共和国の旗の下に   作:旭日提督

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 ライロスの戦いは共和国の勝利に終わった。
ジェダイナイト、シャルロット・フォン・ブリュッヒャーは次なる任務を果たすべく、艦隊を転進させる。
 しかし、惑星ナブーには、新たな危機が迫っていた。


ブルー・シャドウ・ウイルス

 ~ヴェネター級艦〈スピリット・オブ・ザ・リパブリック〉~

 

 

 急遽入ったライロスへの増援任務を終えた私達だが、戦士に休息の時はない。予定通り船団護衛とコア・ワールド哨戒任務―――と行きたいところだったのだが、ここでまた予定変更だ。

 ナブーで家畜が次々と急死する事件が発生し、私はジェダイ評議会からその調査を命じられた。

 

 ―――なんでまた、疫病の調査なんて。

 

 本業に任せればいいでしょ、とは思うがこれも任務だ、仕方ない。アルトとデルタ分隊、そして少数の部下を引き連れて、私はナブー付近に駐留する第121分艦隊旗艦〈スピリット・オブ・ザ・リパブリック〉に向かった。この艦は、私がこの任務に就いている間の母艦になる艦で、ヴェネターⅠ級艦〈ドーントレス〉〈パイオニア〉とともに第121戦隊を構成している。今回の仕事じゃ戦艦は完全に手持ち無沙汰なので、私が任務に携わる間は演習に励むらしい。

 

 ちなみに私のコマンダーであるルキアだが、彼はARC課程をクリアするため120教育大隊に入った。きっとこの野暮用が終わる頃には、立派なARCトルーパーになって帰ってくることだろう。

 

「将軍、見えました。121分艦隊です」

 

「向こうの誘導に従って着艦してくれ」

 

 私を含めた数名の乗客を乗せたニュー級アタック・シャトルは、〈スピリット・オブ・ザ・リパブリック〉の左右に開いたフライトデッキへと吸い込まれるように着艦する。

 シャトルを降りた私達を出迎えたのは、豊かな体型をした金髪の中年男性の将校だった。―――やけに見覚えのある風体の。

 

「ようこそブリュッヒャー将軍。少しの間と聞いているが、まぁゆっくりしていけ」

 

「お心遣いどうも。暫く世話になりますよ、ムジーク准将」

 

 ゴルドルフ・ムジーク准将。

 

 共和国宇宙軍第121分艦隊司令官を務める共和国軍人で―――お馴染みの新所長だ。

 

 なんでさ。

 

 ともあれ、仮拠点は無事に設置できたことだし、あまり気にしないことにしよう。

 

 だが束の間の休息もここまで。

 早速ナブー入りしていた先行部隊から報告があり、私達もガンシップ一機を借りて惑星首都シードへ向かうことになった………………私はいい加減休みたいです。

 

 

 

 ~惑星ナブー・首都シード~

 

 

「着いたぞ、ドクターアンバー」

 

 遠慮なく、用意された会議室に足を踏み入れる。

 室内には、先行部隊の指揮官を任せた軍医のドクターアンバー…………ショートの赤髪に結われた青いリボンを揺らす彼女の見た目は、ぐだぐだ勢にはお馴染みのコハッキーだ。

 

「あら、随分とお早い到着ですねぇ。報告入れてからまだ15分と経ってませんよ?」

 

「さっさと終わらせて帰りたいのよ、こっちは。で? 重大な報告って?」

 

 原典が原典なだけに、この何かやらかしそうな赤髪の軍医に報告を求め、近くの適当な椅子に腰掛ける。

 今のところこの軍医は真面目で従順でいるのだが、容姿コハッキー声マジカルルビーなので一瞬も油断ならない。

 

 ―――まぁ、元ネタ的にはマスターとサーヴァントなんですけどね! 

 

 ……ってことはあれ? 私の方が力関係的に不利? ―――ますます隙を見せられないねこりゃ。

 

「はい――実はですねぇ、何と何と! 今回発生した疫病はあの悪名高い"ブルー・シャドウ・ウイルス"なんです! おかしいですねぇ、あれはとっくに根絶された筈なんですが。何処かでひっそりと生き延びていたのかもしれません」

 

「……待て、ドクター。今"ブルー・シャドウ・ウイルス"と言ったな?」

 

 聞き覚えのある名前を出され、記憶と現実が結び付く。

 

 確か…………あれは…………そうだ! イードゥーだ!! 

