~コルサント・元老院オフィスビル~
はぁ~~~~
銀河共和国の政治を司る元老院議員達、その執務室兼宿舎として、元老院ビルの隣に建てられたのがこの元老院オフィスビルだ。この中には、当然我らが最高議長シーヴ・パルパティーン閣下のオフィスも存在し―――
―――この畜生が。
自分が黒幕の癖に、なぁに涼しい顔しとるんじゃワレェ!?
なーにが非常大権は必ず返すだぁ! 舐めとんのかぁ!?
―――コホン。
とにかく、小官は今、絶対絶命のピンチに陥っているのであります!
―――海軍の支援を要請する!
駄目だ!
支援砲撃は却下された。今は単独でこの窮地を乗りきらなければならない。
「君がマスターブリュッヒャーか。ジオノーシスでの活躍は聞いているよ」
「それは光栄です、議長閣下」
何食わぬ顔で挨拶するパルパル閣下。パルパルのパルパルをパンシャンドラムにしてやろうか? ああん?
「ですが―――戦争になど、なって欲しくなかったのですがね」
言外に、"おめぇら元老院が仕事しねーからだぞ"と非難する。いつまでもジェダイに甘えてるから腐ってんじゃねーか。
無論、アミダラ議員のような例外だって存在するが…………賄賂はまだしも、堂々と議員の暗殺すら行われるなんて民主主義への冒涜過ぎるだろ、普通に考えて。
「それは同感だ。だが、起こってしまったからには仕方ない。今は早期終結を目指すだけだ」
「お言葉ですが議長閣下、今回の戦争はナブー危機の比じゃありません。長期化も視野に入れられた方が宜しいかと」
おうおう、自分で焚き付けといてよく言えるな? んん?
トリューニヒト以上に面の皮厚いんじゃねぇか。
やばっ、心に蕁麻疹ができそうだ。作中のヤン提督の気持ちが痛いほどわかる。できればわかりたくなかったけど。
「ほぅ。其方は他のジェダイとは違うことを言うのだな」
「他のジェダイと?」
「うむ。評議会のジェダイは最善を尽くす、としか言ってくれなくてな。そんな中、戦争が長引くと言ったのは其方が初めてだ。よければ理由を聞かせてもらいたい」
その程度のブレーンさえ居ないのかよ…………と初めて最高議長に若干の憐憫を覚えたが、そういえばこいつ全部分かって言ってるんだった。
―――よし、トールボーイ落とそっと♪
「普通に考えれば分かります。分離主義者には銀行グループやテクノユニオンといった、銀河を又にかけた錚々たる顔ぶれが集まっているんです。技術力においても持久力においても彼等の方が上です。正直、クローン軍がいなければ一瞬で決着がついたでしょう」
通商連合を始めとする大企業は確かに傲慢だが、同時に銀河にはなくてはならない社会インフラを提供していた。そうした企業が軒並み分離主義派に靡いたのだから、彼等が抜けた穴は大きすぎる。原作で分離主義派があれほどまで長く戦えたのも、ひとえに彼等の資本によるところが大きい。
「純粋な国力、生産力で言えば、彼等より多くの星系を支配している我々が有利です。ですが、その状態が余計に硬直を呼び込むでしょう。総合力で見たら互角の相手に、短期決戦で済むとは到底思えません」
「なるほど…………手厳しい意見だな。確かに、君の言うことも一理ある。―――ジェダイにしては、随分と政治に詳しいのだな、其方は」
「ジェダイとて、銀河系のパワー・ゲーム*1のプレーヤーの一員です。悲しいですが、共和国の政治外交に深く関わっている以上、それは避けられない。なら、政治情勢くらいは勉強した方がいいでしょう?」
方やフォースの求道者、方や平和の守護者として振る舞ってきたジェダイは、外交安全保障その他諸々共和国のハード・パワー*2の一員として、いや最大のハード・パワーとしての役割を期待されていた。そんな状態が続いていたにも関わらず、フォースとの絆だけに拘った評議会は頭が堅い。暗黒面でフォースの未来予知が曇ったとしても、政治外交情勢に目を向ければある程度の予測はできただろうに。
