銀河系の何処か、共和国と分離主義者の戦場跡。
宇宙船やスターファイター、ドロイドの残骸が浮かぶ戦場跡は、格好の宝の山だ。
宇宙船に使われている希少金属やパーツ、稼働状態のファイターやドロイドはそれだけで高値で売れる"お宝"だ。故に、こうした宙域には廃品回収業者という名の一攫千金を狙う連中や、海賊のたまり場となっていた。
そうした戦場跡の一つに、"ゴミ漁り" では定番の廃品回収船、GS-100型が現れる。
この宇宙船は広大なペイロードと何でも掴めると評判のクレーンが売りで、廃品回収業者達が愛する御用達の船として知られている。
しかし、この船を操るのは業者ではない。
―――銀河共和国第81独立戦闘カンパニー、"パージ・トルーパーズ"
それが彼等の正体であった。
~GS-100廃品回収船改工作艦〈メドゥーサ〉~
「キャプテン、前方に大型艦船の反応です」
特徴的な黒と赤の装甲服を纏ったクローン・トルーパーが、共和国宇宙軍提督の軍服に身を包んだクローン・ナビゲーション・オフィサーに告げる。
「外観上はまだ原型を留めているな。いけるか」
立ち位置からして艦長の位にあるであろう彼は、品定めするような視線で廃棄された大型艦船―――独立星系連合のミュニファンスト級スター・フリゲートを眺める。
「ハッ、ただいまEVA班*1を送り込んだところです」
「手際が良いな」
「これで7度目です、流石に慣れます」
二人のトルーパーは短い会話を交わし、軽口を叩き合う。
「キャプテン、〈ヴィンディケーター〉より通信、"コード・カルデアス"です」
「―――ホログラムに繋げ」
「イエッサー」
通信士からの報告で、オフィサーは注意を別の事項に向けた。
―――"コード・カルデアス"
ジェダイ将軍、シャルロット・フォン・ブリュッヒャーからの通信を示す暗号コードだ。
直属の上司からの通信に、オフィサーの緊張は嫌が応にも高まる。
《キャプテン・ダスティ、進捗状況を報告せよ》
女のジェダイ将軍は手短に、用件だけを伝える。
オフィサー―――クローンキャプテン・ダスティは彼女の指示に従い、作戦状況の報告を始めた。
「進捗は順調です。わが"動くシャーウッドの森"艦隊は既にプロキュレーター級スターバトルクルーザー1隻、アクラメーター級アサルト・シップ1隻、レキューザント級軽デストロイヤー1隻、カンサラー級クルーザー3隻、プレイトリアン級フリゲート4隻、スランタ級コルベット2隻を獲得しています。現在分離主義者の漂流船を発見し、これから回収作業に取り掛かるところです」
「ほう、プロキュレーター級か…………なかなかお目にかかれないレア物じゃないか。一体何処で?」
「漂流中のデブリから、偶然。ただし、システムの半数はダウンしています。ティアマトに回航を命じて修理させていますが、過信は禁物かと」
「いや、この時点でバトルクルーザー級を確保している時点でよくやっている。正直想定以上の成果だ」
「ありがとうございます、将軍」
「…………ところでキャプテン。君達のことは、誰にも知られてはいまいな?」
シャルロットはダスティに労いの言葉を掛け、彼等の活躍を称賛した。
…………が、今までの穏やかな表情から打って代わり、今度は鋭い金色の眼光がダスティを貫く。
「問題なく、将軍。目撃者のゴロツキ共は皆殺しにしています」
「よろしい。―――その調子で続けてくれ、キャプテン。あと3年だ。……3年後、君達の活躍は必ず報われる。それまでの辛抱だと思ってくれ」
「イエッサー」
シャルロットからの通信が切断される。
同時に、ダスティは感じていた圧迫感からもようやく解放された。
「アァ、将軍との通信はいつも疲れる」
「だったら俺が代わろうか? あの氷みたいな視線、たまらないぜ。お前が羨ましいよ」
「ほぅ? なら代わるか? 今なら部隊管理の書類整理も付けてやるぜ?」
「……いや、遠慮しておく」
ダスティと先程まで会話していた黒いトルーパーは、シャルロットの通信が終わるや否や彼をおちょくり始めた。
シャルロットに与えられた極秘任務に従事する彼等は常に刺激に飢えており、通信一つ取っても娯楽の種に変えてしまう。
その
「しかし、"あと3年"か。考えれば長い期間だな。将軍は一体、何を予見しておられるのか」
だが、彼等パージ・トルーパーズは、自分達の行く末に一抹の不安を抱えていた。
表向き彼等は第一次ジオノーシスの戦いで戦死したこととされ、共和国にこそ属しているものの、他の兄弟達に会うこともない。任務内容も極秘といえど、やっていることは"ゴミ漁り"である。
そんな彼等は、"見た目だけは"可憐な自分達の上司の容貌と、たまに訪れるゴロツキ業者に対する"ヒャッハー"で、士気を維持している状態だった。
「将軍は、共和国の中に裏切り者がいると踏んでいる。そして俺達は、その裏切り者に対するカウンターパートなのさ。つまり、兄弟達最大の危機に、颯爽と駆けつけるヒーローが俺達だ。それを思えば、3年の隠遁も悪くない」
「……気楽でいいよな、お前は」
ダスティとは対照的に、黒いトルーパーは楽観的に未来を語る。
そんなお気楽者のトルーパーを、ダスティは半ば呆れた目で見守っていた―――
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~ヴェネター級艦〈ヴィンディケーター〉~
「マスター? 今どなたかと通信してました?」
「ん? ああ、アルトか…………いや、何でもないよ。さて、今日の訓練といこうかアルト。メニューはいつも通り、対バトルドロイド1個師団だ」
「うげぅ、あれつまんないんだよね~。マスター、今日はセーバーデュエルにしません?」
「いいや、駄目だ」
「…………マスターのいぢわる」
「拗ねても駄目だぞ、アルト」
かわいい顔を膨れさせて、不服オーラを前面に押し出す我が弟子。
だが、残念、その手にはもう惑わされないぞぉ~?
