共和国の旗の下に   作:旭日提督

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本気出さなきゃ、女神様には失礼じゃない?

 ―――ともかく、今は気持ちを切り替えよう。

 

 この世界がユニヴァースなのは、この際どうでもいい。

 問題は、この賞金稼ぎを如何にして排除するかだ。

 猪突猛進な気があるアルトに任せては、二人とも斬られるかもしれない。ここはできるだけ、穏便に。ユニヴァースのあの二人なら、事情を知れば味方になってくれるかもしれない。

 

「ほぅ、賞金稼ぎか。逃げるなら今のうちだぞ」

 

 ―――ゑ? 

 

 突如として響く、凛としたセイバーオルタボイス。

 見れば、我が最愛の弟子がライトセーバー片手に賞金稼ぎ二人に向けて今にも飛びかからんとする勢いではないか。

 

「ちょっ…………アルト!」

 

「ご心配なく、マスター。賞金稼ぎ風情に遅れは取りません! ここは私にお任せを」

 

「いや、ちょっと待て、アルト。彼女達はバトルドロイドとは違う!」

 

 いやいやいやいや! 何早まってくれるのこの子!? それに何故か暗黒面オーラをひしひしと感じるんだけど!? 

 

「何であろうと、マスターの前に立つ者は斬り捨てます。ご指示を、マスター」

 

 いかん。

 アルトは完全にヤる気だ…………! 

 とにかく、今は彼女を落ち着かせなければ…………

 

 ―――それはそれとして、オルタボイスのキャストリア…………やばいやばい。これはやばいです。破壊力が凄すぎる。なんだかゾクゾクする―――じゃなくて! 

 

「ほら、やっぱりヤバいって…………! あのジェダイ、本気で怒ってるし――!」

 

「―――うん、ちょっとヤバいかも? 報酬、ちょっと怪しくなったかなぁ~?」

 

 いやいや! 今は彼女を止めるのが先だ! 煩悩を捨てろ、シャルロット! 

 スペースイシュタルとジェーンもちょっと引き気味だし…………! 

 

「とにかく、今は待て、アルト。彼女達の相手は私がする」

 

「マスター!?」

 

「いいかいアルト。今は待つんだ。交渉できる相手とできない相手、その見極めも、ジェダイにとっては重要だよ」

 

「!? ―――はい、マスター!」

 

 …………よかった。いつものアルトに戻ったみたい。

 私の言葉を聞いたアルトは、いつも通りの素直ないい子になってくれた。

 

「―――で、そこの賞金稼ぎさん。"私達を通してくれないかな"?」

 

「はぁっ!? 幾ら相手がジェダイだって、こっちにはこっちの仕事があるのよ! そう簡単には通れると思わないことね」

 

「クスッ、虚勢が見え見えねぇ。いいのよ? 降伏しても」

 

「ジェーン!? あんたねぇ…………」

 

 ―――どうやら、マインド・トリックは通じないらしい。普段あまり使わないから鍛えてないのが祟ったか、サーヴァント相手には通じないのか。

 とにかく、最も簡単に彼女達を懐柔できる手は使えない。となると、頼りになるのは純粋な交渉力だ。

 

「で、そこの賞金稼ぎさんはどうするんだい? 戦う? それとも逃げるかい? 私は逃げる者は追わない主義だ。(ジェダイ)がここにいる意味だって、分かるだろう?」

 

「ぐっ…………言わせておけば―――!」

 

「ふぅん。やる気かい?」

 

 …………やはり、プライドが高いイシュタルはそう簡単に落ちないか。これは少し、刃を交える必要があるやもしれない。

 

 私は愛用のダブルブレードセーバーを起動し、その鋒をイシュタルに向ける。

 

「果たし合おうというなら、名乗らない訳にはいかないね。―――私はシャルロット・フォン・ブリッヒャー。只のジェダイ・ナイトだよ」

 

「―――アシュタレト。しがない賞金稼ぎ。私の名前よ」

 

 アシュタレト。そう名乗った彼女は、腰に提げたセーバーを起動する。

 ―――黒い、刀のような刃。間違いない。大きさからナイフの類いだと思ったが、まさかこんなところでダークセーバーが見れるなんて。

 ダークセーバーは、古代のジェダイが使用したという伝説の武器で、原作ではマンダロリアンのテロリストグループ、デス・ウォッチが使用していたものだ。あんなのを持ち歩いてる辺り、彼女の出自も訳ありそうだが…………

 

 …………それにしても、彼女の名前がまさかまさかの第一再臨なのは予想外だ。見た目は完全にセイバーウォーズⅡのスペースイシュタルなだけに、名前もイシュタルなんだろうと勝手に想像していたが、まさかそっちの名前を名乗るなんて。

 

「あくまでも、依頼主への筋は通すようだね。誠実なのはいいことだが、時と場は弁えた方がいいよ」

 

「生憎、この稼業は信頼が第一なの。怖じ気づいて逃げてばっかりなんていたら、受けられる仕事だって受けられないわ。そしたら私達はおまんまの食い上げってワケ。私達だって必死なのよ、ジェダイさん」