うん、もうちとプレーヤーとしての自覚持とっか。
「いやはや……面白いな君は。ジェダイは全員、フォースを重く見ていると思っていたが…………前評判と違って真面目なのだな」
「買い被りすぎです議長閣下。私はやるべきことをやっているだけです」
「そう謙遜するな。其方やスカイウォーカーのような若い世代が、次代のオーダーを導くのだからな」
ふーん、スカイウォーカーねぇ…………。
やっぱりそこで名前出すんだ。
まぁ"選ばれし者"の評判は有名だからねぇ…………それが余計、プレッシャーになってるのに。
「若い? ハハッ、議長も冗談がお好きで。これでもアラサーですよ?」
「私から見れば、充分に若いだろう」
「これは失礼、一本取られました」
そういえば私、今は27歳なのよねぇ。一般社会で言えば、まだまだ働き盛りの年齢だけど、そろそろ結婚を焦り始める年頃だ。ま、どーでもいいけど。
「…………今日は実に有意義だった。今後の活躍に期待しているぞマスターブリュッヒャー」
「議長閣下から直々に期待していただけるとは光栄です。では、失礼致します」
パルパティーンに背を向けて、平静を意識しつつ部屋を退出する。こんなところで悟られる訳にはいかない。
プシュー、と、ドアが閉じる音が響く。
―――――疲れたぁぁぁぁぁ!!
いきなり黒幕から呼び出しなんて、いやぁ精神削れるわぁ。緊張が抜けたせいか、額には冷や汗がびっとりだ。
暗黒卿の相手がこんなに大変だなんて。いやぁ、モールのときはがむしゃらだったからなぁ。
しかし、暗黒面…………暗黒面かぁ。
そういえば私、元現代人の癖して戦場ではああだったんだよね…………
―――ヤバくね?
普通の一般人なら間違いなくあんなとこには立てないだろう。ジェダイとして過ごしたにしても、我ながら割り切りが良すぎる。
―――もしかして、パルパルになんか飛ばされた? いや、まさか…………ねぇ。
アハハハ…………
よし、帰ったらアルトの紅茶だぁ、楽しみだなぁ。
....................................
............................
.....................
............
~ジェダイ聖堂・私室~
「ただいまぁ~」
ドアを勢いよく開けて、久々の我が家の空気を堪能する。
紅茶とマシンと油の匂い――我が工房よ、私は帰って来たぞ!! ってあれ?
「あ! お帰りなさい、マスター!」
―――きれいな匂い。
まるで上流階級のマンションみたいだ。
散乱していた物は小綺麗に整頓され、室内には上品なアロマの香りが漂っている。
私を出迎えてくれたアルトのように、綺麗で整った部屋だ。
「…………アルト、これは?」
「えへへ、マスターが留守の間に整理してみました!」
―――天使か。
部屋の雰囲気は一変したが、彼女の献身を思えば悪くない。いやむしろ良い。この優雅さは紅茶にぴったりだ。
「―――ありがとう。これは過ごしやすそうだ」
「マスターにそう言って戴けるとは嬉しいです! …………でもマスターも、そろそろ家事くらい覚えてください!」
「うげっ…………わ、私はまぁ、とりあえず生きていけたらいいからさ―――」
「マスター!」
ううっ!?
久々に会ったと思ったらアルト、随分と溜め込んでいたみたい。
このあと私は、アルトから生活態度について1時間のお説教コースを食らった。
いや、うん。すまない、我が弟子よ。
「ところでマスター、なんか雰囲気変わりました?」
「え"っ………い、いやぁ何でもないよ。ただのイメチェンさ」
「ふぅーん。(マスターもお洒落するんだぁ。カラコンかなぁ?今度私もしてみよっと)」
(やばいやばい見られてるぅー、もしかして感付かれた!?)