 

「アルトっ!」

 

「は、はいっ!? マスター!」

 

 一年前の記憶を掘り起こし、頭の中で組み立てる。

 確か、あの惑星の秘密ラボで研究されていたウイルスが、そのブルー・シャドウ・ウイルス。ということは、ナブーに秘密ラボを移していたか――! 

 くそっ、失態だ。思えばこれ、クローンウォーズにあったストーリーじゃん! 本当はアナキン達が対処する筈の事件だけど、何かの拍子でタイミングがズレたか! 

 

「一年前の任務、覚えているかい?」

 

「あ――はい。確か、分離主義者の悪い科学者を懲らしめた任務でしたよね」

 

「そうだ。で、ここからが本題だが、そこで造られていたウイルスが正にそれ。そして今回の感染騒ぎだ。…………単なる偶然とは思えない。アルト、ムジーク准将に繋いでくれ。ナブーを封鎖して惑星全土をスキャンするぞ」

 

「分かりましたっ!」

 

「デルタ! 突入準備だ。一応予防接種も受けておけ」

 

「了解です、将軍」

 

「で、ドクターアンバー。肝心のワクチンはあるか?」

 

「はいはーい! こーんなこともあろうかと、少数ながらリークサエキスを用意しておりましたー! 数人分ならあった筈ですよ」

 

 咄嗟にデルタ分隊の4人に予防接種を命じたが、そういえばワクチンあったっけ――――と思ったものの、どうやら杞憂だったらしい。

 ドクターアンバーはがさごそとトランクをまさぐり、怪しげな薬品が入った注射器を数本取り出す。

 性格はアレだけど、コハッキーよろしく有能なときは有能なのは助かることだ。

 

「手際がいいな。全員分頼んだぞ」

 

「アイアイサー! ささっ皆さん並んでくださーい! お注射の時間ですよ♪」

 

「嫌な予感がするな。よしスコーチ、お前から行け」

 

「え"っ……!? いやボス! そこは何とか――」

 

「問答無用だ。行け」

 

「はいはーい! ではまず実験台一号さんから……」

 

「え"っ"、今実験台って――ぎゃぁぁぁぁ!?」

 

 ―――スコーチ、君のことは忘れない。

 

 ドクターアンバーの毒牙にかかった彼の叫びが、狭い会議室に木霊した。

 

《ブリュッヒャー将軍、何事だ》

 

 ここでやっと、上空の121分艦隊と通信が繋がる。

 

「ムジーク准将、緊急事態だ。分離主義者がナブーで生物兵器を培養している可能性が出た。直ちに軌道上を封鎖してスキャンを始めてくれ」

 

《むっ…………生物兵器だと! 確かにそれは一大事だな。わかった、ブリュッヒャー将軍。すぐに演習を中断してそちらに向かおう》

 

「お願いします、ムジーク准将」

 

 さっすが、話が早い新所長。

 見た目無能中身は有能な彼の性格が、この世界でも健在で何よりだ。言い方はアレでも、頭は切れるからねこの人。

 

「念のためだ。アミダラ議員にも一報を入れておいた方がいい。アルト、ナブー側の人間を呼び出せるか?」

 

「はい! えっと…………通信機は、ここです!」

 

 アルトは部屋に据え付けられた通信機を探し、室外のナブー当局の人間に連絡した。程なくして、ナブー王室保安軍の制服を着た軍人数名が入室する。

 

「お初にお目にかかります、ブリュッヒャー将軍、保安軍のキャプテン・タイフォです」

 

「どうもキャプテン。緊急事態だ。直ぐにこの内容を政府とアミダラ議員に伝えてほしい。例の疫病、分離主義者の生物兵器の可能性が高い」

 

「なっ―――!? 本当ですか? 分かりました。直ちに伝達します」

 

「頼む。もし本当に分離主義者の生物兵器だとしたら、事は一惑星で済まないことになる。念のため軌道封鎖と惑星全土のスキャンもさせて貰うことになる。――事後承諾で申し訳ないが、当局にも許可を出すよう伝えてくれ」

 

「了解です―――しかし、軌道封鎖ですか。できるだけ短時間でお願いしますよ」

 

「分かっている。まだナブー危機の記憶も色濃いだろう。心配するな、今度は銃口が向けられる訳じゃない。まぁ、できるだけ早く済ませるようにはするよ」

 

