共和国の旗の下に   作:旭日提督

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引き際を心得よ、さもなくば、宇宙の藻屑だ

 

「よぅしわかった。アルト、〈カルデア〉をこの施設の上空に移動させろ。軌道爆撃だ」

 

「マスター!?」

 

 細菌兵器だと? 冗談じゃない。

 

 万が一そんなものが放たれれば、大惨事どころでは済まない。――――確か、ブルー・シャドウ・ウイルスはクローン戦争中、ナブーで研究されていた分離主義者の兵器だった筈。それをここで食い止めることができれば…………

 

「容赦はいらん、徹底的に叩き潰すぞ。で、そこのお二人さんはどうする? 奴等に与しても、口封じに消されるがオチだと思うが」

 

「…………そうね、あんたの提案に乗るわ。んで、私達は何をすればいい?」

 

「簡単だ、前クライアントの下まで案内しろ」

 

「オーケー、ならついてきて。モタモタしてると逃げられるわ」

 

 鞍替えに賛同した賞金稼ぎに、黒幕の下まで案内させる。こんな極秘計画を進めているんだ、分離主義者の中でも大物に違いない。――――流石にドゥークーが出てくるとまでは思えないが。

 

「―――ちっ、遅かったか」

 

 だが、私達の決断は、幾ばくか遅かったようだ。

 施設全体を、激しい振動が襲う。

 

「なっ…………畜生あいつ、モニターかなんかで見てたわね!」

 

「マスター! 早く黒幕の下に急ぎましょう!」

 

 アルトやアシュタレトは、完全にヤる気満々だ。だが、施設の崩壊が始まっている現状ではもう遅い。

 

「いや、急いでシャトルまで戻るよ。そこの2人もついてきな、今から追いかけたってもう間に合わないさ」

 

「…………随分と弱気じゃない。今更臆病風に吹かれた訳?」

 

「そんな訳あるか。施設が崩落してるって事は、黒幕はもうここにいない可能性が高い。なら無理に施設内で決着をつけるより、追撃の準備をした方がいい。――――ほら、見つけた。ちょうど今、この施設からシャトルが飛び立ったみたいだぞ」

 

「―――準備がいいわね、あんた。いいわ、まずはここから逃げましょう」

 

 敵がもう逃げ出してる以上、この施設に用はない。今はとにかく、シャトルを目指すのみだ。

 

 施設外の着陸パッドに駐機したイータ級シャトルに急いで乗り込み、惑星の大気圏を離脱する。

 〈カルデア〉まで戻ってみたら、彼女は一隻のシーシピード級シャトルを拿捕していた。―――恐らく、イードゥーの地表から脱出した黒幕のシャトルだろう。

 

「よくやった、R3。さぁて、第二ラウンドと行きますか! あのシャトルに乗り込むよ」

 

 〈カルデア〉に着艦してすぐ、私達はシーシピード級シャトルに乗り込む。

 このシャトルは原作では、分離主義者の主力シャトルとして使われていた型だ。私はクローンウォーズを何度も見返してたから、10年近く経ってもその形を覚えていた。

 中に乗り込むと護衛のバトルドロイドが何体かいるだけで、私一人でも簡単に片付けられた。

 コクピットまで踏み込むと、そこに居た一人の灰色長身のエイリアンが、怯えた様子で後退る。

 

「ひいっ…………じ、ジェダイ……!」

 

「ほーん。あんたが黒幕かい?」

 

 対象は白衣を纏ったエイリアンの男―――体格からすると、種族はフォーストか。そんなことはどうでもいい。

 

「し、賞金稼ぎ共! …………私を助けろおっ!?」

 

「へぇ……まだそんなこと言うんだぁ、残念。生憎、あんたはもうクライアントじゃないのよ」

 

「そういう訳だから、大人しく捕まっちゃってね」

 

 アシュタレトとジェーンの二人が退路を塞ぎ、目の前の男を追い詰める。孤立無援とは正にこの事、奴にもう手立てはない。

 

「さて…………あんたには色々聞きたいことがあるけど、先ずは―――」

 

 懐から、セーバーを取り出す。

 起動した光刃は短刀サイズで止まり、それを逆手に持ち替えて―――

 

「あ"あ"あ"っ!?」

 

 絶叫が、コクピットに響いた。

 

「あんなモノ造っといて、五体満足で帰す訳ないでしょ。その腕、貰うよ」

 

 人造カイバークリスタルが発する赤い光刃は、エイリアンの右手を切断し、傷口を焼き尽くした。

 

「き、貴様―――ジェダイは無抵抗の者に手を上げない筈じゃ…………」

 

