべく工作部隊を展開し、解析と改造を進めていた。

 

「閣下! 作業班より報告です」

 

「読み上げろ」

 

「ハッ! 只今展開中の工作部隊は、要塞の主動力炉再起動に成功したとのことです。此よりハイパードライブの起動試験に移ると」

 

「よろしい。ところで、要塞が帝国軍に追跡される虞はありませんか。アレを道標にされては堪ったものではないですからね」

 

「そこは抜かりなく。我が軍の最精鋭部隊が要塞内部の敵追跡装置を悉く破壊しておりますので。元々秘匿されていたためか、既知の帝国軍とのデータリンクがなかったのも功を奏しましたな」

 

 要塞の改装作業を監督しているのは、救国軍事会議作戦参謀長のミーバー・ガスコン宇宙軍准将だ。

 彼はその人形のように小さな体躯を黒色のRシリーズ・アストロメク・ドロイドMR-T3の頭部に据えながら、ホログラム画面上に表示される改装作業の進捗状況を報告するデータに目を通していた。

 今のところ作業は順調に進行しているようで、特段問題となる事項は発生していないように見えた。

 件の宇宙要塞は帝国正規軍の装備ではなくあくまでパルパティーンの個人的兵力として建造されていたためか、帝国本土に異常を報せるアラートや追跡装置の数は要塞の規模に比べると驚くほど少なかった。それは要塞を接収し曳航準備を進める救国軍事会議にとっては僥倖といえた。

 その甲斐もあってか要塞の改装作業は驚くほどスムーズに進んでいるのだが、上級大将は更なるパルパティーンの伏兵の存在を警戒しているのか、ガスコン参謀長に作業の進捗をより一層急ぐように命令する。

 

「結構。できるだけ迅速な作業を頼みますよ、参謀長。…………幾ら銀河系外縁の辺境とはいえ、帝国軍が来ないという保証はありませんからね」

 

「承知しております。ですが、先ほど申し上げました通り追跡装置の無効化は万全です。そう心配ばかりされていては休まる暇もないでしょう。ここはどうかお任せください」

 

 救国軍事会議全軍の指揮を預かるブリュッヒャー上級大将はガスコン参謀長の報告を険しい表情を崩さないまま聞きながら、艦橋窓の外側に広がる宇宙空間を凝視する。

 その眼前には未だに改装作業が進められている件の宇宙要塞が鎮座しており、剥き出しの岩石と無機質な人工物が組み合わされた荒々しい威容を湛えている。

 彼女は要塞の改装作業が万が一遅れるようなことがあれば更なる帝国軍やパルパティーンの私兵が襲来するやもしれぬと戦闘の可能性を危惧していが、参謀長はその危険性は低いのではないかと主張する。

 

 ───考えすぎか。

 

 上級大将の脳裏に、そんな感想が思い浮かぶ。

 どうやらパルパティーンによる干渉の影響か、将又生来の神経質さのせいか、少し敏感になっているようだ。

 指揮官としては正しい姿勢かもしれないが、常に引き締めてばかりでは部下も休まる暇がないというもの。杞憂しすぎては逆に統率に影響が出るか。

 

「ええ、分かりました。それでは、私は一時下がらせていただくとしましょう。あの要塞───“シャーテンブルク要塞 ”の改装完了を以ってわが艦隊は出航します。各艦に抜錨の用意をさせておくように。それまでには戻りますので」

 

「了解です、閣下」

 

 上級大将は星間空間に浮遊する宇宙要塞の雄姿を一瞥すると、参謀長に次なる命令を発する。

 作業が概ね順調に進んでいることに満足した彼女は、艦隊の出港準備を並行して進めるさせることにした。

 要塞の周囲に錨を下ろす艦隊は、束の間の勝利に酔っているのか普段よりも緩慢な空気感に包まれているように見えた。

 それが出港に向けて慌ただしく動き出し、微睡みから覚めるようにアンダーワールドのネオンの如く様々な光が蠢動し始める。

 

 一方で〈アイ・オブ・パルパティーン〉という露悪的な名称からそれが装備していたクローキング装置の特徴を象った名に改名された元帝国軍の宇宙要塞は、忙しなく飛び回り始めた艦艇に包まれながら淡く光を虚空へと漏らす。

 その姿は、新たな主人を戴き次なる命を待っているようにも見えた。

 

 

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 会戦の終了から凡そ6時間。艦隊は出港準備を整え、イオン・エンジンの青白い奔流が漆黒の宇宙を照らす。

 〈アイ・オブ・パルパティーン〉改め〈シャーテンブルク要塞〉と新たな名を戴いた宇宙要塞を中心に進撃を再開した紅白の艨艟の群れは、さながら無敵艦隊(アルマダ)といったところか。

 旗艦リットリオの壇上からその勇壮な自軍艦隊の雄姿を眺めていたブリュッヒャー上級大将は満足げに眼下の艦隊を一瞥すると、視線を正面に移して全軍に命じる。

 

「全艦、第二種警戒配備を維持しつつハイパースペース航行の準備にかかれ。目標は銀河系外縁、リシ星系だ」

 

「了解。全艦、ハイパードライブ起動。超空間航行への移行を進めます」

 

 艦隊は静寂に支配された戦場跡に背を向けて、舳先を再び数多の星々が照らす銀河系渦状腕へと舵を切る。

 陣形の中央に鎮座する岩塊を取り囲むように布陣した紅白の艨艟は勇壮な轟音を響かせながら蒼白の噴流を吐き出してその巨体を押し進めていく。

 唐突に、その先頭が彗星のように一筋の光条となって消えるや否や、続いて無数の艨艟が流星群のようにその身を眩い光で包みながら忽然と消えた。

 

 彼等が目指す先はアウター・リム・テリトリーの南部象限に位置するアブリオン宙域、そこに浮かぶリシ星系だ。

 嘗てクローン戦争の際に共和国軍の前哨基地が置かれていたこの星系はいわばリシ・メイズの玄関口。最終的な脱出先であるリシ・メイズの秘密拠点に辿り着くためには避けては通れない道であり、そしてクローン達の故郷、惑星カミーノに至るハイパースペースレーンの表参道にあたる航路の入口だ。

 この星系を突破すれば、最早長征の達成は眼前に見えているといっても過言ではない。

 艦隊将兵の誰もが作戦完了を間近にして新天地への航路に安堵と期待を膨らませながら、青白いハイパースペースへとその足を踏み入れた。

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