共和国の旗の下に   作:旭日提督

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Fatal Battle_1

「―――アルト。今日のことは、誰にも言ってはいけないよ」

 

 セーバーを八双に構え、光刃を起動する。

 

 現界するは、深紅の光。血のように紅い、原初の光。

 

 原作では、赤いセーバーは専ら悪の象徴、シスの色だ。

 たかが不良の私如きに、扱える色ではない。

 実際、こんなものを他のジェダイの前で見せたら、八つ裂きにされる未来しか見えない。

 

「へぇ………赤いセーバーに、黒い外套。もしかしなくてもあんた、実は伝説の暗黒卿とやらかしら?」

 

「まさか。私はただの、そこらにいる不良ジェダイさ。――ただ、この色については一つだけ、訂正させて貰うとしよう」

 

 確かに、この色は邪悪の色、と原作では位置付けられている。だけど、私のセーバーは、そんなんじゃない。ヴェイダーやシディアスのセーバーには、絶対に込められない意味が、このセーバーには込められている。

 

「赤は赤でも、私のセーバーは共和国の赤。コルサント直行の外航船が、何色か知ってるかい?」

 

 小説の登場人物のうち、唯一尊敬した彼が愛した、その理念。

 その理念の色こそが、この赤なのだ。

 腐っても共和国は、民主主義国。そして共和国の外航船は、その船体を名誉ある赤色で塗装される。即ち、赤色は共和国――ひいては民主主義の象徴でもある。シスの赤とは、訳が違う。

 

「成程ね。そういう訳か。ある意味、ジェダイにはお似合いかも」

 

「光栄だね。しかし、オーダーの連中は頭が堅くてな、この色の価値を認めないんだ」

 

「それは残念。―――だけど、いいのかしら?私達にそんなのを見せて」

 

「心配ないよ。―――この場で口を封じるから」

 

 開口一番、床を蹴って一直線にアシュタレトを目指す。

 彼の魔術師と、語源を同じくする名を戴いた、原初の女神。生半可な攻撃は通じまい。

 

「やぁぁっ!!」

 

「ぐっ………!」

 

 赤い光刃が、アシュタレトの黒いセーバーと斬り結ぶ。

 

「ほぅ。ジェダイでもないのに、やるじゃない」

 

 ダークセーバーの刀身を巧みに反らし、私の突撃の威力を殺す。大したものだ。もしや、フォース感応者でないかと疑うほどに。

 

「こんの………ッ!こっちは金と生活が掛かってんのよ、ジェーン!!」

 

「はいはいッ!狙い撃つよ~!」

 

 今度は後方に控えていたジェーンから、ブラスターの二連撃。アシュタレトと斬り結んでいる私では、そのままでは躱しようがない。

 

「マスターっ!」

 

 蒼白の光刃が、ジェーンの赤いブラスター弾を弾く。

 

「………すまない、助かった」

 

「いえ、マスターを助けるのも、私の務めですから」

 

 私の傍らに控えたアルトは、光刃を真っ直ぐジェーンに向けて牽制する。

 

「ちぇーっ、そう上手くはいかないか」

 

「お生憎様、鍛え方が違うのよ」

 

「ぐっ………」

 

 セーバーに力を込め、フォースプッシュでアシュタレトを弾き返す。

 

 これで、戦況は仕切り直し。互いに2対2で睨み合う。

 

「さて、降参したらどうかな?賞金稼ぎさん。実力差は分かっただろう?なぁに、心配ない。口止め料くらいなら出すとも」

 

「口止めって、そっちの意味かい!?」

 

 ここで一度、降伏勧告。

 今の一撃で実力差は分かった筈だし、彼女なら、無謀なことはしまいという信頼もあった。

 所詮は金の問題だ。大した忠誠もない彼女達は、金次第で簡単に此方側に引き込める。

 

「マスター?殺らないんですか?こいつら」

 

「ああ。敵戦力の分散は戦術の初歩だからね。彼女達だって、分の悪い賭けには乗らないだろう。より堅実な方を選ぶ筈さ」

 

 今の一撃で、実力差ははっきりした。

 実のところ、私一人でも、アシュタレトとジェーンを降すのは簡単だ。片や不良とはいえジェダイの訓練を続けてきた身、片や我流の賞金稼ぎ。元の霊核とは逆に、今は私が優位な立場だ。彼女なら、それを理解できないわけがない。

 ダークセーバーを見たときはひやりとしたが、実力では、完全にこちらに分がある。

 

 そしてアルトは、少し脳筋なところを直してくれ。わざわざバスターゴリラになる必要もないだろうに。

 

「ちっ、全部お見通し……って訳か。確かに、今の私じゃあんたに勝てない。命あっての物種だもの、情もないクライアントの為に命を掛ける必要もないわ。―――で、幾ら出してくれるのかしら?」

 

 流石はあかいあくま、その写し身だ。金のことになるとがめつい。

 

「なら話は早い。とりあえず、3000クレジットで手を打とうか?」

 

「足りない足りない。私達がクライアントから幾ら貰う予定だと思ってんの」

 

 予想通りの内容だ。

 アシュタレトの意を汲んだジェーンから、ダメ出しを食らう。

 

「ジェダイって、意外と貧乏なんだから、少しは勘弁して欲しいんだが………じゃあ、5000でどうだ?」

 

「足りない。わざわざ鞍替えしてあげるんだから、15000は下らないわ」

 

「なっ………ボッタクリにも程があるぞ、賞金稼ぎ!」

 

「まぁまぁ、アルトは少し黙ってなさい、ここは大人に任せててくれ」

 

「むぅぅ~~!」

 

 梯子を外され、可愛らしく頬をむくれさせる我が弟子。すまないが、ここは重要な局面なんだ、ゴリラムーブは控えてくれ。

 

「君達だって、セーバーで切り刻まれるのは嫌だろう?そこを考えて欲しいんだがなぁ」

 

「………じゃあ、13000までまけてあげる」

 

「命の保証がたった2000?冗談。虫が良すぎると思わない?」

 

「ぐっ………なら、11500で」

 

「まだ」

 

「――11000」

 

「がめついよ、賞金稼ぎ」

 

 繰り返される、押し問答。

 

 回数を重ねるごとに、互いの妥協点へと近づいていき―――

 

「10000」

 

「よし、その値段でいこう」

 

 ―――ここに、契約は成立した。

 

 アシュタレトと、堅く握手を交わす。

 全く、薄給のジェダイには痛い出費よ。何が禁欲だ、くそくらえ。職業選択の自由はないのか。まるで話にならない、給料と仕事が釣り合ってない。

 

 次々に沸き出すオーダーへの不満を、そっと胸の内にしまい込む。今は、不要な感情だ。

 

「まぁ、正解じゃない?幾ら金のためとはいえ、アレを知った後じゃねぇ………」

 

 ジェーンは、アシュタレトの決断を尊重する言葉を吐く。言外に、元クライアントへの不満を乗せて。

 

「アレ?とは何かな。是非聞かせて欲しい」

 

 彼女の態度で、何となく察した。

 その"アレ"こそ、今回の任務の目標だと。

 

「げっ、言わなきゃ駄目?」

 

「是非とも、お願いしたいところだね。―――ああこれも、命の保証金に含めて貰うか」

 

「なんて横暴な―――まぁ、いいわ。話してあげる」

 

 やれやれ、といった様子でアシュタレトは向き直る。

 

 

「―――ブルー・シャドウ・ウイルス。それが、この施設で作られた"兵器"の正体よ」

 

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