ふふっ、わが弟子よ、いつまでも可愛さで食っていけると思ったら大間違いだ。
「ちぇっ、マスターのブランデー、ちょっと減らすか」
「…………もう一個師団追加だな、アルト」
「えええっ!? ちょっ、マスター! 流石にそれは勘弁してくださぁーい!!」
我が心の共に手をかけようとは、幾らアルトでもゆるさないぞ!
という訳で、今日は楽しいブリキ野郎2個師団コ~~~ス!!
これが自業自得という者よ、アルト。観念して精進に励むといい、あははっ!
―――うん、我ながら悪役ムーヴが過ぎたわね、ほんと。今度はちょっと甘やかそっと。
いやぁ、しかしバレなくてよかったよかった。
まだ"動くシャーウッドの森"は極秘事項。あのパルパルを出し抜くためには、君にはまだ教えられないのだよ。敵を欺くにはまず味方から、と言うだろう?
―――いやぁ、疲れるわぁ。
これなら沖田さんみたいな何も考えず切った張ったしてた方がよっぽど楽だ。やはり脳筋が一番気楽、はっきりわかんだね。
しかし、あんな仮面を何十年もつけてたパルパル、ほんとすごい人なんだなぁ。
だが、やってみて初めてわかるというもの。私が四苦八苦している間、パルパルはあの仮面の下で薄ら笑いを浮かべてやがるのだ。
その才能だけは、本当尊敬する。
パルパルの皮の厚さ、少しは分けてくれたっていいのになぁ~。
あっ、だからってシワクチャなのはノーセンキューね! せっかくのセイバーフェイスが台無しになっちゃうもの!
■艦艇解説
プロキュレーター級スターバトルクルーザー
全長2500mの三角錐型の軍艦。後にスターデストロイヤーの一種としても知られる。およそ219BBYの時期にクワットドライブヤード社が製造した軍艦で、マンデーターⅠ級スタードレッドノートやプラエトルⅠ級バトルクルーザーとともにクワット星系の防衛を担当した。
プレイトリアン級フリゲート
3,996BBY、シス大戦時に旧共和国が運用していた180m級のフリゲート。後述のスランタ級とともに、後のハンマーヘッド・コルベットに通じるデザインを持つ。
デブリとして漂流していたところを動くシャーウッドの森艦隊に鹵獲される。
スランタ級コルベット
3,681BBYの大銀河戦争開戦時から旧共和国が運用していたコルベットで、プレイトリアン級を簡素化したような外観。ハンマーヘッド級とともに、後のスフィルナ級コルベットのタイプシップとなる。
デブリとして漂流していたところを動くシャーウッドの森艦隊に鹵獲される。
■部隊解説
銀河共和国第81独立戦闘カンパニー〈パージ・トルーパーズ〉
シャルロット直属のクローン部隊で、第2章「デルタ」話中で彼女がカミーノに発注したトルーパー達のうち、デルタ分隊を除く兵士達が所属している。
半数は第一艦隊に乗り込み未知領域やリシ・メイズで秘密基地建設に携わり、もう半数は「動くシャーウッドの森艦隊」として戦力拡張の任務に携わっている。
装甲服の形状、色彩はゲーム「JEDI:Fallen Order」に登場した帝国のパージトルーパーに準ずるが、バイザーの形状はカターン級アーマーに近く、他のフェイズⅠ装甲服と同様頭頂部にトサカのようなディテールがある。
部隊名の由来は「表舞台から消えた(パージされた)トルーパーの集団」から、隊員自ら名乗るようになった。