 

「なるほど。残念だ。君とは、違う出会い方をしたかったよ」

 

「同感ね。でもここで会ったが百年目。やることなんて分かってるでしょ?」

 

「ああ―――勿論だ」

 

 開戦の火蓋は、ここに切って落とされた。

 互いに名乗りを上げた以上、やはり一戦は交えなければならないらしい。

 

「―――アシュタレト、本気?」

 

「ええ。ジェダイだろうと何だろうと、目の前に立つならやるしかないでしょ」

 

 イシュタル改め、アシュタレト。―――彼女は、本気だ。

 

 ―――ダブルブレードだったら、ちょっとキツいかなぁ。

 

 ダブルブレードのセーバーは、テンプルガード時代にちょっと鍛えただけ。他は我流だ。正直、扱いには自信がない。

 対して、アシュタレトの構えは完成されている。鍛えた師がよっぽど優秀だったのか、はたまた彼女の才能か。恐らく、その両方だろう。

 

 ―――うん、仕方ない。

 

 認めよう、彼女は、そこらのバトル・ドロイド風情とは何倍も違う。

 

「行くわよ。ジェーン、援護よろしく!」

 

「ハイハイ、任されたっ!」

 

 ダークセーバーを構える彼女の傍ら、ジェーンは手持ちのブラスターの銃口を此方に向けた。

 

「――アルト、今日のことは、誰にも言ってはいけないよ」

 

「マスター? 何を―――」

 

 予め、我が最愛の弟子には釘を差す。

 

 どうも、彼女相手では、慣れないダブルブレードを使うべきではないようだ。フォースが、そう告げている。

 ことジェダイ人生において、フォースの勘というものは馬鹿にならない。

 元の意識が地球生まれな私にとっては眉唾もいいところだが、今の私はジェダイ・ナイト。そんな戯言で切って捨てられるほど、フォースは甘い存在じゃない。

 

 黄金に輝くダブルブレードの光刃を消滅させ、セーバーの本体をアルトに渡す。

 

「? マスター……?」

 

「それを持ってて、アルト。どうも彼女、ちょっと本気でかからないとヤバそうだからね」

 

 流石は原初の女神の系譜。アシュタレトから感じるフォースは、そこらのジェダイの比なんかじゃない。さぞジェダイとして育てたら、それこそアナキン並の逸材になっただろうに、残念だ。―――いかんいかん、私もオーダーの雰囲気に毒されたかな。

 

 腰に提げたセーバーに、手を伸ばす。

 

「…………?」

 

「互いに名乗りを上げたからには、慣れない得物で手加減するという訳にはいかないでしょう? ―――少々、本気を出させて貰いますよ」

 

 両手に持ったセーバーを、八双に構える。―――第4の型、アタルの構えだ。狭い通路内では、極めて有効な型でもある。

 ダブルブレードセーバーを捨て、通常のセーバーを手にして初めて、私はこの型を使える。そしてこの型は、私が一番慣れ親しんだ型。"強敵"を倒すならば、私にはこの型しかない。

 

「―――へぇ…………。ジェダイのセーバーって、一本だけじゃないのね。セーバーって、ジェダイには神聖なものって聞いてたけど」

 

「お生憎様、私はちょっとひねくれ者でね。セーバーなんて、所詮道具。必要に応じて使い分けるし、使い捨てることだって厭わないわ」

 

 一般的に、ジェダイのライトセーバーはワンオフで、神聖なものだ。ワンオフなのは私のセーバーだって変わらないが、そこまで教義に忠実じゃない私にとって、セーバーはよく切れる剣程度の認識でしかない。使い捨て用の人工カイバークリスタルを使用したセーバーを研究していたのも、その考えに拍車を掛けた。

 

 ―――八双に構えた、セーバーのスイッチを押す。

 

「なっ…………!?」

 

「―――へぇ、珍しいじゃん」

 

 赤い、血のような、深紅の光刃。

 

 何故だか、私のセーバーは天然物のクリスタルを使っても赤くなる。だから、あまり人前で使いたくはなかったのだけれど。

 原作では、赤いセーバーはシスの色。

 それはこの世界でも変わらないようで、今は亡きマスターサイフォ・ディアスからは絶対にこのセーバーを使わないように、って強く釘を刺されたものだ。

 

 だけれど、アシュタレトを前に手加減するなど、非礼にも程がある。

 これでも騎士の端くれだ、それぐらいの矜持はある。互いに名乗りを上げたからには、一度本気でぶつかり合うべきだ。彼女がダークセーバーを翳した以上、私も相応の得物を以て挑もう。

 

「さぁて、準備はいいかな? ―――本気でいくよ」




赤セーバー、解禁の巻。
赤セイバーではありません。

赤は赤でも、シスの赤じゃなくて共和国の赤、ヴェネター級スター・デストロイヤーの赤です。シャルロットはそう思い込むことにしています。
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