「まさか。"ブルー・シャドウ・ウイルス"なんか作ってる時点で、そんな言い訳通ると思ってる? 冗談も程々にしなさいよ」

 

 そうだ、BC兵器を製造している時点で、共和国の敵だ。兵器の製造という行為自体が、共和国への抵抗とも言える。ならば、その抵抗を断つために腕を吹き飛ばすという行為は、ごく自然なことだ。

 

「さて、話はこれからたっぷり聞こうか。生憎、私はそこらのジェダイほど優しくないよ」

 

「ひっ…………」

 

 エイリアンを連行しようと、奴の襟首に手を伸ばす―――その時だった。

 

「マスター、危ないっ!」

 

「何…………ッ!」

 

 先程まで私の身体があった場所に、"赤い"ライトセーバーが生えていた。

 

「まさか、こうも簡単に捕まってくれるとはねぇ…………伯爵も失望してるよ」

 

 天井から、スタッと着地する灰色の人影。

 低い女の声、灰色の肌にスキンヘッド、そして手に持つ二振の赤いセーバー…………間違いない、シスの暗殺者、アサージ・ヴェントレス…………! 

 

「チッ―――シス卿か! 下がれ、アルト、賞金稼ぎ! こいつは私が引き受ける」

 

「懸命だねえ、ジェダイ。…………いや、一体どっちなんだい? あんた」

 

「マスター…………!」

 

 あくまで私は、ヴェントレスに初対面であるかのように振る舞う。―――この記憶が万が一シス卿に知られたら、私の計画は台無しだ。辺境で隠居すら出来なくなる。

 加えて、ヴェントレスはアナキンやオビ=ワンといった主役格とも互角に渡り合う強力な戦士だ。アルトは兎も角、まともにジェダイの訓練を受けていないアシュタレトとジェーンには厳しい相手だ。

 それに、ヴェントレスが私とエイリアンの間に割り込んだことで、数の有利も消えている。狭いコクピット内では、せいぜい私一人しか暴れられない。――してやられたわ。

 

「さぁ? 一応建前はジェダイだけどね。だからって、あんた達の仲間って訳でもないけど」

 

「ハッ、赤いセーバーを握っといてよく言うよ! シスの矜持すらも無いのかい!!」

 

 二、三度、ヴェントレスと剣戟を交わす。

 言葉を交わして察したが…………ああ、これは完全に勘違いされてるわ…………。

 

「えーっと、大変申し訳ないんだが、私はシスでも何でもない、只の不良ジェダイだよ。買い被られるのは困ったものだ」

 

「何だと!?」

 

 ヴェントレスの斬撃に、より力が乗る。あぁ、どうやら怒らせてしまったようだ。

 

「人造のクリスタルを使ったら誰が作ろうと赤くなるだろ? それに、赤は赤でも、共和国の赤だと思って貰いたいね―――!」

 

 短刀型セーバーの一撃が、ヴェントレスの勢いを殺す。

 この狭い空間内では、得物が長いヴェントレスより、私の方が有利だ。だが、流石はネームド戦士。彼女のアクロバティックな動きは狭いコクピット内でも健在で、逆に私が翻弄される。

 

「ほらほらどうした! さっきまでの威勢はハッタリかい!」

 

「ちっ…………」

 

 更に、凶報は続く。

 

《マスター! 前方から銀行グループフリゲートが……!!》

 

「なに―――っ!」

 

 コムリンクから響く、アルトの声。

 続いて、R3からもレーダーで捉えた情報が送られてくる。

 

「さて、降伏する気になったかな? ジェダイ」

 

 形成が有利になった途端、一転して高圧的に勧告するヴェントレス。まこと癪に障ることこの上ないが、現状は認めよう。

 

「ミュニファンストが3隻…………〈カルデア〉1隻じゃあ敵わないな―――仕方ない。よしアルト、後ろに向かって全速前進だ!」

 

「なっ、待ちな、アンタ!」

 

 去り際に煙幕用のサーマルデトネーターを手土産に放り投げ、シーシピード級シャトルから脱出する。

 

 アルトに命じ、即座に〈カルデア〉を動かせるように準備して、ミュニファンストの包囲が完成する前にシャトルを切り離したらコルサントへ向けて即座に撤退! 流石に800メートルの戦闘艦3隻持ち出されちゃ勝ち目がない。幾らフォースを使えるって言っても限度がある。250メートル級の〈カルデア〉1隻で正面突破はあまりにも分が悪すぎる。

 優れた指揮官たるもの、撤退のタイミングを間違えてはいけない。まぁ研究者の腕をへし折って施設を放棄させたし、幾らか情報も持ち帰れたから、戦術的勝利は達してるでしょ。

 

 ってな訳で、逃げるが勝ちよ! 

 

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