 艦隊による軌道封鎖を伝えたところ、キャプテンは一瞬渋い顔を浮かべたが、直ぐに表情を戻す。あまりいい感情は無いだろうが、これもナブーを救うためだ、分かってくれ。

 

「では、政府と議員には報告させて頂きます。これにて失礼」

 

 キャプテン・タイフォ以下数名の軍人は、用件が終わるとそそくさと急ぎ足で退出する。彼らにとっても一大事だ。できるだけ早く伝えたいのだろう。

 

 その後私達は会議室に籠り、装備の点検と防疫部隊、工作部隊の増援を要請。ムジーク准将に頼んだ医療部隊12名をシードに残し、私とアルト、デルタ分隊は工作部隊のクローン・オードナンス・スペシャリスト18名と合流すべく格納庫に向かった。

 

 ピピリッ、ピリッ―――

 

 コムリンクの音だ。

 

 発信元は――ジェダイ聖堂? 

 

「はい、こちらブリュッヒャー。何の用件ですか、マスターヨーダ」

 

 通信相手は、予想外のグランドマスター。

 まさか直々に任務の状況確認? 

 

「ブリュッヒャーよ、そちらは大変なことになっておるそうじゃの」

 

「ええ。一年前に取り逃がした私の失態です。今度こそ捕まえます」

 

 こうなった責任の一端は、イードゥーの秘密研究所で黒幕の胡散臭い灰色野郎を取り逃がした私にも原因がある。失敗は許されない。

 

「アミダラ議員も既にそちらに向かっておる。議員と合流し、陰謀を明らかにするのじゃ」

 

「それでは遅すぎます、マスターヨーダ。既に軌道封鎖と惑星スキャンを121分艦隊に要請しました。敵拠点を発見次第、突入します」

 

「いかん。相手はブルー・シャドウ・ウイルスじゃ。一度感染したらおしまいじゃぞ!?」

 

 マスターヨーダは此方を案じているのか、はたまた別の思惑があるのか、アミダラ議員との合流を指示した。が、時間がない。私の軍だけで突入する。―――しくじったな、聖堂との連携ミスだ。現場で事を急ぎすぎたかもしれないが、今は善は急げのときだ。マスターヨーダには悪いが、先に行かせてもらう。幸いドクターアンバーのお陰でワクチンも手配できたしね。

 

「ご安心を、マスター。敵は全て斬り伏せて参りますので」

 

 コムリンクの通信を切断する。

 

 敵が例え何であろうと、ただひたすらに斬るのみ。これが分離主義者の陰謀だというのなら、私は共和国軍人としての務めを果たし、全てを一刀の下に両断しよう。

 ウイルス? 上等だ。研究室で皆殺しにしてやる。

 フラスコの中で溺死しやがれ。

 

「マスター! 惑星スキャンが終わりました。結果は此方のようです」

 

 アルトから、一枚のデータプレートが手渡される。

 その資料に目を遣ると、明らかに登録外の謎の施設が一つ。西の草原を越えた先の湿地帯に、あからさまな地下施設があるようだ。

 

「―――これだな。よしアルト、デルタ分隊、ガンシップに急ぐぞ! ……敵さんの本拠地を見つけた」




■艦艇解説

〈スピリット・オブ・ザ・リパブリック〉

 共和国宇宙軍第121分艦隊の旗艦。ゴルドルフ・ムジーク准将の座乗艦である。ヴェネターⅠ級。
 原作の劇場版クローンウォーズではテスの戦いに増援として参加する艦として登場し、ユラーレンの指揮下にあった。
◎登場エピソード
クローン・ウォーズ(劇場版)


〈ドーントレス〉

 121分艦隊に属するヴェネターⅠ級。原作ではCWのシーズン1、ボサウイの戦いにてアナキン麾下の戦艦として登場する。
◎登場エピソード
クローン・ウォーズ 消えたドロイド
クローン・ウォーズ 型破りなジェダイ
クローン・ウォーズ ジェダイの遭難


〈パイオニア〉

 121分艦隊に属するヴェネターⅠ級。原作ではCWのシーズン1、ボサウイの戦いにてアナキン麾下の戦艦として登場する。
◎登場エピソード
クローン・ウォーズ 消えたドロイド
クローン・ウォーズ 型破りなジェダイ
クローン・ウォーズ ジェダイの遭難
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